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『■Ghosts are our friends!■ 』
武田・隆之1466

 一行は雪深い山間の温泉宿に来ていた。
 多少ひなびた感はあるものの、老舗独特の雰囲気もある日本旅館で、仲居達の態度も大変よく、武田・隆之(たけだ・たかゆき)はご満悦だった。
「正月くらいのんびり過ごそうと思ってたけど、バッチリいい宿に当たってよかったよかった」
 宿の一覧表や地図を見ながらの皆を見ながら、荷物を整理する。
 女部屋・男部屋ともちろん分かれてはいるが、寝る時以外はせっかく皆一緒だしと、広い男部屋で過ごすことにしていた。
「露天風呂も滝風呂とかあるみたいですし、お料理もこの時期のものを使った豪華なものが出るみたいです」
 どこかほんわかしながらの、村雨・花梨(むらさめ・かりん)。
 彼女と同じ「ご案内」を見ていたシオンも、
「温泉もお料理も楽しみです! 宴会になりそうですね!」
 と、にこにこしている。
「ここなら安全そうかなぁ……まだ……」
 と、びくびくしながら荷物持ちをさせられていた、半ば無理に引っ張られてきた三下忠雄。
 重そうに荷物を下ろすが、その三下に泣きつかれて、アトラス編集部に顔を出したのが運のつきと、黒澤・早百合(くろさわ・さゆり)は浮かぬ顔をしない。
「なんだか嫌な予感がするのよ」
 と、隣で早速浴衣を人数分出している藍原・和馬(あいはら・かずま)に呟いてみるが、
「嫌な予感って?」
 と、しっかり楽しもうと生き生きした彼の顔を見ていると、言う気も失せて早百合は諦め自分のバッグを引き寄せた。
 その中でただ一人、ちょっと青褪めた感じの武田・一馬(たけだ・かずま)が佇んだままでいる。
 内心、
(ああ、この宿ちょっとヤバイと思う……)
 と、自分の叔父───隆之に言ってあげたいのを我慢していた。
(けど、あの人霊感ゼロだしなあ……)
 はぁっと人に知られぬようため息をつき、俺がなんとかするしかないか、と、こんなことには半ば慣れてしまっている彼は小さな決意をしたのだった。



 そんなこんなで豪華な山の幸を使った夕食が出て、一頻り宴会のようなものをすると、一度露天風呂に入ってからまた宴会にしよう、と決めて女性陣二人は女部屋に戻って行った。
 男性陣も露天風呂へ行こう、と、いそいそと廊下を歩いていた。三下は時折通り過ぎる仲居さん達にまで律儀に「あ、どうも」「御邪魔してます」だのと挨拶している。
「おお、左が滝風呂で右が露天風呂に繋がってる通路か。まず滝風呂に入ろうじゃないか」
 隆之はゴキゲンである。
 シオンも、いつも銭湯に通っているので風呂用具一式は持ってきていたが、またもや目を輝かせた。
「こんな凄い温泉、銭湯にもありません!」
「そりゃ銭湯に滝風呂があったらすごいよ」
 からからと豪快に笑いながら、風呂桶に湯をたっぷりと入れ、頭からザバーッとかける、和馬。
「よーし、入るぞ!」
 一足早く足等を洗った隆之。
 ぺたぺたと歩いていくが、三下も当然連れられて行く。
 その後ろで、その声に何気なしに顔を上げた一馬が、ギョッとする。
 滝風呂に、明らかに自縛霊と思える、何故か江戸時代風の着物を着た侍の霊が血だらけで、剣を構えて「待っていた」。
「ちょ、ちょっと待って叔父さん! 背中、背中まだ流してないでしょ。流してから入ったほうが気持ちいいよ!」
 流してあげるから、と熱心な甥に、
「ん、そうか」
 と、素直に戻ってくる隆之。三下のほうは霊を見て、ガタガタと動けないで金縛りにあってしまっていた。
 出来るだけ時間をかけて隆之の背中を洗う一馬。
 そんな一馬に、分かっているのか分かっていないのかぽんと肩をひとつ叩き、
「いつもながら叔父さん孝行だなぁ」
 とにこにこしながら右側の露天風呂へと行く和馬。立ち竦んだままの三下を発見し、
「どうした、もうのぼせたのか? 露天風呂で外のいい空気吸おう」
 と、手を取って、侍の霊には気付かず実質的に助けてやった。
 背中を洗ってもらって気持ちよさそうな隆之に、ワクワクとシオン。
「車の中でのお約束どおり、色々な場所でブロマイド名刺用の写真、撮ってくださいね! ここの場所も是非、時間外に旅館の人に許可を取って入らせて頂きますので!」
「ああ、分かってるよ。任せときな」
 ぐっと親指を立てる、隆之。
 そしてシオンも一緒に、何故か「露天風呂のほうが星空も見えて気持ちがいいから」と強く推され、隆之は侍の自縛霊からは逃れられたのだが───。


