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『宿命の対決 ドリルガール対ブラックドリルガール#5 』
ブラック・ドリルガール2644)&銀野・翼(2373)&里見・勇介(2352)

 ブラックドリルガールこと黒野らせん。戦闘用クローンである。
 しかし、ある時オリジナル・銀野らせんを捕獲し、これから自分が“本物”として生きていくという。

 それは可能なのだろうか?

 オリジナルの住まう家、家族環境は両親と弟。弟とは良く顔をあわすので仲がよい。その辺のことは全てTI社から調べて貰っていた。

「ただいま」
 と、極普通にオリジナルのように家に“帰ってくる”。
「お帰り! おねえ……ちゃん?」
 弟、銀野翼が1.5倍辛さ倍増のスナックを持ちながら挨拶した。
――コレが弟?
――何か違うなぁ……
 すこし間が空く。

「お姉ちゃんおかえり」
 翼はにっこりと笑って出迎えることにする。
「あ、ああ、ただいま。今疲れているから……」
 と、なんとかオリジナルの口調を真似る。
 しかし、家の景色が珍しいのかキョロキョロしてしまう。
 見たことのない部屋。
 本物と家族の気配。
 時折感じた郷愁。
 しかも、オリジナルの部屋に“戻った”時……、
「か、かわいい……」
 と、声を漏らす。
 小麦色ぬいぐるみと、ほかにかわいいものとかがいっぱいあるために抱きしめてベッドでゴロゴロする。
 気持ちはまさに天国。
 噛みつかれることもないので嬉しさ倍増だ。

 それを

 怪しそうにドアの隅で翼が彼女を眺めていた。

「ヤッパリ何かが違う」
 と、翼が考える。
 良く姉に、TI社などの戦いは聞いている。
 ならば“〜”であると、と仮定するなら見破る方法は簡単だ。
 かといって、此処では危険すぎるが……
「少し様子を見てみよう。今日は遅いし。宿題しなきゃ」
 と、翼は引っ込んだ。

 夜は普通に過ぎていく。
 なんとか本物に合わそうと演技に四苦八苦している黒野らせん。
 その甲斐あってか、らせんを本物とみている両親。
 単に調子が悪いのだろうと思っている様だ。
 そこでこじれるのはよすため沈黙し続ける翼。

――分かるのは明日だ。丁度休みだし。

「おやすみ」
「おやすみなさい」
 と、銀野家は穏やかだったが、らせんと翼の間には少し緊張があった。


 翌日。
 部屋でぼうっとしているらせんに翼が声をかける。
「おねえちゃん、ゲーセン行こう。久しぶりに」
「ゲーセン……? ああ、いこうか」
 と、ゆっくり立ち上がり2人揃ってでかけていった。
 翼はいつもの鞄にフルスクラッチ強化服をしっかり入れて……。
 ゲームセンターに向かい、翼がいつものとか言うので黒らせんはオリジナルの記憶を辿る。
 アレというのは、ガンシューティング「警視庁超常対策24時」という強化服を付けて様々な事件で登場する怪人や奇怪生物を倒していくゲームだ。
「ああ、あれか……」
 と、何となく会話して、対戦モードで参加する。
 この場合、対戦ゲームとほぼ同じ、移動していくとたまに相手を視認して対戦する形になる。ネット関係では先を行くパソコンならば、過去に4人対戦のシューティングゲームが過去何作かがでまわっているので其れに似た様なものだ。それ以外ではアクションやら演出効果は他のモノと同じ。
 翼は黒らせんのある部分を見ている。勝敗は関係はない。
 黒らせんは、天性の勘で翼のキャラを実力で倒していく。
 それが30分以上経ったのだろう。対戦はらせんの勝ちだ。
 2人の巧さに人だかりが出来ていたのだ。
「……」
「どうした?」
 黒らせんが翼の様子がおかしいと声をかける。
「お姉ちゃん。ちょっと裏まできて」
「? あ、ああ」
 と、連れて行かれる黒らせん。

