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『御茶の宴 』
天薙・撫子0328

●年始の集まり
 年もあけた天薙神社。
 初詣の人だかりも一段落した頃、少し遅めの新年会をかねた茶会を開く事となった。
「そろそろいらっしゃる頃かしら?」
 今回の新年会を企画した天薙撫子(あまなぎ・なでしこ)が茶会を開く、神社の離れにて一人つぶやく。
 ちょうどその頃、境内の階段をゆっくりと昇ってくる一行があった。
「隆美さん大丈夫?あまり慣れてないんだからゆっくりとね?」
 そう言って二人の女性にモーリス・ラジアルは心配する。
 モーリスに心配された佐伯隆美(さえき・たかみ)はそのモーリスの言葉に少しほっとした様に歩く速度を緩める。
「ありがとう、まさか紗霧の分の着物まで用意してくれるとは思わなかったわ。」
「いえいえ、お二人の着物姿は見てみたかったですから。」
 そういって隆美のお礼に答えるモーリスであった。
「それにしてもお姉ちゃんだらしないよ?別に歩きにくくなんてないのに。」
 佐伯紗霧(さえき・さぎり)普段教えられる事や自分の方ができない事が多い為に、珍しく自分の方がうまくできる事があって嬉しいらしくついからかう様にそんな風に言う。
 最初の頃はコツが戻らずに隆美同様、歩きにくくしていた紗霧であったが、すぐコツを取り戻しちゃんと歩ける様になった。
「だって、あなたは昔和服とか着ていたんでしょ?仕方ないじゃない、私は普段和服なんて着ないんだから。」
 思わず苦笑しながらそんな風に答える隆美の様子を見てモーリスも思わず笑みがこぼれる。
「それじゃそろそろ約束の時間も近いですしがんばって行きましょう、隆美さん。」
 そう言って二人の事を促すモーリスであった。

 モーリス達三人が神社に付くと嬉しそうに撫子が出迎える。
「あけましておめでとうございます。モーリスさん、隆美さん、紗霧さん。まだ来てない人もいるのでくつろいでいて下さい。」
「ありがとうございます。ところで他の方はどなたをお呼びしているんですか?あ、これはお土産です。たいした物ではないですが。」
 モーリスがそう言って持ってきた有名な和菓子店の包みを撫子に渡す。
「あとは静奈さんと二三矢様が来る予定になっているのですが、少しばかり遅いですね。」
 秋篠宮静奈(あきしのみや・しずな)の名前が出た所で彼女をよく知っている隆美が思わず困ったような顔になる。
「あ……、それはちょっと困った事になってるかもしれないかも。」
「隆美様、それはどうしてですか?」
「あ、多分大丈夫とは思うんだけど、彼女筋金入りの方向音痴だから……。」
 隆美のその言葉に一瞬場が凍ったように静かになるが外から聞こえてきた声に呪縛が解けるかのように時が動き出す。
「秋篠宮先輩、まったく俺が来なかったらどうするつもりだったんですか。」
「まぁ、何とかなるかな?っていつもボクはそうやって何とかしてきたし。」
「先輩の場合は何とかなってきたんじゃなくて、何とかしてもらってきた、の方だと俺は思いますよ。」
 なんだかため息でも聞こえてきそうな会話をしながら先ほど話題に上っていた二人、結城二三矢(ゆうき・ふみや)と静奈が会場である茶室にやってきた。
「あらあらいらっしゃい、かなり遅かったですね。」
 優しい笑みを浮かべながら、撫子が二人の事を出迎える。
「あけましておめでとうございます。すみません、『ちょっとだけ』道に迷って遅れてしまいました。」
 静奈のその『ちょっとだけ』と言う言葉に思わず二三矢が笑いをこらえ切れずに、つい吹き出してしまう。
「先輩のはちょっとじゃなくて大分って言うんだと思うけどな、反対方向から来た俺と鉢合わせるのはさすがにちょっととは言わないと思うよ?」
「ふ、二三矢君……それは言わないでってあんなに言ったのに、もう……!」
 二三矢のその言葉に思わず静奈は思いっきり顔を赤らめて俯いてしまう。
 その静奈の様子にその場にいた者は皆、笑い声を上げたのだった。