 一方その頃、女風呂のほうでは。
「ねえねえ、あそぼうよー」
「今忙しいの」
「ぼくもかみあらってあげるから、あそぼー」
「自分の髪は自分で洗うと決めているの」
 早百合は、やはりこんなことだと思った、と、男の子の霊に髪の毛を引っ張られながら、その髪を洗っている。ここまで霊に冷静に対応する人間も珍しい。いや、冷静というよりは慣れなのだろうか。
 早百合の気を引こうと石鹸を泡立てて鏡を見えなくしたり、ポルターガイストで風呂桶を全部壊したりしていると、さすがの早百合も逆ギレした。
「お姉さんは忙しいって言ってるのが聴こえないのーっ!?」
「まあまあ、早百合さん」
 隣で一部始終を、こちらは女性の霊の生前の愚痴を真剣に聞いてあげていた花梨が、なだめる。
「そんなこと言っても、お風呂くらいゆっくり入りたいわよっ」
「どうですか? 水絵さんもご一緒に。あ、もちろんそっちの男の子も」
「水絵さんって誰……」
「この方です。聞いてください早百合さん、お気の毒なんですよ、元からの心霊スポットのこの場所に家を建てたその年に、台風で家が滅茶苦茶になって、それで亡くなってしまったそうなんです」
「幽霊と打ち解けないで!」
 悲鳴のように頭をかきむしり、早百合は早々に風呂場を出る。花梨は慌てて「水絵さん」に挨拶してから、後を追った。



 パカーン、ポコーン、と音が跳ね返る卓球場で男性陣と女性陣は合流したのだが、早百合は頑として、
「私は宴会しないで今日はとっとと寝るわ」
 と、風呂に行く前の意見を通そうとしている。
「早百合さん、せっかくですからもう一遊びしましょう」
 卓球をしながら、シオン。
 話した隙を取られ、和馬に一勝されてしまった。
「よし、次は俺の番だな」
 はりきって浴衣の袖をまくりあげる隆之を見ていた一馬は、またもや目を疑った。シオンや和馬は気付かなかったのだろうが、卓球場にいつの間にか浮遊霊と思われるお婆さんが卓球場の天井辺りを行ったり来たりしている。
「お、叔父さん! あっちのエアホッケーにしようよ!」
 内心疲れてしまっている一馬だが、叔父は気付かない。三下を連れて、
「俺は卓球がいいなあ」
 と、早速用意をし始めている。
 そのフロアにあった自動販売機でコーヒーを買った和馬は、そんなやり取りを見つつ、目の端にふと映った女の子の霊に「気付いてしまった」。
 まあ、温泉辺りから何かあるとは思ってはいたが、やはりここはいわくつきスポットらしい。だからといって楽しまずにいるというのも損だ。和馬はコーヒーを飲みつつ、泣いている女の子の霊に近付いて行った。
「そこのお嬢ちゃん、どうかしたの?」
 極めて優しく、尋ねてみる。
 すると女の子は顔を上げ、
「ここにね、学校がたってたの。でも、空襲でみんなとしんじゃったの」
「あれ、水絵さんて人の家じゃないんですか?」
 早百合を宥め続けていた花梨が聞いていたらしく、尋ねてくる。三下とシオンはその声に振り向き、初めて霊の存在に気付いて二人同時に青褪めた。
「どうした三下、よそ見してると俺の圧勝だぜ!」
 隆之が、パコーンとひとり気持ちよく卓球している。
 コロコロン、と三下が受けずにいたため転がって行ったボールを、ひょいと足のないコックの格好をした男性が背景を透き通らせながら、拾い上げた。
「だから嫌な予感がするって言ったのよ、温泉から何から幽霊三昧じゃないの!」
 早百合は逆ギレしたままだ。その言葉に、隆之の動作がピタリと止まる。
 迫力のある笑顔で、甥の一馬に歩み寄った。
「こんないい旅館に、幽霊なんかいないよなあ?」
「もも、もちろんです、叔父さん」
「で、でもこのコックさんの幽霊さん、足が───」
 シオンが恐る恐る言うと、
「錯覚だ! 第一俺には何も見えん!」
 と、一蹴してしまう。実際、霊が見えていないのは隆之だけのようだった。
 人知れず奮闘していた一馬は自分の努力が水の泡になったのにもめげず、笑顔を作って叔父に答える。
「え、ええと……うん、みんなきっと集団幻覚でも起きてるんだよ」
「ですが、さっきお風呂場でもお侍の幽霊が」
 言いかけた三下の言葉を、隆之は断固として奪った。
「幽霊とか言うな! せっかくの正月、せっかくの温泉が台無しだろ。俺は今年こそ霊とは無縁の生活を送るのさ」
 だが、少し遠い目になっていたのは何故だろう。
「そういえば武田さん、あなた心霊カメラマンなんですってね。あちこちの写真を撮ってみてくれないかしら」
 と、霊の悪戯から来た逆ギレで、今も青筋が立っている早百合が提案する。
「心霊は余計だ。でも、なんでだ?」
 隆之が尋ねると、
「当然! 私の霊剣で皆虐殺してあげるのよ」
 と、どこか「いって」しまった笑いをふふふとこぼす。幽霊もコワいが早百合もコワい。
 そんなシオンの視線には気付かない早百合の意図よりも、
「シオンさん、あんたもブロマイド名刺用の写真が欲しいから色んなところで写真撮ってくれっつってたな。丁度いい、今からあちこち回ってみよう」
 と、思い出したようにカメラマンの腕が鳴る、と機嫌を直す隆之だった。



