▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『☆サンタ捕獲大作戦!☆ 』
門屋・嬢0517


★オープニング

 その日、家のポストになにやら豪華な封筒が入っていた。
 “メロディーパーク特別優待券” 
 そう書かれた封筒の中には、優待券と白い手紙が入っていた。
 『クリスマス限定アトラクション、サンタ捕獲大作戦!参加者大募集』
 ・・サンタ捕獲大作戦〜??
 その下の説明にも目を通す。

 メロディーパーク内に設置された超大型の特殊ハウスの中で、6人のサンタを捕獲していただきます。
 ただし、サンタ達はペイント弾で攻撃してきますのでご注意を。
 服はこちらの方で貸し出しいたします。
 特殊ハウスの中には様々な仕掛けや罠が張り巡らされていますので、どうぞお気をつけ下さい。
 参加者達にはロープが手渡されますので、サンタを見つけた場合はそのロープで捕獲してください。
 個人参加でも、団体参加でも大歓迎!
 
 ・・クリスマスなのにサンタと追いかけっこ・・。しかもサンタなのに銃装備・・。
 けれど、その視線は最後に書かれたある部分で止まった。

 『サンタを捕まえた場合は素敵な豪華商品プレゼント』

 「サンタ捕獲大作戦か・・面白そうじゃん。わくわくするね。丁度暇だったし、やってみますか!」
 門屋嬢はそう言うと、メロディーパークへと向かった。
 

☆門屋 嬢

 メロディーパークは、わりと広めの遊園地だ。
 様々な定番の乗り物がひしめき合っている。
 右を向けば観覧車が回っており、左を向けばジェットコースターのレールがある。
 その中でも、一際目を引くのが遊園地の中央にデンと横たわるドーム上の巨大な建物・・・。
 大きな看板には『サンタ捕獲大作戦!』と赤と黄色のペンキで書かれている。
 とりあず・・嬢は特殊ハウスの前に出ている看板に目を通した。
 参加者の皆様へと書かれた文面が貼り付けられている。
 どうやら、ドームの中は15の区画に分かれており、参加者達は6人1チームになって区画の中にある仕掛けを回避しつつサンタを捕獲するという事らしい。
 一区画の中には3つの部屋があり、それぞれ“水の間”“風の間”“森の間”となっている。
 まずは水の間から入り、最後森の間で出口だ。
 1つの間にいられる時間は決められており、1間15分だ。
 1つの間にはサンタが2人づついるのだ・・それで全部で6人・・。
 「よっし、それじゃぁ頑張りますか!」
 嬢は気合を入れると、優待券を片手に特殊ハウスへと歩んだ。
 「いらっしゃいませ、ようこそサンタ大作戦へ。参加者の皆様が集まるまで、あちらの控えの間でお待ちください。」
 受付のサンタの衣装の少女はそう言うと、革張りのソファーが置かれている小さな小部屋を指差した。
 そこには既に2人の人が待たされていた・・。
 そのうちの一人が嬢に気がついて右手を差し出してきた。
 「初めまして。僕の名前はセイル。あっちがセラ。」
 ソファーに腰掛けたままで、銀髪の少女が頭を下げる。
 嬢はその手を取ると、ニッコリと微笑んだ。
 「あたしの名前は門屋 嬢。よろしくな。」
 ガッチリと握手を交わす。
 「参加者の皆さん、6人揃いましたのでこちらへどうぞ・・。」
 係員が、3人を手招く。その向こうには、新しい参加者が3人いた。合わせて6人だ・・。
 「まずは皆様に着替えをしていただきます。さぁ、こちらです。」
 そう言って持ってきた衣装は、ドレも真っ赤だった。・・・サンタの衣装だ。
 軽い素材で作ってあるため、重くはないが・・。
 「女性の方はサンタドレスを、男性の方はサンタ衣装を・・。」
 嬢は、膝上のサンタドレスを見つめた・・。
 これで・・走り回ったりするのか・・?
 「えぇっと。門屋さん・・だっけ?」
 連れてこられた着替え室で、セラが話しかけてきた。
 全体的に色素が薄く、儚い印象を受ける少女・・。
 「これ、良かったらどうぞ。私沢山持ってきたから。」
 セラはそう言うと、嬢に黒いものを渡した。
 ・・・スパッツだ。膝の辺りまである・・。
 「それだったら、スカートの事気にしなくても良いでしょう?汚れたって構わないし。」
 嬢は少しだけ考えた後で、セラに向かって礼を言った。
 「ありがとう、中では頑張ろうな!」
 「えぇ・・。」
 嬢とセラは着替え室を後にすると、すでに着替え終わっていた男性達と合流した。
 今回、女は嬢とセラの2人だけだった。
 「さて、皆様用意は良いですか・・?それでは、どうぞお楽しみください!」
 係員が、重たいドアを開けていく・・・。


