▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『誰の陰謀だ何故自分は貴重な生活費を削りこんな食材を調た 』
ファルナ・新宮0158)&護衛メイド・ファルファ(2885)


「ファルナと〜♪」「……ファルファの」
「「三分」「ですが実質調理時間は二十分「クッキング」〜♪」
 何処か西方から飛んでくる男の嘆きを遮るように唐突、突然、のんびりスロウな女性の声と、事務的テキパキ女性の声がハモりかましたのはキッチン。それも唯のキッチンでは無い、かといってオール電化で省エネ設計でも無く、こんな所に収納がある訳でも無い。得意なのは場所、そのキッチンの前には壁は無く、かと言って今奥様の心ときめかす、食卓の我が子とばっちり対話な対面式キッチンでも無い。特異なのは、設置場所――
 何故かやけに天井が高い、これは蛍光灯よりも光強い撮影用の照明を吊るす為で、
 というかだだ広い、地平線の終わりは見えぬが、バスケットが出来そうな敷地、
 そしてキッチンがある場所は部屋なのだが、まるでリカちゃんハウスよろしく、壁と床が、こう、分離、
 ぶっちゃければテレビ局のスタジオにセットが組まれてるような――そんな設置場所にまた一つ設置されてる物が、
 今回最大の特異である。「あ、あのぉお二人さん、何始めてるのでしょうかぁぁ……」
「ファルナと〜♪」「……ファルファの」
「「三分」「ですが実質調理時間は二十分「クッキング」〜♪」
「ですからそういう事で無くてぇぇぇぇぇ!」
 と、涙はらはら大洪水のこの男、鳴き声から解るとおりアトラス編集部の簡単な二千円の価値も無いTHE不幸、三下忠雄ここに有り「なんでこんな所に僕は居るんですかぁぁぁ!?
 拉致、縄でグルグル巻き、伊達巻のような。そして彼を連行したのは、、
 指示を出したのは、彼女の見合い写真の隣には力いっぱい筆文字でエロとしたためるべきだと思うムチムチプリンファルナ新宮、実行者はマスターの彼女に付き従う日本刀もきらりと似合う護衛メイドファルファだ。そしてファルナは(無意識という恐ろしき産物により豊満な胸を官能的にかつなまめかしく揺らしながら)答えて曰く、
「あのぉ、前の料理番組の時もー、三下さんがお料理食べる人だったからぁ」
「………」
 説明しよう! 以前とある場所で幽霊を成仏させるのを目的とした料理対決番組が催され、ファルナとファルファはマシンガンにタッグを組んで参戦ッ! その時作り出された味覚をその口にインしたのが彼なのだった。ただし、
「いやぁあぁぁっぁ!? また鳥の頭がスライムからギョロリはいやあぁぁぁっ!」
 ファルナの料理は以上のセリフを持って、胃に落ち着く事は無かったのだけど。
 つまり、今日はリベンジ戦か、いや単に思いつきだ。
「だ、だいたいテレビって、カメラは何処にも無いじゃないですかぁ」
「No、三下。今回撮影はありません。スタジオを借りた私的な調理です」
「だったらなんで僕が呼ばれてるんですかぁぁ!?」
 台風吹けば飛ばされて、津波起これば浚われる、災害避雷針なのだからファルナの害も及ぶとしか言いようが無い。
 が、己という人間が災いというのは、流石にファルナも納得しかねる。と言っても怒る訳なく泣く訳でなく、朗らかに笑って訂正するのだけど。
「大丈夫です〜、私達三下さんの為に、とびっきりの材料を集めてきたんですからぁ〜♪」
「ほ、本当、本当ですか?」
「ええ、ファルファががんばってくれて」
 マスターの微笑みに、無表情でうなずくメイド。その様子に僅か、三下の顔に光が差して、
「という訳で、今日の食材はこちらで〜す♪」
 テーブルの上にかけられているクロス、それを無駄に胸を揺らしながら取り去れば――、

