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『新年の宴 』
オーマ・シュヴァルツ1953

「ふっふぅ〜ん♪ふふふふふ〜〜〜ん♪」
 いよいよ、明日。
 そうなれば、日が昇るのも待ち遠しく、オーマ・シュヴァルツは明日朝一番に作り始める料理の仕込みに余念が無かった。
 …年末の忙しい最中、何とか合い間を縫って計画を推し進めて来た。年始の休業中病院に来れない患者用の薬を多めに作り置きしたり、緊急患者用に備えていつでも稼動可能な状態にしておいたり、そう言った本業の合い間に、身内全員の尻を叩きつつ建物中の大掃除。
 中には叩こうとして反撃を食らったりしつつ、そうやってぴかぴかに磨き上げた室内で、今度はオーマが何やらにやにや笑いながらパーティ用の飾り付けを開始する。本当なら年末からきんきらきんに飾り立てたかったのだが、家族の無言の抗議にしぶしぶ止めて、当日思い切り心に思い描いた様を具現化してやろうと心に決めていた。
 年に一度の新年行事。派手にやらなくてどうする、と言うのが彼の主張だったからで、そうやって町のあちこちで呼びかけた結果、結構な人数が集まる事になった。
「これぞ俺様の人徳だな」
 誰もいない部屋でひとり、むん、と胸を張ってみるオーマ。…誰も居ないこそ出来る事でもある。
「そうかい。あんただけの人徳だって言うんなら、ついでにお城の大広間でも頼んで借り切ってみちゃどうだい」
「――そりゃもちろん俺様だけじゃねえよ?ほら良く言うじゃねえか、他人の善意で世の中は成り立ってるって。明日来てくれるっつう人々のために、俺は従者になったつもりで仕えなきゃいけねえよな、うんうん」
「ほーぅ?」
 寝巻きにガウンを引っ掛けた姿のシェラ・シュヴァルツは、にこりと笑って腕を組んだ。
「それはそうだねえ、善意だろうさ。この真夜中に鼻歌を歌うどっかの馬鹿のせいで素敵な夢から目覚めさせられても黙って待ってるっていうのも善意だろうしねえ?」
 ――寝起きだった。
 しかも夜中に起こした原因は、夜ふけてからも尚ごとごとと台所や部屋を移動する自分だったりしたらしい。
「いつまでも子供みたいにはしゃいでないでさっさと寝る事だね。でないと、2度と目を覚まさないくらい深い眠りに誘ってあげなきゃいけない、って言う善意の気持ちがにじみ出て来ちまうからねぇ」
 にじみ出ているのは、きっと殺気と言う名の善意なのだろう。――今始末しておけばきっと世の中のためになるとか言う理由の。
「わわわかった寝る寝る今すぐ寝させていただきます」
 これ以上家族を起こして自分の寿命を縮めさせないよう、ほぼ無音状態で一気に用事を済ませると、内心はともかく穏やかな笑みを浮かべてシェラに微笑みかけ、
「さ、さあ、明日の事を考えてもう寝るか」
 まだほんの少し上ずった声を上げると、にっこりと顔面の筋肉を駆使して笑顔を見せ、シェラの腰に手を回した。

