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『ハツハルノウララ(初春の麗) 』
威吹・玲璽1973)&黒鳳・―(2764)&霞澄・陽菜(2966)

 「初詣ぇ〜?」
 その尻上がりの返答は、明らかに拒否の様相を呈していた。そんな玲璽の返事と同じように、ママは片眉の尻を上げて口端を持ち上げて笑う。腕組みをして真っ直ぐに玲璽の方を見据える様は、どう足掻いてもママの要求からは逃れられない事を示唆しているようで、思わず玲璽は肩を落として溜息を零した。
 「…わーったよ、連れてきゃいいんだろ、連れてきゃ…ったく、日本人でもねえ奴がわざわざ初詣なんかに行ったって、ありがたくも何ともねえだろうがよ」
 「馬鹿だねぇ、だからこそ行くんじゃないか。その国の文化ってのに慣れ親しむと言うのも勉強のうちだよ。第一、日本人のおまえが、ちっとも日本の文化に慣れ親しんでいないじゃないか」
 「………」
 そう言われてみればそう言う気もする。一般的な日本の行事・祭事なんぞ、ついぞ気にした例がない。正月なんてのも普通の休日と何ら変わりがなく、精々初走りとか銘打って、仲間とつるんで族のように道路を爆走するぐらいで…。
 「族ってなーに?」
 「…陽菜、いちいち俺の言う事に興味を示さんで宜しい」
 「そうだぞ、レージと関わってためになることは殆ど在り得ないからな。こんなダメな大人の見本みたいな男を手本にするなよ」
 「ダメな人間の見本みてえな奴が偉そうに…………へぇ」
 いつものように悪態をつき返そうとした玲璽の言葉が途切れたのは、いつもと違う足音をさせながらやってきた黒鳳の着物姿の所為らしかった。長身はともかく、肌は小麦色、しかも細身ながら出る所は出て引っ込むべき所は引っ込んでいる、そんな黒鳳の所謂ナイスバディでは、一般的には和装は似合わないと言われている。が、その辺りはママの魔法か、黒鳳の着物姿は実に様になっていた。赤い髪を綺麗に結い上げ、歩き辛そうにしている黒鳳を、ニコニコと言うよりはニヤニヤと笑いながら玲璽が感心して自分の顎を撫でながら言う。
 「これが世に言う、『マゴニモイショウ』って奴だな」
 玲璽はちゃんと、『馬子にも衣装』と正しい発音で言ったのだが、日本語の慣用句に疎い黒鳳は、不思議そうに首を傾げ、こう言った。
 「……『タマゴにも衣装』?」
 黒鳳の脳裏には、中身を抜いた卵の殻に千代紙の着物を着せた、手作りの雛人形が浮かんでいた。そんな気配を察した陽菜が、首を緩く左右に振る。
 「違うよ、クロちゃん。『孫にも衣装』だよ。この少子化に伴っておじいちゃんおばあちゃんが一人の孫にたくさんのお金を注ぎ込む、って言う意味だよ」
 「………どっちも不正解」
 ブッブー。と間違いのブザー音を口真似して玲璽がわざとらしく溜息をつく。黒鳳の勘違い・聞き間違いはいつもの事だからまぁいい。が、陽菜は、テレビや本で色々なものを見聞きし凄まじい勢いで知識や感性を身につけているのだが、急激に成長を遂げた分、色んな知識が時々ごちゃ混ぜになっているらしかった。不正解を告げられた陽菜が、えー。と不満げな声を漏らして唇を尖らせる。そんな三人の遣り取りを、端からママが可笑しげに笑いながら見詰めていた。