 ハバネロ使用スナック、豆板醤、鰹のタタキ、塩昆布、納豆。

「何を作ろうとしてるんですか何をぉぉぉ!?」
 世界が闇に包まれた!
「ファルナクッキングです〜」
「答えになってないですぅぅ!」
 納得できねぇラインナップ、己の母親を復活させそうな材料である。想像してもらいたい、こんなオールスターがちゃぶ台の上に整列してる図を。人々は漁師の投網が如く引くであろう。というかぶっちゃけ泣いた。
 しかもここで駄目押しするのが、おっとり過ぎて天然娘の標準装備か。
「それにー、お魚屋さんからおまけでもらいましてぇ」
「これ以上何が有るんですかぁぁ……」
 最早悟りを開いた僧のよう、森羅万象に諦めた彼がうつむきながらそう呟けば、ファルファが何かを持ってくる。それは見事な壺じゃった。いい仕事してますねと言う程でも無いけど何年も海流に晒されたような風格といい寸胴とした寝床のような深さといいていうかタコ壺である。
「とってもイキのいいタコなんですぅ、引っ張り出すのも大変、きゃあ! もう飛び出してきてってちょっと潜り込んじゃってぇ、やぁ駄目ぇ、そんな所吸い付いちゃ駄目、あ、うぅんもぉそこはぁ」
 お約束通り、壺の中身はエロエロではわわわだった。あまりにベタ過ぎて、三下は、泣いた。


◇◆◇

 以下、ラヴとエロスが織り交ざるシーンをお送りします。(料理は愛情だし

◇◆◇


 蛸と格闘して既に上着が着崩れているファルナの隣で、坦々と調理を開始する護衛メイドファルファ。
「マスター、まず耐熱性の器に塩昆布を三枚入れ、そこに水を注いでから、電子レンジで一分弱熱します」
 お手軽簡単なダシの取り方だ、尚、塩昆布はブリ大根等の煮物を調理する時にも、ニ、三枚いれると味が出るので覚えておくと便利である。ちなみにその時のエロスとはいうと、
「あぁもう、タコでぬるぬるになっちゃってぇ、ぐちょぐちょで、ねとねとでぇ……」
 上着の話です、けして放送コードは超えてません。
「戻った塩昆布を火傷しないように取り出し、包丁で適度に切った後、出汁と一緒にフライパンにあけます」
「ファルファー、着替えってありましたっけ〜?」
「用意してません。タオルで拭きます」
「ありがとう、あ、もっと優しく……んふぅ……」
 ご主人様のタコの粘着質をメイドが拭いてるだけです、そこの少年何か想像しましたか?
「次にマスター、ここに刻んだネギと、そして三分の一のハバネロを投入してください。ハバネロが柔らかくなってきた所で、豆板醤適量と、スプーン一杯のケチャップを。これで少し煮た後、片栗粉でとろみをつけて器に盛ってください」
 特製ハバネロソースの完成だ、元来辛味の成分は、甘みの中にあって発揮される物。日本のカレーにしたって基本の出汁は深いコクと甘みで、その上でこそ、カレーのスパイスが爽やかな辛味をたなびかせるのだ。つまり、ケチャップがその甘さの役目。発想は酢豚からであるが。ちなみにその時エロスと言うと、
「辛い〜、それに汗が出て来ますねぇ、下着も取ろうかしら〜?」
 スナック菓子までアダルティの小道具にするとは、恐ろしい子だ。
「ソースが出来上がりましたので、これをかける物を作ります。まずボールを用意して、ハバネロ、鰹のタタキ三枚を粗く潰したの、納豆をタレごと、長ネギ、小麦粉半カップ、卵一個をその中にあけてください。そして手で練りこみます」
 手が汚れるのが嫌な場合、しゃもじ等でも問題は無いと思います。ちなみに、納豆と赤魚との相性は予想外にいい、納豆マグロ丼というメニューもあるくらいだから、今回の材料で勝機を見出したのはこの意外な組み合わせであった。
「お好み焼きのように丸く形を整えたら、残ったカツオの叩き三枚を片面に埋め込んでください。そしてこれをオリーブ油を引いたフライパンにお好み焼きの要領で焼いていきます。一度引っくり返した後、蓋をして蒸し焼きに。マスター、解りましたか?」
 と彼女がご主人に振り返った時、エロスはと言うと、
 納豆が体中にねばねばぁと。「あらあら〜、納豆が逃げていきますねぇ」
 納豆が逃げるというよりそのたわわな肉に飛び込んでくような、怪しい谷間に這う糸、柔肌に沿うねっとりとした感触、それが混ざりあい箇所に触れる度ファルナは、「気持ち悪いぃ」だとか、「もうこんなにぃ」だとか、
 納豆を零しただけなのに、何故こんな描写になるのか、大宇宙の意思が働いてるとしか思えない。そんな事を言ってる間に、ラヴは(料理は愛情は)けして止まる事は無く、護衛メイドファルファ、
「こんがりと焼きあがりましたら鰹のタタキを埋め込んだ方を上にして皿に乗せ、そして先程作ったソースをおかけください」
 以上を持って完成した、冗談のような食材の終着、
 ――ハバネロのお好み焼き風、特製ソースがけ
 と、いう、訳で、


