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『お菓子なパジャマパーティー 』
海原・みその1388)&海原・みなも(1252)

1.
「パジャマパーティー・・・ですか?」

海原みなもは姉のその言葉にキョトンとした。
「えぇ。この間みなもたちが勧めてくれた草間興信所でのお留守番、あれを『パジャマパーティー』というんですって」
にっこりと笑った姉・みそのはそういうと、もう一度みなもにお願いした。
「明日は休日ですし、みなもと『パジャマパーティー』をしたいの。ダメ?」
みそののいつものおねだり攻撃。
吸い込まれそうなほど甘い言葉に、みなもは少し困ったように頷いた。
だが、その顔は微笑んでいた・・・。


2.
秋の夜長はお喋りには丁度いい。
つまんで食べる甘いお菓子は、手作りクッキーにチョコレート。
温かい飲み物は必需品だから、電気ポットとティーカップにティーポット。
眠りを妨げぬように、カモミールティーに少しのブランデーも用意した。
みなもの部屋に2つ布団を並べると、みなもはお気に入りの花柄パジャマに着替えた。
布団を並べて夜更けまでお喋りするなんて、なんだかちょっと悪いことをしているような・・・そんな罪悪感とワクワクした気持ちが入り混じる。

コンコン

小さくノック音が聞こえた。
「みそのお姉様? 今開けます」
急いでみなもはみそのを出迎えた。
「ありがとう、みなも。まぁ、可愛いパジャマ。よく似合っているわ」
みそのがそう言って中に入ってくると、みなもは息を呑んだ。
漆黒のシースルーなネグリジェをまとったみそのは、女のみなもの目から見てもとても魅力的だと思った。
「? どうしたの?」
「あの、いえ・・・なんでも・・・」
自分の花柄パジャマと見比べて、みなもは少しため息をついた。
いつか自分にもこんな色気がつくものだろうか・・・?

ゴロンっと布団に寝転がると、2人はどちらからともなく色々なことを話し始めた。
「この間、わたくし、アンティークショップに魔女の格好をしていきましたの。ハロウィンというお祭りだと聞きましたから」
「あ、あたしも和風な化け猫をしました。お姉様の魔女、見てみたかったです」
「それなら、今度一緒に魔女の格好をいたしましょう。みなもならきっと似合うわ」
にこにこと学校の友達を話すように、みなもは色々な話をする。
みそのもそんなみなもの姿につい、いつもよりもお喋りになってしまう。
「みなもは学校では何をしているの? そうだわ。今度制服を借りてわたくしも学校へ行ってみてもいいかしら?」
「授業はさすがにまずいと思うけど、学校案内ならできるかも。お姉様が来るなら頑張って案内します!」
コロコロと移り行く話題。
1杯目のカモミールティーを飲み干すと、みなもは2杯目を注ぐ為電気ポットから熱いお湯をティーポットへと移しかえた。
「お姉様、お菓子のお替りはいかがですか?」
みなもがそう言ったとき、みそのがこう言った。

「・・・ねぇ、みなも。わたくし、ちょっとお願いがあるのだけれど・・・」


3.
「『流れ』・・・?」
みなもが困った顔をした。
みそのの説明したことがよくわからなかったらしい。
「そう。ものにはすべて特有の『流れ』があるの。それが『それ』であるための『流れ』。それを同調させることで色々なものになることが出来るの。それをみなもで試させて欲しいの」
みそのは一生懸命砕いてそう説明したが、やはりみなもは『?』と顔に書いてある。
だが、みなもは素直な娘だ。
「お姉様がそうおっしゃるのなら・・・」
少し不安そうなみなもは、小さな声でそう言った。

やっぱり、みなもならきっといいと言ってくれると思っていましたわ。

みそのはにっこりと笑い、電気ポットとみなもを並べた。
そして、みそのはみなもの手を電気ポットへと置いた。
「みなも、少し目を閉じていなさい」
みそのがすうっと目を閉じ、意識を集中させる。
みなももそれに見習い、目を閉じた。
みそのの手が段々と熱をおびて、みなもの体にその熱が移ってくる。

なんだか、内側からとっても熱くなるみたい・・・。

みなもはそんな気がしていた。
「もう目を開けていいわ」
みそのの声に、みなもは目を開けた。
「ほら、もう立派なポットになったわ」
「・・・どこもかわったところは・・・」
自分の手を見てみたが、いつものみなもの姿と変わらない。
だが、みそのがそんなみなもの頭をポンッと押すと、異変は現れた。

