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『夢との接点  』
モーリス・ラジアル2318)&弓槻・蒲公英(1992)


 時は少しばかり前の事。
 ちょうど、バレンタインの頃の話。


 町中を歩く度に人目を引くモーリスと蒲公英の二人。
 何時もと変わらぬ姿のモーリスがエスコートをしているのは、普段の姿とは違う蒲公英。
 ここは夢の中にあった学園でもないはずなのに、高校生程の姿に成長しているのだ。
 答えは簡単。
 並んで歩くのには目的を考えるといささか幼すぎると言うことで、モーリスが能力を用いて年齢を上げたのがその答え。
 その結果。
 町中にて金の髪の男性が、少女をエスコートするという映画のワンシーンのようなシチュエーションの完成となった訳である。
「あ、あの……」
 慣れない体で不安げな蒲公英にモーリスが優しい笑みを向け宥めにかかった。
「安心してください、これは夢ですから」
「……夢、ですか?」
 手を見つめ、頬を撫で……信じられないといった風にな蒲公英の反応は当たり前の事である。
 これは夢ではないのだ。
「もちろんですよ」
「……夢」
「そうでなければ大人になったりしませんよ、今幾つです?」
「……七才、です」
「ほら、夢ですよ。夢でよくお会いしからますね」
「………」
 何かしら矛盾点は多いのだが、多すぎてどこから尋ねたものか?
 格好の帰り道でモーリスに出会い、お暇ですかと尋ねられたのだ。
 そこで蒲公英はハイと答えたのを覚えている。
 その後、折角だからと大人の姿に変化し、こうしてデートをしているのである。
 その前後までは子供であった筈なのに、何処で何を間違えのだろうか?
 唐突さはとても夢らしい事この上ない。
 だが……夢だとしたらあまりにもリアルだ。
「さあ、行きましょうか」
「は、はい」
 そっと手を引かれ、これ以上何かを考える前にエスコートされて行く。
 これが蒲公英とモーリスがデートをする事になった経緯である。


 スカートのすそを抑えつつ何かを伝えようとする蒲公英に、どうしたのかと思い当たりそうな事を尋ねてみる。
「何処か違和感でもありますか?」
「は、はい……」
 それすらも申し訳なさそうな蒲公英をそっと肩を抱き寄た。
「今の姿は落ち着きませんか?」
 理由は解らないでもない。
 夢の中での時気違和感を抱かないように、何らかの力が施されてあった。
 けれど今は何も施されては居ないのである。
 いくら現実世界や夢の中で顔を合わせ、色々としている仲である事だけでは成立しない。
 すべては蒲公英の素直で疑う事を知らない性格故にに取れる行動なのだ、なにしろ今こうしているのが夢であると半ば信じているのだから。
 だが何もない状況では流石に無理があると言うことだろう。
 もう少し、しっかりと説明しておいた方が良い。
「はい……」
 小さく頷いた蒲公英に、幼い子供に言い聞かせるような口調で囁きかける。
「夢ですよ」
 髪を撫で、そっと。
「夢だから、何でも出来るんです。自由に振る舞えるんですよ」
「自由に……」
「はい」
 どの程度効果はあるのかは解らなかったが、まるで暗示でもかかけているかのようではあった。
 最後の一押しに、もう一言。
「悩む必要はないんだよ、楽しい夢にしてあげるから」
 運ばれてきたお茶を勧めつつ、モーリスはゆっくりと説明する事にした。
 何、時間はまだまだあるだから。
 帰りが遅くなっても探し出したりしないように、少しばかり手を打ってあるのだ。



 流石に元の服は成長した蒲公英に合わせててサイズを変えた物の、何処へ行くのにも目立ってしまう。
 このままではままだとまずいだろうとブティックへと向かい、蒲公英によく似合う清楚な服や可愛らしい服を色々と見立てて行く。
「さあ、ゆっくり着替えましょう、一番似合う物を差し上げますよ」
 その時を楽しみにして、モーリスは人の良い表情で微笑んだ。
 次々と服を見せながら、何が似合うかを次々と着せ替える。
 体のラインを柔らかくなぞるシンプルなワンピース。
 大人しいデザインであるのにもかかわらず、スカートからスラリと伸びた白い足がとても魅力的だった。
「よく似合ってますよ、靴も揃えて買った方が良いですね」
「あの……足下が……」
 恥ずかしそうにすそを抑えるその様子も可愛らしい。
「でしたらこちらはどうですか?」
 胸元に控えめにフリルの付いたキャミソールとカーディガンがセットになったアンサンブル。
 下はレース素材のロングスカートに調整可能なスリットが入ったスカート。
「サイドにあるスリットを移動させれば大人びて見えますよ」
 スルリとリボンを解きかけた手を蒲公英がそっと手を重ねて止めにはいった。
「し、下の方で……良いです」
「それは残念」
 次は軽い素材の、ブラウスと小花柄がちりばめられたスカート。
 歩く度にふわりと膨らむ様子は、外を歩けばますます人目を引く事だろう。
「どれもとてもよく似合ってますよ、全部差し上げたいぐらいです」
 何気なく言った言葉に、驚いたように目を開きフルフルと首を振る。
「そんな……駄目、です」
 夢であると信じているだろう筈なのに、この遠慮深さがとても愛らしい。
「解ってますよ、一番を似合う服を見立ててあげますから」
 この服に合う靴は何だろうかと、モーリスはあたりに置かれている靴の中から選び始めた。