*****

「「「「「「あけましておめでとーーーっ!!」」」」」」
 ぱん!ぱぱぱん!!
 一斉に建物の中に歓声が上がり、それと同時にオーマ特製のクラッカーが打ち鳴らされる。
「って何コレーーーーーーー!?!?」
 更に、悲鳴が上がった。――その原因は、クラッカーに仕込んでいたモノ…客を大歓迎するように事前打ち合わせしておいた霊魂たち。白いもやがぱぁっと広がったかと思うと、思い思いの歓迎ポーズを取った人間の形が次々に浮かび上がり、自分が入っていたクラッカーを打った人間の目の前でにやありと笑ってみせたりしたのだ。
 知らされていない者から見れば、一体何が起こったのかとパニックになったに違いない。
「どうどうどう、静まれ静まれ。つーかなんだそりゃ、お化け屋敷じゃねえんだからそういう歓迎はねえだろ?例えばだな、皆で集まってひとつのでっかい模様を作るとかだな…」
 オーマがそう言うと、一瞬動きの止まった霊魂たちがふわふわと集まり、一枚の白い壁になると、
 『謹賀新年』と墨で一筆書きしたような見事な文字を、その間に空間を空ける事で描き出した。
「そうそう。さてと…まだ全員集まってないようだが、始めちまおうか。すぐ来るだろうしな」
「そうだねえ。これだけ集まると言うのも壮観だね、こう言うのも悪くない」
 血のような赤を基調に、金銀と黒の蝶を縫い込んだ、艶やかな和装――と言っても胸元をぐっとくつろげ、二の腕や背中まで広々と露出させた変則的な晴れ着に着替えたシェラが、オーマがほぼ1人でちまちまと飾りつけや模様替えをした室内を満足そうに見渡す。
 一応パーティ開始時刻は伝えていたが、きっちりと時間を計るつもりもなく、客が2桁を越した時点で始めようと思っていたオーマがぱちん、と指を鳴らす。それが合図だったようで、台所から良い匂いと共に料理の皿や鍋が、具現化された妙に薄っぺらいオーマによって運ばれて来た。
「…厚みが4分の1もありませんよ、このオーマさん」
「うわぁ、新年早々妙なモノを作ったのね」
 真横からその姿を見たアイラス・サーリアスとリース・エルーシアが笑っていいのか呆れていいのか分からないような複雑な表情を見せつつ、テーブルの上のセッティングを手伝って行く。
「取りあえずはこんなもんだな。追加料理は随時作ってくから、食べたいやつ飲みたいやつはどんどん始めてくれ。――おう、忘れてた。酒はそっちの樽な。いい葡萄酒が入ったんで買って来た。あと、ノンアルコールはこっちのピッチャーに入れてある」
「…うむ」
 こっくりと頷いたアルミア・エルミナールが、遠慮なしにがし、と鳥の足を掴んで黙々と食べ始めた。
「それじゃ私もいただきます。兄さん、こっち」
「そう急かすな、分かってるから」
 アルミアの遠慮ない動きに釣られてか、スティラ・クゥ・レイシズと、フィセル・クゥ・レイシズの兄妹が仲良さそうに取り皿によそっていく。
「ああ、じゃあ僕はオーマさんのお手伝いをしますね」
「おう?大丈夫だぞ、俺様1人でも」
「そんな事を言ったらオーマさんが食べる時間が無くなってしまうじゃないですか」
 そうは言っても客だしな…と押し問答を繰り返すオーマの側に、
「今日は招待いただき感謝する」
 すっと寄って来た品の良い小父様と言った風格の男性、ジェントル・萬多朗がにこりと笑って慇懃に腰を折った。
「いやなに、賑やかなのはいい事だからよ。気にするな」
「そうさ、遠慮せずに賑やかにやるのがいいよ。ああオーマ、明けましておめでとう。――そうだ。今日はかくし芸も用意しておけって言ってただろ?そこのギルルイやウチの連中も使って大きいのをやるからさ、希望者の最後にやらせて貰えると嬉しいな」
「おう、任せとけ」
 続けて萬多朗の隣にずいと割り込んで来たC・ユーリが大きな飾りつき海賊帽と、足元にちびっちゃいドラゴンを連れてにこりと笑いかける。が、
「――俺は別に望んだわけじゃねえぞ」
 挨拶よりも並べられた料理が気になるのか、ちらちらとそっちに気を取られている女性、ギルルイが引張ってオーマの前に出されたのが不満なのか、唇を歪めてそう言った。
「わはは、そう言わず楽しめるだけ楽しんでくれ。こんな事は滅多に無いからよ」