 少し人気が少ない場所で、いきなり翼は黒らせんから距離を置いた。
「偽物!」
「!?」
 翼の言葉に驚く黒らせん。
「何言っている? あたしは……」
「いいや他の人にごまかせても、僕にはごまかせない。あのゲームを選んだときからずっとあんたの“癖”と本物のお姉ちゃんの“癖”を比べていた! “癖”なんて早々変わることはないんだ!」
「な!?」
 なんと言うことか。
 まさかこんなたかがゲームでバレると思わなかった黒らせん。
「リロード時の癖の時間は1秒の違い、連射動作が30ミリ違っていた! お姉ちゃんじゃない!」
――其処まで測るのか少年。
 翼は鞄からフルスクラッチ強化服を出して。それを自分サイズに実体化させた。
「け、警察か!」
 黒らせんは、すぐにブラックドリルガール・軽装装備タイプに変身する。
「騙したな!」
「どっちが!」
 と、激突する両者。
 しかし、結果は見えている。
 幾ら翼の能力でも、戦闘能力と経験ではブラックドリルガールに及ぶところではない。
 急いで翼は、強化服と共に作っているバイクを実物化しておいたので其れに乗って離脱。 追いかけるブラックドリルガール。
 街道のチェイスが始まった。
 
 当てもなく歩いていた、里見勇介が、強化服と黒いドリル少女のチェイスを目撃した。
「あの強化服……前に助けたことがあるな。事件か! 追いかけられている!」
 と、咄嗟に判断。
「ブレイブセット! 勇者特警ファントムチェイサー」
 と、叫んで翼の乗っているバイクに憑依合体した。
「またあったな」
「え?」
「……話は後だ……追われているから手助けしてやる」
「ありがとう」
 と、バイクは通常の“本物”より更に加速し……工場跡地まで走る。
 黒らせんも追いついていく。
 このチェイサー自体に武装が施されている事に翼の物体実体化能力、勇介のプラズマ能力は相性がよい。実物の其れより強化されている。其れが、単なるハンドガン強化パーツであろうと、だ。
 バイクが人型になり、翼を援護する形で黒らせんの動きを止め、翼がランチャーでらせんをねらい打ちにする。らせんもドリルとルーンカードで回避、反撃するも、分が悪かった。
 結局、2人がかりの攻撃に吹き飛ばされ、一部装甲が破損するブラックドリルガール。朦朧状態かつゴミの山にハマったので上手く身動きが取れない。
「今だ!」
 と、勇介は前に変形したランチャー状態になる。
 翼は其れに一瞬驚いたが、すぐにそのランチャーを肩に担いで。
「ターゲット・ロックオン! ファイヤー!」
 ブラックドリルガールに向けて発射した。
 熱量、威力は桁外れだと分かるらせん。
「エオー!」
 ドリルにルーンを読み込ませ“障壁”を作る。
 その衝撃音が工場跡地に響いた。
 おそらく光が、街に見えていることだろう。

 土煙が収まったとき……
 勇介の姿もブラックドリルガールの姿も居なかった。
「残留生命反応が……ない……逃げたのかな?」
 翼は能力を解除して、ペタンと座り込む。
「一体、何だったのだろう?」
 体力的にかなり無理がたたっていたのか息が荒い翼だった。


 障壁で防御し、土煙の中で命からがら逃げた黒らせんは……気が付くと、TI社の自分の部屋にいた。
「はぁ、はぁ……」
 かなり痛手を負った。あそこから逃げ出せたのは運が良かっただけだ。
 もし、本物だったら、天使フォームで完全遮断されていただろう。
「わ、私はやはり本物に成れないんだ……。いくら、あいつと同じ遺伝子でも……」
――同じだけど、違うんだ。
 と、黒らせんは悟った。
 
――戦いだけではない
――言いなりで動くだけでない
――友達を作って
――楽しく過ごして
――そして……恋をして……
――そんな自分自身の思うように生きてみたいと思わないの?

 誰かが言った言葉。
 言った相手はすぐに分かる。
 そして、徐々に分かり始めている。
 彼女に“あること”が頭をよぎる。

 それが、彼女の運命を変えるか……それは“世界”だけが知っている。

To Be Continued
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滝照直樹 クリエイターズルームへ
東京怪談
2005年05月09日

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