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『今日も今日とてそんな一日 』
ミィムナ(w3c315)&ミシュラ・デバンド(w3a361)


「馬鹿ーーーー!!」
 さて、男女の間でこの言葉が出たとき、一体どんな光景を思い浮かべるだろうか?
 泣きながら走り去る女?
 バツの悪そうな顔をして俯く男?

 いやいや、普通ならそうでも、彼と彼女では違う。

「ぶべらっ!?」
 などと、今時ギャグマンガでも使われなさそうな声をリアルに上げて、彼が吹っ飛ぶ。
 ぶっ飛ばしたのは、彼女。その力、我岩をも砕かんなどと言いそうな勢いの破壊力。
 はるか上空を飛んでいく彼はきっと今、「うふふ…あはは…」などと意味不明な言葉を呟きながら向こうの世界を見ていることだろう。
 そんな、ブーメランなんたらとかギャラクティカなんたらみたいな一発に飛ばされた春。
 ミシュラ・デバンドとミィムナという、一組の夫婦の日常。



○要因というか何というか



 最近、ミィムナは悩んでいた。
 夫に、仕事に?
 いいや違う。自分のそのスタイルに。



 二人の部屋は、とある高級マンションの一室である。この若さで何故そんなところを部屋として持っているのか?
 偏にミシュラの芸能人としての成功、そしてミィムナのマネージャーとしての有能さによるものだろう。
 決して同年代ではまず手に入らぬ成功を収めた二人。そして、最良のパートナーとして出会った二人は、世界中の幸せを独占しているようにも思えた。
 しかし、だがしかーし。
 ミィムナは悩んでいた。



「それじゃミィムナ、行ってくるね☆」
 何時ものように、明るい声を上げながら走っていく彼女。ミィムナがマネージャーを務めるアイドル。
 ほんの数年前までは、彼女もまだあどけなく、まだまだ御子様という感じだったのだ。
 しかし時の流れというのは実に残酷だ。その数年の間に、彼女はしっかりと成長していた。

「…はぁ」
 それを見送ると、ミィムナから深いため息が漏れる。
 では具体的に解説してみよう、彼女とミィムナの差を!

・身長:2mmとはいえ彼女の方が高い。ちなみにミィムナの方が二歳年上。
・胸:やっぱり彼女の方が大きい。ミィムナは小さい。
・魅力:アイドルとマネージャーですから!

 一言で結果を言えば。
 惨 敗。
 いや、ミィムナは十二分に可愛いし、魅力だって溢れている。それでも、本人的には惨敗した気分なのだ。
「うぅぅ…」
 考えただけで悔しく悲しい。思わずミィムナは頭を抱えてしまった。
『これって女としてピンチなんじゃ!?』
 何がどうピンチなのかはよく分からないが、それはまぁ置いておいて。

「お、もう彼女は仕事に行ったか。相変わらず忙しいねぇ…」
「あ、ミシュラ…」
 最愛の旦那登場にも、ミィムナの表情は優れない。
 しかし、超鈍感は野郎の宿命か、ミシュラがそれに気付くことはなかった。
 気付かないが故の悲劇。一人気にするミィムナの前でミシュラがトドメを刺していく。
「んー…彼女も成長したよなぁ。すっかりミィムナよりも大きくなって…」
 ガーーーーーーン!!
 ミィムナにクリティカル、ミィムナはたおれた!
 などと、RPG風に解説できてしまうくらいに綺麗な一撃がミィムナを襲った。
 多分、きっとそれはミシュラからしてみれば身長だとかの話だったのだろう。流石に嫁さん以外の女の子にうつつを抜かすのはどうかと思われるし。
 しかし、ミィムナにそれが分かるわけもないし分かりたくもない。事実はただ一つ。

『あたしは…あの子よりも小さい…』

 だから、それは悔しさとなって彼女の顔に表れた。気付かぬうちに、ポロポロと涙が溢れていく。
「え、おい、ミィムナ…?」
 それが自分が原因だとは分からず、ただオロオロとするばかりのミシュラ。そんな彼の顎を、
「ミシュラの馬鹿ーーーーーーっ!!」
 彼女の拳が綺麗にとらえていた。
 そして、「うふふ…あはは…」そんな彼の素敵な声をバックに、彼女は先ほど出たばかりの自分の部屋へとすぐに逃げ込むのだった。





* * *



「いつつっ…何怒ってるんだあいつは…?」
 そんな冗談のようなパンチを食らってぶっ飛びながら、それでも旦那ミシュラは考えていた。
 っていうか普通死んじゃいそうな勢いなのだが、そこは彼も魔皇、何とか魔皇化して復活できる(それはつまり、人化状態で瀕死の重傷を負ったということなのだけれど)。
 さらには、彼は毎日と言わないまでも、ことあるごとにこのパンチを喰らっているのである程度の耐性もついている。あぁ悲しきかなギャグキャラ体質。
「うるせぇ俺はギャグキャラじゃねぇ!
 …って、誰にツッコミ入れてるんだ俺は。そうじゃなくて、ミィムナだ…」
 とりあえず、そのまま落下すると幾ら魔皇状態でも痛いので(傷がつかないのとはまた別の話なのだ、痛みは)、すたっと何処かの体操選手のごとく満点の着地を決める。ちなみに彼が着地したのは街のど真ん中。いきなり降って来た有名人に俄かに騒然となり始める。
「俺が言ったこと、言ったこと…」
 しかし、そんなことは気にせずあらためて自分が言ったことを思い返してみる。
『んー…彼女も成長したよなぁ。すっかりミィムナよりも大きくなって…』
「これかー!?」
 迂闊だった。まさにその一言。
 彼女は自分の前では口に出さないけれど、それでも以前からそのことを気にしていたのはよく知っている。口に出さなくても態度で分かるものだ、彼女の場合は特に分かりやすい。
「やっちまった…」
 一人頭を抱えるミシュラ。いきなり飛んできていきなり苦悩し始める有名人に、さらに街は騒然とし始める。
「……ミィムナー!」
 そして、少し黙ったと思うといきなりの超速ダッシュ。瞳に煌く孤高の紫の刻印は伊達じゃない。そんな彼を、住民たちは呆然と見送った。