★水の間

 そこには湖が広がっていた。
 見渡す限り・・・広い湖・・・。
 「それにしても、俺らもサンタの衣装なんて・・主催者側は考えたよな。」
 「だな。たとえサンタを見つけた所で・・一瞬躊躇するよな。捕まえるの・・。」
 そんな話をしていると、上からロープが落ちてきた。
 全員がしゃがんでロープを取ると、アナウンスの声が響いた。
 「3・・・2・・・1・・・GO!」
 それを合図に、右と左からペイント弾が発射される。
 嬢は身軽にそれを避けた。
 セラとセイルも避け切れたが・・後から着た3人の男のうち1人がペイント弾に染まった。強制退場だ。
 上からクレーンのようなものが降りてきて、その男を乗せると上へ上がっていった・・・。
 なんだか虚しい強制退場だ・・。
 嬢は、上手くペイント弾を避けながら茂みの方へと走った。
 身軽に茂みを飛び越えると、ペイント弾を構えたまま唖然と見つめるサンタの腕をひょいとねじった。
 手早くクルクルとその手にロープをかける・・。
 嬢は、蒼房十手『鳴鏡』を取り出すとサンタに向かってビシリと突きつけ、高笑いをした。
 「召し取ったり!」
 と、その横をペイント弾が掠めた。
 そうだ・・。もう一人いるのだ・・。
 嬢がそちらに行こうとした時、足元でカチリと音がなった。
 一瞬の沈黙の後、向こう側から矢が発射されてくる。
 先が吸盤状になったものだ・・例え当たっても痛くはないだろう。
 嬢は身軽にそれも避けた。
 四方八方から跳んでくるそれを、屈んだり跳んだりしながら避ける。
 とその時、チャイムの音が響き渡った。
 矢の攻撃が止む・・・。
 『サンタ捕獲成功。3名様、次の間へどうぞ。』
 アナウンスだ。
 先ほどと同じ、何の感情も含まない女の人の声・・。
 それにしても、3名・・?
 そんなに減ってしまったのか・・。
 嬢はそう思いながら、音を立てて開く扉の方へと進んだ・・・。


☆風の間

 扉をくぐった先には、セラとセイルの姿があった。
 どうやら後から来た3人はペイント弾に当たってしまったらしい・・。
 「ねぇ、門屋さん。私思うんだけど・・協力した方が早いと思うの。」
 「協力?」
 「そう、一人で捕まえるよりも・・策を練ってね・・。」
 セラの言葉に、しばらく考えた後で頷く。
 良いけど・・具体的には・・・?
 「私が囮になるから・・その間に門屋さんは右側のサンタを。セイルは左側のサンタを捕まえて。」
 「分った。」
 扉が閉まる・・・。
 上から先ほどと同じようにロープが落ちてきた時、急に風が吹き始めた。
 ・・そんなはずはない。ここは建物の中だ。風なんて・・・。
 そうか、だから“風の間”なのか・・・。
 納得した嬢の身体を、凄い勢いの風が撫ぜる。
 セラの長い髪がはためき、後方にたなびく。
 「3・・2・・1・・GO!」
 先ほどと同じ合図・・。
 しかし、今度は直ぐにはペイント弾は来なかった。やや間をおいて、狙いを定めるように慎重にペイント弾が発射される。
 「今度は随分とゆっくりなんだね。」
 「風が強いから。でも気をつけて。アイツラの腕は凄いから。」
 まるで知っているかのような口ぶり・・もしかしたら2人とも去年もコレに参加したのかもしれない・・。
 嬢は一呼吸置いた後で地面を蹴った。
 風が横から吹きつけ、少々身体を斜めにさせる・・。
 それでも、嬢は必死に走ると茂みの中に入った。
 サンタが気がついてペイント弾をこちらに撃って来る・・それを避けながら、サンタに近づくと狙いを定めて赤房十手『捨陰』を投げつけた。
 そして叫ぶ・・。
 「絶対捕まえて豪華商品ゲットだ!!」
 嬢は倒れこんだサンタの上に乗ると、その手首をロープでクルクルと縛り上げた。
 さっき同様・・『召し取ったり!』と高らかに宣言しようと思うが・・・何せ風が強い。
 嬢は諦めて投げつけた十手を拾うと、セイルの成功を祈った。
 しばらくすると、風が止んでチャイムが響き渡った。
 『サンタ捕獲成功。3名様、次の間へどうぞ。』
 2人とも無事だったのだ・・。
 嬢は立ち上がると、扉の方へと急いだ・・・。


