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『ごちゃ混ぜクリスマスパーティ! 』
牛崎・潤(w3d085)
●オープニング【0】
 2004年12月24日――某所レンタルスペース。
「招待状をもらって来てみたら……か」
 そこへ足を踏み入れた草間武彦は、広い会場をゆっくりと見回して小さな溜息を吐いた。草間の後ろには、ケーキの箱を抱えた草間零の姿もあった。
「あっ、草間さん! 零ちゃん! こっちこっちーっ☆」
 草間と零の姿を見付けた瀬名雫が、2人を手招きする。雫のそばにはチェックのテーブルクロスが敷かれた大きなテーブルがあった。
「もうちょっといい場所はなかったのか? ……招待されてる立場であれだが」
「えー? 場所だけ借りて、料理とか持ち込みした方がお店でパーティするより安上がりなんだよ?」
 草間の言葉にすぐに答える雫。確かに、この時期に下手に店に予約入れようものなら、クリスマス料金で結構な値段となることだろう。雫の判断は悪くはないのかもしれない。
 だが、草間はまだ納得ゆかないのか、こうつぶやいた。
「せめてグループごとにならなかったのか?」
「こうしたから安いんだよ?」
 雫がさらりと切り返した。さて、この会話はどういう意味なのか。
 その時、複数の場所から会話が聞こえてきた。

「美味しいにゃーっ☆」
「マオちゃん、ダメ! まだ皆揃ってないのに……」
「……ケーキに指の跡がぁ……」
 見れば3人のメイドさんの姿がある。美味しそうに指先を舐めている猫耳娘メイドさん、それを窘めるエルフ娘メイドさん、ケーキの前でおろおろとしている眼鏡っ娘メイドさんの3人だ。
「ユウミちゃん、カオルちゃん、ごめんですにゃー。美味しそうだったから、つい手が出ちゃったのですにゃー」
 猫耳娘メイドさんのマオが、エルフ娘メイドさんのユウミと眼鏡っ娘メイドさんのカオルにぺこんと頭を下げた。
「ケーキはもうつまみ食いしませんのにゃー。代わりに、七面鳥を……」
「だからマオちゃん、それもダメ!」
「皆さん揃ってからにしましょ……」
 七面鳥に手を出そうとしていたマオを、ユウミとカオルが慌てて止めていた……。

「おお、可愛いメイドさんが3人も居るのう。どれ、ちょっと挨拶に……」
「ドク! そんな暇があったら、お料理を並べるの手伝ってくださいっ!!」
 白衣に丸い眼鏡のサングラスをかけた青のモヒカン頭の初老の男性を、中華系だろうか切れ長の目をした小柄な少女がやや怒ったような口調で呼び止めていた。
「何じゃ、メイファン。わしはただ、お隣のテーブルに挨拶に行こうと」
「それでまたお尻を触って殴られるんですか?」
 白い顎髭を撫でながら言った初老の男性・ドクに対し、小柄な少女メイファン・テイリーは大きな溜息を吐いてから言った。
「かっかっか、他愛ないスキンシップじゃよ」
「……いつか問答無用で撃たれるんじゃないですか、ドク」

 つまりあれだ、大きな1部屋を複数のグループで共有使用しているという訳だ。安くつくのも当然の話であった。
「おいおい、奥にも『予約席』ってテーブルがあるじゃないか。まだ増えるのか?」
 目ざとく見付ける草間。奥の方にはまだ誰の姿もないテーブルがいくつか用意されている。なのでこれ以上グループが増えるかもしれないし、増えないかもしれない。
「そういえば、他にも招待状は出したんですか?」
 零がふと思い出したように雫に尋ねた。
「うんっ☆ 麗香さんや三下さん、それから美紅さんとか……他に色々とねっ」
 元気よく答える雫。月刊アトラスの碇麗香や三下忠雄、桜桃署の刑事である月島美紅などにも招待状を出したらしい。
「総勢何人になるんだ、これは?」
 ぼそっと草間がつぶやいた。はっきり言って、人数は全く読めない。
 ごった煮状態のクリスマスパーティ、果たしてどのように転がってゆくのだろうか?

