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『■不夜城の街■ 』
セレスティ・カーニンガム1883

 「何時も思うことだけど…」
 そう呟いたのは、銀縁眼鏡をかけた理知的な女性だった。短めな黒髪と青い瞳を持つ彼女は、綾和泉汐耶(あやずみ せきや)と言う。スレンダーな体躯に、細身のパンツスーツが良く似合っていた。彼女は、正月休みを妹と過ごそうと計画していたのだが、その肝心の妹が実家に拉致られてしまい、どうしようかと思っていたのだ。そこへこのお誘いが来たので、有難く乗ることにした。
 「銀ちゃん、お金持ち……だよ、ね」
 スローなテンポでぽつりぽつりと話すのは、見た目はとっても派手である青年だ。鮮やかな赤い髪に、長めの前髪の隙間からかろうじて見える瞳は金色だ。無表情に喜んでいる彼の名を、鳴沢弓雫(なるさわ ゆみな)と言う。
 「そりゃーそーだよぉー、大哥のことは、俺の父様も一目置いてるんだから」
 まるで我がことの様に誇らしげに言うのは、まだ幼い少年だ。背まで届く銀髪を後ろで三つ編みにし、くりっとした赤い瞳を輝かせている彼は、李如神(りー るーしぇん)と言う。
 「この方が、ゆったりと出来ると思いましたので…」
 まるで当たり前のことだと言わんばかりに、彼は微笑む。それが嫌味に聞こえないのは、やはり微妙な方向性を持った人徳の賜だろう。長い銀髪を背に侍らせ、青い瞳を和ませているのは、セレスティ・カーニンガムと言う、今回の旅を企画した青年だった。
 「今回は、豪勢にと仰ってましたからねぇ、セレスティさまは」
 落ち着いた物腰でそう言う青年は、見る者をほっと安心させる雰囲気を持っている。金色の髪を後ろで尻尾の様に纏め、緑の瞳で彼の主を見ている。セレスティの元で、庭園管理を一手に引き受けている彼は、モーリス・ラジアルと言った。
 「それにしても、本当にこんな贅沢をさせて頂いても、宜しかったのでしょうか」
 遠慮がちにセレスティへとそう言うのは、まるで日本画に描かれている様な風貌を持つ青年だった。すっきりと短く切られた青い髪に、穏やかな色を滲ませた青い瞳を持つ彼は、池田屋兎月(いけだや うづき)と言う。
 正月休みを貰ってはいたが、懇意にしている骨董屋は同じく正月休み、主はモーリスと旅行に行くと聞き落胆していたものの、実は予め自分もそのメンバーに入っていたと聞き、驚きつつも喜んでの参加となっていた。
 兎月が『贅沢』と言うのは、無理もない話だ。
 何故なら、現在彼らは機上の人となっており、その機と言うのは、セレスティの自家用ジェット機であるからだ。
 自家用ジェットの中も、一流ホテルにひけは取らない豪華さだ。
 この機の為に設えられたソファセットが、でんと存在を主張し、ミニバーやミニキッチンまで備え付けられている。足下に敷かれる絨毯は、歩いても足音がしない程に毛足が長く、その踏み心地も安物とはほど遠い。
 更にこの旅の目的が、一般人とひと味違う。
 『モナコでカジノ』なのだ。
 カジノならば、モナコ以外にも沢山ある。
 カジノ世界の首都と呼ばれるラスベガス、カジノの女王アトランティックシティ、もっともカジノの歴史が古い国にあるバーデンバーデン、世界最大のカジノ数を誇るイギリスはロンドン…。挙げていけば切りがない程だ。
 が、モナコはモンテカルロと言えば、世界各国の王侯貴族、大富豪などと言う、つまりのところセレブ中のセレブが集う場所として有名だ。
 そこで優雅にカジノで遊びましょう、と言うのだからケタが違う。
 しかもこれは、セレスティが親しくしている者を招待すると言う、なかなかに太っ腹な話でもある。
 これだけのこと、そんじょそこらの小金持ち…と言うより大金持ちでも出来ないだろう。
 にっこりと微笑んでいたセレスティは、ふと思い出した様に口を開いた。
 「皆様には、先にこちらのカードをお渡し致します」
 そう言ってマジシャンがする様に、カードを扇の様に開いて見せる。
 「これ…、何?」
 「SBMのカルト・ドールに見えるけど…、ちょっと違うわね」
 SBM、つまりソシエテ・デ・バン・ド・メール(Societe des Bains de Mer,MonteCarlo)のことだ。
 ここの系列ホテルに宿泊すれば、もれなく手にはいるのが、SBM系列のホテル、カジノ、レストラン、スポーツセンターなどで優先的にサービスを受けることが出来る『カルト・ドール』だった。
 カルト・ドールは、ゴールドカードとも呼ばれ、そのあだ名に相応しく、カードの色は金色。
 しかし渡されたカードの色は、金ではなく銀だ。
 ちなみに一介の貧乏国であったモナコを、ここまでに引き揚げたのが、このSBMと言う組織である。19世紀末には、モナコの財源を一手に賄っていたとは言え、戦時中になると当然のことながら観光収入は減る。そこへギリシアの海運王オナシスが株を買い、何とか経営を持ち直させたのだが、これはモナコにとって、国を買い取られるに等しい話であった為、1966年、時の大公が株の半分を買い取って、半国営企業として生まれ変わった。その買い取りの際、密かに手を貸したのがこの財閥であることは知られてはいない。
 「それは確かにSBMからの発行ではありますけれど、我が財閥と提携して、極限られた方達のみにお配りしているものです」
 セレスティの言う通り、そのカードには、控え目にリンスターの名も記載されていた。
 実は、買い取りの際、手を貸したことにより、受けた特権がこれだ。SBM、リンスター両組織の合意に依って発行される、プラチナカードと呼ばれるものだった。
 カルト・ドールの更に上を行き、通常カジノでは身分証明書の提示を求められるも、これを見せればフリーパスで通して貰え、SBM系列では、支払いは全てこのカードでOKだ。
 当然ながら、予めセレスティの裁量で、ある程度の金額の保証はされている。預託金でコンプなどとケチ臭いことは言わず、カードを見せて告げれば、通常受けれる以上のサービスが提供されるのだ。
 セレスティから買い取り云々は省いてそのカードの説明を受け、皆が呆然としている。
 「モナコを歩く際、決してなくさないで下さいね」
 セレスティに次ぎ、モーリスがにっこり笑ってそう付け加える。
 「あ、あの、主様…。この様なもの、勿体のうございまする…」
 兎月が戸惑いながらも、そう言う。
 「私がそうしたいと思っているのですよ」
 「遠慮せずに、楽しむことこそ、セレスティさまのお気持ちに応えることになると思いますよ」
 モーリスがそう付け加えると、やはり戸惑いは隠せないものの、兎月ははいと素直に答えた。
 「あの…、これ…」
 話にケリがついたと察したらしい弓雫が、自分の手荷物の中から何やら取り出す。
 囲む様に腰を下ろしていたテーブルへ、それをどんと置き、ちらちらと五人を見回した。
 「わぁーっ、凄い綺麗っ! これ何?」
 今にも落ちそうな程に瞳を見開き、くんくんと匂いをかぎ出すのは如神だ。
 いや、彼がそうしたくなったのも、無理はないかもしれない。
 「えーと、手ぶらも銀ちゃんに、悪いし…。お礼と、…お近づきの飴」
 無表情で淡々と言うから解らないことではあるが、本人、可成り照れている。
 そこにあったのは、虹色に染まった鶏だ。可成りでかいそれは、しっかり人数分あった。弓雫は常日頃から、飴を持ち歩いている。彼自身が飴好きと言うだけでなく、持っていると落ち着くからでもあった。
 「飴!」
 如神が嬉々として弓雫に問いかける。
 「あのね、桃、桃の味ある?」
 「ある」
 これ、と言う風に、如神に渡すと、飛び跳ねる様にして喜んでいる。可成り重いだろうが、そんなこと彼には関係ないらしい。
 「それにしても、見事ですねぇ…」
 モーリスもまた感心してそう言った。
 「有難う。味も色々あるよ。イチゴと、リンゴ、ミカン、メロン、レモン…」
 「作るのも大変だったのではございませぬか?」
 兎月はやはり、その過程に興味がわいている様だ。内心、館へ帰ったら自分も飴細工を作ってみようと思っていたりもする。
 「でも、楽しかった。……大掃除、さぼれたし」
 語尾は少々小さくなっているのは、やはりさぼったのは悪かったと思っているからなのか。
 「食べるの、勿体ない気がするわ…」
 汐耶もまた溜息混じりにそう言った。甘いものが極端に好きと言う訳ではないが、嫌いと言う訳でもない。けれど食べるよりも、観賞用に置いておきたくなる程に、その飴細工は見事だった。
 「ありがとうございます。大切に致します…と、食べ物に対しては変ですけれどね」
 にっこり笑うセレスティに、弓雫は照れた…らしい。顔に出ない為、その微妙に変わる雰囲気から察するに止まるのだが。
 既に至福の表情で飴を舐めていた如神が、そう言えばとばかりにそこにいる者達へと問いかける。
 「ねえねえ、カジノ行くまで時間あるの?」
 「そうですねぇ。一応、フレンチルーレットやスロットなどは、着いてすぐに楽しめますけど、本番はやはり、夜の十時以降でしょうか」
 繰り出そうとしているカジノは、グラン・カジノだ。宿泊予定であるオテル・ドゥ・パリのすぐ側にあり、モンテカルロでカジノと言えば、グラン・カジノを指すと言うぐらいに定番なカジノだ。
 「ブラックジャックは、四時から遊べましたね、確か…」
 やはり面白くなってくるのは、夜闇の満ちる時だろうと思う。モナコは、午後八時でも、まだ外はさほど暗くならないのだ。
 「今からじゃ、可成り早いわね」
 「時差って、どれくらい?」
 汐耶が少し考えた風にそう言うと、弓雫は小首を傾げつつ聞いた。
 「確か…、八時間でございますね。出発が午後六時で御座いましたから、あちらではその時間、午前の十時になっておりましたでしょうか」
 兎月が、こっそりと持って来ていたガイドブックを片手にそう答える。
 「到着は、そうですねぇ。現地時間で、午後三時と言ったところですね」
 逆算したモーリスがそう呟く。日本時間なら、午後十一時。時間が逆なら、ぶっちぎりでカジノタイムであろう。
 通常の行き方、つまりのところフツーに飛行機に乗って行くとすると、直行便がない為に、移動は半日仕事になる。しかし、彼らは自家用ジェットにての旅だ。乗り継ぎ時間は存在しない。
 となると、四〜五時間も見ていれば十分だ。空港のないモナコに自家用ジェットでは直接入れないものの、近場のニースあたりからなら、そこからモナコまでヘリを飛ばせば居眠りする時間もない。もっとも、空の旅から陸の旅に変えるのも一興だろうが。
 「じゃあ、沙耶お姐、セレス大哥、お願いあるんだけど…」
 えへへとばかりに上目遣いに二人を交互に見ると、途端、如神は二人にがばっと泣きついた。
 「沙耶お姐、セレス大哥。宿題わかんないよぉ〜。教えてー」
 如神、心の叫びである。
 おやまあとばかりに、汐耶とセレスティは顔を見合わせると、暫しの後に吹き出した。
 「如神くん、宿題、ここまで持って来たのね」
 「見るのは構いませんよ。但し、自分できちんと考えるんですよ。私達は、ヒントを教えるだけです。良いですね?」
 セレスティと汐耶の二人の顔色を見て、宿題を見てくれると解った如神は、既に完成したつもりの様に万歳をした。
 そちらで勉強会が始まったのを見て、もう一方では、モーリスにおけるカジノ講座が開かれようとしていた。有り体に言えば、ゲームのルールを教える講座だ。
 元々教えてもらう筈だった兎月と、やはりルールが解らないと言った弓雫が、二人してちょこんと座ってモーリスを見上げている。
 「ではまず、ゲームの種類から説明致しましょうか」
 「宜しくお願い致します」
 「お願いします」
 二人がぺこりと頭を下げる様は、何だかとても可愛らしい。
 「大抵のカジノで遊ばれているゲームは、ブラックジャック、ポーカー、ルーレット、スロット、バカラ、クラップスのどれかになります。ルーレットは、カジノの女王とも呼ばれるほどに華麗なゲームです。また、王侯貴族のゲームと言われているのがバカラ、対して大衆のゲームと呼ばれるのがスロットです。またダイスゲームで定番なのはクラップス、究極の心理ゲームと呼ばれるのはポーカー、推理のゲームと呼ばれるのがブラックジャックだと覚えて下さいね。言えて妙ですから、どんなゲームをしたいのか、参考にもなるかと思います」
 いきなり怒濤の様に言葉が出てきて、目を白黒としている二人は、真剣にモーリスの話に聞き入っていた。ルーレットのルールから始め、一つ一つ丁寧に説明していくモーリスが、何か質問はと聞く。
 「はい」
 弓雫が手を挙げた。
 「何でしょうか?」
 「…どれが一番、簡単に出来るの?」
 兎月も右に同じとばかりに見つめていた。
 二人の反応を見たモーリスは、己の過ちを悟る。
 『成程、そう言う視点から説明した方が、良かったのですね』
 時間はまだある。これからじっくり講義を行っていこうと、心に決めたモーリスであった。