 じゃあなーと料理テーブルに3人を送り出した先で、挨拶をしようとしているのか緊張した面持ちの少年ソル・K・レオンハートと、その隣で何か話し掛けているセフィスに気付いてちょいちょいと手招きした。ソルは肩に大きな猛禽類に見える鳥を止まらせており、近寄って行くとオーマの隣にアイラスが居るのに気付いて少し表情を緩めた。
「ありがとう…俺も誘ってくれて」
「いいって事よ。新年の祝いは楽しい方がいいだろ?」
「そうよ。――ゆっくり楽しみましょ?」
 パーティの中に中々入り込もうとしなかった少年に気付いたセフィスが、自分の食事もそこそこにソルの側に来て話し掛けていたようで、
「セフィスも楽しんでくれよ。ちぃっとばかし弾けても多めに見るぞ」
「――はいはい、気が向いたらそうするわ。ああそうそう、オーマ、これはお土産。良かったら飲んで」
「そんな気を使わねぇでも良かったのに。だが、ありがたく戴いておこう。大事に飲ませてもらうよ」
 決して安くはなかったであろう酒瓶を嬉しそうに受け取るオーマ。そして隣にいるソルへ笑いかけると、
「楽しみ方は人それぞれだが、ここに今日集まった連中は皆気のいい奴らばかりさ。そこのセフィスにしても見た目は無愛想で怖く見えるが結構世話好きだしな」
「はいはい。けれど忘れないでね、ソル。実はそう言う事を言っているオーマが一番楽しみたがりな世話焼きなのよ。さ、あっちに行きましょう。皆待ってるわ」
 セフィスがふっ、と小さく笑うと、ソルを知り合いの元へと連れて行く。
「ねーねーオーちゃん、夫婦喧嘩はまだ?ボク楽しみにして来たんだけどなぁ〜?」
 横を向いていた隙にずし、とオーマの腕にしがみ付いて来たのは、ヴィネシュア・ソルラウル。パーティを勘違いしているのか、それとも分かってて言っているのか…悪戯っぽい笑みを浮かべる所を見ると後者だろう。
「夫婦喧嘩と言うのはなぁ、人前で見せるものじゃねえんだよ。ほれ、降りて皆と楽しんで来い」
「はぁ〜い」
「おおいヴィネシア、こっちこっち〜。葡萄酒なかなかいい味だよ〜」
「うんっ、今行くよぉ」
 向こうで樽の側に陣取り、かぱかぱとカップを空けている狂歌、それにクレシュ・ラダが楽しげに肩を組んでいるのを見て、ヴィネシュアも面白そうと感じたらしい。ぴょこんとオーマから降り立って、たたた、と駆けて行った。
「あの、オーマさん」
 アイラスが何かに気付いたのか、やや潜めた声でオーマに話し掛ける。
「ん?どした――っと、誰か来たな」
 オーマの目が扉に向いた瞬間、ばたんと大きく扉が開いて、最後の客である楓花が飛び込んで来た。
「遅れてごめんなのね〜。はひ〜」
 走って来たのがありありと分かる真赤な顔に肩で息をする様子にオーマがにやりと笑い、
「大丈夫だぞ楓花、そんなに急がなくても料理はなくなりゃしねえよ」
 まだ始まったばかりだしな、と一歩彼女に近づいて、落ち着くようにぽんぽんと背を軽く叩いた。
「ありがと、なのね、オーマ」
 息切れする言葉を止めてゆっくりゆっくり何度か呼吸し、
「お料理いっぱいなのね〜!」
 復活した瞬間に、だだっと料理が並ぶテーブルへ駆け出して行った。
「あのう。――オーマさん…」
「おう、そうだった。どうした、アイラス?」
 ようやくすぐ隣に人がいなくなったのを見て、再び話し掛けてくるアイラスに不思議そうな顔をするオーマ。
「――シェラさんが先程から厨房に入ったまま出て来ないんですけれど」
 その言葉に、オーマの笑顔が一瞬で凍りついた。
「ししししまったアイツを中に入れないように次々料理作ってくつもりだったのに挨拶にかまけて忘れてたっっ!どどどどうしようアイラス」
「僕もその事が気がかりで言おうと思っていたんですけれど、忙しそうだったのでつい。…それに、言った所で挨拶している人を置いて厨房に飛んで行くなんて事、オーマさんには出来ないでしょう?」
「そりゃそうだが…ま、参ったな…」
 片や、料理、酒を手に談笑する人々。片や、何をしているのか分からない、真っ黒なオーラが漂って来そうな台所。
「今更行っても手遅れだろうしかと言って黙ってると何が出てくるかわからねえしああああ」
 オーマが頭を抱えるのを見て、困りましたね、と呟いたアイラスも、今から厨房に入る勇気は無く――後で料理の方手伝いますよ、と言い切って美味しそうな料理が並ぶテーブルへと身を翻した。