●集う招待客【1】
「何だか……クリスマスというより、忘年会よね」
 会場に足を踏み入れるなりぐるりと見回し、綾和泉汐耶が息を吐き出すようにつぶやいた。そしてすたすたと草間たちの居るテーブルへ向かう。
「メリークリスマス」
 苦笑して汐耶を出迎える草間。この表情からするに、先程のつぶやきが聞こえていたのかもしれない。
「メリークリスマスです、草間さん。……鍋じゃなかっただけまし、なのかしら?」
「俺は聖夜に鍋を食べるのは絶対にごめんだ」
 汐耶の言葉に対し草間は真顔で言った。
「私は別にお鍋でもいいと思うんですけど……」
 隣で零がぼそりと言うが、草間は聞こえない振りをした。
「そういえば、椅子はないんですか。どこにも見当たらないような」
 汐耶は会場に足を踏み入れた瞬間に、そのことに気付いていた。テーブルはあれども、椅子が全く見当たらないのである。
「そういう会場なんだそうだ。つまり、立食パーティだな」
 汐耶の疑問にさらりと草間が答える。ちなみに、この疑問は汐耶が来る前に草間が抱いたのと同じであった。
「ねっ、零ちゃん? ローソクどこ?」
 箱からケーキを出していた雫が、零にローソクの在り処を尋ねてきた。
「え、一緒に入れてもらいましたよ?」
 とことこと雫の所へ向かう零。なくても特に支障はないけれど、あるのとないのとではやはり気分が違う。2人は一緒にローソクを探し始めた。
「招待状の差出人からして、薄々は思ってたけど……やっぱり、ね」
 続いて会場に現れたのは麗香である。その後ろからパタパタと別の足音も聞こえてきた。
「ま、待ってくださいよ、編集長。袋がドアに引っかかって……」
 両手にファーストフード店のロゴが入った大きな袋を提げて、三下も会場に足を踏み入れた。
「立て続けだな」
 2人に向かって草間が軽く手を上げ、汐耶がぺこりと会釈した。麗香が三下をともなって、草間たちの居るテーブルへやってきた。
「何とか仕事片付けてきたわ。で、これが差し入れ。クリスマスといえば、当然チキンでしょう?」
 やれやれといった様子で、麗香が三下の持っている袋を指差した。中にフライドチキンなり何なり入っているのだろう。
「何人分あるんですか?」
 袋に目をやり汐耶が尋ねる。と、三下は袋を床に置いて、手をぷらぷらさせながら答えた。
「確か……20人分だったと」
「に……」
 汐耶はぐるりと頭を回し、今居る自分たちのグループの人数を確認した。自分を含め、現在6人。ざっと3倍の量である。
「どうせまだ来るだろ、この分じゃ。それに残ったら持って帰ればいいだけさ」
 草間が汐耶に言った。そこに零の言葉も加わった。
「そうですよ。多ければ、お裾分けしてもいいと思いますし」
「ん、零? ローソクは見付かったのか?」
 雫とともにローソクを探していたはずの零に、草間がそう尋ねる。
「箱にくっついていました。テープと一緒に」
 なるほど、箱を外す際にローソクの入った袋がテープに引っ付いてしまったようである。灯台下暗しといった所か。
「ごめんなさいね、運ぶの手伝ってもらっちゃって」
「いいんです。どうせ行き先は同じなんですから」
 また新たに会場にやってくる声が聞こえてきた。姿を見せたのは、やや大きめな円柱形の風呂敷包みとクーラーボックスを携えた上に大きなリュックまで背負っているシュライン・エマと、大きなバスケットを両手で持った美紅の2人である。もちろん向かうのは、草間たちの居るテーブルである。
「ずいぶんまた大荷物なんだな」
 草間の問いかけに、シュラインが苦笑いを浮かべた。
「雫ちゃんに聞いたら、持ち込みだっていうでしょ? だから、料理だ飲み物だ食器だって、あれこれと用意してるうちに……」
 一切合切持ってきたのなら、そりゃ大荷物になるはずだ。シュラインはそれだけ言うと、足早にテーブルに行き風呂敷包みを置いた。
「シュラインさん、それ何なの?」
 不思議そうに雫が尋ねると、シュラインは無言で風呂敷を解いた。中から出てきたのは……何と寸胴鍋。
「お鍋っ?」
 雫のその小さな叫びに、草間が少しぴくっとしたような気がした。
「クラムチャウダー作ってきたの。なるべく保温性の高いお鍋を使ったつもりだけど、少し冷めちゃってるかも」
 シュラインが鍋のふたに手をかけ、雫に説明した。その間に美紅もバスケットをテーブルに置くと、またしてもシュラインは説明を始めた。
「で、こっちには食器と生ハムサラダ。ドレッシングはここで和えるつもりだから、しゃきしゃきとした感触は残ってるはずよ」
 いやはや、何ともご苦労さまなことである。好きじゃなきゃ、ここまで徹底してやれないだろう。
「さっきから気になっていたんですけど」
 美紅がシュラインに尋ねた。
「ん、何かしら?」
「そのリュックは……」
「それは後のお楽しみ、ね」
 くすり微笑むシュライン。いったいリュックには何が入っているのやら。まあ、後のお楽しみと言うからには、中身を出すつもりであるのだろうが。
「草間さん。鍋が来ましたけど?」
 汐耶が少し意地の悪い質問を草間に投げかけた。
「あれは……別だろ。別だな、うん」
 草間はそう言って頭をぽりぽりと掻く。麗香がそんな草間の姿を見て、くすっと笑った。