★森の間

 「なんだかさ、結構拍子抜けだな。こんなに簡単なんて思わなかった。」
 そう言う嬢の顔をしばらく見つめた後で、セラが小さく言った。
 「うん、ここまでは簡単なの。問題は次よ・・。」
 「え・・・?」
 開く扉・・・その向こうには、見渡す限り緑の世界があった。
 「も・・森の間・・・!?」
 「そう。森の間。」
 「僕達、去年ココでサンタを見つけられずに終わったんだよね。」
 セイルがセラに語りかける。
 こんな、見渡す限り森の中で・・どうやって2人の人間を見つければ良いと言うのだ・・・!?
 「信じられない・・。」
 「この森では、サンタは隠れてるだけでほとんど攻撃なんてしてこないわ。」
 そりゃそうだろう。
 下手に動いて見つかった方が、捕らえられる可能性が高い。ここは大人しくしていた方が安全という事だろう。
 「とにかく、しらみつぶしに探すしかないわね・・。」
 「3・・2・・1・・GO!」
 セラの声と、アナウンスの声が混じる。
 2人がバラバラの方向に向かって走り始める。嬢も、2人とは違う方向に行こうとしたその時・・。
 長く尾を引く音が、森の間全体に響き渡った・・・。
 今までのペイント弾とは違う響・・・。
 “本物の銃声”・・・・!!!
 「セラ!この間って、本物の銃を使うのか!?」
 「まさか!何かの間違いよ・・・!」
 そうこう言っている内に、再び銃声が轟いた。
 今度は嬢のすぐ近くに被弾する。
 「どう言う事だ・・!?」
 「分らないわ、とにかく一度森の間に戻りましょ・・。」
 扉は閉まっている。
 「落ち着け・・。向こうがどうにかしてくれる・・だからここは・・。」
 『お客様・・ただ今不測の事態が起きております。直ちに非難を開始してください。』
 アナウンスが、警報音と共に大音響で響き渡る。
 しかし、非難しろを言われても・・戻ることも進むことも出来ない。
 再び、今度はセラの近くに被弾する。
 「とりあえず、逃げるぞ!」
 セイルが森の奥のほうを指差す。
 ココはとどまっているよりも動いていた方が良いかも知れない。
 走る3人の背後で、別の足音が追いかける。そして、最後尾を走る嬢の近くにドンドンと被弾する・・。
 嬢は後方に視線を向けた。
 どうやら、ここの職員らしい・・。
 サンタの服の裾が森の合間から見え隠れする・・・。
 「こっちだ!」
 セイルがそう言って脇の道に逸れようとした時・・足元でカチリと音が鳴った。
 なにかの仕掛けが作動したのだ・・。
 木が動き出す・・・。
 そして、あっという間に行こうとしていた道を閉ざした。
 ・・・こんな時くらい、仕掛けを切っといてくれよ・・。
 しかし、今更そんな事を言ってはいられない。
 完全に袋小路となってしまったのだ・・。
 「嬢さん、十手をアイツの頭に当てられる自信あります?」
 セラが小声で聞く。
 「あるが・・。」
 それだったら、私があいつの動きを止めます。その隙に、十手を・・。」
 セラが踊るように、男の前に姿を現した。
 何をするんだ・・?
 そう思ったのもつかの間、長い銃声が響いた・・・。
 セラの身体が、横に崩れる・・。
 確かに、男は銃の反動で僅かにだが隙が出来た・・しかし・・。
 嬢は十手を投げた。
 見事男の頭に当たる。すかさずセイルが男の飛び掛り、その手を縛り上げた。
 地面に倒れこんだセラは動かない・・。
 嬢はセラに駆け寄った。
 サンタ服の胸のところに、ぽっかりと黒い穴が開いている・・。
 そこから今にも血が流れそうだ・・。
 「うそだろ・・おい・・。」
 セラは答えない。
 真っ白な肌と、苦しげにゆがめられた表情が・・頭の中で回る・・。
 「セラ・・セラ・・!!」
 「・・いい加減、起きてやれよセラ。」
 冷たく、セイルの声が耳に響いた。
 ・・え?起きてやれよ・・?
 嬢は、きつく瞑っていた目を開けた。そこには、笑顔で片手を上げたセラの姿があった・・・。
 「え・・・?」
 確かに、サンタ服の胸の部分は被弾した後がある・・。
 「ぼーだんちょっきぃ〜。」
 セラが悪戯っぽい顔で、はらりと洋服をめくった。
 そこには、厚い素材の、防弾・・・。
 「騙したなっ!?」
 「いやいや、コイツは本物だからな!?」
 セイルが慌ててフォローする。
 そりゃそうだ!実弾を使われて、こんな危ない目に逢って・・それがただの悪戯でした★じゃぁ許されない!
 嬢は、フルフルと震えながら・・それでも、どこかでほっとしていた。
 トアが開く音がして、遅いながら数十人の警備員らしき男と関係者らしい男女がわらわらと入ってくる・・。
 「大丈夫でしたか!?」
 「どこかお怪我は?!」
 ・・・怪我をしたとすれば、心だ!!

