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『水上の楽園 』
エリア・スチール0592


☆オープニング

 朝、カタリと何かが家の前に落ちる音がして、エリア スチールは目を覚ました。
 カタリと音はしたものの、それは随分軽いもののように思えた。
 そう・・丁度、手紙か何かのような・・・。
 手紙?
 エリアはぱっと飛び起きると、扉を押し開けた。
 押し開けた先、ちょこんと置かれている白い封筒が目に痛い。
 エリアは繊細な指先でそれを拾い上げた。
 『エリアス チール様』
 そして差出人は・・・。
 『アルベルト ルール』
 「アルベルト様・・いったいどうしたのでしょうか・・。手紙なんて・・。」
 エリアは小首をかしげながらも、封を切った。
 『セイントエアリー号、特別ご優待券』
 そう書かれた紙に、エリアは思わず小さく声をあげた。
 セイントエアリー号・・水上の楽園とも呼ばれている“あの”セイントエアリー号だ・・・。
 一泊の値段が驚くほどの・・・。
 「どうしてアルベルト様が・・?」
 買ったのだろうか?
 首をひねってみるものの、どうしても明確な答えは見えてこない。
 「ドレス・・あったかしら・・・。」
 エリアは考えるのを諦めると、そう呟いた。
 水上の楽園と誉れ高いセイントエアリー号に、普段着は少しまずい・・。
 そう言えばどこかにあったかも知れない。以前に着たのは何時だったかしら?
 エリアはいつか見たはずのドレスを思い出しながら、扉を閉めた。


★セレブ達の楽園

 エリアは可愛らしい薄ピンクのドレスを身に纏いながら、船着場でエリアの到着を待っているアルベルトの元へと走った。
 「アルベルト様・・。」
 手を振った先、ピシっとしたスーツに身を包んだアルベルトがこちらを振り向く。
 丁度、アルベルトと並ぶと1対のお人形のように見えなくもない。
 手を振りながらトテトテと走るエリアに、アルベルトが慌た様子で叫んだ。
 「エリア、走って来なくても大丈夫だから・・・」
   ベシャリ
 タイルとタイルの小さな段差に足を取られ、アルベルトの言葉を全て聞く前にエリアは転んでしまった。
 すぐにアルベルトが近づいてくる気配がする。
 「大丈夫!?」
 「あ・・はい、大丈夫ですわ・・。驚きました・・。」
 アルベルトはほっとしたように息を吐くと、エリアに手を差し伸べた。
 裾の方についた埃をポンポンと払ってくれ、エリアの手を引いてセイントエアリー号へと乗り込む。
 「ご優待券かご宿泊券はお持ちでしょうか?」
 「はい。」
 受付の女性に優待券を差し出し、アルベルトがエリアが自分の連れだと言う事を告げる。
 女性は渡した優待券を見て、一瞬だけ不思議な笑顔を作ると・・すぐに元の笑顔に戻った。
 「どうぞ、中へ。水上の楽園をお楽しみくださいませ。」
 にっこりと微笑む女性の瞳の奥は、不思議な色に輝いていた。


