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『【祝ってください】 』
マリオン・バーガンディ4164

「さて、そろそろ帰るのです」
一仕事終えて、マリオン・バーガンディは自らの能力を発動させた
『空間操作』
この部屋の空間を自分の家へと繋げる――
「よし、それじゃ・・・・・え?」
自らが作り出した空間へと足を踏み入れた瞬間、下へと吸い込まれる感覚
(落ちている!?)
そう認識した瞬間、『外』へと吐き出された
ドサッ!!
「うわぁ!?」
地面へと投げ出される
幸い、柔らかな芝生の上だったので、怪我等はしなかった
「・・間違えて落っこちたですか?」
(まさか自分の能力でさえも迷子機能が付いたって事無いですよねぇ・・)
迷子になりやすい迷子機能搭載のマリオンは少し不安げに周りを見渡した
「いらっしゃいじゃ」
「わぁ!?」
いつのまにか背後に立っていた少年と女性にマリオンは驚く
(い、いつのまに・・)
「丁度良い時にきたのぉ♪」
少年が嬉しげにマリオンを見る(と、いっても包帯をしているので見えているのかは定かではないが)
「はぁ・・・?」
「あ、あの・・お、お願いがあるんです!」
今度は女性が(こちらも目隠しをしていた)不思議そうに首をかしげるマリオンに詰め寄る
「え?お、お願いって・・なんです?」
「そ、その・・・祝ってください!」
これが、大変な、それでいて楽しいクリスマスの始まりだった


「はぁ、クリスマスパーティーですか・・」
先程の女性――夜木・幸から、お願い事の説明を受けていたマリオンはあいまいに頷いた
「幸は、まだ一回もここの面子でパーティーをしたことがないんじゃと。だからしたいようでなぁ」
もう1人の少年――油ずましは、幸の頭をなでながら苦笑した
「いいですよ」
「え、ほ、ほんとですか!?」
「はい、楽しそうですし♪」
「あ、ありがとうございます!!」
ぱぁっと幸の顔に笑顔が浮かび、深く頭を下げた
「じゃ、まずは飾り付けですねー」
「そ、そうですね♪」
「「「「あ、人間だーーーー!!!!」」」」
背後から、複数の大声が突然聞こえてきた
「うひゃぁ!?・・・あ・・みんな・・ですか」
びっくりして腰が抜けたのか、幸はへなりと床に座り込んだ
「あ、すまねぇ、幸、大丈夫か?」
もさもさとした青い毛を全身に生やした狼男が、幸を引っ張り起こした
「あ、あのー皆さんは?」
「ん?俺はコルフ・リュートっていうもんだ、よろしくな!!」
マリオンに向かって、むきっと筋肉を目立たせるようなマッスルポーズをとりながら答える狼男――コルフ・リュートはニカッと笑った
「私は枕っていいます!!」
「と、豆腐です」
元気そうな少女――枕と、気弱そうな少年――豆腐が、コルフの後ろからひょっこりと出てきた
「私は、ザンといいます、貴方は?」
青髪青眼の女性が問いかけるようにマリオンを見た
「私は、マリオン・バーガンディといいます。よろしくです」
「「「「よろしく(です)ーー!!」」」」
またもや一斉に皆が大声を上げる
しかもタイミングピッタリ、見事なハモリ具合だ
「折角ですから、皆さんで飾り付けしません?」
状況を見守っていた幸が、飾り付けようの道具を持ちながら皆に問いかけた
「「「「やるーー!!!」」」」
楽しそうに飾り付けをしだす住人達
マリオンも気合をいれ、部屋の飾りを飾り始めた


『メリーークリスマーース!!!』
パンパンパンパンパン!!!!!
幸が人間界に降りて買ってきたクラッカーを纏めて一気に鳴らしながら、マリオンと住人たちがクリスマスを祝う
「うひゃぁー凄い音ー」
クラッカーを見たこともなかった枕と豆腐は驚きで騒ぐやら硬直しているやらで様々な反応を見せていた
「何で我が――」
「しょうがないでしょう、幸にあんなに頭下げられて断る事が出来ると思う?」
「・・・出来ないな」
皆が楽しそうにしている中で、不機嫌そうなものが約二名
悪魔のフィラ・ボースと吸血鬼のレオナ・ホワイトである
「二人とも暗いですよ。これからゲームが始まるのに♪」
マリオンが二人の中に割って入り、割り箸が入った箱を差し出す
「ゲーム?何だソレは?」
訝しげな顔で、フィラがマリオンに問いかける
「王様ゲームです♪」
「あらまぁ・・・それは面白そうね♪」
ルールを知っているのだろう、ひょいっと割り箸を取り、レオナがふふっと微笑んだ
「ルールは簡単、この割り箸の中に「王」と書かれた割り箸と1〜8番までの番号が書かれた割り箸があるです。王って書かれた箸をひいた人が1〜8番の中の何番さんに何かをして下さいって命令するんです」
「ふむ・・それは・・面白そうだな」
フィラも箱の中から割り箸を取る
「それじゃ、私も♪」
マリオンは割り箸を皆に配り、自分も割り箸をとった
『王様だーーれだ!!!』
「は、はい」
手を上げたのは幸
「じゃ、王様何か命令するのです♪」
「え、えーっと・・・それじゃ、5番の人は腹筋50回です!!」
地味に過酷である
「ふっふっふ、やってやるぜー!!!」
と、いきなり腹筋をしだすコルフ
どうやら彼が5番だったようだ
「コルフはいつもやってるから支障はないな」
「むしろ凄い楽しそうなんだけど」
体を動かす事こそが我が人生、と言い張るコルフにとっては腹筋50回でも楽しいのだ
「それじゃ回収ー。もう一回配りますね♪」
テキパキとマリオンが割り箸を回収、再び配る
『王様だーーれだ!!』
「はい、私ですー♪」
手を上げたのはマリオン、浮かべる笑みは無意味に爽やかだ
「さて、命令――3番と8番の人はキスしてくださーい!!」
「「何ー!?」」
ガタッと椅子から転げ落ちそうな音をさせたのは、フィラとレオナだ
「王様の命令は絶対ですよー♪」
ニコニコとマリオンは笑う
「そ、そんな命令きけるかー!?」
皆の好奇の視線に晒され、フィラは怒鳴った
「あら、別にいいじゃない♪」
今にも暴れそうなフィラを羽交い絞めにしたのはレオナ
その顔は妖艶な笑みに彩られている
「は!?お、おいレオナ、まさか――」
「いただきます♪」
直後、哀れな悪魔の断末魔が黒猫荘に響き渡った