 スポットに照らされた美しい庭。許可を取ってもう一度やって来た露天風呂。滝風呂。遊戯場。そして男部屋の順に皆で撮ったりシオンのために彼一人だけの写真を撮ったりしていたが、隆之の今回持ってきたカメラでは現像は翌日になるとのことで、早百合はキレたやり具合がなく、苛々がつのるばかりのようだった。
「私は嫌よ、こんなところで眠れないわ」
 早百合の意見ももっともだ。
「だけど、こんな夜中じゃもう帰るに帰れないよ? 車で寝るとしても凍死してそれこそ幽霊の仲間入りになるのも嫌だし」
 とは、和馬。
「み、みんなで眠ればコワくありませんよ」
 シオンの言葉に、うんうんと力強く隣で頷いている、三下。
「事情が事情だし、悪い霊かいい霊かも分からないうちだから───私達もこの部屋に布団敷いて寝ましょうか、早百合さん」
 そしてその花梨の意見が通り、女性陣の部屋から布団を持ってきて、三下はなんとか全員が眠れるようにうまく布団を敷いた。
「確かに悪い霊だったら、洒落にならないし───でも、どうして皆、違う時代の人間や色々な格好の人(霊)ばかりなんだろう?」
 誰にも殆ど聴こえないように自問自答する、どうにも解せない一馬である。
 そしてその夜、全員が結局睡魔に負けて眠ってしまった。



 真夜中、何気なく起きてしまった和馬は、喉が乾いたので部屋を出て自動販売機で、今度はあたたかなレモンティーを買った。
 しくしくと、再び泣く声が聞こえる。
「おじちゃん」
 見ると、先刻の女の子だ。
 和馬は一つため息をつき、微笑んでしゃがみこみ、女の子と目線を合わせた。
「どうしたの? まだ哀しいのかい?」
「いっしょに、きてほしいところがあるの」
 そう来たか───。
 この女の子は、どうやら「悪い霊」に入るらしい。
 和馬は立ち上がり、にっこり笑った。
「ごめんね。おじさんはまだこの世にいたいんだよ」
 すると、女の子は泣きながら、ふるふるとかぶりを振る。
「ちがうの」
 ちがうの───と、女の子は更に涙を増やした。
(───?)
 何が違うというのだろう?


 
 一馬は「誰かに呼ばれた」ような気がして、ふと目が覚めた。
 起き上がると、和馬の姿がない。
 皆を起こさないよう、そっと部屋を出る。
 もう一度、神経を集中してみる───確かに、声が聞こえる。
<ここにきておくれ───>
<誰か、我らの無念を晴らしておくれ───>
 と。
 悪い霊、に入るのだろうか、これは。
 だが、完全に悪い霊ならば、一同の誰かは怪我でもしていそうなのだが、今のところ軽い悪戯や自己主張だけのように思える。
(我らの無念……?)
 どういうことだろう。
 とりあえず一馬は、声のするほうへゆっくりと、歩いて行った。