 中に入ると、蝶ネクタイをしたボーイが2人を導いてくれた。
 両開きの豪華な扉を押し開けて、中へと招待する。
 中は煌びやかな世界だった。
 巨大なシャンデリアは七色に輝き、クリスタルは艶やかに揺れている。
 真っ赤な絨毯には埃一つ落ちておらず、いくつも置かれている丸テーブルにかかった白のクロスには、染み一つない。
 クルクルと、グラスを持ちながら踊るように歩き回る貴婦人達の服は皆一様に豪奢なドレスで、その隣で穏やかな笑みを浮かべている紳士達は目に痛いほどに決まったスーツ姿だった。
 「まぁ・・。」
 思わず感嘆のため息が漏れる。
 アルベルトがそれを見てそっと微笑むと、エリアの手を取りながら中へと入っていった。
 「まぁ、可愛らしいお姫様と王子様。」
 すぐに1人の貴婦人が声をかけてくる。
 右手には泡の立ったワイングラスが一つ。
 「あ、初めまして〜。」
 エリアは小さく微笑むと、スカートの裾をつまんで会釈をした。
 「ふふ、ようこそ。水上の楽園へ。」
 女性もエリアの挨拶に倣い、ワイングラス片手にお辞儀をする。
 「貴方達、射的はなさいまして?」
 「あ〜少し・・。」
 「そう、それならその通路を真っ直ぐお進みなさい。射的場があるから。」
 女性はそう言って柔らかく奥を指すと、手を振って去っていった。
 なんだったのかよく分からないが・・親切に教えてくれた事に感謝をしつつも指し示された方へと進んでいった。
 進んだ先、そこは少々広い感じの射的場だった。
 若いボーイが1人、所在なさ気にぼうっと突っ立っている。
 「エリアは射的は?」
 「やりますわ。」
 アルベルトが一つだけ頷くと、ボーイから銃を2丁受け取った。
 丁度ハンドガンと同じサイズのそれは、エリアの手には少々大きかったものの、使い勝手の良い大きさだった。
 「エリア、勝負しよっか?」
 「・・アルベルト様には負けませんわ。」
 「ちょっと待った。その“アルベルト様”は止めてくれ・・・。」
 「そうでしたわね。」
 エリアは悪戯っぽく微笑むと、銃を構えた。
 「アルベルトさん。」
 「手加減はしないからねっ。」
 驚くほど大きなブザーが鳴り響き、目の前の板が左右に分かれる。
 その先から出てくる丸い的を次々と撃ち抜いていく・・・。


☆恋人達の楽園

 髪をすく冷たい風に、先ほどまでの熱気を消されながら、エリアは甲板で夜空を見上げていた。
 涼しすぎる風が痛い。
 手すりに身体を預け、輝く星を眺める・・。
 「おまたせ。」
 振り向いた先、手に2つのグラスを持ったアルベルトが穏やかな笑みでエリアへとグラスを差し出す。
 「ありがとうございます。」
 「はい。アルコールは入ってないから。」
 「えぇ。」
 ニッコリと微笑みながらグラスを受け取ると、エリアは再び夜空に視線を彷徨わせた。
 「綺麗。」
 散りばめられた星のキラキラは、空一面を覆っている。
 強い風にもなびく事はなくキラキラと甘い光を振り撒いている。
 「そうですわ。アルベルトさ・・・さん。」
 アルベルト“様”と呼んでしまいそうになるのを、必死に堪える。
 「なに?」
 「あの・・これ・・。」
 エリアは背後から四角い箱をアルベルトに差し出した。
 「くれるの?」
 コクリと頷き、グイと箱をアルベルトに手渡す。
 「あけても良い?」
 「えぇ。」
 アルベルトの指先が、綺麗にかかっているリボンを解き、包み紙を丁寧にはがしていく。
 箱を開けると甘い香りがあたりに溶ける・・・。
 「チョコレート?」
 「えぇ。手作りなんですけれども・・。」
 微笑みながら言いかけたエリアの言葉を遮るように、アルベルトが額に口付けをした。
 「ありがとう。それじゃぁ俺からは・・これ。」
 アルベルトはそっと背後から小さなブーケを取り出した。
 それをエリアの目の前に差し出す。そして上着の内ポケットから小さな箱を取り出した。
 「これは・・。」
 「あけてみて。」
 ゆっくりとリボンを解き・・箱を開ける。
 中から出てきたのは小さなバラとウサギをモチーフにしたブローチだった。
 バラにはクズダイヤが、ウサギの瞳にはルビーがはめ込まれている。
 可愛らしいブローチだった・・・。
 「ありがとうございます。アルベルトさん。」
 どういたしましてと言いたげに微笑むアルベルトの表情は、キラキラとしていた。
 


★水上の楽園?