●登場は騒々しく【2】
 さて、草間たちのテーブルに人が集まり始めた一方で、ただひたすら待つしかないテーブルもある訳で――。
「うにゃー……退屈にゃー。向こうのテーブルはいっぱい人が来てるのに、どうしてあたしたちのとこには誰も来ないのですにゃー」
「マ、マオちゃん……もうちょっと待ちましょうよ……ね……?」
 暇を持て余してテーブルにのの字を書いているマオを、カオルがなだめていた。しかしマオの態度も無理ないことで、何しろ自分たちの所には招待客が誰もまだ来ないのだから、文句の1つも言いたくなる所であるだろう。
「うー……待たされているケーキと七面鳥が可哀想ですのにゃー。そのうち逃げちゃいますのにゃー」
「マオちゃん、どっちも逃げないから……」
 苦笑するユウミ。どうやらマオが待っているのは、招待客より料理を食べる瞬間のようだ。
 そんな時、会場に青年のびっくりしたような声が響き渡った。
「うわあぁぁぁっ!?」
 声のした方を見れば、会場入口の辺りで背の高い金髪の青年がぐるんと前転1回転した所であった。思うに、入口のちょっとした段差に爪先でも引っかけたのであろう。
 転んだ青年――イァラ・トレーシスは、何とか両足揃って静止した。……と思ったら、ぷるぷると足が震えて、そのまま後ろにばたんと倒れてしまった。
 背中から? いえいえ、後頭部から冷たい床と熱いキスをしましたとも。
「いってぇぇぇーーーっ!!」
 イァラの絶叫が会場に響き渡った。ほとんどの者はぎょっとしてイァラの方を見たが、中には例外もあって……。
「あ、何か面白い人が来たですにゃー」
 マオはイァラの姿を見て、くすくすと笑っていた。まああくまでそれは例外で、ほとんどは心配そうな視線をイァラに向けている。
「どうした若いの、慌てると何事も悪い方に回るぞい。動けるようなら、怪我はないようじゃがな」
 あ、もう1人例外が居た。ドクがニヤニヤと上体を起こしたイァラのことを見ていた。一応心配はしてくれているようであるが。
「あの、大丈夫ですか?」
 ユウミがイァラのそばへ駆け寄ってきた。
「てて……大丈夫だ。驚かせてすまない」
 後頭部を押さえながらゆっくりと立ち上がるイァラ。そして会場をきょろきょろと見回す。
「確か会場はここだよなあ……」
 イァラが軽く首を傾げた。複数のグループが会場に居るので、戸惑っている部分があるのかもしれない。
「どちらのグループの方ですか? ええと……」
 ユウミはイァラにそう尋ねながら、まずは草間たちの方へ顔を向けた。違うという仕草をする草間。それではと、今度はドクたちの方へユウミは顔を向けたのだが、こっちはこっちでメイファンが首を横に振っていた。
 無論、ユウミたちもイァラと顔を合わせるのはここが初めてである。となると――。
「……恐らく、あちらのテーブルではないかと思うのですが」
 ユウミはイァラに『予約席』とプレートのあるテーブルを指し示した。
「嘘だろっ? まだ俺1人なのか? ……もうちょっとゆっくり来てもよかったかもな」
 腕を組み、思案するイァラ。だがいつまでも入口の近くで突っ立っている訳にもゆかない。ひとまずテーブルの近くまで移動することにした。
 すると、とことことマオがイァラに近寄ってきたではないか。
「さっきは惜しかったですにゃー」
「ああ、全くだ……?」
 マオの言葉に頷こうとしたイァラだったが、ふとマオの頭の上に目が止まった。猫耳に、である。
「……シャンブロウか?」
「何ですにゃー、それは?」
 きょとんとしてイァラに聞き返すマオ。イァラは慌てて頭を振った。
「いや、何でもない。こっちの話だ、聞き流してくれよな」
「……変な人ですにゃー」
 マオは首を傾げたが、すぐに何か思い出したようにイァラにこう言ってきた。
「そうそう、喉は乾いていませんかにゃー? よかったら飲み物差し上げますのにゃー」
「飲み物か……んじゃ、牛乳あるかな」
「カオルちゃん、牛乳1杯よろしくですにゃー☆」
 イァラのオーダーがカオルに回った。カオルは牛乳をコップに注ぐと、お盆に載せてイァラの元へ運んできた。
「ど……どうぞ」
「サンキュー」
 イァラは礼を言ってコップを受け取ると、そのまま一気にごくごくと気持ちよい飲みっぷりを見せた。そのタイムは5秒フラット。
「……ぷはぁ、もう1杯!」
「は、はいっ」
 カオルは空になったコップを返してもらうと、再び牛乳を入れに戻った。
「お腹は空いていませんかにゃー? パン類でしたら差し上げますのにゃー」
 飲み物の次は食べ物を勧めてくるマオ。イァラはその好意を素直に受け取ることにした。
「ユウミちゃん、パンのかごよろしくですにゃー☆」
 今度はパンの入ったかごを抱えて、ユウミがイァラのそばでやってきた。
「どうぞ、お好きな物を」
 にこっと笑って、ユウミがイァラの前にパンの入ったかごを差し出した。
「色々あるなあ。さあて、どれにしようか……ん?」
 お代わりの牛乳をテーブルに置き、パンを物色するイァラの視線が、とある一点でぴたりと止まった。視線の先にあったのは、美味しそうな色をしたドーナツであった。
「…………」
 イァラは無言でそのドーナツを手に取った。

