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『みそのとアロマと可愛い妹 』
海原・みその1388)&海原・みなも(1252)
 
 
 手元にあるのは何種類かのエッセンシャルオイルの小瓶。
 ラベンダー、ローズマリー、レモングラス、ペパーミント。そろそろみなもが来るころですけれど、あの子にはどれを使ってあげようかしら。
「どうしてお姉さまは裸なんですかっ」
「どうしてって、さあ、どうしてなのかしら?」
 深淵の間に入ってくるなりみなもが怒鳴りましたけど、わたくしは小首をかしげてしまいました。確かにわたくしは衣類を纏っていないのですが、さてはて、いったいどうして服を脱いだのか、わたくし自身あまり憶えていません。もっとも、それは些細なことなのですけれど。
「それよりみなも、こちらにきて座りなさいな。お茶も用意しておいたわよ」
 隣に座ったみなもに、あらかじめお茶を淹れておいたカップを差しだしました。
 わたくしが裸なのはさしたる問題ではなく、大切なのはみなもとの実験、もといアロママッサージなのです。アロマオイルやマッサージクリームを買ってはみたものの、自分の身体ではいまいち効果が分からないので、可愛い妹で悪戯、じゃなくて白羽の矢を立てたのです。
「アロマテラピーというのはリラックスするのが大切だそうよ。カリカリしていたら効果があるものもなくなってしまうわ。お茶を飲み終えたら、服を脱いでベッドにいらっしゃい」
 ハーブの香りは気持ちを落ち着かせるのによいと聞きましたので、深淵の間にはほのかにラベンダーの香りがするようにしてあります。アロマポットはもちろん人魚の形で。
「……やっぱり脱がなきゃ駄目?」
「当たり前でしょう? 服を脱がないで、どうやってアロマオイルを塗るのかしら? それとも、みなもにはそういう趣味があるの?」
 それもまた面白い気もしますが、今日の趣旨とは若干異なるような気もします。今度の機会にいたしましょう。
「恥ずかしい?」
 うなずくみなもに安心させるように言いました。
「大丈夫。みなもが恥ずかしがるといけないから、わたくしが先に裸になっておいたから」
 そうでした。そういう理由で脱いでいたのでした。もしかしたら違っているかもしれませんが、そういうことにしておきましょう。
 顔をうつむけて、みなもは服を脱ぎはじめます。あらわになったのは、わたくしと違って(血はつながっていませんので、仕方ありませんわね)スレンダーな身体。みなも曰くこれが年相応の身体つきとのことですが、やはり女性としては少々物足りないように思います。
 ここはやはり姉として、可愛い妹が魅力的な女性になるために一肌脱いで差しあげなければいけないでしょう。と言っても、もう脱ぐものなんてないのですけれど。
「まずはマッサージオイルから作りますわね」
 マッサージオイルとは、さきほどのエッセンシャルオイルを、キャリアオイルで一パーセントほどに薄めて作るのだそうです。
「そのときの気分や状態で使うエッセンシャルオイルは選ぶらしいのだけど、みなも、どこか具合が悪かったりしないかしら?」
「特にないけど」
「では、わたくしが選んでいいのね?」
「うん」
 悪戯心を刺激する返事です。
 わたくしが自由に選んでいいのでしたら、やはりこれでしょう。小瓶の中からひとつを選び、マッサージオイルを作っていると、興味津々といったふうにみなもが覗いていました。
「香り、かいでみる?」
「うん」
 みなもに小瓶を手渡して、
「イランイランよ。──さ、仰向けになって」
 ベッドに横たわったみなもの背中にオイルを塗り、指でそれを伸ばします。掌はつけないで、指先だけで軽く、肌に触れるか触れないかの感じで。
 そして指先が足のつけ根に触れたとき、みなもが言いました。
「イランイランって、どんな効果があるの?」
 予想通りの質問です。ですから、みなもの耳元で静かに、
「えっちな気分にさせてくれるの」
「な、ななな……なんで、わざわざそんなのを選ぶんですかっ!」
 身体を起こしたみなもに怒鳴られてしまいました。
 イランイランはシャネルの五番にも使われているそうで(なんだか曖昧な言い方ですわね)、可愛い妹を想ってのセレクトだったのですが、そんな姉心をみなもは理解してくれそうになくて、少し寂しい気もしますが。
 怒ったみなもの顔も可愛くて、思わず抱きしめたくなってしまいます。つい唇にキスをしてしまいました。
「──」
 キスをされて、きょとんとしています。その隙をついて、もう一度、不意打ち。
 みなもが顔を真っ赤にしています。今度は怒っているのではなく、照れや恥ずかしさが入り交じった感じで、それもまた可愛くて、写真に撮って残しておきたいくらいです。
 でも、おかしいですわね。イランイランには鎮静作用があって心をおだやかにすると聞いたのですが、みなもは怒ったり恥ずかしがったりで、効果がないのかしら?
 