 「なぁんかなぁ。もっとこう、なんか・・ないのかねぇ?」
 「何かってなんですか?」
 「もっとこうさ、グワっと、グワァァっと!」
 「・・そんなんじゃ分りません。」
 「もぉ、詰まんないのぉ。」
 「つまらなくて結構です。」
 「だって・・。私が折角チケットあげたのに・・。」
 「そもそも、貴方があげたチケットは使ってなかったじゃないですか。」
 「知ってるわよ。お兄ちゃんってば、細かすぎ。」
 フワフワとした小さな少女が、目の前に座る金髪の少年に向かって唇を尖らせる。
 「僕達は、お客様を楽しませることが目的なんですから。」
 「でもさぁ〜。今日はバレンタインなんだし・・。」
 「バレンタインだろうと何だろうと、良いんですよ。これで。」
 少年が席から立ち上がり、そっと少女の髪を撫ぜた。
 「ここの船長は僕ですから。・・副船長?」
 「・・わぁかってるわよぉ。」
 少女はプーっと頬を膨らませると、そっと背中に隠し持っていた白い箱を差し出した。
 「これ・・」
 「あぁ、毎年ありがとうございます。」
 少年は立ち上がると、傍らにおいてあった白い手袋をはめた。
 その出で立ちは、中世ヨーロッパの船長そのものだった・・。
 「それでは、参りましょうか副船長。セイントエアリー号の乗客全ての夢を乗せて・・。」
 「楽園へ、出発ね。」
 少女が立ち上がった瞬間に、電気が消え・・2人の姿は見えなくなった。



 「アルベルトさん、あれ・・。」
 グラス片手にくつろいでいたアルベルトの袖元を、ツイツイとひっぱった。
 「え?」
 指差す先・・水上に浮かぶ“エデン”へのゲート。
 2人の天使が歓迎の音楽を演奏し、ゲートの上には“Welcome to Eden”の文字・・。
 それは海の上に浮かぶ楽園へのゲートだった。
 「光のゲートですわ・・。」
 「・・あんなもの、ここらにあったっけ・・?」
 首をひねるアルベルトを尻目に、セイントエアリー号は滑るように水面を進み・・ライトアップされたエデンへのゲートをくぐりぬけた。
 「わざわざこの為だけに作ったのでしょうか・・?」
 「・・さぁ。」
 エリアが過ぎ去っていくエデンへのゲートをじっと見つめている。
 それはある程度船から離れると、忽然と姿を消した。
 ライトが消えたと言うよりは・・ゲートが閉まったというような印象を受ける。
 ・・そんなわけ・・あるはずないですよね。
 「どうしの?エリア?」
 「あ、なんでもないですわ。ライトが消えたみたいです・・。」
 「そうなんだ。」
 「それにしても、あんなに大きなゲート・・どうやって作ったんでしょうね?海の真ん中ですのに・・。」
 「・・・さぁね。」
 アルベルトは肩をすくめると、グラスをとテーブルに置いた。
 エリアはじっと窓の外を見つめると、流れてゆく水面をじっと見つめていた・・・。


     〈END〉



 ━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

  登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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 【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / クラス】

  0592/エリア スチール/女性/16歳/エスパー

  0552/アルベルト ルール/男性/20歳/エスパー


 ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 この度は『水上の楽園』にご参加いただきましてありがとう御座いました。
 ライターの宮瀬です。
 “バレンタイン”なのに、ホワイトデーの日になってしまい、申し訳ありませんでした。
 エリア様とアルベルト様、2人の視点から別々に執筆させていただきましたが・・如何でしたでしょうか?
 柔らかく暖かな雰囲気を感じていただければと思います。

 それでは、またどこかでお逢いいたしました時はよろしくお願いいたします。
バレンタイン・恋人達の物語2005 -
雨音響希 クリエイターズルームへ
PSYCHO MASTERS アナザー・レポート
2005年03月14日

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