「お母さん、しなないで───」
 そんな声に花梨が目覚めたのは、午前2時頃のことだった。
 空耳かと、まだ寝ぼけている頭に手をやる。
 ひたり、とその額に、冷たい手が当てられた。
 目を開くと、すぐ目の前に小学生くらいの男の子が座っていた。けれどどこか服装が戦時中のものである。
「こんな熱なんてすぐぼくが冷やしてあげるから、しなないで───空襲の夜、ぼくをひとりにしないで───」
 どうやら、花梨を通して母親を「見て」いるようだ。
 そっと起き上がり、花梨は安心させるように微笑んでみせた。
「大丈夫。私、元気です」
 すると男の子は目を輝かせ、
「本当!? じゃ、一緒に遊ぼう! 最近空襲がないから、遊べるのは今のうちだよ!」
 と、手を引っ張ってくる。
 迷ったが、男の子の表情を見ていると断れなくて、花梨は「少しだけなら」と思い、男の子に引っ張られるままに部屋を出て行った。



 早百合は、ここに来る時にもした「嫌な予感」がして、ぶるっとひとつ震えて目を覚ました。
 どちらかといえば、「嫌な予感」というよりは「何かあるから起きろ」という本能からの命令に近い。
 起き上がってみると、隣で寝ていたはずの花梨がいない。
「───どこにいったのかしら」
 小さく呟き、暗さに目が慣れてくると、和馬と一馬もいなくなっていることが分かった。
 少し考えてから、部屋を出る。
 逆ギレしていたせいで冷静な判断が出来なかったが、よく考えてみれば、自分の能力は「悪霊の天敵」とも言える。弱い霊であれば早百合に近寄っただけで、消えてしまうほどの能力だ。
 だが、今まで遭遇した霊のどれも、そんな気配はない。
 早百合をコワがる様子すら見せない。
(……何か、あるわね)
 それも、普通の心霊スポットよりも奥の深い、何かが───。
 早百合はそして、ゆっくりと、霊にわざと遭遇しようとでもするかのように歩き始めた。



 シオンは、ふと心許なくなって目を開いた。
 第六感とでもいうのだろうか。
 実際彼が目覚めた時、三下と隆之をのこして、皆いなくなっていた。
「い、一体何が」
 もしかして皆、霊にやられてしまったのでは───。
 三下と隆之を起こそうとしたその時、ふと襟の後ろを引っ張られた。
 そろそろと振り向くと、卓球場にいたコックの格好の男性の霊が立っていた。
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!!」
 思いっきり泣きそうになりながら悲鳴を上げ、シオンは、壁にぶつかり転んだりして、なんとか部屋から逃げ出した。
 霊とかそういった「コワいもの」にはてんで駄目なのである。
 だが、走る先走る先にあらゆる霊が先回りとばかりに現れて、シオンは何度も叫び声を上げていた。



 そんなシオンの叫び声で目を覚ましたのは、三下と隆之である。
 二人殆ど同時に目を覚まし、他の誰もがいなくなっていることに気付き、さすがに隆之も表情を険しくした。
「三下、いくぞ」
「は、はい!」
 怯えつつも、一人になるよりはいい。そう思った三下は、隆之が部屋を走り出す後を追った。
「と、ところでどこに行けば?」
 尋ねると、
「分からん」
 と返って来た。
「皆さんまさか、霊にやられてしまったんじゃ……」
「馬鹿なこと言うな! 霊なんかいない! きっと何か事情があって───」
 そこまで言った時、ふと目の端に、甥の姿が映った。右側の窓を見ると、外の庭に一馬が立って、手招きし、隆之を呼んでいるようだった。
 窓を開けて出てみると、女の子の霊を連れた和馬、男の子の霊と一緒の花梨、なんとはなしにカンの赴くままここに来てしまったといった表情の早百合、そして最後にたくさんの幽霊から逃げ惑いながらシオンが到着した。
「あれ、なんだ。皆結局一緒の場所に来たのか」
 ひとりだけ霊が見えない隆之が、安堵したように言う。
「叔父さん、ここ、掘ってみよう」
 よく見れば地面を指差す一馬の頭上には、大勢の様々な格好の霊が、どこか訴える瞳をして浮遊している。
 旅館の人にはあとで説明すればいい、と、とりあえず全員でその場所を掘ることにした。