 ――その日最大の恐怖は、それから暫くして訪れた。

 深いボウル皿になみなみと注がれた、『何か』。
 気のせいか、吸盤たっぷりの真赤な足がうねうねと蠢いているようにさえ見える。ほかほか湯気が立っているにも関わらず、きちんと調理した形跡が見えるにも関わらず生存している食材たちは全てひとつの深皿に乗せられ、そして無理やり席に付かされたオーマの目の前にどんと置かれていた。
 心持ちオーマから皆が遠ざかっているのも無理は無いだろう。今回は珍しく、悪寒を発するような匂いは無かったものの――と言うか、まるで匂いがしないのが不気味としか言いようが無い。
「…あれ、料理?」
「さあ…」
 ぼそぼそと語る声がやけにくっきりはっきりオーマの耳に届く。それだけ神経を研ぎ澄ませている証拠なのだろうが。
「なあ。これ――何だ?」
「新鮮な食材だよ。それが何か?」
 新鮮にも程があると思う。が、その言葉をぐっと飲み込んで、青と黄色と赤の色が混ざらずにまだら模様になっているスープへスプーンを浸したその瞬間。
 にゅるっ、とスープの中に入っていた食材たちが、一斉にわらわらとスプーンの上によじ登り始めた。
「流石…レベルアップしてますね」
「つーかホントに料理かあれ!?」
 最早顔面蒼白なオーマだが、スプーンを伝って手に登って来ようとする食材たちに蹂躙されるよりはマシかとぐっと目を閉じて口の中に放り込み、がしがしと歯で噛み砕いた。
 ――数分後。
 魂の抜けた顔でテーブルに突っ伏すオーマの姿があり。…皿の中は見事に空になっていた。
「大丈夫なのか、あれ…」
 ソルが周りにいる者に訊ねてみるが、
「大丈夫じゃないかな?彼、いろんな意味で丈夫だしねぇ。――お、美味いかい、たまきち?」
 くいくいと裾を引張って次の料理を催促するちびドラゴンに笑顔を向けて、ユーリがたまきちの分の取り皿を持ち上げる。
「丈夫じゃなきゃ、あんなげてもの食えねえよ。ああっ、その料理俺が食おうと思ってたんだぞ、ペットの餌にすんなよ!」
 楽しみに取っておいていたらしい料理をたまきちの更に乗せられたギルルイが悔しげに声を上げ。
「まあ…確かに、我々では無理と思えるような事でも行っているようだしな。それにしても不憫な事だ」
 萬多朗が痛ましい目でオーマと、上機嫌なシェラを見て合掌した。
「どんな味なんだろう。気にならない?」
 ヴィネシュアがカップの葡萄酒をちびちびやりながら、すっかり陽気に出来上がっている狂歌とラダへ顔を向けるも、
「俺はやだな。第一あれはオーマ専用の料理だろ?なんか俺の身体には合わない気がする」
「ワタシも食べたいとは思わないな。――食べた人の腹の中でどういう動きをするのか開いてみたい気はするけどね」
 にこにこ笑いながらおつまみのポテトフライをぽいと口に運ぶ。
「そっかぁ。――うぅん、残念。ボクもシェラちゃんの手料理を食べてみたいとは思わないけど…どんな味なんだろうなぁ」
 その辺りは興味の範疇らしいが、自分の身体を張るのは嫌だとあっさり諦め、葡萄酒のカップを片手にぶらぶらと他の人が居る場所へと向かった。その先には、きちんと躾けられたのか綺麗な身のこなしで料理を摘む2人がいる。
「夫婦って大変なんですね」
「――どうだろう。大変の意味が違うと思うぞ。彼らはきっと特別なんだよ」
「そうなんでしょうか?噂を聞けば、大なり小なり悩みを抱えている夫婦がいますけれど」
「だから、大変の桁が違うんだって」
 途中からオーマの食事風景に目を奪われ、自分たちの食事を再開したスティラとフィセル。その隣では黙々とアルミアが自分の取り皿に料理を盛り付けており、オーマに降りかかった悲劇には興味が無さそうで。
「これもあれもそれも美味しいのね〜♪」
 夢中で甘いものから塩の効いたものまで実に嬉しそうに頬張る楓花は、オーマが倒れている事にさえ気付いていないようだった。
「大丈夫?」
 酒ではなく、ジュースを汲んで持って来たセフィスがオーマに声をかけ、テーブルの上にジュースを置く。
「あ、無理しないで下さいね。僕、調理場に下がっていますから」
「ごめんねー、あたしもお料理手伝えればいいんだけど。後片付けは任せてよね♪」
 一瞬手伝いに行こうかと動いたリースだったが、自分の料理の腕を思い出し、そしてあれだけの料理を作りながらも自信満々なシェラにちょっぴり憧れの視線を向けつつ、色とりどりの料理に手を伸ばしていた。
「そういえば、あのお料理…味見とかしてるの?」
「味見?何故?」
 思い切り腕を振るった事で上機嫌なシェラが不思議そうな声を上げる。ぱちぱち、とリースが瞬きして、
「だってほら…お料理がどんな味になったのか、気になるじゃない」
「そうだねえ」
 んー、とシェラが軽く首をかしげ、
「試食もメインも全部オーマにやってもらってたね、そういえば」
 とんでもない事を呟いた。
 シェラの舌がおかしいわけではない事は、オーマの作った数々の料理を美味しそうに食べている事でも分かる。が、実際に調理をする際に味見をしながら作っている訳ではないと言うのを知ってびっくりする。
 ――とは言え。普通の食材を使って普通に調理すれば、問題があるのは味のみ。
 シェラが作った料理は一体どこでどうなってああなるのか、人間業とは思えない出来になるのだった。普通の食材を使ってさえ、食べた者を地獄へ突き落とすのだから。
 やがて、白目を剥いたままのオーマにも飽きたか、次第にパーティは賑やかな雰囲気を取り戻して行った。