 「ようこそお越し下さいました」
 ずらりと並んだ従業員を見て、唖然と口を開いているのは、兎月、汐耶の二名である。ちなみに弓雫は、普通に硬直していた。
 「大奥みたい…」
 ぽつりと呟く弓雫に、『いや、並んでる中に男もいるから、しかも外人だし』と突っ込んでいる気分にもならない。今時、本当にこんな風に迎えるホテルがあるとは思わなかったのだ。赤い毛氈がないかと探してしまったのは、兎月である。
 セレスティは恭しく迎えるSBM総取締役に、両脇を人で作られた道を歩きつつも鷹揚に頷くと宜しくと微笑みを返す。
 「後でまた五名、私の大切な友人が参りますので、そちらもお願い致しますね」
 「畏まりまして御座います。カーニンガムさまのご友人さま方には、誠心誠意、心を込めてのおもてなしをお約束致します。また、お荷物の方は、既にお部屋に運ばせて頂いておりますので」
 大きな荷物など、誰も持っていない。
 何故なら、予め必要であると解っている荷物は、当然の様に送り届けているし、足りなくなれば買えば良いだけの話なのだ。彼らが持っているのは、側にないと落ち着かない様なものばかりだ。
 必要最小限の手荷物を、ポーターが預かろうとするも、皆は丁重にご辞退申し上げている。
 そして中に一歩足を踏み入れてからも、やはり驚きが何にも勝る。
 正に別天地がそこにあった。
 外観にも圧倒されたが、この豪奢なロビーはそれの上を行く。
 落ち着いた色合いの絨毯が敷き詰められ、正面には一抱えもあろうかと言う程の花が生けられている。ヨーロッパの美しき良き時代と呼ばれるベルエポック調の内部は、ベルサイユ宮殿を模したと言われていた。
 天井には円を描く様にして填るステンドグラスが煌めき、その中央からは豪華なシャンデリアが吊されている。ふと見ると、ルイ十四世の騎馬像もあった。
 案内されつつ到達したのも、やはり重厚且つ優美な雰囲気のするフロアだ。
 「主様、人気がございませんが…」
 「安全を考えて、フロアを貸し切っていますからね。落ち着いて過ごすことが出来ますよ」
 モナコは世界で一番安全な国だ。
 日本の皇居の二倍程度の広さであるのに、警官の数は五百人を超え、常時国内を巡回しているのは三百人と言う。街には至る所に防犯カメラが設置され、有事の際、国境の封鎖も三分とかからない。
 けれど更に安全を期すことは、大切な友人と共にいるセレスティには、当然の配慮でもある。
 それぞれが一室与えられ、キーを持ったことを確認すると、セレスティは言った。
 「では、また後ほどお会い致しましょう」