 
 さて、ここからがマッサージの本番です。
 もう一度みなもをベッドに仰向きで寝かせ、
「マッサージすることで、気脈や生命力の流れを正すのよ」
 背中にわたくしの胸を押しつけます。体重がかからないように、優しくゆっくりと胸で弧を描くと、
「なにやってるんですかっ」
「なにって、こうすると殿方は喜ぶのよ?」
「あたしは女です!」
 わたくしは首をかしげてしまいました。男性でも女性でも気持ちのいいものは気持ちいいと思うのですが、変なことを言う子です。それとも、まだ照れているのでしょうか。
「それにね、みなも。さっきも言ったけど、アロマテラピーはリラックスすることが大切なのよ。変なふうにはしないから。安心して、わたくしに身を任せておきなさい」
 言うと、なぜかみなもは諦めたように溜息をついて、うなずきました。(溜息は気になりましたけど)一応は了解がとれましたので、少々趣味に走らせていただきましょう。
 まずは、ツボが沢山あるという足の裏。指を口に含みつつ(もちろん、わたくしのではなくみなものです)ツボを刺激します。
 それから太股を絡ませて、わたくしの舌を足の甲から下腹部へ這わせていきます。その間じゅうもふくらはぎなどを揉んでいます。
 唇がおへそのあたりまでくると、みなもが「あん」小さな声をあげました。顔を真っ赤にして視線を逸らしているみなもの表情は、なんともわたくしの心をくすぐります。
「気持ちいい?」
聞くと、みなもは視線を逸らしたまま黙っています。
「気持ちよくないなら、やめてしまうわよ」
「……気持ちいい、です」
「素直でよろしい」
 みなもの顔はますます赤くなりました。
「もっと気持ちよくさせてあげるわね」
 みなもの胸に手を触れて、わたくしは言いました。バストアップするマッサージです。胸の形にそって、外縁を優しく揉んでいきます。それから、こぶしで軽く叩いて刺激。途中でみなもに悪戯するのは、まぁわたくしの趣味です。
 次は美肌にするマッサージ。これは首筋や顔を刺激していきます。首筋からゆっくりと顔の形にそって指を這わせます。それを何回か繰りかえしたあと、眉から額の間を丁寧にマッサージ。鼻の両側を撫でたりもします。
 続いてウエストと足を細くするマッサージ、と説明したところでみなもの呼吸が少し乱れていることに気がつきました。目もとろんとしています。本当に気持ちがよさそうです。最初のころのカリカリしていたみなもはどこかへ行ってしまいました。
 それを見て、内心わたくしはほくそ笑みました。夜伽で培った技術はまだまだこの程度ではなく、今までかなり抑えていたのです。これでもう少しは本気がだせるというもの。
 もっともっと気持ちよくさせてあげるわね、みなも。
 
 
 マッサージが終わったころには、胸も腰も足も顔も、触れなかったところはないくらい全身を触れていて。指が触れるたびに反応するみなもがまた可愛くもあり、愛おしくもありました。
 そのみなもは今、全身汗だくでベッドで横になっています。マッサージをしていたのはわたくしなのに、みなも一人が汗をかいているのは、なんだか不思議な感じもいたしますが。
「お疲れさま。最後にお茶を飲みなさいな」
 身体を起こしたみなもにカップを差しだしました。
「また、変な効果があったりしない?」
「ただのジャスミンティーよ」
 これは本当のこと。でも安心しきった表情でそれを飲むみなもに、ちょっといじわるを。
「でも、ジャスミンには性的刺激あり、って聞いたかしら?」
 これも本当のことのようです。
「それより、みなも。若いからといって、あんまり油断していると、いつか後悔するわよ。それに、あんまりイライラしない。お肌によくありませんわよ」
 みなもは少し考えるそぶりを見せてから、微笑してうなずきました。
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東京怪談
2004年11月01日

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