●茶会
 そしてひとしきり皆が笑ったあと、モーリスの持ってきた色合いも鮮やかな和菓子が皆に振舞われお茶会が始まる。
 お茶会では亭主である撫子がお茶を点てて皆に振舞う。
 モーリスと隆美と静奈は今まで何度かこういうお茶会にも来た事がある為に動きもぎこちなくなかったが、紗霧と二三矢はこういったお茶会というものその物が初めてだったために、かなり緊張していた。
「お点前頂戴します。」
 最初の客となったモーリスが撫子に対してそう話してお茶を頂いてお茶会が始まる。
 モーリスの隣に座っていた紗霧が次客として、隆美から教わってきたとおりに撫子から出されたお茶を頂こうと一生懸命になる。
「お……お点前頂戴します。」
 こう言うのが礼儀だと教わっていたので、そう言ってから出されたお茶碗を手に取る紗霧であったが、その普段自分が知っているお茶とは全く違う雰囲気のお茶に一瞬困ったような顔になる。
 そしてその困った様な顔をしたまま隆美の方を思わず見てしまう。
 その紗霧の表情に隆美は安心させるように微笑んで小さく頷く。
 その様子を見た後も紗霧は紗霧はしばらく固まったようにしていたがしばらくの後意を決した様にお茶碗に口をつける。
 そして、その様子に隣に座っていた二三矢はその普段見慣れぬ晴れ着姿でお茶をいただく紗霧の姿に思わず見とれてしまう。
 ぼーっと少し赤くなった顔でそんな紗霧の姿に見とれていて紗霧がお茶碗を返していたのにも気が付かなかった。
「二三矢さん?どうしたんですか、二三矢さん?」
 ぼーっと見とれていた二三矢に紗霧が声をかける。
 しばらくその紗霧の声も入らなかった二三矢だったが、紗霧がそっと額に手を伸ばし、その触れた手の暖かさではっと我にかえる。
「あ、だ、大丈夫ですよ。」
「良かった、少し顔が赤かったから熱でも出たのかな?と思って……。」
「そ、そんなんじゃないですよ。」
「そう?それなら良かった。」
 そう言って微笑んで二三矢の事を見ている紗霧の姿を見て、二三矢は心の中で一人つぶやく。
『まさか君の事に見とれていた、なんて言えないよなぁ……。』
 そんな風に思っている二三矢を紗霧は不思議そうに見ていたが、二三矢に小さな声でお茶碗が来た事を伝える。
 二三矢はそれを聞くと慌てて撫子に向き直りお茶を飲もうとして紗霧に格好良い処を見せようとして飲もうとした所ですっとお茶碗が手から取り落ちてしまう。
「うわっ!!」
 そして二三矢の手から落ちたお茶碗は床に転がりお茶はこぼれてしまう。
「だ、大丈夫ですか?」
 紗霧がそれを見て二三矢の事を心配する。
「う、うん、俺は大丈夫。」
 心配する紗霧にそう言うとお茶を点ててくれた、撫子に申し訳ない気持ちで一杯になる二三矢であった。
「すみません、せっかく点ててくれたのに……。」
「二三矢様は慣れてなかったようですし仕方ないですわ。それよりも二三矢様の方こそ大丈夫ですか?」
 撫子は気にしてないという感じで微笑みながら、二三矢の心配をする。
「え、ええ、俺は大丈夫ですよ。それよりも本当にすみません……。」
「そんなに気にしないでも良いですよ。慣れない事は誰にでもあるのですから。」
「いえ……、でも本当にすみませんでした。」
 二三矢はそう撫子に言われてもただただひたすら謝り、その後お茶会が進んでもずっと小さくなっているままであった。