 「…何か、イメージ違う…」
 弓雫が周囲を見回して、ぽそりと漏らす。
 「ここって、あのホテルの中ですよね…?」
 汐耶もまた周囲を見回して、そう呟いた。
 「でも、何処か暖かい心地が致しますれば…」
 兎月が何処かほっとした様な表情で言う。
 「セレス大哥、ここどう言う部屋なの?」
 如神もまた同じく、大きな瞳を見開いて、セレスティを見つめていた。
 彼らの反応は、無理からぬことだ。今まで目にしていたホテル内は、この世の贅を尽くした様なものだった。しかしながら、ここは違う。
 兎月が言った居心地の良い部屋でありつつも、低い天井と床はむき出しで、到底華やかであるとは言い難い部屋だ。
 そこで普段通りの顔をしているのは、この部屋のことを知っているモーリスと、当然ながらここをディナーに指定したセレスティだ。
 「どうぞ、席にお着き下さい」
 ホテルマンにそう促され、各々は戸惑いながらも従った。
 セレスティが渡されたメニューを、各々に見える様にゆっくりと開いた。
 汐耶の瞳がそれを追う。
 そうして読んで行く内、徐々に理解した様に目が見開かれた。
 「これって……」
 「お解り頂けましたでしょうか?」
 満足の笑みを浮かべたセレスティは、モーリスに肯き、未だ解らないと言った調子の面々に向かって説明を促した。
 「これはね、この部屋を使用した方々の芳名帳なのですよ。メニューは、ホテルの方が心を込めて作られたお手製のものです」
 更にじっくりとそれを見るも、兎月、如神、弓雫は読めない…と呟いた。
 確かに読めないかもしれない。メニューはモナコ語なのだから。
 しかし芳名帳は、それぞれの国の表記で名が書かれているが。
 日頃書物に親しんでいる汐耶には、それがかろうじて読めた。
 表のバンケットでは出されていない、いや出すことのないものばかりだ。
 そして芳名帳には…。
 「ここは、貴賓室なんですか?」
 「え? ここが?」
 如神が驚きも露わにそう言った。
 「正解です」
 微笑むセレスティに、漸く理解した三人の視線が集中する。
 「「「えええっ?!」」」
 芳名帳に書かれている名は、どれもみんな有名な人物の名ばかりだ。少しでもニュースを見ていたり、新聞を読んでいたり、または本を読んでいたりすれば、一度なりとは目にしたことのあるものばかり。
 「ここは、貴賓客専用のディナールームなのですよ。ここを訪れる方々は、この部屋を家族の記念日などで使用しておられます。前のページを見て頂ければお解りかと思いますが、カロリーナ王女の幼い日の写真があるでしょう? これはお誕生日のディナーをここで行った際、撮られたものです」
 まだ赤子の時の写真だ。その横には、サインがあった。
 モナコの表の顔は、世界に轟くセレブ王国と言うイメージだ。
 けれど全てがそれだけで覆い尽くされている訳がない。敬虔なカトリック王国であるのも、またモナコの一面であるのだ。
 それを食の面で見せられるとは、思ってみなかった四人だった。
 「主様、わたくしめ、本日こちらで頂けるディナーを、一生忘れは致しませぬ。この部屋には、食に対する神聖な思いが込められていると感じております故…」
 一番食と関わりの深い兎月の言葉は、誰もが納得する響きを持っていた。



 「え? …セレスティさん、ご冗談でしょう…」
 顔を引きつらせつつ言う汐耶に、セレスティが満面の笑顔で答える。
 「いいえ。私が冗談を申し上げると?」
 「あの、私、一応ドレス…と言うか、ドレススーツ持って来てるんですけど…。あの、そちらを着ようかなと……」
 しどろもどろに言う汐耶に向かって、セレスティは世にも悲しそうな顔になる。
 「汐耶さん…。私は君のドレス姿を見るのを、とても楽しみにしておりましたのに…。これほどお願い致しましても、私のプレゼントしたドレス『は』、着ては頂けないのですね…」
 一部何処かに強調表現があった気がする汐耶だ。
 現在、ディナーを終え、カジノに繰り出す為に、それぞれが準備にいそしんでいる。汐耶は早速、渡されたカルト・カードの恩恵に預かり、通常であれば一〜二週間前に予約しなければならないスパ・メニューを味わってた。約三時間ばかりのそれは、日本で勤労に勤しんでいた身体を解してくれたのだ。
 この世の天国を味わって部屋に戻り、さてそろそろ準備を、とばかりに送っていた荷物を開こうとしていた時に、セレスティから『今からお伺いしても宜しいでしょうか?』との電話を受け、何だろうと思いつつもOKを出した。
 既にモーリスが、漸く到着したもう一組の準備──取り敢えずは、カジノに入るに当たり、不審に思われない程度の風貌にする為だ──の為、姿を消しているから話し相手が欲しいのだろうかと思ったのだが、実はそれが大いに間違っていることを、到着したセレスティを見て知る。
 訪ねて来たセレスティは、背後にメイド姿の女性を連れており、その彼女は手に山の様な荷物を持っていた。恐らく彼女は、このホテルの従業員だろう。
 小首を傾げつつ、どうぞと招き入れ、セレスティの話を聞いて、『冗談…』云々に話は戻る。
 「そうですか…。せっかく汐耶さんの『為』にご用意致しましたのに…。残念ですが、これは処分するしかありませんねぇ…」
 荷物を抱える女性もまた、セレスティと共に溜息を吐いた。
 「あの、処分って…」
 「汐耶さんに似合う様にと作らせたので、他の誰にもお渡しする気も御座いませんからねぇ…」
 それで処分すると言うのだろうか。汐耶は目眩がしそうになった。
 「はぁ…。残念です…」
 そこまで言われて、汐耶は一つしか返す言葉が見当たらなかった。
 「……有難く受け取らせて頂きます」