◇◆◇

「どうぞお召し上がりくださ〜い」
 と自分が作った訳じゃないのに、携えた皿をそう突き出したのだけど、
「なんで裸エプロンになってるんですかああぁぁぁぁ!?」
 ロケットパンチで現実に戻ってきた男の第一声はそれであった。いやそれは大宇宙の意思だし、ファルナだし。
 しかし、出来上がった料理は意外にまともであった。だが、これがそれになる前のラインナップを思い浮かべ、また固まる。だが否応無く箸は持たされ、
 ええいままよ、と、やけで、たべる、さんした、もぐ、もぐ、ごくり。
「……どうですか〜?」「どうですか」
 ファルナとファルファの問いかけに、不幸の代名詞は、間を置いてから、
「美味しい、ですけど、」
 、
「普通に、美味しいですけどぉ!」
 ――、
 ……世にも奇妙な物語だが、信じられない……話だが、
 うまいのだ……、そう、うまいのであった……。……まるで何処かの大学生が、奇跡が起きたと……夜八時に天井を見上げるような……。
 暴れ唐辛子をふんだんに使ったスナックを使用しただけあって、汗がびっしりと掻いてるが、やめられなくとまらないうまさだった。納豆やカツオにそれと卵、それらによるたっぷりとした旨みの後から、唸るような辛さが身体の奥底からやってくる。だがそれが加速装置になり、また箸が動き出すのだ。
 という訳で、気づいたら感触である。うまいが辛い、辛いがうまい。食べ物の幸せの一つの形に、三下は至極満足であった。「お、美味しかったですぅ、というか幸せですぅぅぅ」
 そう彼は三下忠雄、不幸を空気のように吸う男。刺青のようにになったその運命が、今一時は忘れてしまいそうで、ああ神様、フォーエバー……、
 でも、
 彼は三下忠雄な訳で、
「それじゃ次は〜、私のタコ納豆を〜」
「いやそれ生きたまんまじゃないですかぁぁぁ!? というか、納豆! 納豆でまたネバネバに、って、うぎゃあぁぁぁぁっぁっぁっ!」
 ネバネバとぬるぬるがタッグを組んだ、どこの国にも無い料理、というか生き物に、
 三下忠雄が叫びまくっただとか、それを見てファルナが美味しいですかぁと笑ったとか、ファルファは相変わらず無表情だとか、
 小一時間後、出演者もセットも撤収されたスタジオで、何故か半裸になっている男がしくしくと泣いてる姿を見ると、これがテレビ放映で無く良かったと思うこの頃だった。


◇◆◇


 というか、もう勘弁してください。(誰かの言葉
PCシチュエーションノベル(ツイン) -
エイひと クリエイターズルームへ
東京怪談
2004年10月18日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.