 ともかく、正月休みで店も休業、テレビも特番ばかりで面白くない、よって暇潰しには丁度良いと、玲璽は黒鳳と陽菜を連れて近くの神社に初詣に出掛けた。今年の正月は天気も良く、真冬にしては暖かなぐらいで、神社の境内へと続く石畳の道では、艶やかな晴れ着姿の女性もちらほらと伺える。そんな華やかな姿に目を奪われ、歩調が鈍る玲璽の耳を、黒鳳が思いっきり抓りあげた。当然、痛みに玲璽が悲鳴をあげる。
 「イテテテテテ!何すんだっ、てめえは!」
 「しっかり前を見て歩け、レージ。お前は俺達の案内役だろう?」
 憮然とした表情で黒鳳が言う。二人の間に陽菜が挟まっているから、耳を捻り上げるぐらいで済んだが、もし陽菜が居なかったら、確実に、会心の鋭い膝蹴りが炸裂していただろう。赤くなった自分の耳を片手で押さえ、玲璽が陽菜の頭越しに黒鳳を睨み付ける。
 「なんだよ、いいじゃねえか、目の保養ぐれえ。普段、可愛げのねぇ女ばっか見てるからたまには…って、だから痛えっって!」
 再び耳を捻り上げられ、叫ぶ玲璽。ぎゃあぎゃあと言い争う二人の耳に、周囲のひそひそ声が聞こえた。
 (痴話喧嘩かよ?こんなところで…)
 (喧嘩する程仲がいいとは言うけれどねぇ…場所を考えないと…)
 (子供が居るのになぁ、あれじゃ教育上良くないぞ…)
 (あの子は慣れてるみたいね、こんな展開。両親が喧嘩してるのに平然としてるわ…)
 「………」
 「………」
 玲璽と黒鳳は思わず互いの顔を見合わせる。どうやらこの三人、端から見れば親子に見えない事もないらしい。だが、そんな世間の認識を、玲璽と黒鳳が承認できる訳もなく。
 「誰が誰の両親だと!?ふざけた事言ってんじゃねえぞ、ァあ!?」
 「全くだ、レージなんかがまともなオヤになれる訳がない」
 観衆(?)に噛み付く玲璽を、ぼそりと謗る黒鳳。再び言い争いが始まり、新たに通り掛かった参拝客にも、やっぱり「夫婦喧嘩…?」と囁かれていたのだった。