ジャーーーーーーー

「ああっ!」
熱いお湯がみなもの胸から流れでて、太もも辺りをびしゃびしゃにした。
「ね? これがポットであり、みなもであるモノなの♪」

みなもにはみそのの笑顔が、悪魔のそれであるように見えた・・・。


4.
「それじゃ、記念撮影しましょうね。・・・ポットじゃちょっと物足りないみたい」

どこからともなくデジカメを取り出したみそのは、しばし考え込んだ。
「そうだわ。いいこと思いつきました」
そうして、いそいそとみそのが用意したのは、みなもが焼いたクッキーだった。
「これと一緒になってみましょう♪」
「お、お姉様!?」
まだポットの動揺が消えないみなもの手をクッキーに乗せ、みそのは再び意識を集中させる。
「ま、待ってください、お姉様!!」
懇願するみなも。それを意にも介さず、みそのは『流れ』を同一化させていく。
「あぁ、そんな〜!」

「うふふ。食べごろみなもクッキーの出来上がり♪」

ほんのりと焼き色のついたみなもの体から、甘い匂いが香る。
「うぅ」
いつものことながら、姉の思うがままになってしまうみなも。
そんなみなもの首筋に、みそのは口を近づけた。
そして、何を思ったのかいきなりガブッと噛み付いた。

「い、痛い! 痛いです!!」

悲痛なみなもの声に、みそのはにっこりと微笑んで言った。
「みなも、あなたの体はあなたであってクッキーでもあるのです。あなたのクッキー、とっても美味しいわ」
みなもの焼いたクッキーが美味しいのか、はたまたみなもがクッキーだから美味しいのか。
みそのの言葉からもその笑顔からも、どちらだかよくわからない。
「今度こそちゃんと記念撮影しましょう。ほら、笑って?」
デジカメを構えたみそのに、みなもは涙をこらえつつ笑った。
カシャリと音がした。
そして撮影を終えたみなもに、みそのは容赦なく言ったのだ。

「この部屋にあるもの、いっぱい使って色々なみなもを見てみたいわ。いいかしら?」

キラキラといつになく輝いている姉の姿に、みなもはただ黙って頷くしかなかった・・・。


5.
教科書やノート、カバンに椅子。
色々なものに目を配り、みそのはみなもに似合いそうなものを探した。
そして、みそのが目をつけたのはハーブティーに垂らす予定だったブランデーだった。
「さぁ、手を置いて?」
逆らうすべもなく、みなもはブランデーに手を置いた。

みなもの体は薄い琥珀色の透き通った液体になった。

「ちょっと大人の味ね」
ふふっと小さく笑い、みそのはみなもの肌に口をつけた。
「お、お姉様・・・」
くすぐったいのか、みなもは体をくねらせてこぼれそうな笑いをこらえている。
ブランデーの独特な香りと味がみそのの口いっぱいに広がる。
「みなもは飲んではダメよ?」
ほんのりと赤くなった頬が、みそのがほろ酔いであることを教えた。

飲んじゃダメって言われても・・・もう口の中がブランデーの味してます〜・・・。

みなもは口には出さなかったものの、心の中で涙した。
「次に行く前に記念撮影しなくてはね」
フラッと立ったみそのは、デジカメを再び構えた。
が、どうやら飲みすぎてしまったらしい。
まるで羽が舞い落ちるように布団の上に突っ伏してしまった。
「お姉様!?」
ブランデーみなもがみそのに駆け寄る。
みそのが、みなもの手を握った。
そのみなもの手の下には布団がある。

みそのが目をつぶる。

小さくみそのを呼ぶみなもの声が聞こえた気がしたが、みそのはそのまま意識を沈ませてしまった・・・。


6.
明け方近く、みそのはゆっくりと目を覚ました。
何故だかとても気持ちのいい眠りだった。
御方と一緒の眠りとも違う、もっと穏やかな眠り。

わたくし、どうしてしまったのでしょう?

そろそろと体を起こすと、小さな寝息が近くに感じられた。
ふわふわとした体に、特徴的な青い長い髪。

「・・・お布団?」

確かにそれは布団だった。
だが、それは同時にみなもでもあった。

「わたくし、無意識のうちにみなもをお布団にしてしまいましたのね」

すやすやと寝息を立てるみなもの体に、みそのは手を置いて同化を解いた。
みなもは元の花柄パジャマを着たみなもになっていた。
そのみなもに、みそのは布団をかけた。
「みなものお布団、温かかったですわ。少し遊び足りない気もしますけど、また今度がありますものね」
秋の朝方はとても冷え込む。
みそのは肌寒さに体を震わせた。
もそもそとみなもの隣に体を滑り込ませ、みなもの手を握った。

妹の体がとても温かくて、みそのはそのまま寄り添うように再び眠りについた。

次のパジャマパーティーはいつがいいかしら・・・?
PCシチュエーションノベル(ツイン) -
三咲 都李 クリエイターズルームへ
東京怪談
2004年11月24日

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