 翌日、旅館から帰って調べてみたところによると。
 あの旅館は屈指の心霊スポットではあったのだが、わけがあった。
 まず悲劇が起きたのは、江戸時代、とある殿様の我侭勝手な命令に、ちょっとしたきっかけで失敗をやらかした十数名の武士達が、全員切腹させられた。
 それを弔いもせず、あとになって自分の勝手が漏れて今の地位が危なくなると危惧した殿様は、その武士達をただ地面にそのまま埋め、事実をうやむやにし、そして時が過ぎた。
 自分達の無念を晴らしてくれ、という武士達の想いが強すぎて、空襲の時代にそこに建てられた家も不幸にあい、料理店が次に建ったが不慮の火事でコックが死に、そんな具合で次々と、元をただせば切腹させられた武士達の無念が、知らず知らずのうちにこの場所での不幸を招いていたのだった。
「で、今現在はあの旅館が建っているわけだ」
 隆之が、今でも「認めたくない」といった風にため息をつきつつ、全員に説明する。
「全員分の弔いをするように助言してきてよかったなぁ」
 とは、和馬。あの女の子の霊が通っていた学校というのも、あの場所にあったわけだ。
「道理で、私の能力で霊達が一人も消えなかったわけだわ。謎が解けてちょっとスッキリした感じ」
 とは、早百合である。
「でも、哀しいお話ですね……ちゃんと皆さん、成仏してくれるといいです」
 と、なんとなく黙祷する花梨。
「霊さん達と、もう少しちゃんとお話しておけばよかったです……」
 と、どこかこちらも哀しそうに、シオン。そんな事情があれば、彼はコワくても仲良くする努力はしただろう。
「叔父さん、それで写真のほうは?」
 気を取り直すような一馬の言葉に、「ああ、そうだった。現像してきたぞ」と、こちらも明るい声で、隆之が紙袋をごそごそとやる。
 そして皆に分けたり自分も見たりしていたが、やがて、誰からともなく笑みがこぼれた。
「やっぱり写真は全部霊だらけか」
 苦笑する、隆之。
「でも、今となってはある意味、いい思い出の写真だな!」
 ちょっと強引な感じではあったが、旅のしめくくりの言葉を言う、心霊カメラマン、隆之なのだった。
 後日、その写真は希望者に焼き増しして配布され、シオンは事情を知ったしせっかく撮ってもらったのだからと、早速ポーズをしっかりとコワがりながらも撮った、霊達も写っている写真でブロマイド名刺を作ったとのことである。




《☆完☆》
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┏┫■■■■■■■■■登場人物表■■■■■■■■■┣┓
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┗━┛★あけましておめでとうPCパーティノベル★┗━┛゜
【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
1466/武田・隆之 (たけだ・たかゆき)/男性/35歳/カメラマン
1533/藍原・和馬 (あいはら・かずま)/男性/920歳/フリーター(何でも屋)
1559/武田・一馬 (たけだ・かずま)/男性/20歳/大学生
1868/村雨・花梨 (むらさめ・かりん)/女性/21歳/保育士
2098/黒澤・早百合 (くろさわ・さゆり)/女性/29歳/暗殺組織の首領
3356/シオン・レ・ハイ (しおん・れ・はい)/男性/42歳/びんぼーにん(食住)+α
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■         ライター通信          ■
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こんにちは、東圭真喜愛(とうこ まきと)です。
今回、ライターとしてこの物語を書かせていただきました。去年の7月20日まで約一年ほど、身体の不調や父の死去等で仕事を休ませて頂いていたのですが、これからは、身体と相談しながら、確実に、そしていいものを作っていくよう心がけていこうと思っています。覚えていて下さった方々からは、暖かいお迎えのお言葉、本当に嬉しく思いますv また、HPもOMC用のものがリンクされましたので、ご参照くださればと思います(大したものはありませんが;)。

さて今回ですが、あけましておめでとうパーティーノベル2005ということで、とても楽しく書かせて頂きました。東京怪談を主に活動しているわたしなのですが、実は、心霊ものを手懸けるのは実は今回が初めてだったりします(笑)。
なので、コワがりながらも新鮮な気持ちで書かせて頂きました。
最後は、あるところには落っこちてそうなありふれたオチとなりましたが、如何でしたでしょうか。

今回は、殆どの方が初めてのお客様ということで、少々緊張しながら書いていました。
的外れなことを書いていましたら、すみません;
幽霊といっても悪霊はなんとなく、思いつかなかったので───コメディタッチ風に、最後はほのぼの(?)と落としてみました。

なにはともあれ、少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。
これからも魂を込めて頑張って書いていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します<(_ _)>

それでは☆
2005/01/13 Makito Touko
あけましておめでとうパーティノベル・2005 -
東圭真喜愛 クリエイターズルームへ
東京怪談
2005年01月13日

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