 そんな二人はほったらかし、陽菜はひとりで何かを夢中になって見詰めている。参道の両脇にはずらりと屋台が並んでいたのだが、その中のひとつ、綿菓子屋に興味が沸いたらしい。
 大きな器の中で砂糖の白い靄が沸き起こり、それを長い割り箸で巻いていくと、瞬く間にふわふわで純白の綿菓子の出来上がりだ。たこ焼きや鯛焼き、フランクフルトなどは見た事があったが、この砂糖菓子は、実物も製作過程も初めて見た陽菜は、驚きで目を丸くする。そんな陽菜の肩を、口喧嘩に疲れたらしい玲璽が軽くぽんと叩く。
 「どうした、陽菜。綿菓子が珍しいか?」
 玲璽がそう言うと、陽菜はこくりと頷く。再び視線を綿菓子屋に向け、今度は仄かなピンク色に染められた甘い雲を見詰める。陽菜の「わぁ」と言う口の形を見て、玲璽が小さく笑った。
 「よっし、陽菜。折角の正月だしな。俺様が買ってやろう」
 「本当?」
 キラキラと目を輝かせてこちらを見上げてくる陽菜に、玲璽は力強く頷く。一歩引いた所でこの様子を見守っていた黒鳳が、腕組みをしたままで
 「へぇ、珍しい事もあるものだな。玲璽にしては気が利くじゃないか」
 そんな黒鳳に、玲璽はいつものように言い返す事はせず、寧ろニヤリと自信ありげに笑ってみせる。そのいっそアヤしげな笑みに、黒鳳は思わず怯んでしまった。
 「な、なんだ不気味な…」
 「ふふふ…俺を馬鹿にすんのも去年までだ、クロ。今年の俺は、元旦から一味違うんだぜ!」
 見よ!とばかりに玲璽が懐から取り出したもの、それは無造作に重ねられた一万円札(しかも新紙幣)の束である。ふふん、と玲璽が自慢げに胸を張って二人を見た。
 「すごーい、玲璽兄、お金持ちー!」
 手を叩いて囃し立てる陽菜とは対照的に、至って冷静に黒鳳は眇めた目で目の前の男を見た。
 「…レージ、それはあの方から預かった金だろう。お前のものじゃない」
 「う、煩いな。預かった金だろうがなんだろうが、好きに使っていいって言うんだからいいじゃねぇか。…ははぁ、さてはお前」
 ニヤリ。とまた玲璽が笑う。さっきと同じように、その笑みに黒鳳はうっと怯んで一歩下がった。
 「な、なんだ」
 「さては、俺が陽菜ばっか構うからヤキモチ妬いてんだろ。まったく、元旦ぐらいは素直になっとけっつーの」
 「………」
 カカカと呑気に高笑いをする玲璽を、無言のまま見詰めていた黒鳳だったが、いきなり近くにあった何かを引っ掴むと慣れた仕種で構え、引き金を引く。パン!と乾いた音を立てて、空気で押し出されたコルクの弾が、玲璽の額のど真ん中にクリティカルヒットした。
 「イテ!痛ぇじゃねえか、このやろう!」
 「お前がロクでもない事を言うからだ」
 空気銃を構え、尚も玲璽の額にピタリと照準を定めたままで黒鳳が言う。何おう、とばかりに玲璽も同じ銃を手に取り、向かい合って互いに構えあう。パンパン!と周囲に空気の弾ける音が響き合い、跳弾した弾の余波を食らって、何人かの参拝客から悲鳴が上がった。射的屋台の店主が慌てて二人の諍いを止めようとしたが、
 「ちょっとあんちゃん達!痴話喧嘩でウチの商売の邪魔をせんでおくれよ!」
 「痴話喧嘩じゃねえ!」
 「痴話喧嘩じゃない!」
 二人に同時にツッコミを入れられ、ついでに同時に空気銃の二つの銃口が店主の方を向き、思わず店主が小さく悲鳴を上げて両手を高々と上げた。そんな大人げない大人の袖を、ちょいちょいっと陽菜が引っ張る。玲璽と黒鳳は、ほぼ同時に、うん?と少年の方を見た。陽菜はと言うと、そんな二人には視線を向けず、向けられた銃に(と言うか多分黒鳳達の迫力に)怯えた店主に向け、千円札を一枚差し出した。
 「はい」
 「…へ?」
 「二人分」
 どうやら、陽菜は黒鳳と玲璽に、ちゃんと金を支払って射的をしろと言っているらしい。その意を酌んだ屋台のオヤジが、二人の前にアルミの皿に乗ったコルクの弾を恐る恐る差し出す。戸惑う二人に、陽菜が無言で正面のとある一点を指差した。
 「…なんだ、あれが欲しいのか?」
 玲璽が問うと、陽菜がコクリと頷く。それは、十五センチ程の高さのウサギのぬいぐるみであった。
 「よっしゃ、玲璽オニイサンが獲ってや……」
 玲璽が言い終わる前に、黒鳳がウサギのぬいぐるみに向け、空気銃を構えてコルク弾を放つ。弾はウサギの額ど真ん中に命中するが、ぬいぐるみは後方に傾ぐだけで倒れる事はなかった。
 「……ちっ」
 「ヘタクソ」
 ぼそりと小声で突っ込む玲璽と、それを無言で睨み付ける黒鳳。二人は睨み合ったまま、手探りでコルクの弾を詰め、親の仇かなにかのような勢いで、ぬいぐるみをビシバシ撃ちまくる。そんな険悪な雰囲気の中、陽菜はと言えば、もうすぐ手に入るだろうウサ美(仮名)に既に思いを馳せているのか、一人楽しげに顛末を見守っていた。