●『主役』来たれり【3】
「あれっ? あそこに居るの、イァラ君じゃない?」
 ちょうどイァラがドーナツを手に取った時である、背の高い黒髪細身の青年の腕を引っ張って会場に入ってきた黒髪で小柄な女性が声を発したのは。
「おや、ほんとだな。うん? あれは……」
 イァラと顔見知りらしい青年――牛崎潤はドーナツの存在に気付いた。無論、イァラがそれを見つめて神妙な表情をしていることにも……。
 そして女性――ハルはハルで、またあることに気付いていた。
「イァラ君、浮気中だよね?」
「何でだよ」
 ハルのつぶやきに潤がすぐさま突っ込みを入れた。
「だってー、メイドさん3人に囲まれてるんだよ? シャンブロウも混じってるし……」
「尻尾がないから違うだろ?」
 潤は苦笑すると、てくてくとイァラの方へ向かっていった。
「よぉ」
 潤が声をかけると、イァラは無言で軽く手を上げてそれに答えた。
「お友だちの人ですかにゃー?」
 マオが潤に話しかけてきた。
「あー、そのようなもんかな」
 そう答え、潤はテーブルに目をやる。イァラが置いていた、牛乳入りのコップが目に入った。
「牛乳か、やっぱりな」
 ニヤッと笑って言う潤。すると、マオが飲み物などを勧めてきた。
「飲み物はいかがですにゃー? 食べ物もありますけどにゃー?」
「じゃ、これもらうわ」
 潤はあっさりとユウミの持つパンのかごの中から、普通のコッペパンを手に取った。
「あたしも、あたしもっ!」
 ハルがユウミに駆け寄り、パンの物色を始めた。
「んー……あたしこれっ♪」
 10数秒考えてから、くるみ入りのパンを手に取ったハル。そしてとことこと潤のそばへ行く。
「マオちゃん……ユウミちゃん……」
 カオルがマオとユウミのメイド服を、ちょいちょいと引っ張った。それで2人とも察したのか、カオルとともに自分たちのテーブルへ戻っていった。
「あれから何ヶ月経ったっけな」
 メイドさん3人娘が自分たちのテーブルへ戻ったのを見届けて、潤が何気なくつぶやいた。
「……ああ」
 こくり小さく頷くイァラ。ハルはそんな2人の姿を、くるみ入りパンを小さくかじりながら見つめていた。
 そして、潤たち3人の回りに何やらしんみりとした空気が流れようとした時だった――入口の方から明るい声とともに、今日の『主役』の1人が現れたのは。
「メリークリスマス!!」
 元気よく挨拶する、がっしりとして背の高い白髭のサンタクロースがそこに居た。真っ赤な服が目にまぶしかった。
 戸惑いの視線をサンタクロースに向けるほぼ一同。何故サンタクロースがここに?
「メ……メリークリスマス?」
 視線を察したか、もう1度声のトーンを落として挨拶をするサンタクロース。けれども、怪訝な視線が向けられているのは変わらない。
「ちょっと失敗しましたか……?」
 サンタクロースはそう言って白髭に手をかけると、それをさっと取り払った。下から、黒々とした無精髭――だがどこか整ってもいて――が現れる。
 そのままサンタクロースは、むんずと真っ赤な帽子をつかんで外した。黒く長い髪がぱさりと落ちてきた。こうなるともうサンタクロースではなく、単にサンタクロースの衣装を着た男性である。
「……何やってるんだ、そんな格好で?」
 草間が呆れたようにその男性――シオン・レ・ハイに尋ねた。
「いえ、アルバイトですよ?」
 さらりと答えるシオン。それを受け草間がさらに何か言おうとしたが、先に雫が口を挟んできた。
「はーい、あたしがお願いしたの☆ だよねー☆」
「はい。ですねー」
 手を挙げて言った雫に対し、シオンは大きく手を振った。なるほど、雫に雇われたということか。そりゃ当然アルバイトである。
「何のアルバイトなの?」
 汐耶が当然の疑問を雫に投げかけた。普通に招待客ではいけなかったのだろうか。
「んーとね、色々なお手伝いとかしてもらおうかなって思って。何だか皆、酔っちゃいそうなんだもの。ほら、後片付けのこともあるしー」
 つまり雫は、確実なお手伝い要員を確保したかったようである。まあ草間たちグループの今居る中では、未成年にあたるのは雫と零くらいなのだから、気持ちは分からないでもない。
「そういう訳ですから、どうぞよろしく」
 シオンは帽子を被り直すと、ぺこりと頭を下げた。

