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『戦闘は数だよ、カレー閣下 』
神宮寺・茂吉1747


「ちっくしょーここから出しやがれ!!」
 ガンガンと、何か硬いものを蹴る音がやたらと響く。
「兄貴ー、やめたほうがいいですよぉ…」
「そうっすよ、おとなしくしましょうやぁ…」
「そうよぉ茂吉さぁん」
「どさくさに紛れて名前言うんじゃねぇよ!!」
 やたらと賑やかな四人だが、いる場所は別々だった。
 彼らは、四人揃って今警察の留置場の中にいるのだった。

 これは、カレー閣下とその舎弟たちの数奇な運命の記録である!!(?)



○三日前



 話は三日前へと戻る。
「ん〜…あそこはちと今一だったか?」
 彼らが、カレー屋巡礼と呼ぶ食べ歩きをしているときだった。
「そうっすね、ちと辛さが足りないっつうか」
「お子様にはいいんでしょうけどね」
「もっと辛くて熱いのがいいわぁん」
 なんか一部変なことを言うやつがいるが、それはオカマちゃんということでみんなスルー。

「…ん?」
 そんな閣下たちの目に、一つの看板が飛び込んできた。そして、そこにある一文が彼らの目を釘付けにした!
「…ご、五分以内にジャンボカレー様食べ切れたらタダやとぉ…!?」
「ま、マジすかぁ…!!」
 誰かがゴクリと唾を飲み込む音がやけにはっきりと聞こえた。
 そして、それを見て止まれない、止まれるはずがない!
「行くぞおめぇら!」
「「「うっす!!」」」



 店の中は、意外にも普通のたたずまい。そこからは、ジャンボカレーなどというものは一見連想が出来ない。
 しかし、閣下は油断なく店内を見渡す。すると、厨房のほうから何かオーラを感じ(られるような気がし)た。
「いらっしゃいませ、ご注文はいかがいたしましょう?」
 すぐさま店員が一行のもとにやってきた。その顔に、何か自信のようなものが感じられるのは何故だ?(きっと気のせい)
「ジャンボカレー様持ってきやがれ!」
 しかしさすがは閣下、その空気にも怯むことなくきっぱりと言い放つ。その言葉に、店員の顔色がかわった。
「…お客様、本当によろしいので?」
「いいから持ってこいっつってんだよ!」
「…分かりました、しばしお待ちくださいませ」
 それだけ言って、店員は下がっていった。『こいつ正気か?』と言う顔を一瞬したのは、彼の命のためにも秘密にしておこう。

 黙ってくるのを待つこと数分、ついにその化物が閣下の前に現れた!
「こ…こいつはぁ…!」
 場の空気が一気に凍りつく。閣下以外の三人など声を上げることすら出来ないほどだ。
 まず、皿のデカさが半端ではない。これはデカいピザでものせるのか?というくらいに巨大だ。
 そして、それに盛られたライスとルー、これも異常だった。
 例えば、ライスならまさに山のように盛られている。まるで霊峰エベレストを目指さんがごとく。
 そして、そこから流れ落ちるルーはさながら大地を赤く燃やすマグマと言ったところか。
 そもそも、店員が二人がかりで抱えて持ってくる時点で何かがおかしいのだ。

『こ…こいつら、マジだ!』
 閣下の額から、見ているだけで汗が流れ落ちる。何がどうマジなのかは分からないが、兎に角閣下はこれまでにない衝撃を受けた。
「あ…兄貴ぃ…」
「これはマズイですって…」
「茂吉さぁん…」
 舎弟どもから、次々に弱気な発言が飛び出す。しかし、カレー閣下の名において、カレー様を目の前にして逃げ出すわけにはいかないのだ!!
「うるせぇ、名前を呼ぶな!おめぇら、このカレー様を食うぞこらぁ!!」
 こうして、閣下たちの(無謀な)チャレンジが始まった!



* * *

 四分後。

「あ…兄貴ぃ…」
「もう食えねぇ…」
「茂吉さぁん…」
「お、おめぇら情けねぇぞくらぁ…ぐふっ」
 既に苦楽を共にしてきた舎弟どもは力尽きていた。そして、檄を飛ばす閣下自身も限界が近づきつつあった。
 しかし、閣下は諦めない。戻りそうになる(自主規制)を、水を流し込むことで必死に絶える!
 それでも、まだ山の三合目程度のところにしか辿り着いていなかった。閣下の額から脂汗が絶え間なく流れていく!!
『畜生…一向に減りやがらねぇ…!!』
 そして、そんな彼の耳に、無常にもブザーの音が鳴り響いた…。

「はい、制限時間の五分間を過ぎたので、通常料金をいただきまーす」
 疲労困憊、そんな精根尽き果てた一行の元へ先ほどの店員がやってきた。その顔には、『所詮この程度か』的な笑みが浮かんでいた。
「それでは、会計一万五千円となりまーす」
 店員はこれでもかというほどの超笑顔で会計を読み上げた。これに、ついに閣下の怒りが爆発した!!
「てめぇ、ふざけんなよゴルァ!!こないな量誰が食いきれるっちゅうんやあぁ!?」
 言葉の節々に関西弁が混じるあたり、閣下の怒りは本物だ!
 しかし、あまりの量に疲弊したのか、襟をつかむその手にあまり力が感じられない。店員は、その手を軽く外した。
「困りますよお客さん…無銭飲食ですか?」
 今までのにこやかな笑みは何処へやら、店員の顔が一気に冷たくなった。