 玲璽はともかく、黒鳳は当然、銃の扱いには手馴れている。オモチャの空気銃とは言え、さっきから一発も外さずにコルクの弾をウサ美(仮名)に命中させているのだが、ぬいぐるみは底部が重くなっているのか、ぐらりと傾ぐものの、なかなか倒れようとはしない。それが、着慣れない着物で動き辛い所為か、或いは周囲の雑踏が気になる所為か、とつらつらと考えていると、結果的に黒鳳の意識は散り散りになった。そんな彼女の様子を、人込みの中から窺う人影がいた。
 いつもの黒鳳なら、この時点で相手の存在に気付いている筈だ。だが、今は注意力が散漫な上、増えたギャラリーのざわめきで気配に気付く事が出来なかった。男が一人、周囲の騒ぎに紛れて黒鳳の背後に近付く。人の影から手を伸ばし、男は射的に夢中になっている黒鳳の腕に引っ掛かっていた、絞りの巾着袋を素早く奪おうとした。
 「!?」
 その時点になってやっと、黒鳳は男の気配に気付いた。引いた肘をそのまま相手に叩き込もうと身体は動こうとする、だが上手く動かない。黒鳳の身体は、日本に来るまでの厳しい訓練の賜物で、反射的に攻撃を加えようとしたのだが、相手を組織の刺客だと勘違いした途端、黒鳳の精神は萎縮し竦んでしまったのだ。へなへなと腰砕けになり、傍にいた陽菜の肩に寄り掛かる。驚いたのは陽菜の方だ。慌てた陽菜は、黒鳳に寄り掛かられたまま、無言で玲璽の袖をぐいぐいと引っ張る。んあ?と不機嫌そうな声を漏らして玲璽が陽菜の方に視線を向けた。
 「あんだよ、今、おまえの為に……クロ?」
 目を見開く玲璽に、陽菜が無言のままで向こうを指差す。陽菜の指差す向こう、雑踏を掻き分けて、首尾よく巾着袋を奪った男が、意気揚々と走り去っていく後ろ姿が見えた。もう一度、黒鳳の方を見る。肩を震わせ、見開いたままの赤い目には、明らかに怯えと混乱の光が揺れ動いていた。瞬時に状況を理解した玲璽が、屋台のオヤジに空気銃を押し付け、走り出す。黒鳳は、震える手で陽菜の衣服を掴み、その小さな肩に額を押し付ける。幾ら女性とは言え、背の高さも体格も自分より大きな黒鳳の身体を、陽菜はよろめきつつも必死で抱えていた。


 やがて周囲の騒々しさも止み、少し落ち着きを取り戻した黒鳳は、陽菜と共に射的屋台の裏側で、店主の好意により椅子に座って暖かい番茶をご馳走になっていた。今になってようやく、玲璽がその場にいない事に気付く。きょろきょろと辺りを見渡していたが、見慣れた長身は見つからなかった。
 「…レージは?」
 黒鳳の問いに、陽菜は黙って首を左右に振る。同じように店主も首を振った。溜息を零して茶碗に口をつける。と、向こうから当の玲璽が、こちらに向かって手を振りながら戻ってくるではないか。どこに行ってたと悪態を付きかけた黒鳳だったが、玲璽が連れてきた男の顔を見て、不意にその表情が青ざめる。それは先程、黒鳳から巾着袋を奪って逃げた男だった。が、黒鳳にとってはそいつはケチな引手繰りではなかった為、身体は先程の恐怖を思い出して強張りかけてしまったのだ。そんな黒鳳の様子に気付いた陽菜が、その手をきゅっと両手で握る。その柔らかな感触に消えそうになる正気を引き止められ、黒鳳は、多少の動揺を見せつつも冷静さを保ったままで玲璽が連れてきた男と対峙する事が出来た。
 「ほれ、クロ。よく見ろ」
 そう言って、玲璽はずいと首根っこを引っ掴んだまま男の顔を黒鳳の方に突き出す。思わず後ろに仰け反りかけながらも、黒鳳はまじまじと引手繰りの顔を見た。顔面に痣があったり腫れてたりするのは、恐らく玲璽の鉄拳の結果だろう。埃だらけのまま、ヘヘ…と間の抜けた笑みを向ける引手繰りは、どう見ても組織の刺客には見えなかった。
 「な?全然迫力ねえだろ?コイツはただの小者だって。正月の目出度さに浮かれ出たケチな野郎さ」
 玲璽の言葉に、仰るとおりで…と遜る引手繰り。自分で言うな、と玲璽が最後に一蹴りかまし、パッチワーク造りの巾着袋を取り戻すと、お咎めなしで開放してやった。引手繰りは、その恩義に応えて宝の山を贈っ…な訳もなく。覚えてろよ!の決まり文句と共にどこかに走り去っていった。
 「ま、正月だしな。あんなつまらねえ野郎はうろうろしてるだろうが、それ以外の奴らなんぞ、この寒いのにわざわざ出てきやしねぇって。誰だって正月ぐれぇは休みたいだろうし、な?」
 玲璽がそう言って笑う。あの組織の活動に、正月も盆も関係ない事は、所属していた黒鳳が誰よりも良く知っている。が、今は玲璽の戯言を信じたい気分だった。こくりと頷き、黒鳳は照れ隠しか、口の中でぼそぼそと礼を言って玲璽から巾着袋を受け取った。