 既に後発組の準備を整えたモーリスは、今度は如神とばかりに、彼の部屋のドアをノックした。
 中から扉が開けられ、如神が顔を出す。
 「哥々、おそーい。寝ちゃうかと思ったよぉー」
 頬をぷくっと膨らませて言う如神に、モーリスは何時もの様ににっこりと笑う。
 「済みませんね。少々手間取りまして…。お待たせ致しました。如神くんの番ですよ」
 如神が膨れたのは、本当に怒っているからでないことくらい、モーリスにはお見通しだ。
 すっと腰に手をやり、そのままエスコートするかの様に、部屋へと入る。
 「では、如神くん、洋服を脱いでくれますか?」
 「へ?」
 満面の笑みを浮かべつつ言うモーリスに、何事っ?! とばかりに目が点になっているのは如神だ。
 「ぬ、脱ぐ、脱ぐって、脱ぐって…。哥々……、何でっ!」
 身を守る様にして腕で身体を守り、半ばパニックな状態になっている如神に、はて? とばかりに小首を傾げるモーリスは、他意はないとばかりに言葉を続けた。
 「如神くんの服が破れては困ると思っただけですけど…。身体は大きくなっても、流石に服のサイズを大きくすることは…。今着ている服は、それで完成品ですからねぇ」
 「な、何だ。そう言うことか……。びっくりしちゃったじゃないかぁー」
 そう言う如神には、モーリスが密かにほくそ笑んだことには気付いていない様だ。
 『素直ですねぇ…。如神くんは』
 こそこそと服を脱ぎだし、見事にすっぽんぽんの桃太郎になった如神は、それでも恥ずかしげに身を捩って全部は晒け出せずいる。
 「さあ、いらっしゃい。恥ずかしがらなくても良いですから」
 側に寄せると、耳元でこっそり『もう君の全ては知ってるんですからね』と囁いた。
 ものの見事に真っ赤になった如神を見つつ、これ以上からかうと、後の計画が運びにくくなると悟った為、彼は如神をカジノへ入場可能な姿へと変貌させる。
 「如神くん、痛くなったら言って下さいね」
 そう言いつつ、モーリスは能力を行使し始める。更にそっと耳たぶを甘噛みしては、刺激を贈る。
 「哥々…?」
 「如神くんが痛くない様に、ね。それに、この方が早く終わるんですよ」
 はっきり言って、そんな行為は必要ない。
 全くない。
 後発組の準備の時にだって、そんなことはしていないのだ。
 だが、モーリスは自分の楽しみを優先した。首筋に、音が聞こえる様にキスを落とすと如神の身体へ己の力を送り出す。ゆっくりと時間をかけ、成長を促すに連れ、きしみを上げそうになる如神の身体を、甘く優しく撫で上げた。少年の身体が、ゆっくりと成長して行く。ただ細かった首筋は、出来上がる骨格と共に太さを増し、モーリスの手にかかる質量もまた、小さな子供のものから青年のそれへと変化して行った。
 『ま、取り敢えずはこんなもんでしょ』
 そう心で呟くと、モーリスは能力の出し惜しみを止め、一気に彼を成長させる。
 ちなみに如神の方は、急に成長したこととモーリスのお楽しみの為、息がすっかり上がっている。
 「大丈夫ですか?」
 そう言いつつ微笑むモーリスに、如神の首が素直に振られる。
 『では、本番と行きましょうか』
 「じゃあ次は、お風呂でゆっくり準備しましょうねぇ」
 「え?」
 これで終わりだと思っていたのだろう、目を丸くして問い返す如神が可愛い。
 「紳士の嗜みですよ。綺麗に磨いて差し上げます」
 当然ながら、磨くだけで済まないことくらい、普通の状態の如神なら解る筈だろうが、今はどうにも脳味噌の回転率が悪かった。
 如神を抱き上げ、まるで王侯貴族が使用する様なバスルームへ軽々と運ぶモーリスの心の内は、楽しさではち切れそうだ。
 変貌した如神は、砂糖菓子の様に甘い風貌を持った青年になっている。完成された身体とはまた違う、何処か危うげな色気に満ち満ちており、モーリスの想像を凌駕する美青年ぶりを発揮していた。
 ざっとバスタブに湯を入れ始め、そこにオイルを垂らす。ラベンダーの香りがバスルームに充満して行った。モーリスはタイルなどに湯を浴びせ、暖めてから如神を降ろすと、自分はスーツの上着とタイを外して外に出す。
 「哥々、あのさ、綺麗にって、普通にお風呂入るだけじゃダメなの?」
 熱気でバラ色に染まりつつある肌に、内心ほくそ笑みつつ、実に無害な仮面を被り、モーリスはイケシャーシャーと言う。
 「日頃、洗えないところもあるでしょう? 最後は、このラベンダーの香りで仕上げてあげますからね」
 自分は服を脱ぐことをせず、袖をまくり上げた状態で如神を撫で上げ、頬にキスを落とす。ボディシャンプーを手に取り、適温に暖めてから泡立てると、如神の肌を磨き上げて行った。
 服が濡れ、肌に張り付き泡も着くが、モーリスは頓着しなかった。
 抱きかかえる様にして、首から徐々に手を滑らせる。
 「哥々、ね、何か、ちょっとぉ……」
 時折びくりと跳ねる如神の反応に、大層気を良くしつつ、モーリスは聞く。
 「気持ち良いですか?」
 薄い筋肉のついた胸を、円を描く様にして撫で上げ、ささやかな悪戯を仕掛ける。
 「ひゃっ」
 すんなりと伸びた長い手足が跳ねるのを、モーリスが捕まえた。自分の膝に後ろからまたがらせて座らせ、熱い吐息と共に聞く。手は徐々に下へと散歩し始めていた。
 「ここも、ちゃんと綺麗にしましょうねぇ」
 そう言うモーリスは、このバスタイムを満喫している。
 その後、バスルームに響くのは、如神とモーリスだけの、秘密の会話のみ──。