●今はもう居ない友へ【4A】
「結局、この3人だけかな」
 パーティを始めたらしい草間たちの姿を見ながら、潤がイァラとハルに言った。それからコッペパンを大きくかじる。
 パーティがここであるとは聞いたけれど、そもそも誰がこの場を用意したのかは不明であった。それゆえ、パーティのことは知っていても足を運ばぬ魔皇や逢魔たちが多くとも何ら不思議ではなかった。現在は何者かの罠かと疑われても仕方ない状況……懸念されてる様々な物事が解決した訳ではないのだから。
「……帰ってきてたならもう1人、いや、もう2人増えてたさ」
 ドーナツをしげしげと見つめ、イァラがぼそっとつぶやいた。その表情は、重く暗い。
「好物だったよな、あいつの」
 潤がそう言うと、イァラはゆっくりと頷いた。ドーナツは、今はもう居ない友人が好きだった物だ。イァラはこのドーナツに、その友人の姿を重ねていた。
「いつだったっけな。俺が牛乳飲んでた隣でさ、あいつ黙々とドーナツ喰ってたんだよな。それでさ……」
 天を仰ぐイァラ。在りし日の友人の姿を、そこに感じ取るかのように。
 そして、イァラは友人との想い出を思い出すままに口にしてゆく。潤はそれを静かに聞きながら、時には窘め、時にはイァラとともに笑っていた。イァラの気持ちは、痛いほど潤にも伝わってきていたから――。
 そんな話がしばらく続き、やがて一段落した所で、ようやく潤が聞き手から話し手に回った。
「ま、あれだ。そんな暗い顔してもあいつは喜びはしないんじゃないか?」
「え?」
 イァラが改めて潤に向き直る。
「俺、そんなに暗い顔してたか……?」
「してた」
 さらりとイァラに言う潤。
「だいたい、こういう夜だからこそ、もっと相応しい表情があるだろうよ。ほら、そこにサンタも居るしな」
 潤はくいとシオンを指で示した。サンタクロース姿のシオンは、何やら麗香の前でひざまずいて飲み物を渡している所であった。
「はは……何かサンタクロースらしくないけどな」
 ぷっと吹き出すイァラ。暗い表情が一転して消えた。
「そうそう、そういう表情がいいさ」
 潤も笑みを浮かべる。と、その瞬間だった。それまでくるみ入りのパンを食べながら、静かに黙って2人の話を聞いていたハルが、突然切れたのは。
「あーーーーっ、もーーーうっ!!」
 ハルの急変に、ぎょっとする潤とイァラ。何か言おうとしたが、その前にハルが潤の腕をつかんでずるずると空きテーブルの方へと引きずっていった。
「お、おいっ?」
「いーからっ! こっち来るのっ!!」
 戸惑う潤を有無を言わさず空きテーブルへ引っ張ったハルは、そのまま間髪入れず説教を始めた。1人残されたイァラは、唖然として説教される潤の姿を見ていたのだった……。