☆エピローグ

 関係者から多大な謝罪と、少しのお礼金・・そして“豪華商品”の入った小さな小包を渡された。
 あの男は、ライバル会社が雇った“評判下げ”のイヤガラセの一つだったらしい。
 前からあったそうなのだが・・今回の事は流石にやりすぎだという事で注意をするとの事だった。
 ・・・もっと前々から注意をしてほしかったが・・。
 それでも、今回誰もけが人を出さないのは良かった。
 そう・・怪我をしているとすれば嬢の心・・・。
 「だぁかぁらぁ、ゴメンってば・・。」
 「許さない・・。」
 「だって、門屋さん良い人そうだったから・・。」
 ・・普通、良い人そうだったからといってからかうだろうか・・!?
 「ま、良いや。また今度遊ぼうね〜。」
 ズンズンと歩き続ける嬢を追っていたセラが、はたりと止まった。
 「私達、こっちだから・・。」
 そうだ・・。ここでお別れなのだ。
 「またどうせ、逢えるんだから・・。」
 セラはにやりと微笑むと、手を振った。
 その言葉の意味は分らなかったが・・でも、何となくまた逢えるような気持ちはしていた。
 「また今度逢った時にからかったら・・。」
 嬢が十手に手をかける。
 キャーコワーイーと、棒読みで叫ぶセラに微笑むと、嬢は大きく手を振った。
 「またな。」
 ・・さよならではなく、またな・・。
 そっちの方が、別れの挨拶は良い・・。
 嬢は2人の後姿が見えなくなった頃に、あの“豪華商品”が入っていると言う小包を開けた。
 サンタ1人につき豪華商品1つ・・つまり、最後のサンタを抜かせば2人捕まえたのだから・・・。
 綺麗にかけてあるリボンを解き、中のものを確認する・・・。


 『メロディーパーク特別優待券』


 それも、大量に・・・。
 その奥底には、来年のクリスマス限定イベントのチラシが入っていた。
 『サンタ捕獲大作戦!』
 ・・・一緒じゃん!!

 それよりも、セラが最後に言っていたせりふ・・。
 『またどうせ、逢えるんだから』
 ・・・コレの事か!?
 どうやら、セラ達はまた来年も参加するらしい・・。
 嬢は少しだけ考えた後で、また来年も行っても良いかも知れないと思った・・・。

    〈END〉

 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
 ★   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ★
 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
 【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / クラス】

0517/門屋 嬢/女性/19歳/エキスパート

 □■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
 ■         ライター通信          ■
 □■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□

 初めまして、この度は『サンタ捕獲大作戦!』にご参加いただきありがとう御座いました。
 ライターの宮瀬です。
 今回ははちゃめちゃなクリスマス・・と言う事で、メロディーパークの中でサンタを捕獲したのですが・・。
 途中にシリアスをを挟み、それでも最後はシリアスだけでは終わらないようにとしました。
 如何でしたでしょうか?
 気に入っていただけると嬉しく思います。


 それでは、またどこかでお逢いしました時はよろしくお願いいたします。

クリスマス・聖なる夜の物語2004 -
雨音響希 クリエイターズルームへ
PSYCHO MASTERS アナザー・レポート
2004年12月29日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.