 つるつるお肌で上機嫌のモーリスと、何処か赤い顔をしている青年版如神が現れたところで、先発組が勢揃いした。
 「如神さま、如何なされました?」
 きょとんとした風に聞く兎月に、如神の顔は更に赤らむ。
 「な、何でもないよっ! ちょっときんちょーしてるだけっ」
 明らかに不審だが、何でもないと言われてしまえば兎月には何も言えないだろう。モーリスとセレスティを交互に見るも、互いににっこり微笑むだけだ。
 怪訝な顔をしている汐耶の横で、弓雫がポケットから飴を取り出して如神に渡す。
 「桃ちゃんに…」
 「え?」
 誰のことだと思ったのだろう如神だが、自分の目の前に差し出されている桃味の飴を見て、それが自分のことだと理解する。桃ちゃんって? とばかりに眺めつつ、飴を受け取ると礼を言った。
 「ありがと」
 ちなみに、全員が正装だ。
 汐耶はセレスティからプレゼントされたイブニングを、着慣れない為戸惑いながら身につけている。
 アメリカンスリーブでプリンセスラインの、夜空の様な濃紺のドレスだ。バックは背中が広く開き、半ばあたりから割れた裾の方には首元と同じレースが幾重にもあしらわれている。全体的に使用されている生地はシフォンで、胸元には色に合わせてブルーのスパンコールと恐らくは本物の宝石が散りばめてあった。手には首や襟元と同じレースの手袋。短めの髪はきっちりと後ろで纏められ、それとは解らぬウィッグで飾られていた。髪のところどころに見えるのは、やはり衣装と同系色の宝飾具だ。ドレスと同じ素材のショールを手にした汐耶は、チンチラのコートを羽織っている。
 メイクもしっかり決め、所謂クールビューティそのものだ。
 対して男性陣は、タキシードできっちりと決めていた。
 セレスティは黒を中心に、胸元にはスリー・ピーク・フォールドにしたハンカチを差し、ジュエリーは瞳と合わせたブルー系の物を使用している。羽織っているのは、ロシアンセーブルのコートだ。
 モーリスは濃茶で纏めたウィングカラーのタキシードに、同系色のアスコットタイ、やはりこちらも、瞳と合わせたグリーン系のジュエリーを使用。コートはサマー・アーミンである。
 兎月はセレスティより以前プレゼントされたと言うブルー系のタキシードに、トライアングル・フォールドのハンカチを胸元から覗かせ、やはり青系のジュエリーで纏めていた。コートにはホワイト・アーミンのロングを身につけている。
 如神は濃い小豆色のアシンメトリーの襟元を持つ燕尾タイプのジャケットに、同系列のパンツ、首元には鮮やかなルビーのチョーカーが輝いており、肩にフワリとミンクのコートを羽織っていた。
 弓雫はフェイスド・クロージャータイプのタキシードを、チャコールグレーで纏め、ルビー系のジュエリーで飾っていた。オセロットのコートを身につけている。
 「では、参りましょうか」
 にっこり笑うセレスティと共に、彼らは青銅色の屋根を持ち、ライトアップされて一層豪華さの増したグラン・カジノへと一歩踏み出した。
 ホテルに入った時も驚いたが、グラン・カジノの扉をくぐった時もまた、同じように驚きが溢れた。
 パリはオペラ座を設計したシャルル・ガルニエによってデザインされたここは、ベルエポックの代表であるアールヌーヴォ調の雰囲気を持ち、これこそ豪華絢爛の例えが相応しい。アトリウムのあるエントランスホールに入ると、左奥に大ホールが繋がる場所が見えた。大理石の床に、オニキスの柱が立ち並んでいる。
 通常であれば、フィジオノミストの鑑定を知らずの内に受け、入場料を払って更に奥へと入るのだが、彼らには強い味方のカードがあった。
 いや、それ以前にセレスティがいる為、形式上のやりとりが二、三あったものの、驚くべきスピードで中に入ることが出来た。ヨーロッパのカジノであれば、普通なら可成り待たされて然るべき話なのだが。
 最初にあるのは、サール・オルディネールと呼ばれるルーレットとポーカーで遊ぶ部屋だ。
 ここまでの間、一五○キロはあると言うボヘミアグラスのシャンデリアが連なり、煌々と内部を照らしている。壁には絵画がかかり、ここが美術館であると言われても納得する様な様子だ。
 次ぎに見えるのは、スロット。更に奥はプライベート・ルームになっている。
 モーリスはそれを頭で確認すると、モナコカジノ初心者である者達へと説明し始めた。
 「今いるフロアは、サール・オルディネールと呼ばれる場所です。ここでは欧州・サロンとアメリカ・サロンに分かれており、それぞれルーレットとポーカー、スロットがあります。それ以外のゲームをお楽しみになりたい方は、更に奥にあるプライベートルーム、サール・プリヴェにてどうぞ。勿論、ゲームを楽しむだけでなく、鑑賞を目的とするのも一つの楽しみ方であると、私は思いますけれど」
 悪戯っぽく笑うモーリスの言うことは、もっともな話でもあった。古き良き時代を彷彿させるそこは、一見の価値があるのだ。
 「ゲームを始めるに際して、まずはジュトン、アメリカ方式で言うところのチップですけれど、こちらに代えて頂く必要があります。これはクルーピエなどにカードを提示し、仰って頂ければ大丈夫です。ジュトンにも種類がありますので、こちらは皆様の希望に添って、その旨クルーピエにどうぞ。それとゲームに大きく勝たれた場合、クルーピエにプールボワールをお忘れなく」
 では…とにっこり笑ったモーリスは、皆をジュトン飛び交う舞台へと出演を勧めた。



 兎月は慣れない雰囲気に、目眩を起こしそうになっている。
 日頃は和に親しんでいる彼だ。煌びやかなシャンデリア、そこかしこで香るトワレ、勝ち負けで一喜一憂する人々の声。
 何もかもが日常とはかけ離れている。
 「兎月さん、大丈夫?」
 銀の髪が見えた時、瞬間自分の主を思い出したが、主は彼を『兎月さん』とは呼ばない。
 「如神さま。大丈夫ですよ」
 にっこりと笑いつつ答える兎月に、如神は良かったと頬を和らげる。
 これがあの小さかった如神とは思えない程、彼は面変わりしていた。すんなりと伸びた手足に、優しさと甘さの残る顔立ち。羽根帽子にトーガを羽織り、レイピアを腰に差したまま白馬に乗れば、王子様だと言われても頷けるだろう。
 「なら良いけど」
 「はい。お気遣い、有難う御座います」
 そう礼を言うと、ふと気付くことがある。
 「如神さまは、気になるゲームなど御座いませんか?」
 んふっとばかりに笑うと、兎月に腕を絡める。
 「一緒に着いて行っても良い?」
 ダメだと言われるとは思っていない顔だ。思わず破願した兎月は、快く了承した。
 「勿論ですよ」
 兎月としても、こうして如神がいてくれた方が心強い。ほっと落ち着いたところ、今までは聞こえなかった調度品や古物の声が聞こえ始めた。
 『こちらへお出で』
 兎月の耳が、ぴくりと動く。
 何が呼んでいるのだろうと、更に耳を澄ます。
 「どうしたの?」
 小首を傾げて聞く如神に、兎月はこっそりと囁いた。
 「呼ばれたのですよ」
 それで彼は解ったらしい。にっこり笑うと、素直に兎月に着いて行く。
 声のする方に歩いていくと、そこには何やら複雑な図形が描かれた馬の飼い葉桶の様にも見える長方形のテーブルがあった。何だろうと思っている兎月は、そこにいる人を見回してみる。
 誰もがジュトンを置き、一人がダイスを投げると歓声と落胆の声を上げた。ジュトンが目の前を行き来し、次々に横へと回るダイス。
 如神がクルーピエにカルト・ドールを見せると、ジュトンへと変えた。
 本当にここで良いのかを、その兎月に声をかけていたテーブルに触れて聞くと、微笑んだ気がする。目の間にあるものが何かも解っていない兎月にも、ダイスが回ってきた。
 「投げるんだよ。あっちの壁に当てる様にしないとダメだからね」
 何かを解っている如神は、そっと兎月に耳打ちした。
 「投げるのでございますか?」
 如神が肯き、そのままジュトンを置く。
 「クラップスだからね。手加減したら、やり直しになっちゃうよ。今、五にマークされてるから、五を出せば当たりだから。七を出したらニューゲーム」
 如神が囁くが、兎月は何を言われているのかさっぱり解らない。
 けれど。
 「では、行きます」
 台が、そしてダイスが投げろと言う声を聞き、兎月がダイスをロールした。
 綺麗にあちら側の壁に当たり、ころころと二つのダイスが転がっていく。
 「来いっ!」
 如神が叫ぶ。兎月は、何が何だか解らないまま、手を組み合わせ、五と心の中で繰り返す。
 転がるダイスは、漸く落ち着く気になったらしい。ころん、ころんと回転数が落ちて行く。
 「出ましたっ! 出ましたよ、如神さま!!」
 出た目は一と四、合計で五だ。
 歓声が上がると共に、負けた人間が唸る。パスライン・ベットの後、ポイントが決まり、オッズ・ベットで賭けていた兎月の前に、五名がダイスを振っていた為、ジュトンがそれなりに貯まっているのだ。
 テーブルにあったジュトンが、オッズに基づき兎月の元へと渡される。
 パスライン・ベットの場合、カジノの取り分は一.四一%だが、オッズ・ベットになると、それが○.八五%まで下がる。
 「おめでとう! でもね、これからだよ」
 朗らかに祝福した後、如神はにんまり笑う。
 「これから…で、ございますか?」
 「そ。お楽しみは、これからだよ」
 ポイントが出た為、次はカム・ベットに賭ける。『COME』と描かれている箇所にジュトンを置くのだと聞き、兎月は自分のジュトンをそこに置く。カム・ベットでは、パスライン・ベット同じく、七と十一が出れば勝ち、二、三、十二が出れば負けとなる。その他の目が出れば、オッズ・ベットと同じ要領で、出た目がカム・ポイントとなり、次回の七が出るまでに、そのポイントが出れば何度でも配当金を貰うことが出来る。七が出れば、その時、台にあったジュトンはカジノの物となり、パスライン・ベットへと移行する。
 「今度は、もっと貯めた方が面白いよ」
 如神の言葉に、兎月は頷く。貯めれば貯める程、配当金は高くなる。それが解ったのだ。
 果たして…。
 兎月は勝った。勝ちまくった。
 シューターは次々とポイントを外しまくり、更に一時間ばかり七も出ず、可成りのジュトンが貯まった時、またもやポイントが出たのだ。
 クルーピエが小首を傾げるほどに勝ってはいるが、カルト・ドールの威力と共に、全く持って普通に勝負している兎月には、痛くもかゆくもない。
 まさか勝ちの運が、ダイスと台に約束されているからとは、お釈迦様でも解るまい。
 さんざんっぱら遊びつくし、いい加減立ちっぱなしにも飽きた頃だ。
 「何だか喉渇いちゃった」
 アイスを舐めつつ、更に笑いっぱなしであるから、仕方がないと言えば言える。
 「では、休憩致しましょうか」
 「良いの?」
 「わたくしめも、そろそろ違ったものを見たくなりました」
 「じゃ、パフェと桃クレープ食べよう!」
 如神の言葉に、兎月はにっこり頷いた。