●分かってください【5B】
「あのねえ……いい?」
 説教開始して第一声、ハルは潤にそう問いかけた。
(何もこんな所で、こんな日に説教することもないだろう……)
 潤は内心そう思っていたが、今のハルにそれを言えばより神経を逆撫でしてしまうことになりかねない。潤はその言葉をぐっと飲み込んで、無言で頷いた。
「……分かってる?」
 ぎろりと潤を睨み付け、ハルが尋ねる。
(分かってるも何も、まずは言われないとなあ)
 はい、ごもっとも。
「気遣うこと、それ自体はは別にいーの。でもね……」
 と言ったかと思うと、ハルは突然潤の襟首をがしっとつかんだ。
「どーしてあまり会わない人のことが気遣えるのにっ、身近な私のことが気遣えないのよーっ!! そこの所、分かってるのっ!!」
 ぐいと顔を近付け、切々と潤に訴えるハル。
「……最近になって、やりたかったライターの仕事が出来るようになったじゃない。それは私も最初は嬉しかったけど……けどっ……最近は全然構ってくれないじゃない!!」
 襟首から手を離し、今度はぺちぺちと潤の身体を叩き始めるハル。
「忙しいのは分かってるのっ! 仕事が楽しいのも、見ていて分かるのっ!! でもっ……でもっ、私のこともたまには構ってちょうだいよっ!!! 仕事ばかりに構うんじゃなくって、私をっ!!!」
 ……どうやら近頃たまっていたハルの不満が、イァラとの潤のやり取りを見ている間に吹き出してしまったようである。
(……なるほど、ね。そういうことか)
 潤はふうっと息を吐き出すと、ぺちぺちと叩いてくるハルの手をおもむろにつかんだ。
「あー、分かった分かった。お前の気持ちはよーく分かった。もうしばらくしたら暇も出来るだろうから、それまで少し待て。な?」
 潤はそう言うと、もう一方の手でくしゃっとハルの頭を撫でてあげた。
「もう少し……本当に?」
 上目遣いにハルが尋ねる。潤はゆっくりと頷いた。
「ああ、本当だ」
 もう1度ハルの頭を撫でる潤。
「ん……分かった……」
 ハルもまたこくりと頷き返した。その時、イァラが2人に声をかけてきた。
「おーい、この3人が一緒にパーティしないかって――」
 見ればイァラの後ろで、先程のメイドさん3人娘が手招きしていた。

●大勢は楽し♪【6】
 さてさて――イァラ・潤・ハルの3人がマオたちのテーブルに混じってパーティを始めようとした時、草間たちのテーブルから雫がやってきて一緒にパーティをしないかと持ちかけてきた。なお、すでにドクたちは草間たちのテーブルへ混じっていた。
 全員、別に申し出を断る理由などない。ごく自然に、2つのグループは1つのグループへと合流することになった。
 各々のテーブルを動かし直し、距離を詰める一同。その作業が終わった時、本当にクリスマスパーティが始まったのだった。
「「「メリークリスマス!!」」」
 一斉に唱和し、乾杯する一同。そして料理にも手を伸ばし始める。
「七面鳥か、旨そうだな」
 イァラがお皿に取り分けてもらった七面鳥にナイフを入れようとした。しかし、部位がちょっとあれだったのか、それともナイフが切れないのか、なかなか入ってゆかない。
 力を込め、懸命に切ろうとするイァラ。けれども往々にして、こういう時には笑いの神が降臨する訳で――。
 べちょ。
 変に力が入ってしまったか、七面鳥がつるんと滑って飛んでゆき……マオの顔面にジャストミートしたのである。
「何するですにゃーっ!!」
 ぺちぺちぺち……と、イァラの背中を叩くマオ。猫耳娘、怒るの巻だ。
「いたたたたたっ! ごめんっ、悪かったっ、でもわざとじゃないしっ!!」
 必死に謝り倒すイァラ。その姿を見て草間が苦笑していた。
「……何だかなあ」
「どこ見てるの、武彦さん。ああ、ほら。唇の端にソースついてるし」
 シュラインは草間の隣にやってくると、ハンカチでついていたソースを拭いながら話しかけた。
「いや、向こうをだな」
「そんなに……興味あるの?」
 このシュラインの質問、何やら意味深な感じがするのは気のせいだったろうか。
「殴られてる方にな」
 さらりと答える草間。それを聞き、さっとシュラインの表情が変わった。
「武彦さん? ……まさかそういう趣味まで……?」
 草間に疑いの眼差しを向けるシュライン。
「おい待て。どういう意味だ、そりゃ。俺は普通に女性が好きだぞ?」
「メイドさんとか?」
「だから、何でそういう話に」
 その後数分草間はシュラインと会話を続けたが、どうも話は平行線のまま終わってしまったらしい。
「何なんだ、いったい?」
 首を傾げる草間。シュラインと入れ違いに、今度は汐耶がやってきた。
「今度はお前か。訳の分からない話はしてくれるなよ」
「話じゃなくて、草間さんに渡す物があって」
 汐耶はそう言うと、三つ折りにした1枚の紙を草間に差し出した。
「何だ……?」
 紙を開く草間。次の瞬間、草間は汐耶から視線を逸らしていた。そこには、草間が汐耶が勤務する図書館から借りて未だ返却していない書籍のリストが記されていたのである。
「全部返却したら、マルボロ1カートンと引き換えますけど? クリスマスプレゼントおよびお歳暮代わりに」
 リストの一番下に書いてあるその旨をとんとんと指差し、汐耶がくすっと笑った。
「……年内に必ず返すから待ってくれ」
「了解。なるべく早めにお願いしますね」
 かくして、草間から返却の確約を取り付けた汐耶であった。