 その頃、ミィムナは一人自己嫌悪に浸っていた。
 分かっている、彼女もよく分かっているのだ。
 ミシュラがそんなつもりで言ったのではないと言う事くらいは。
 しかし、それでも自分の感情を抑えきれず、そして気付けば自己嫌悪…その繰り返し。
 だから余計に辛い、悲しい。だから落ち込む。
『コンコン』
 そんな彼女のすぐ後ろ、扉を叩く音が響く。
『えっと…ミィムナ、さっきはゴメン』
 ミシュラだった。殴り飛ばされて、それでもすぐさま帰ってきて謝ってくれているのだ。
 しかし、今の彼女にはきっと逆効果。自分が悪いのに、彼に謝らせているという事実は彼女をどんどん追い詰めていく。

 謝るミシュラに、しかしミィムナの返事はない。
 それも何時ものことなのか、ミシュラは何も言わずに待つことにした。

 そのまま、ただ静かに過ぎていく時間。
 今日もミシュラには仕事があったが、そんなことよりも今は嫁さんのことの方が大切ということでそのまま休んだ。

 そのうちに、扉の向こうから鍵を外す音が聞こえた。その音に、ミシュラは静かに立ち上がる。
 そして、静かに扉が開いた。
 その向こうから現れたのは、股下1cmという超ミニというかもはやそれはスカートがないというのでは?というようなピンクのナース服を着たミィムナだった。ちなみにこれ、ミシュラが何時ぞや買ってきたお土産である。中々マニアックな男ミシュラ、これで一体何を楽しんでいるのか。
 とまぁそれはさておき、ミシュラはそのことよりも(いやそのことも嬉しいのだけど)ミィムナがこうやって出てきてくれたことが嬉しくて少し胸を撫で下ろした。
「何でもいうこと聞くよ〜何がイイ〜…?」
 ミィムナは、顔を真っ赤にして俯きながらそんなことを言った。
 そんなミィムナの頭を、ミシュラは少し撫でてやる。
「別に怒ってないからいいよ」
 ミィムナが顔を上げると、そこには笑顔のミシュラ。そんな彼に、ミィムナは抱きついた。ほとんど新婚のノリである。まぁそれくらいに二人はラブラブ(死語)なのだ。
「でもまぁ…折角だから色々聞いてもらおうかな?」
「う、うん…いいよー…」
 まぁ、ここからは夫婦の時間と言うことで、野暮なことを書くのはやめておこう。
 まぁあえて言えば…男は皆狼なのさー♪とだけ。



 それから、少し。
「ミシュラの馬鹿ーーーーーーっ!!」
 パリーンと、高級マンションの窓ガラスをぶち破って空を舞う影一つ。
「うふふ…あはは…」
 影は、そんなことを呟いていた。
 その正体は勿論ミシュラ。調子に乗りやすい彼は、何でも言うことを聞くと言った彼女に、自主規制なあんなことやこんなことなどと言った要望を言い、何時もの調子でぶん殴られたのだ。
 まぁ、今回は彼の自業自得ということで。
「…またやっちゃった…」
 そして、また落ち込むミィムナ。それからしばらく、そんなやりとりが続いて一日が終わった。





* * *



 まぁそんな調子で一日が明け、今日もまた新しい一日が始まる。

「ボクもう行くからね☆」
 そして、何時もの調子で彼女を見送るミィムナ。しかし、その表情は優れない。
 何故?
 彼女はまた発見してしまったのだ、彼女よりも自分が劣っているところを。
「うぅ…あんなにウェスト細かったなんてぇ…」
 今日はウェストだった。ミィムナだって、傍から見れば十二分に細く、綺麗なのに、それでも彼女は落ち込んだ。
「お、もう行ったのか。俺も頑張らなきゃな」
 そして、そこに登場ミィムナ最愛の旦那ミシュラ。
 しかし、やっぱり今日もミシュラはミィムナの様子に気がつかない。…男ってやっぱり鈍感?
「んーしかし彼女は細いよなぁ…」
 しみじみ呟くミシュラ、そんな彼の顎を、
「ミシュラの馬鹿ーーーーーーっ!!」
 また綺麗にその拳がとらえていた。空には綺麗に飛んでいくミシュラの姿。



 そして、今日も今日とてそんな一日が続いていく。
 どっとはらい。



<END>

――――――――――



 初めまして、ライターのEEEと申します。今回は発注ありがとうございました。



 ラブラブな二人の日常ということで、甘いやらギャグなのやらよく分からないことに…(をい
 でもまぁ、こんな調子だからきっと三年経ってもずっと新婚さんな感じなんでしょうね(笑
 さて、ミシュラさんが今度用意するコス衣装は一体何なのか…ちょっと気になります。マニアックなプレイは程々に(ぇ

 それでは今回はこの辺りで。ありがとうございました。
PCシチュエーションノベル(ツイン) -
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神魔創世記 アクスディアEXceed
2005年05月24日

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