 モーリスと共に、セレスティはバカラを楽しんでいた。
 バカラとは、イタリア語でゼロを意味する言葉で、このゲームはカードの合計が九となれば最高得点となり、最低得点がバカラ──ゼロと言う訳だ。
 通常のフロアよりも一段高い位置にあり、手すりで一般席と区切られている。絨毯もまた特に豪華であり、正装をしたクルーピエがプントへと恭しくもカードを配っていた。
 セレスティの手元には、山となっているジュトンがある。隣の席に着くモーリスもまた、ジュトンは両手で持っても持ちきれない程だ。
 バカラのテーブルの周囲には、人だかりがし、カジノで一番華やかなテーブルとなっていた。
 一勝負が終わり、モーリスがこっそりセレスティに耳打ちをする。
 「解りました。私は一人でも大丈夫ですよ。…と。おや…」
 人だかりの中、見知った顔を見つけると、セレスティが手招きをする。
 モーリスもまたその方向を見て、にっこりと微笑んだ。
 手招きをされ、ゆっくりと歩いてきた青年は、表情は普段と変わらないままセレスティに声をかけた。
 「銀ちゃん、凄い。さっきから勝ってる」
 弓雫がそう言うのももっともなことだ。ほとんど一人勝ちの様になっている上、賭けている額が半端ではない。確かにバカラは、通常のゲームより賭金が跳ね上がるのだ。普通、他のゲームで賭けたとしても、この金額よりはゼロが一つ少ない。
 「では、私はこれで」
 ジュトンを換金したモーリスが、そのままバカラのテーブルを離れて行く。
 「あれ? 何処か行くの?」
 「ええ、モーリスは花を探して歩くらしいですよ」
 「お花?」
 何だろうと小首を傾げる弓雫に、セレスティが促した。
 「バカラをやってみますか?」
 「あんまり、良く解らないんだけど…」
 「一度やってみましょう」
 セレスティが背後に向かって微笑みかけ、彼にもジュトンをと言う。弓雫が慌てて──しかし顔は普段通り──カルト・ドールを提示した。
 運ばれてくるジュトンは、常識を越え、非常識まで超えている。
 「あの……。これ……」
 「はい?」
 真面目に何でしょうと微笑むセレスティと、こんなにどうやって使うのと思っている弓雫の思考はかみ合わない。けれどそんなことは、さほど重要ではないのだ。
 要は楽しめればいい。その一点で同意を果たした二人は、四人のクルーピエの動作に注目した。
 「取り敢えずは、カードを扱う側ではなく、プントに賭ける側から始めましょうか」
 弓雫はそのセレスティの言葉に素直に頷いた。
 ちなみにこっそり呟いたりもする。
 「我は願う。この手に勝利を」
 言霊使いの弓雫がそう呟けば、もう勝利は決まったものだ。
 セレスティは二人いるプントの内の一人だ。
 バンキエが二つのテーブルの間に付き、手元にサボ(カード容器)を置く。元から両側のテーブルに着いていたプントはジュトンを自分の枠の中に置く。プレーヤーはそれを見て、各々好きな金額を賭けている。このゲームの方式の場合、プレイヤーはプントの側にしか賭けれない。弓雫もまた、ジュトンの量に困りつつ、『好きなだけ賭ければ宜しいのですよ』と言うセレスティの言葉に、手持ちの五分の一──彼が知らないことだが、それは一般のサラリーマンの一ヶ月分の給料を超している──を賭ける。
 クルーピエが真新しいカードを配り始めた。
 バンキエ、プント、それぞれに二枚だ。
 セレスティはカードを見ると、表情の読めない面持ちで微笑み、このテーブル専用のボーイに声をかけるとアルコールを手に取った。
 クルーピエが更にカードを引くかを互いに尋ねた。
 ギャラリーが、あれこれとカードの詮索をしている。
 互いに答えはNo。
 手持ちのカードが開かれる。
 バンキエがスペードのジャックとハートの八、もう一人のプントはダイヤのエースとハートの五。
 そしてセレスティのカードは、ハートのエースとスペードの八。
 「え? …銀ちゃん、負けちゃった…?」
 まさか言霊使いの己の言が敵わないとは…と、弓雫はショックを受ける。
 淡々と驚いている弓雫に、セレスティは微笑んだ。
 「いいえ。私の勝ちですよ」
 そう。バカラの勝利者は、九の数字を持つものだから。