「――はっ!こ、ここは…」
「おや。随分ゆっくり寝てたんだね」
 霞んだ目の前に揺らいで見える姿は、声は――シェラのもの。
「昇天しちまったかと思ったが、地獄に来ちまったみたいだな…」
 まだくらくらする頭を手で押さえつつ、ゆっくりと頭を振るオーマ。
 その喉元に、ひやりとする刃が突きつけられた。
「…一度、本気で行ってみるかい?」
 ぞくりと底冷えのする声で、囁かれながら。

*****

「さあーて、いよいよ隠し芸大会の始まりだよ」
 何人かに耳打ちされ、司会の立場に祭り上げられたユーリが、まだ残っている料理をちょっぴり名残惜しそうに見詰めながら用意された台の上に立つ。一緒に台の上に上がったたまきちは、誰かが作ったのか真赤な蝶ネクタイを胸元に煌かせてどこか満足そうに見えた。
「えーと…最初は」
「あたしだよ。まあエントリーしたわけじゃなく、余興ってトコだけどね。こんな風に気を張らずにやっておくれって事で――用意はいいかい?」
 もごもごむがむが、何か呻き声を上げつつもがいているように見える大きな布をばっと跳ね上げると、そこには猿轡を噛まされ、大きな木枠に磔にされながら必死で逃げようとしているオーマの姿があった。
 ――さっき、意識が戻ったオーマの姿が見えないと言う話があり、そのせいでユーリが司会者に抜擢されたのだったが、まさかこんな所にいようとは。
「さあ、目に止められるものなら見て御覧――死神さえも逃げ出す鎌捌きをね――」
 いつもよりも大分露出の多いシェラの手に握られているのは、彼女愛用の大鎌。常人でも両手で持つのが精一杯に見えるその鎌を、片手でくるくるっと回し、ぱし、ともう片方の手で受け止め。
 にやり。
 一瞬走った殺気と共に、幾重にも光が見えて、次の瞬間、両手足を何重にも戒めていた縄がぷちぷちぷちと弾け飛び、次いで猿轡がオーマの口の中にある部分を残してぱぁっと細かく切り刻まれて散った。
 どさりとオーマが木枠から落とされ、ふうううっ、と全身ぐっしょり汗を掻きながら息を付く。
「服を一枚一枚切り刻んでも良かったんだけどねぇ。まあ、若い子の前でそう言う事はしちゃいけないと思うし、今日はこの辺にしておいてあげるよ」
 くるくるん、と気が済んだかまた片手で鎌を回転させ、思わず拍手が巻き起こった皆へ深々と礼をした。
「これはまた見事な切り口だねぇ。こんな芸達者な奥さんを貰えて羨ましいと思うよー♪というわけで次の人ー」
 消え入りそうなちょっと待てと言う声はあっさり他の拍手や歓声にかき消さた。
「ではいちばーん。リース・エルーシア行きまーす♪」
 ユーリが降りた台の上に上がったリースが、拍手の収まるのを待ってすうっと息を吸う。
 そして、小鳥のさえずりにも似た可愛らしい歌声が、晴れ晴れとした笑顔と共に広がって行った。
 それは、喜びの歌。新しい年を迎え、次に訪れる季節――春を歓迎する歌声。
 にこりとその歌に聞き惚れる皆へにこりと笑いかける度に、ぽうん、と何かが弾ける小さな音が皆の耳に届いた。
「これは素晴らしい歌声だね〜。なあ、たまきち?」
 ユーリに訊ねられて、たまきちが賛成と言う意味なのか何度も口を開け閉めする。
「ありがと、たまきち♪」
 にっこりと嬉しそうに笑ったリースは、台を降りてよしよしとたまきちの頭を撫で回した。
「言葉に『意味』を乗せるのか…なるほどな」
 まだ手に大盛りの皿を持ちながら、リースの能力をそれと悟ったアルミアがこくこくっともう片方の手に持つグラスを傾け、
「あ…見て下さい、外の蕾がいくつか花開いています」
 スティラが窓の外に見える街路樹にぽつぽつと見える淡い色合いの花を見つけ、
「――なるほど。彼女の声に誘われたんだね」
 その隣のフィセルや、狂歌たちがぞろぞろと窓際に行き、おおー、とどよめきを上げた。
「いきなり凄いのが出てしまいましたね。――さてそれでは僕の番ですか」
 台の上は遠慮して、その隣に立ったアイラスは、用意してきたらしく懐からごそりと皮袋を取り出した。そこからアイラスの手のひらにごろんと転がり出たのは、大きなサファイアの塊。
「わあ、綺麗〜。どうするの?これを磨き上げるとかじゃないよね?」
 一気に女性陣の目を奪ったその輝きを確かめるように、手の平から明かりに透かしてじぃっと何かを見詰めるアイラス。
「――いえ。そういうことじゃありませんよ。そうですね…今日は丁度8人いらしているようですし、丁度良いです」
 ことりと静かに宝石を床に置くと、ゆっくりと呼吸を整えて行く。
「え…8人で丁度いいって、まさか」
 囁き交わされる声は、既に彼の耳に届いていない。研ぎ澄まされた神経はただひとつ、静かな輝きを見せるサファイアの、とある一角に注がれていた。
「――はあっ!!」
 気合一閃。
 宝石の上に手を叩きつけたアイラスは、そうしてゆっくりと身体を起こすと、もう一度ゆるやかな呼吸を繰り返した。
「これでどうにかなったの?」
 不思議そうな顔をするヴィネシュア…その目の前で、ぴし、と宝石にひびが入る。
 それは、何かの線をなぞるように、ぴしぴしと微かな音を立てながら広がって行き、そしてぱきん、と高い音を立てていくつかの破片に割れた。
「ひとつふたつ…ああ良かった、ちゃんと8つに割れています。どうぞ皆さん、差し上げますよ」
 淡いブルーの輝きを見せる石をひとつひとつ拾い集めて、にこりと微笑んだアイラスが女性陣にひとつひとつ配って行く。
「…俺にもくれんの?」
「ええ。いりませんか?」
 ギルルイはちらちらと目を向ける割には、興味が無いような素振りを見せている。くす、と小さく笑ったアイラスが仕方ないですね、他の方に…とくるっと踵を返そうとした瞬間、がし、と肩を掴まれていた。
「も、貰ってやるよ。記念品なんだしな、うん」
 アイラスと視線を合わせようとしないギルルイだったが、しっかりと手はアイラスに差し出されていた。
「…次は俺か」
 ふ、と渋い笑みを浮かべた狂歌が、用意して来たギターを取り出して軽く爪弾き、続けて一気に掻き鳴らす。
「おお、いい感じいい感じ。じゃあ行くよー」
 狂歌もまた良い声だったが、最近始めたギターの音色もなかなかのものだった。陽気な歌を用意してきたようで、歌に合わせ掻き鳴らされる曲は陽気でリズミカルなものになっていた。
 そして、気付けば――半数以上がその歌に合わせ、一緒になって歌っていた。出番を終えたリースも含め。
「に、兄さん、やっぱり私も出ます!」
 その雰囲気にさっきからずっともじもじしていたスティラがフィセルの制止を振り切って台の上に飛び乗り、自分たちの一族に伝わる歌と言うものを披露する。
「いいねえ、手伝うよ」
 まだギターを手放していなかった狂歌が、メロディを変更して即興でスティラの声や、歌の特徴に合わせ演奏を重ねていく。最初はそれにびっくりしたものの、狂歌が手伝ってくれていると言う事が分かった途端スティラはぱあっと表情を輝かせ、朗々と歌い上げた。