「あーすいません、食い逃げですか?」
 そんな彼らの後ろのドアから、警官が入ってきた。
「て、てめぇサツ呼びやがったなぁ!?」
 さすがにこの事態には、閣下も焦りの色を隠せない!
「あ、兄貴ぃマズイですぜぇ…!」
「ど、どうしやすか?」
「茂吉さぁん…」
「だから名前を呼ぶんじゃねぇ!!ちぃ…逃げろ!!」
 そして、言うが早いか閣下は走り出した!!勿論舎弟たちもそれを追うように逃げ始める!!
 …しかし、超巨大カレーを食べた彼らの体力は既に底をついており、逃げ切れるはずがなかった。
「あべし!?」
 結局、閣下たち一行は難なく警察に捕まってしまうのであった…。



 これが、彼らの物語の最後である…。





○そして、再び檻の中



 こうして、閣下たち一行は警察の留置場へと連行され、そこで寒さに震えながら三日目を迎えていた。
「ったく、情けなくて涙が出てくるぜ!」
 鉄格子を睨みながら閣下が悪態をつく。しかし、全ては自業自得だったりするからなんとも言えない。
「兄貴〜大人しくしてましょうぜー…」
「そのほうが早く出れますって…」
「茂吉さぁん静かにしてたほうがいいわぁ…」
「だから名前を言うんじゃねぇぇ!!」
 冷たい留置所の中に、閣下の声が虚しく響き渡った…。

「くそ…こんなことならあのジャンボカレー様を意地でもイートエンドしてやるんだったぜぇ!!」
 閣下、それは幾らなんでも無理だ!!と、他の三人は心の中でツッコんだ。ちなみに、イートエンドは完食の意、らしい。
 しかし閣下は悔やみ続けた。幾ら超膨大な量だったとしても、あれは紛れもないカレー様だったのだ。ならば、完食しないでどうする!!
 あぁ、カレー馬鹿ここにあり…その姿は涙が出るほど感動的だ。(?)
「あぁぁぁカレー様ぁぁぁぁぁ!!」
 閣下の絶叫が留置所に響き渡った。
「黙れそこ、カレーカレー言うな!!」
 その叫びに、看守が慌ててやってきた。
「うるせぇ、てめぇそれでも人間かあぁ!?」
「カレーしかいえないおまえのほうがおかしいだろうが!!」
「あぁ、誰がおかしいだゴルァ!?」
 勿論容赦ないツッコミが看守から来たのは言うまでもなく、そして、当然閣下もそれに噛み付いたりした。
「…腹減った」
「「「弱っ!?」」」
 しかし、カレー分を補充していない閣下は弱かったのだ!!



 そうして、さらに時間だけが過ぎていく。そして、これに耐え切れる閣下ではなかった。
「畜生…ここから出しやがれーーーーー!!」
 最後の力を振り絞り、閣下は立ち上がった!その背後に、黄金のオーラが輝いている!!
「うらぁぁぁぁいけぇぇぇぇぇ!!」
 そして、その背中から黄金色に輝く何かが飛んでいく。閣下の最終兵器カレーピラフエアッドだった!
「うおおおおお!!」
 …しかし、威勢のいいその声とは裏腹に、エアッドはすぐさま落ちてしまった。
「…腹減ったぁ…」
 最後の最後まで、閣下は空腹に勝つことは出来なかったのだ…。
「…寝るか」
 そして、そのまま諦めて閣下は眠り始めてしまった!あぁカレー閣下、あなたの明日はどっちだ!?



〜カレー閣下、霊峰エベレストカレー様挑戦記、Fin〜



―後日談―



「ほれ、カレーだ。レトルトだけどな」
「おおおおおおああぁぁぁぁぁぁ!!??」
 そんな閣下の前に差し出されたのは、紛れもないカレー様だった。
 今、何よりも飢えている閣下にとって、レトルトであろうとなかろうとさしたる問題ではなかった。
「カレー様ぁぁぁ、あぁぁ美味ぇよぉぉぉ!!」
 そして、久方ぶりの再会を果たした閣下は、そのまま黄金色のオーラを巻き上げてカレー王へと変身したのである!

 こうして、新たなるカレー閣下伝説が始まった…!!その詳細は、まて次回!!(※注:絶対に続きません)



<END>



――――――――――

 閣下ぁぁぁ!!と、思わず叫びたくなりました(ヲイ

 というわけで、初めまして神宮寺・茂吉様…いえ、カレー閣下、ライターのEEEです。今回は発注本当にありがとうございました。
 閣下にはほとんど一目ぼれだったので、今回の発注は本当に驚きました(笑
 ギャグ強め、ということだったので、こんな感じにしてみましたがどうだったでしょうか…?
 楽しんでいただければ幸いです。

 それでは、今回はこの辺で。本当にありがとうございました♪
PCシチュエーションノベル(シングル) -
EEE クリエイターズルームへ
東京怪談
2004年12月28日

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