 マティーニを片手に、汐耶は目の前で回るルーレットをじっくりと見ていた。
 汐耶は、今晩ルーレットで遊ぶのは最後にしようと思っている。
 何故なら、ここに一人でいると、五月蠅くて敵わない。
 『じっくりゲームくらい、楽しませて欲しいわね』
 そう思っている最中、カクテルレディから微笑みと共に差し出される、本日何度目かのグラスに、汐耶は大きく溜息を吐く。
 『私を水腹にでもするつもりなのかしら、このカジノ』
 「C'est de cet invite et c'est ici(あちらのお客様からございます)」
 そう言われて、もう視線を送る気にもならない。
 怪訝な顔をする彼女に、『Un esprit n'est pas pris(気にしないで)』と呟くが、やはり出るのは溜息だ。断るのも失礼に当たるのだが、これでまた押し寄せて来られては、折角ゲームを楽しんでいるのに水を差されることになってしまう。
 案の定、立ち上がってこちらに来ようとしていたのだが。
 「如何ですか? …と聞くのも、無粋の様ですね」
 「モーリスさん…」
 成程、モーリスが汐耶の側に見えたから、彼は近寄ることを諦めたのだと理解した。
 「助かったわ」
 安堵の溜息を漏らす汐耶に、それは良かったとばかりに微笑むモーリス。彼には汐耶が困っていることなど、しっかりとお見通しの様だった。
 ちなみにモーリスが『無粋だ』と言ったのは、汐耶の前にあるジュトンを見ていたからだ。これで調子が悪いと言うなら、それは可成りの謙遜であろうと言う程に積まれていた。
 タブローの上には、ジュトンが山と置かれ、客が勝負の行く末を今か今かと待っている。
 ボールが止まった。
 赤の十二だ。
 二の四目賭け──フィナール・ドゥ──をしていた汐耶にも、配当が渡る。
 「お見事です」
 モーリスの言葉に、汐耶はにっこり笑う。さり気ない動作で腕を出すモーリスに、自らの腕を絡ませると席を立つ。
 ジュトンを受け取りプールボワールをテーブルにいたクルーピエ達に渡すと、受け取ったジュトンをボーイに任せ、二人で歩き出した。
 「今度はどちらへ?」
 「そうねぇ。…カードゲームなんかどうかしら?」
 「心理ゲームですか? それとも推理ゲーム?」
 「推理ゲームの方ね」
 にっこり二人でそう笑うと、ブラックジャックのテーブルへと向かった。
 クルーピエを見定めた二人は、その愛想の良い彼のいるテーブルへと着く。二人が着くことで、そのテーブルの人数は六人となった。
 汐耶のジュトンが四角い枠に置かれ、その他の者達も同じく置くのを見て、クルーピエがカードを配り出す。
 「あまり良いカードじゃないわね」
 ハートの三、クラブの四が汐耶のカードだ。他の客も、似たり寄ったり。モーリスのカードはクラブの五にスペードの十。
 そしてクルーピエの開かれているカードは、クラブのジャック。
 「カルト」
 汐耶は穏やかに言って、テーブルを指先でトンと叩く。
 「私もカルトですね」
 モーリスもまた、テーブルを指先でトンと叩いた。
 それぞれカルトが二人を合わせて四名、ノン・メルシーが二名。
 結局、クルーピエが再度カードを引く。客はレスト。クルーピエは自分で引いたカードがクラブの二であった為、更に自分でカードを引いている。
 再度開いたカードで、クルーピエのデパッセ。
 つまり客の勝ち。
 配当に従い、客にはジュトンが分けられる。
 六組のカードが再度シャッフルされ、ゲームが仕切直される。
 ふと視線に気付いた汐耶とモーリスが、何気なく振り返った。
 そこに見えたのは、後発組の一人だ。にっこりこちらに微笑むと、そのまま彼女はテーブルを見定めていた。
 「セレスティさまのプレゼントしたドレス、良くお似合いですね」
 モーリスが感嘆を込めて、そう言った。
 彼の言う通りだ。確かに彼女には、あの赤はよく似合う。
 「私の主は、本当に似合うものしか、プレゼント致しませんからね」
 にっこり微笑むモーリスには、負けたと思ってしまう汐耶だ。
 ここで『貴方もお美しいですよ』と言われたなら、ついでに言われたと思ってしまうだろう。けれど彼はそうは言わず、汐耶のドレス姿もまた、よく似合っていると感じさせ、更に自分の主も褒めているのだ。
 思わず笑みが漏れると、モーリスは不思議そうに視線で問いかける。
 「いいえ、何でも」
 そう言うと、汐耶は更にゲームへと集中した。
 二人は順調にジュトンを増やして行った。更に時間が経ち、テーブルから客が抜け落ちて、現在テーブルにはクルーピエと三人だ。幾度目かのシャッフル。
 汐耶の一枚目のカードはスペードの七とクラブの七。モーリスがハートの七とスペードの七。
 クルーピエのカードは、ダイヤの六だ。
 「これは、行くしかないでしょ」
 汐耶はここで賭けに出た。
 モーリスが頷く。
 「では、私も乗りましょうか」
 そして、二人同時にジュトンを同額追加し、最初の賭金の横に並べる。
 「「ダブル」」
 見事に声がハモる。そして再度。
 「「カルト」」
 汐耶、モーリスの声が響き、互いの指がトンと動く。
 彼らが狙うカードが出る確率は可成り低い。勝率は十%以下。
 しかも普通ならスプリットで行くところだ。
 けれど。
 「レディ・ラックと呼ばせて頂きましょうか」
 モーリスが満面の笑みを浮かべた。
 来たカードは、汐耶がハートの七、モーリスがダイヤの七。
 にんまり汐耶が笑う。
 「スリーセブンね。狙い通りよ」
 天を仰いだクルーピエが二枚目のカードを引く。
 更に引く。
 果たして、伏せていたカードはスペードの六、クラブの十であった。
 当然ながら、彼らの勝ちだ。
 スリーセブンで賭け金は十倍。ダブルダウンで賭け金は更に倍になる。
 「次は、表のブラックジャックを狙おうかしら」
 「では私も、レディ・ラックにあやかって…」
 そう言う二人は、互いに微笑み合った。