●各々のメリークリスマス【7】
 時間は流れ、そうこうしているうちにパーティもかなり進んでゆき、中には酒も回り始めた者たちもぼちぼち現れてきた。
「ううっ……僕だって好きで失敗してる訳じゃないんですよぉぉぉぉぉっ!!」
 テーブルをどんどんと叩きながら、おいおいと泣く三下。見事なまでに泣き上戸と化していた。……普段とそんなに変わらないじゃないか、というのは気のせいである。突っ込むな。
「うむうむ、しかしじゃな。失敗を繰り返して成長するんじゃぞ、人間は」
 そんな三下を、何故かドクが慰めている。
「わしもじゃな、失敗を繰り返して成長したんじゃ」
 何かいい話が始まりそうな予感。美紅がドクの話に聞き耳を立てていた。
「綺麗なおなごかと思っておったら、女装した男じゃったことも幾度あったことか……」
 がくんとずっこける美紅。……そっち系の話ですかい。
「何事もトライアル&エラー! 綺麗なおなごが居る限り、男は前へ前へと進まんといかんのじゃ!! どうじゃ、今度わしと一緒におなごの……」
「ドク!!」
 メイファンがドクを窘めた。美紅は呆れ顔で、ドクの近くから離れていった……。
「えっ、大豆ではダメですかっ。うわー、許してくださーい……ううう……」
 別の所では、イァラが謎の寝言を口にしながら酔い潰れていた。すぐ隣では、マオも酔い潰れて倒れてしまっていた。
「猫耳かじっちゃダメですのにゃー……猫耳のない猫耳娘はただの娘ですのにゃー……にゃうー……」
 こちらもまた、何か謎の寝言を発している。2人とも、いったいどういう夢を見ているのだろう。
「カオルちゃん。お酒の分量が多かったんじゃない?」
「……多かったのかなあ……」
 ユウミとカオルが顔を見合わせる。実はカオル、イァラに頼まれてミルクカクテルなる物を作ったのだ。だが、それを飲み干して少ししてイァラは酔い潰れてしまったのである。
 マオはというと、イァラの飲んでいたミルクカクテルが美味しそうだったので、やはりカオルに頼んで作ってもらったのだった。その結果、同じく酔い潰れてしまったと。
「ちょっと失礼」
 潤がひょいと、ミルクカクテルに使った酒を手に取って見た。
「……これ、ウオッカだ」
 苦笑いを浮かべる潤。そんなの使ったら、酔い潰れるのも当たり前。
「もう少し度数の低いお酒なかったっけ? あたし向こうのテーブルで見たと思うけどー」
 ハルがそう言ってユウミたちを見た。
「あの……近くにあったんで使ったんですけど……ダ、ダメだったんでしょうか……?」
 おどおどと潤たちに尋ねるカオル。実はカオルたち、ウォッカの存在など知らないのだ。それゆえ、どれほど度数が高いかも分からない訳で……。
「くじ完成ーっ! 何が当たるかどきどき、プレゼントタイムだよっ☆」
「この中から、1枚ずつ引いてくださいね」
 その時、雫と零の声が続けて聞こえてきた。2人はせっせとくじ作りをし、箱の中に入れていたのである。
 くじの仕掛人はシュライン。ここで、シュラインが来た時に背負っていたリュックを思い出してほしい。そう、あの中に何が入っていたのかだ。
「そんなに高価な物はないんだけどね」
 そう言って照れ笑いを浮かべるシュライン。実はリュックの中には、このプレゼントくじのための品物が入っていたのだった。
 1人ずつ、箱の中からくじを引いてゆく。それと並行して、シオンが独自に麗香へプレゼントを渡そうとしていた。
「麗香さん。……受け取っていただけませんか」
 真剣な表情で、シオンはリボンが括られた『それ』を差し出した。麗香は『それ』を見て怪訝な表情を浮かべる。
「あのね……」
「お願いします。受け取っていただけませんか」
 真顔で再度言うシオン。麗香は『それ』のリボンに手をかけると、一気に解いた。リボンがはらりと――サンタの帽子を被ったうさぎから床に落ちた。
「生物は受け取れないから」
 と言って麗香は、うさぎの背中に括りつけられていた指輪が入るようなサイズの箱だけを手に取った。
「開けてみてもいいかしら?」
 麗香が尋ねると、シオンはこくりと頷いた。箱を開けてみる麗香。次の瞬間だった、箱の中からびょんっとマッスルなおもちゃの人形が飛び出してきたのは。
「……何これ」
 麗香がシオンに冷ややかな視線を向けた。
「クリスさんというおもちゃの人形ですよ? これをですね、こう衝撃を与えますと……」
 シオンが人形を軽く指で弾いた。すると、人形は両腕を大きく振るいながら喋ったではないか。
「マッスルマッスル!」
 視線で人が殺せるというのは、この時の麗香の視線のことを言うのかもしれない。
「どうですかっ、クリスマスジョークです!」
 いや、ジョーク違うと思います。
「さよなら、編集部出入り禁止ね」
「わわわっ、待ってください! 実はもう1つあるんです!!」
 あまりにもの本気な麗香の口調に、シオンが慌ててそう言った。
「何よ、もう1つあるんなら最初からそっち出せば問題なかったのよ」
「これです」
 シオンはサンタクロースの袋の中から、何とファー付きの高級そうなコートを取り出して麗香に手渡した。
「……いいの?」
 困惑の色が麗香の顔に浮かんだ。一見しただけで高級なコートだと麗香は感じ取ったのだ。
「ええ、どうぞ受け取ってください」
「これは違う意味で困るわね……」
 あれこれと、コートに触れる麗香。その途中に何か異物感を感じ取り、ポケットから1枚の小さな紙を取り出した。そこにはどこかの携帯番号が記されていた。
「何これ?」
「あ、言い忘れていました。今なら、もれなくおっさんがついてきます!」
 麗香の問いかけに、きっぱりと言い放つシオン。次の瞬間、麗香はコートをシオンに突き返していた。
「とりあえず、年内はもう編集部出入り禁止」
 ああ、怒ってる……怒ってるよ麗香さん。
 まあ――それはそれとして、全員くじを引き終わり、番号に応じた品物を受け取ることになった。
「あっ、羽子板セットだっ!」
 さっそくプレゼントを開けたハルが、中から羽子板を取り出して嬉しそうに言った。他の者たちに当たったプレゼントを見てみると、福笑いだったり双六だったりと、年明けお正月に使えそうな物ばかりが出ていた。
「羽子板だよ、羽子板っ! ねっ、一緒に遊べるよねっ?」
 にこにこと潤へ言うハル。潤はちょっと思案してからこう答えた。
「あー、じゃあ正月にでもやるか?」
「うんっ!!」
 ハルが大きく何度も頷いた。
 こうして楽しいクリスマスパーティは、この後も夜更け過ぎまで続くのであった――。