*****

 次に隠し芸を披露したのはヴィネシュア。
「ボク自身の芸はお祝い事に向いてないからねー、こっちにしてみたよ。おいでジエル」
 ヴィネシュアのフードからおずおずと出て来たのは、真っ白い雪の精霊。きゅい、と小さな声で鳴きつつ、ぴかーと角を輝かせてみせる。…ジエルの場合は芸と言えるかどうか微妙なものだったが、なんだか人見知りするその不思議な生き物が気に入ったようで、そう言った事は不問に付されていた。
 そして、ラダ。――いつもメスを持ち歩いているのか、ひょいひょいと切れ味の鋭そうなそれを10本ばかり懐から出すと、それを事も無げに両手でひょいひょいとさばきながら、御手玉を見せて楽しませていた。
「あっと」
 手が滑ったか、まだ本調子ではないオーマの顔のすぐ側の壁にさくっとそれが刺さるまでは。
「ああ、失敗失敗。もっと中心を狙わないと駄目だな」
「中心を狙われたら俺様だいぴんちだぞ〜〜」
 へろへろと抗議しつつ、オーマは再びテーブルに突っ伏した。
 萬多朗の芸は既に芸術の域に達していた。何しろ、今日この場に集まった自分を含めた16人全員を集合させ、その様子をパッチワークで、しかも10分以内に仕上げてみせたのだから。もちろん、萬多朗は自分の姿もきちんと縫い込む事を忘れずに、完成した時には集合状態から解放された喜びとその見事な出来に盛大な拍手と歓声が上がった。
 そして、テーブルの上にある料理の半分は食べ尽くしたのではないかと思うほど一心に食べ続けていたアルミアがついと立ち上がって、手にいつの間にか持っていた2振りの剣で中央に進み…そして、何の迷いも無く踊り始めた。
 両手に持つ剣が、アルミアが舞う度にきらきらと輝いて幻想的な雰囲気を醸し出してくれる。まさに、剣舞とは、と問われた時の答えのひとつがここにあった。
 そして――
「待たせたねー。今から寸劇を行うよ、楽しんでね」
「ういっす!」
「さあやろうじゃねえか野郎ども!!いいっくぜええええ!!」
 料理の他にも随分と酒を飲んだらしいギルルイが、すっかり盛り上がって高笑いしながら舞台の上に立っていた。
「これはまた――まあいい。楽しんでみようか」
 ユーリは海賊で敵役、ギルルイは正義の味方で主人公――そんな簡単な説明が付いて、やや棒読みの部下たちの演技や、決め台詞を言いながら剣を振り回すシーンでギルルイが躓いて、敵役であるユーリに抱きとめられると言ったハプニングが続いたものの、後半テンポ良く繰り出される剣技は息も付かせぬ出来で、楓花などは御芝居だと分かっていてもはらはらどきどきと必死に目で2人の動きを追い続けていた。
 更に、クライマックスに差し掛かった時には舞台袖から、何が楽しいのかくすくす笑いながら座り込んでいたソルが、舞台天井に向けて炎の鳥を2羽ばあっっと飛ばし、天井間際で花火のように弾けさせる、そんな芸…と言うより演出になってしまった赤い輝きがあったお陰で、演技が終了しても暫くの間拍手が鳴り止む事は無かった。