 「銀ちゃん、あの人、何かこっち見てるよ」
 弓雫がそう、セレスティに促した。
 「何でしょうねぇ」
 そう空とぼけて見るも、セレスティには覚えのある感覚だ。
 二人がそう言葉を交わしていると、その弓雫の言う人物から、セレスティの方へ勝負のお誘いがあった。
 「どうするの?」
 恰幅の良い紳士だ。恐らく彼は、今までのセレスティのゲームを見て、是非二人だけで勝負したいと思ったのだろう。
 その方法は、シュマン・ト・フェール。
 先程までやっていたバンク・ウーベルトと同じ六組のカードを使用して行うゲームだが、バンキエを決めることから勝負は始まっていると言っても良いだろう。決め方が、オークションだからだ。
 「勿論、これは受けて立たなくては、ねぇ」
 セレスティの勝負心に火が灯る。
 了承の意を返すと、すぐさまその舞台が設えられる。
 まずはバンキエを決める為のオークションだ。
 ゲームを納めるクルーピエから専用の用紙を渡され、それにセレスティはペンを走らせる。相手もまた同じく、その用紙に書き込んでいるのが解った。
 互いに書き終わった頃合いを見て、クルーピエがその用紙を受け取る。
 中央に戻り、二人が書いた用紙を見つめた。
 そこにあるのは、互いが賭ける金額だ。どちらかより高いそれを出した方が、バンキエとなる。
 通常、バンキエ一人、プントが二人で勝負し、盛り上がって来たところで、プントの一人が『バンコ』と叫んでバンキエと一対一の勝負を始めるのだが、今回は最初からバンキエ、プントの二人だけの勝負だ。賭け金は半端ではない。
 クルーピエが、互いをちらりと見やり、そしてセレスティの方へと手を差し向ける。
 「どうやら、こちらがバンキエとなった様ですね」
 ゆっくりと立ち上がり、ステッキを着いて席を移動する。
 「銀ちゃん。いくら賭けたの?」
 弓雫の素朴な疑問だ。対するセレスティの答えは、艶然とした微笑みだった。
 「内緒です」
 内緒と言っても、ジュトンをきちんと見分けることが出来る者なら、そこに積まれた賭け金に卒倒しそうな額であることが良く解る。相手は渋面を浮かべているだろう。
 テーブルに載るジュトンに、ギャラリー席から悲鳴めいた声が聞こえた。何事だろうと、弓雫はギャラリーではなくセレスティの方を見るが、何時も通り涼しい顔だ。
 「変なの」
 勿論変であるのはセレスティの金銭感覚なのだが、弓雫にしてみれば、平然としているセレスティに驚くギャラリー側が変なのだ。
 移動したセレスティが頷くと、クルーピエがカードを配り始めた。
 このゲームが恐ろしいのは、バンキエが負けるまで、賭け金がつり上げ続けられると言うことだ。付いた言葉が『ア・トゥ・バ』。日本で言うところの『青天井』。つまりは無制限のデスマッチの様なものだ。伝統あるカジノで、数々の伝説を生み出した方式でもある。もっとも、今回の場合、相手が参ったと泣きを入れたらドローとなる為、まだマシなのかもしれないが。
 二枚を互いが手にし、内容を見る。
 当然のことながら、二人は表情に出す様な真似はしない。
 クルーピエの方から、次を引くかの問いかけがある。相手が肯き、三枚のカードを持った。
 開かれるそれ。
 相手のカードはハートの二、ダイヤの三、スペードの十。
 対するセレスティはクラブの二とスペードの四。
 「銀ちゃん勝った」
 先程から数度のゲームを経験し、自分でもプントをやってみたりした弓雫は、既にルールを理解している。
 相手の得点は、十は○になるから、二+三+○で五。セレスティは二+四で六。
 更にジュトンが積まれ、カードが積まれた。
 グラン・カジノは昔ながらのヨーロッパ方式で成り立っている。
 一回のゲーム時間は、緩やかに流れて行くのだ。
 ちなみに、脂汗の流れる時間も長いと言う訳だった。
 幾度となく繰り返されるその行為に、相手の顔は徐々に青ざめ、対するセレスティは泰然としたまま、弓雫に置いては、顔面の筋肉は一ミリたりとも動かさずに浮かれている。
 「そろそろ、お開きにした方が宜しいのではありませんか?」
 自分も疲れて来たことだし、これが終わったらさっさと寝てしまおう、とは、セレスティ心の中の声である。
 しかし相手はこれ以上ない程、真剣な表情で口を開いた。
 「これが最後の勝負だ。絶対に、勝って見せる」
 「そうまで仰るのなら…」
 セレスティが余裕の笑みで、そう答えた。
 クルーピエの手が動き、カードが二人に配られた。
 カードを見る相手の顔が、安堵した様に、そして次には誇らしげに笑う。
 「解りやすい…」
 弓雫はぽつりと呟いた。
 クルーピエの三枚目を問う声がするも、二人はナチュラルのまま。
 カードが開かれる。
 相手のカードは、スペードのエース、ダイヤの七。
 そして。
 開いたカードは、ハートのエースにクラブの八であった。
 「流石、銀ちゃん」
 弓雫の唇が、微かに上がる。
 まるで慈悲を与える悪魔の様に、セレスティは微笑んだ。
 「私の勝ち、ですね」



 セレブの都、モナコ王国。
 紳士淑女の饗宴は、不夜城たるグラン・カジノで夜毎に興り、泡沫の如く生まれ出でては消えて行く。
 モナコの夜は、年明け早々絶好調──。


Ende

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┏┫■■■■■■■■■登場人物表■■■■■■■■■┣┓
┃┗┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┳┛┃
┗━┛★あけましておめでとうPCパーティノベル★┗━┛゜

【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

1883 セレスティ・カーニンガム(せれすてぃ・かーにんがむ) 男性 725歳 財閥総帥・占い師・水霊使い

1120 李・如神(りー・るーしぇん) 男性 13歳 中学生&呪禁官

1449 綾和泉・汐耶(あやいずみ・せきや) 女性 23歳 都立図書館司書

2019 鳴沢・弓雫(なるさわ・ゆみな) 男性 20歳 占師見習い

2318 モーリス・ラジアル(もーりす・らじある) 男性 527歳 ガードナー・医師・調和者

3334 池田屋・兎月(いけだや・うづき) 男性 155歳 料理人・九十九神

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          ライター通信
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 こん●●わ、またもや風邪をひいている斎木涼です。
 隣の席の野獣が風邪を引くと、もれなく私も風邪引きさんです。誰かヤツを何とかして下さい…(涙)。
 …それはさておき。

 年明け早々絶好調とか言うてる場合ではなく、既に明け切った感のある今日この頃では御座いますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
 今回は、リクエスト頂きました『モナコでカジノ』ゆったりヴァージョン(もしくはちょっとだけシリアス?ヴァージョン)をお送りいたしております。
 何分にも、セレブにほど遠い生活をしております故、とんでも勘違いなシーンがてんこもりかとは存じますが、ご容赦頂きたく思います…。
 ゲームのルールを書いた方が良いのかもと思いつつ、それだけで終わってしまいそう&何よりボロが出ちゃうわっ、と言う、全く以て情けない理由で、ルールは察して下さいませなことにさせて頂きました。ただ、一つ。BJにて『ダブルダウン(倍賭け)』の説明だけを少々。アメリカ方式であれば、あの場合でも『ダブルダウン』をかけることは出来るのですが、ヨーロッパ方式では、あれはルール違反で御座います。基本的には、九、十、十一、もしくは、十、十一の際にしか出来ません。
 詳しくお知りになりたい方は、OMCホットライン(注:ファンレター投稿とも言う)にて、メール下さいませ。あ、感想、苦情などもうんとこさ募集中でございます。
 ちなみに、内部の会話で使用しているカジノ用語は、基本的にフランス語となっております。

 >セレスティ・カーニンガムさま

 何時もお世話になっております。
 カジノリクエスト、有難う御座います。とても楽しんで書かせて頂きました。資料を見ておりまして、わたくしの方がモナコに行きたくなってしまいました(笑)。

 >李 如神さま

 初めまして、斎木涼でございます。
 如神さまには、ほぼ全員の方と絡んで頂いております。お風呂の方、同じく入浴をご希望されておられましたモーリス様と入って頂きましたが、宜しかったでしょうか。

 >綾和泉 汐耶さま

 お久しぶりで御座います。
 よんどろこない事態にてドレス着用とのこと。女性を着飾るのが大好きなわたくしは、貧弱な知識を振り絞って、嬉々とドレスアップな汐耶さまを書かせて頂きました。惜しむらくは、筆力が足りず、魅力を十分に出し切れなかったことでしょうか…。

 >鳴沢 弓雫さま

 初めまして、斎木涼でございます。
 のほほんとしつつも男前さが際だってらっしゃる弓雫さまには、やはりのんびりとセレスティさまとのバカラに興じて頂きました。楽しんでいただけたでしょうか。


 >モーリス・ラジアルさま

 引き続き、お世話になっております。
 モーリスさまには、カジノのゲームより、お花狩りをメインに書かせて頂いております。某所、もっと突っ込んで書きたかったとは、実は本音でございます。


 >池田屋 兎月さま

 引き続き、お世話になっております。
 兎月さまにお遊びいただきましたクラップス。実は初心者用とはほど遠いゲームでございました。他にも様々な賭け方があるのですが、それはまた機会が御座いました時にでも。『台がこちらだと…』には、思わずにんまりさせて頂きました。


 皆様に、このお話をお気に召して頂ければ幸いです。
 ではでは、またご縁が御座いましたら、宜しくお願い致します(^-^)。

あけましておめでとうパーティノベル・2005 -
斎木涼 クリエイターズルームへ
東京怪談
2005年01月24日

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