 ようやく本題に戻り、三人は境内に向かって石畳の上を歩いて行く。本殿に近付くにつれ人の数も増えて歩き辛くなる。今度は黒鳳を真ん中にして、その両脇を男二人で固めていた。陽菜も、片腕にウサ美(命名済)を抱いてはいるが、その表情はいっぱしの男のものだった。
 本殿には、初詣客用の巨大な賽銭箱が用意され、人々が思い思いの額の硬貨(時折は札も)を投げ込み、一年の無事を祈っている。その風景は、陽菜と黒鳳にとっては物珍しいばかりで、きょろきょろしている大小のコドモに、玲璽は笑って、それぞれに五百円玉を手渡した。勿論、この金額は大奮発なのだと強調する事は忘れていない。
 「いいか?年の初めにはな、賽銭を放り込んで手叩き、願をひとつ掛けるんだ。神さんも、初詣ん時には気が大きくなってるからな」
 適当な説明をし、お手本とばかりに玲璽が五百円玉を賽銭箱に向けて投げ込み、パンパンと二回拍手を打つ。そのまま手の平をあわせ、目を閉じて何かを祈るような表情をした。それを脇から見ていた黒鳳と陽菜も、見よう見まねで不器用に賽銭を投げ、拍手を打つ。
 『……そうだなぁ…人死にが出ねぇように…ってのは俺にしちゃ真面目過ぎるか?んじゃまぁ…、テキトーに、今まで通り平穏無事ならそれでいい』
 本当に今まで通りなら、ママも居て黒鳳も居てその他にも個性豊かな面々が居て、それで平穏無事である筈がないのだが。それでも、それでいいと静かに心の中で願う玲璽の隣で、聞き慣れた大声が響いた。
 「玲璽がもう少しマシな男になりますように!」
 周囲でクスクスと笑う声がする。はっ、と玲璽が目を開けて隣を見ると、至極真面目な表情で黒鳳が手を合わせており、わざとらしく片目だけ開けると、ちらりと玲璽の方を見てニヤリと笑った。
 「てめ…願い事は黙ってするもんだっつーの……この色黒女がちっとでも大人しくなりますように!」
 勿論、言葉の後半は玲璽も大声だ。クスクス笑いは更に広がり、そんな周囲の視線を余所に、玲璽と黒鳳は本尊の目の前でぎりりと睨み合った。
 そんな二人に挟まれ、長身同士の谷間で陽菜が大人しく手を合わせている。頭の上で何やら火花が散っているような気がするが、その辺はご愛嬌。片腕にウサ美を抱きかかえたまま、陽菜が心中で願う事はと言えば。

 『今年こそ、クロちゃんと玲璽兄が、仲良くしますように……』

 きっと神様は、陽菜の願いだけ、叶えようと努力してくれるに違いない。


おわり。


☆ライターより

       新年あけましておめでとうございます

…と言ってはみたものの、既に七草粥の頃合いも過ぎてしまってはイマイチ実感が…(汗)
と言う訳で、新年迎えても相変わらずなへっぽこライター碧川でございます。いつも本当にご依頼ありがとうございます!
こんなボケライターですが、今年もどうぞ良しなに。寒い日が続きますが、風邪などお召しにならぬようご自愛くださいませ。
またお会いできる事を心からお祈りしているであります!(←何かに感化されているらしい・笑)
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2005年01月17日

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