*****

「さぁてと。完全復活したところで、今回の隠し芸大会優勝者発表に移ろうか」
 見た目にも声の調子でも復活を伺わせるオーマが、むうぅんと無意味に胸を張りながら腕組みをして宣言する。
「どれも見事な芸だったので優劣付けるのはちぃと気が引けるんだが――ユーリ。それにギルルイ…後は、ソル」
「え?俺も?」
 薄らと赤い頬は酒に酔っているのか、それでも声をかけられて目をぱちくりさせるソル。
「クライマックスを盛り上げたのはおまえさんの功績だろ?ありゃあ綺麗だったぞ」
「…そんなの、望めば望んだだけ出すのに」
 言いながら今も手の平を上に上げて炎を生み出そうとするのを、側で酔い覚ましの介抱をしていたセフィスとシェラがそっと止める。
「おまえさんたちに用意してた品は、これだ」
 3人もいるとは考えていなかったのだろう。だが、それでも多いくらいだったかもしれない。
 バケツをひっくり返したような大きさの、みっちり中身の詰まったフルーツケーキ。食べきるだけで何日掛かるかといった大きさのそれは、綺麗に3等分されてラッピングも済まされていた。
「おお。ありがたいね〜。これなら連中のおやつにもなる」
 ユーリがそのずっしりした重さのケーキを持ち上げ、舞台の片付けを行っている大勢の手下を見て更に嬉しそうな顔をし、
「…俺も、やるよ。俺の分は一部でいい。どうせ食べきれないんだ」
 帰る場所は一緒なのだからとユーリの腕に自分の分もどさりと投げて、ギルルイが照れたようにそっぽを向く。
「あ…ありがとう。まさか俺も貰えるなんて思わなかった」
「良かったじゃないの、ソルちゃん♪」
 ヴィネシュアがにっこりと話し掛け、リースも近くでうんうんと頷く。
「もしソルちゃんが1人で優勝してたら、これ3つ分だったんだしねぇ?」
「………う」
 今もずっしり重いそれを持ち、1人で勝っていた時の事を考えてちょっぴり引きつった表情を浮かべるソル。その目の前ににっこりと笑ったシェラが立ち、
「おめでとう」
 ぎゅーっと抱擁し、その額に柔らかな唇を押し付けた。――自分の身に何が起こったのか分からないままきょろきょろと見回すソルの目に、ユーリとギルルイにも同じ行為を嬉しそうに繰り返すシェラの姿が映った。
「彼女の故郷の風習なんだってさ」
 おめでたいことがあると、祝う人物を皆で抱きしめてキスを降らせる…そう言う風習があると聞いた事があると狂歌がソルの後ろに立って言う。その手には、何杯目かの酒のカップ。
「そして俺は――取りあえず目の前の人間に抱きつく。こうやって〜〜」
 むぎゅー。
「わ、わあああっっ」
 他にも被害者?を出したらしく、きゃははは、と笑いながらおんぶだっこお化けのように背中にしがみ付かれて頼りない足元で逃げ惑うソルを、気の毒そうな目で見詰めるラダやアイラス、そして楓花の姿があった。
「側に寄らなくて良かった」
 アルミアがしみじみ呟き、
「――寄らなかったのだが抱き付かれた我輩はどうすれば?」
 ついさっきまでべたべたとスキンシップを繰り返した挙句に髪をぐしゃぐしゃにされたり服のボタンを外されかけた萬多朗が、威厳を何とか保ちつつ自分の髪を綺麗に撫で付け直す。
「不運と言う事であろうな。それは避けられない運命だったのだろう」
 さらっと言いつつ、アルミアはまだ飲む気なのか樽の前へとカップ片手に歩いて行った。
「ねえ兄さん、私もああ言う事やってみたいです」
「だ、だめだだめだだめだ!そんな、誰彼構わず抱きつくなど」
 シェラの柔らかな抱擁を羨ましそうに見ていたスティラがフィセルへそう訴えかけるも、あっさりと…いや、むきになって却下され、しゅんとする。
「どうしたんだい?」
 そこへ、スティラの視線に気付いたのか、微笑を浮かべながらシェラが歩いてきて、にこりと笑うと手を広げてスティラをぎゅっと抱きしめた。わ、わ、とシェラにすっぽり包まれながら、スティラがほわっと幸せそうな微笑を浮かべる。
「――あんたはどう?」
 スティラはいい子だねー、と頭を撫で撫でしながらシェラがフィセルに問い掛けるが、フィセルは顔を真赤にしてぶんぶんと首を横に振った。
「楓花もー♪」
「いいとも、こっちにおいで」
 何だか一部抱擁大会が始まった気もするが、こうしてパーティは滞りなく済み、暑いくらいに暖まった皆が、
「ああっ、雪なのね〜♪」
 外にいつの間にか積もっていた真っ白い雪に楓花が目を輝かせて飛んで行くのに釣られ、ぞろぞろと外へ出て行った。
 雪だるまを作るもの、雪合戦に興じるもの――スティラとフィセルの兄妹に間違って雪玉をぶつけて楓花がぺこぺこ謝ったり、
「――私に玉をぶつけるなんて許せない」
 流れ玉に当たって表情が一変したセフィスが実践さながらに雪濠を掘り障害物を使ってその場に居る皆へ雪玉を素早く投げて皆を巻き込んでみたり。
 また、そんな最中不意に「暑い」と言い出してアルミアが脱ぎ始めたのを、慌てて側にいた数人が押し留めたり。
 ――雪の中でも汗をかくくらい動き回った後で、オーマが各人の顔を押し絵にした羽子板と、妙に弾みの良い羽根、雪が舞う中でも何故か重力に逆らって上がる凧を具現化させ、アイラスに「何かちょっと違うような」と首を傾げさせた。
 羽根突きのルールなど分かるものはアイラスくらいしかいない。と言う事でアイラスがざっと教えたのだが、気付けば5対5の団体戦になっていたりした。使う羽根も2つ3つ使い、最後には誰が敵で誰が味方か分からない、とにかく自分の手元に落ちて来た羽根を誰かに打ち上げれば良いと言う状況になって、それでもわいわいきゃあきゃあ言いながら羽根突きを楽しむ。
 上手く羽根を返す事が出来なくて楓花がいじけ、他の者に慰められると言う一面もあったものの、おおむね皆楽しそうで。残った人たちはその人たちで凧を揚げながら、勝手に上空で戦闘を開始する凧たちに声援を送っていた。