 服を着替え、腕を組んで人目を引き連れながら町中を歩いていく。
 なかなか楽しい事になったものだとモーリスはとても良い気分だった。
 ウィンドウショッピングや、アクセサリーも揃えたり、蒲公英が喜びそうな場所をと考えて沢山の猫と直接触れ合えるような場所にも行った。
 ひとしきり楽しんでから喫茶店に入り、窓際で外の景色が良く席に着きながらゆっくりと話をする。
「喜んで貰えましたか」
「はい……猫さんが、かわいかったです」
「それはなによりです」
 店を出たのは一杯分お茶が空になった後の事。


 たっぷり楽しんだ後。元の服に着替えないと、と言い慣れた様子でさっとホテルの部屋を借りてしまう。
「着替えなら、他でも……」
「そんな事させられませんよ、最後までエスコートをさせてください」
 着替えのためだけに借りるのであれば、上等すぎる部屋だろう。
 蒲公英を部屋に招き入れ、着替えの入った袋を置いてルームサービスを頼む間だ一度部屋を出る。
 もう少しばかり楽しんでから、サイズを変えた服も含めて同時に元に戻せば良い。
 飲み物を手に部屋に戻ると大分うとうとしているようだった。
「蒲公英嬢はお疲れのようですね」
「いえ……だいじょうぶ、です」
 靴を置き、モーリスも蒲公英の隣へと並ぶように腰掛けた。
「沢山遊びましたからね、着替えたら休憩にしましょうか。飲み物でもどうですか?」
「ありがとうございます……」
 手早く入れたアイスティーを手に、元居た部屋に戻ると……蒲公英は着替えかけたままベットに横になっている。
「やはり疲れていたようですね」
 小さく笑みを零し、サラリと髪をすくい取り口付けた。
「覚えてますか、夢の中でもこうしたんですよ?」
「……ん」
 くすぐったそうに身をよじる蒲公英の頬を撫で、耳元で囁く。
「ちゃんと、教えてあげますよ」
「……? モーリスさん?」
 脱ぎかけの服に手をかけ、前をはだけさせていった。
 ゆっくりとした動きで、蒲公英にも何をしているのか解るように事を進めていく。
「なに……」
 うっすらと開かれた目蓋にキスを一つと落としてから、ゆっくりとボタンを外す。
「着替えを手伝ってあげてるんです」
「……え?」
「直ぐに終わりますよ」
 目蓋が半ば閉じかけている蒲公英に微笑みかけ、頬を撫る。
「また一緒にデートをお願いしますね」
 ウトウトと考えていたが、小さく頷き目蓋を閉じ可愛らしい寝息を繰り返す。
「ありがとうございます、良い夢を」
 次に目が覚めたら、リアルな夢はお終い。



 よく寝ている蒲公英を元の姿に戻し、目を覚まさないよう十分に気を付けて抱えて行く姿を見たのは、ごく僅かな人だけだった。



 目を覚ました蒲公英は、ここは自分の部屋である事に驚き目を瞬かせて首を傾げる。
「……夢、だったのでしょうか」
 だとしたらあまりにもリアルで不思議な夢だ。
 大人になって、デートをするなんて。
 色々な所に連れて行って貰えて楽しかったのは解る。
 服を着せて貰ったり。お店を見て回ったり。撫でた時になぁと鳴く猫は微笑ましく、とても気持ちのいい毛並みだった。
 本当に夢だったのだろうか?
 そんな疑問で頭が一杯になった蒲公英かベットの横にある袋に目を止める。
「なんでしょうか……」
 ベットからおり、中身を出してドキリとして動きを止めた。
 丁寧に折り畳まれてはいるが、蒲公英がデートをした時に着ていた服だったのである。
 サイズは今の蒲公英にピッタリな大きさになっていたのだが、驚きのあまりそれに気付く余裕すらなかった。
「………」
 数秒かはたまた数分か、ジッと服を見つめ……蒲公英の顔が真っ赤に染まる。
「………ええと」
 夢ではなかった?
 確かな証拠ともいえる、あの時着ていた服は確かにここにある。
 慌てて服を袋にしまい、どうしようかと抱きかかえたままオロオロと部屋の中を歩き始めた。
「どう、しましょう」
 何も良い案が思いつく事もないまま、パッと思いだす。
 最後に、確かに約束をしたのだ。
 また、デートをしましょうと。
「………」
 夢ではないとしたら、約束の日が来るのは何時なのだろうかと蒲公英が真剣に悩みだしたのはすぐ後の事だった。



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東京怪談
2005年04月11日

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