【ごちゃ混ぜクリスマスパーティ! おしまい】


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
●東京怪談
【 整理番号 / PC名(読み) 
                   / 性別 / 年齢 / 職業 】
【 0086 / シュライン・エマ(しゅらいん・えま)
     / 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員 】
【 1449 / 綾和泉・汐耶(あやいずみ・せきや)
               / 女 / 23 / 都立図書館司書 】
【 3356 / シオン・レ・ハイ(しおん・れ・はい)
          / 男 / 42 / びんぼーにん(食住)+α 】

●アクスディア
【 ウェブID / PC名 
               / 性別 / 年齢 / クラス・種族 】
【 w3a062maoh / イァラ・トレーシス
                  / 男 / 21 / 孤高の紫 】
【 w3d085maoh / 牛崎・潤
                  / 男 / 24 / 孤高の紫 】
【 w3d085ouma / ハル
               / 女 / 19 / ナイトノワール 】


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■         ライター通信          ■
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・『聖なる夜の物語』へのご参加ありがとうございます。本依頼の担当ライター、高原恵です。
・高原は原則としてPCを名で表記するようにしています。
・各タイトルの後ろには英数字がついていますが、数字は時間軸の流れを、英字が同時間帯別場面を意味します。ですので、1から始まっていなかったり、途中の数字が飛んでいる場合もあります。
・なお、本依頼の文章は(オープニングを除き)全9場面で構成されています。他の参加者の方の文章に目を通す機会がありましたら、本依頼の全体像がより見えてくるかもしれません。
・今回の参加者一覧は世界別、かつ整理番号順で固定しています。
・大変お待たせさせてしまい申し訳ありませんでした。ようやくここに、クリスマスパーティの模様をお届けいたします。
・このお話は東京怪談・アクスディア・聖獣界ソーン・サイコマスターズ、これら4つの世界が入り混じっております。よくよく本文を読んでみると、微妙に世界による差違があったりしますので、もしその辺りでも楽しんでいただけたなら幸いです。また機会がありましたら、こういうごった煮な感じのお話を書いてみたく思います。
・牛崎潤さん、ご参加ありがとうございます。潤さんはライター仕事しているようですが、ハルさんのことも気遣いつつ頑張ってくださいね。なお、このお話内では人化している状態として扱わせていただきました。あと、OMCイラストをイメージの参考とさせていただきました。
・感想等ありましたら、お気軽にテラコン等よりお送りください。きちんと目を通させていただき、今後の参考といたしますので。
・それでは、また何かの形でお会いできることを願って。
クリスマス・聖なる夜の物語2004 -
高原恵 クリエイターズルームへ
神魔創世記 アクスディアEXceed
2005年02月04日

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