●会食
 そしてお茶会も終わりひと段落すると、撫子がみなに話し掛ける。
「これからちょっとしたお食事会にお誘いしたいのですが、お時間は大丈夫でしょうか?」
 撫子のその問いに皆からは問題ないという答えが帰ってくる。
 その答えに少しほっとした様な表情を撫子は浮かべ、食事の用意してある広間へと皆を誘う。
「それにしても二三矢君、お茶の一つくらいはちゃんと飲めた方が良いですよ?」
 モーリスがそんな風に二三矢の事をからかったりしながら撫子の案内にしたがって広間へと向かっていった。
 広間では、軽く皆で会食ができるように支度がすでに終わっていた。
「皆さんお好きな席についてください。静奈さん私達はこちらへ。」
「あ、うん、そうだね。ボクからも色々聞きたい事とか話たい事とかもあるしね。」
 撫子は静奈を誘い、モーリスはさも当然といった様子で隆美を誘う。
「隆美さん、それじゃ私達はこちらで。こうやってゆっくり話せる機会と言うのもここ最近なかったですからね。」
「そういえば、ここ最近は年末の事件とかもあって大変だったものね。」
 そう言いながらも隆美は紗霧の様子が気になっていたが、モーリスはそれに気が付く。
「大丈夫ですよ、紗霧さんにはほら、ちゃんとナイト君が付いていますから。」
 そう言って少し意地悪そうに言って見た先にいるのは、晴れ着姿の紗霧の隣で緊張のあまりカチンコチンとなっている二三矢であった。
「二三矢君なら紗霧の事を変な風に言わないし、大丈夫よね。」
 そう言ってモーリスの隣に座る隆美。
 さすがに昼間という事と未成年も多数という事もありアルコールの類はなくモーリスは少しその事が残念であった。
『なんだお酒は今日は無いんですね、折角隆美さんと一緒に飲めるかと思ったのですが……。』
 ついモーリスはそんな風に心の中で呟いてしまう。

 そして二三矢と紗霧はと言うと紗霧の隣でぎこちない動きでいる二三矢の姿があった。
「二三矢さん大丈夫ですか?」
 そう言って紗霧が心配そうにして振舞えば振舞うほど二三矢の動きはぎこちなくなっていくのであった。

「それでね、こういう事があったんですよ。……って二三矢様大丈夫ですか?」
 撫子と静奈は昔話に花を咲かせていたが、ぎこちない二三矢を見て二人で思わず笑いを堪えようと必死になる。
「撫子さんダメですよ、笑っちゃ……。」
「そういう静奈さんこそ笑っちゃ失礼ですよ?」
「ボ、ボク笑ってなんかいないよ……。」
「そんな事ありませんわよ?十分に笑って……。」
 二人はそうやってお互いが必死にこみ上げてくる笑いを堪えているのであった。

 そしてそんなこんなで時は進み、皆の目の前にあった食事もあらかたなくなり日も暮れかけて来た頃、本日の主催である撫子が会の締め括りの言葉を話す。
「皆さん本日はお集まりありがとうございました。本年もまた、みなさんにとってよき年であります様に……。改めて新年の挨拶とさせていただきます。」
 撫子のその言葉に皆が続く、あけましておめでとうございます、と。

 そして新たな年の第一歩が始まる……。


Fin


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┏┫■■■■■■■■■登場人物表■■■■■■■■■┣┓
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┗━┛★あけましておめでとうPCパーティノベル★┗━┛゜

≪PC≫
■ 天薙・撫子
整理番号:0328 性別:女 年齢:18
職業:大学生(巫女):天位覚醒者

■ 結城・二三矢
整理番号:1247 性別:男 年齢:15
職業:神聖都学園高等部学生

■ モーリス・ラジアル
整理番号:2318 性別:男 年齢:527
職業:ガードナー・医師・調和者

≪NPC≫
■ 秋篠宮・静奈
職業:高校生兼巫女

■ 佐伯・紗霧
職業:高校生兼古本屋

■ 佐伯・隆美
職業:大学生兼古本屋

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■         ライター通信          ■
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 まずは新年あけましておめでとうございます、ライターの藤杜錬です。
 新年の縁起物というか、あけましておめでとうパーティノベルへのご参加ありがとうございました。
 初めて今回パーティノベルを執筆したので色々試行錯誤しながらでしたが、如何だったでしょうか?
 ご参加された皆さんのPL、PC共々本年を無事健やかに過ごせる事を心よりお祈り申し上げます。

●天薙撫子様>
 パーティノベル主発注ありがとうございました。
 新年会のお茶会といういかにも新年らしい内容の発注で、書きながら2度目の正月気分を味わえたような感じを受けました。
 撫子さんの本年が良い年である事を祈っています。

●結城二三矢様
 パーティノベル副発注ありがとうございました。
 今回全般的に、狂言回し的な感じになってしまいましたが、如何でしたでしょうか?
 二三矢さんの本年が良い年である事を祈っています。
 
●モーリス・ラジアル様
 パーティノベル副発注ありがとうございました。
 今回は一番美味しいところを持っていったのかもしれません、如何だったでしょうか?。
 モーリスさんの本年が良い年である事を祈っています。

2005.01.10.
Written by Ren Fujimori
あけましておめでとうパーティノベル・2005 -
藤杜錬 クリエイターズルームへ
東京怪談
2005年01月11日

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