*****

「お…もうこんな時間か」
 途中から更に独自ルールとかで雪合戦の雪も羽子板で打ち返すと言う何がなんだか、と言った状況になった皆は一様に雪まみれになっていた。もちろん、薄暗くなって来た空を眺めたオーマも例外ではない。
「ようーし、これ以上雪被ってたら風邪引いちまうぞ。今日のフィナーレと行こう」
「これから何かするんですか?」
 スティラが首をかしげ、オーマがにやりと笑ってああ、と頷く。
「とりあえず街の外に出るか。このままじゃ大きくなれねえしな」
 簡単に雪を払ってぞろぞろと街の外を歩いて行く皆は、これから夕食の支度に勤しむ街の者から見れば少々奇妙な一行に見えたかもしれない。特に共通点の無さそうな一団が、揃いも揃って雪まみれになって歩いているのだから。
「この辺だな。ちぃと待て、今奴らも呼んでるから」
 1人離れた位置に行ったオーマは、光の加減のせいか銀の髪になっているように見え、そこから一気に巨獣化すると空に向かって吼え声を上げる。
 びりびりと空気が震え…そして、この真冬の草原だと言うのに、急に暖かくなったような気がした。
「あ、あれ」
 その声を上げたのは誰だっただろうか。オーマの言う『奴ら』が誰だったのか、空を見上げれば嫌でも分かる。
「聖獣――勢揃いだな」
『さあ行くぞ。ソーンぐるり一巡りの旅だ、背中に乗れ』
「俺はパス。――自分で飛ぶよ」
 にこりと嬉しそうに笑う狂歌の言葉を聞いたスティラが、物言いたげな目で兄をじぃぃぃぃっと見詰め、フィセルが苦笑しつつ、
「まあ――今日は祝いの日だからな。いいよ。久しぶりに飛ぼう」
「はいっ」
 そう言った言葉に、スティラが嬉しそうにこっくりと頷き、ぞろぞろとオーマの背に乗る皆が見守る中、2人の姿かたちがみるみるうちに変貌し…そして、見事な雌雄の竜がそこにいた。
「きれーいなの♪」
「そうだね〜。スティラちゃんに乗せてもらっても良かったかも」
 空を飛ぶ者たちが目を見交わして合図をし、ふわりと何の抵抗も無く浮かび上がると、昼と夜が溶け合う直前のソーンの中を悠々と飛び始めた。
 オーマの力か、それとも側で一緒に飛んでいる聖獣たちの力なのか、風の抵抗どころか寒さすら感じない。いや、むしろ春の日差しの中のようにぽかぽかと暖かく、空を眺めたりオーマの毛の中に潜って布団代わりにしてみたり、飽きもせず、刻々と変化するソーンの風景に見惚れたりと思い思いの姿勢で遊覧飛行を楽しむ皆。
 時々はオーマの両脇を飛ぶ狂歌や竜の兄妹がその様子を眺め、目を細める。
『さあて見ろよ、これが新年の――エルザードへの俺からの祝いだ』
 わあ……。
 次第に夜が満ちてくる中、星空と、月と…晴れ渡った空いっぱいに広がって行くオーロラ。
 オーマが飛び去る先からゆらゆらと光のカーテンが現れ、それは聖都に限らずソーンの村々からも眺める事が出来た程、巨大で幻想的な風景だった。
 オーロラは一晩中、日の光が差し込んで溶けて行くまで続き、そして、オーロラを運んだ巨大な獣と、その側に寄り添う聖獣たちの噂が広まったのはその翌朝の事だった。
 ――吉兆と…今年の豊作を、豊漁を約束するものだと。聖獣が自ら祝福してくれたのだ、と。


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┏┫■■■■■■■■■登場人物表■■■■■■■■■┣┓
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┗━┛★あけましておめでとうPCパーティノベル★┗━┛

【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【1953/オーマ・シュヴァルツ  /男性/39/医者兼ヴァンサー(ガンナー)腹黒副業有り】

【1125/リース・エルーシア   /女性/17/言霊師                 】
【1341/スティラ・クゥ・レイシズ/女性/18/遠視師                 】
【1378/フィセル・クゥ・レイシズ/男性/22/魔法剣士                】
【1649/アイラス・サーリアス  /男性/19/フィズィクル・アディプト        】
【1731/セフィス        /女性/18/竜騎士                 】
【1910/狂歌          /男性/22/楽師                  】
【2005/楓花          /女性/20/ベビィー叱咤ー?            】
【2080/シェラ・シュヴァルツ  /女性/29/特務捜査官&地獄の番犬(オーマ談)   】
【2154/ヴィネシュア・ソルラウル/女性/15/情報屋                 】
【2315/クレシュ・ラダ     /男性/26/医者                  】
【2327/ジェントル・萬多朗   /男性/48/伝説のオーダーメイド服職人       】
【2467/C・ユーリ       /男性/25/海賊船長                】
【2474/ギルルイ        /女性/18/海賊/賞金稼ぎ             】
【2517/ソル・K・レオンハート /男性/14/元殺し屋                】
【2524/アルミア・エルミナール /女性/24/ゴーストナイト             】


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■         ライター通信          ■
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長々とお待たせいたしました。お正月パーティノベルをお届けします。
私の書いたパーティノベルとして初の16人登場です。終わった今はぐったり気味です(笑)
そしてやや長めの仕上がりになってしまいました。
こんなにも大勢参加していただけて、ライター冥利に尽きるとしか言いようがありません。本当に皆様ありがとうございました。
楽しんでいただければ幸いです。

尚、登場人物の並びは主宰PCのみトップに置き、後は番号順に並んでおります。ご了承下さい。

それでは、遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。今年が皆様にとって良い年でありますよう、願っております。
今年も宜しくお願いいたします。
間垣久実
あけましておめでとうパーティノベル・2005 -
間垣久実 クリエイターズルームへ
聖獣界ソーン
2005年02月09日

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