「あ、あの皆さん、ケーキ、食べますか?」
『食べるー!!!』
「それじゃ、私が切るです♪」
楽しそうに包丁でケーキを切り分けていくマリオン
「・・って、ちょっと待て!何か大きさが――!?」
「何か言ったですか?」
包丁ギラリ☆
「言ってませんであります!」
コルフは、軍人ばりの敬礼を見せた
本来、包丁を刺されても全然答えないはずなのだが迫力に負けたらしい
「はい、切り分けられましたです〜♪」
ケーキは大きいものがあったり小さいものがあったりと大きさバラバラに切られていた
「じゃんけんで勝った人が大きいものを食べれます!さぁ、いきますよー」
『最初はグー!!じゃんけんぽーん!!!!!』
ケーキを賭けた壮絶なるジャンケン勝負の始まりである

「美味しいです〜♪」
勝負の行方はマリオンが一番大きいのを食べ、豆腐が一番小さいのを食べる事となった
「と、豆腐さん。俺、味見で結構食べてますから、ど、どうぞ」
2番目に大きいものを勝ちたった幸が、ケーキを半分分けてやる
「幸さん、ありがとうございます!」
「もー幸さんは優しすぎますー」
これではジャンケン勝負の意味が・・とは思ったが、幸の性格を考えるとしょうがないとマリオンは思った
どうもこの女性は優しすぎるのだ
そして――
「幸さんって、綺麗な顔してますね。私、綺麗な人大好きなんですよ♪」
「っ!?ゲホっ!?そ、そんなことないですよ!?」
むせながら耳まで真っ赤にして否定する幸
そんな幸を見て、マリオン達はどっと笑った
「わ、笑わないでくださいよ〜!!」
ますます真っ赤になる幸
ソレを見てさらに笑う住人達
悪魔、吸血鬼、狼男、人魚、妖怪、人間、関係ナシに今この時を――
『クリスマス』を楽しんだ


「そろそろ帰らなきゃ」
時は無常にも流れ、既に日にちが変わろうとしている
「そうですか・・・」
どこか寂しそうに、幸は頷いた
「また、会えますから」
マリオンは言う
自分の能力を使えばそれは難しい事ではない
「はい・・また、会いましょう」
幸は笑う
「お元気で」「またのぅ」
「元気でな!」
ザンと油ずらしが別れを惜しむように握手をし、コルフが勢い良くマリオンを抱きしめ(窒息しそうになった)、レオナとフィラが後ろで小さく手を振っていた
「あ!そうだ!はい、これ私達から♪」
枕と豆腐が、小さな箱をマリオンに渡す
「これは・・・?」
「中身は家に帰ってから見てね♪」
「ま、また王様ゲームしましょうね!」
豆腐の言葉に、フィラが咄嗟にレオナから顔を逸らしたのは気のせいだろうか?
「はい、しましょう♪それでは皆さん、また!!」
最後に住人達に向かって大きく手を振りながら、空間を飛び越えた


空間を飛び越えたそこは自分の部屋
「ふぅ・・・あ、そういえばプレゼント――」
はやる気持ちを抑え、包みを解く
「わぁ!」
キラキラと青く澄んだ輝きを持った石がついたペンダントが入っていた
「綺麗だな――」
吸い寄せられるようにその石に魅入る
「ん?これ、手紙?」
そのペンダントに敷かれるように一枚の手紙を見つけた
そこには
『   約束の石、また黒猫荘で楽しい一時が過ごせますように。
       MERRY CHRISTMAS!!!           by黒猫荘住人一同』
と、書かれていた
「約束の石、か〜」
ペンダントを手にとって、自分の首にかける
大きさは丁度で、今の服装に良く似合っていた
「約束、です」
また、あの荘へ行くという、約束
マリオンは、綺麗な輝きを放つ石を握り締めた

HAPYY HOLIDAYS !!!



☆☆☆ 参加PC一覧 ☆☆☆

4164 / マリオン・バーガンディ / 275歳 / 男性 / 元キュレーター・研究者・研究所所長

☆☆☆ ライター通信 ☆☆☆

どうも、黒猫です。
2回目のお仕事でかなり緊張してます(汗
マリオン君が何か腹黒そうになってたらごめんなさい!
書いていて、とても楽しかったです
この度の発注ありがとうございました(深礼
また機会がありましたら、宜しくお願いします!
クリスマス・聖なる夜の物語2004 -
黒猫 クリエイターズルームへ
東京怪談
2005年01月06日

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