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『成田事件 』
白里・焔寿1305

 白里焔寿は、家の家族と〜猫2匹と、居候〜3ヶ月はヨーロッパでバカンスを満喫していた。
 各所の地点に別荘があるため、殆ど世界を観てきたに違いない。好奇心旺盛な年頃になった焔寿の考えで、思いっきり遊んできたわけだ。
 
 ――雫ちゃんへ、〜に成田で会いましょう
 ――OK。待っているよ!

 と、帰るときにメールで雫に伝える。

「さて、日本に戻りますよ」
「あーうざかったー」
 居候は嬉々として荷物をまとめる。
「えーもうかえるのー? 拷問博物館〜」
 しかし、猫一匹だけ未だいたいようだ。
「だめだめ、学校もあるのだから」
 と、言うと猫はそっぽを向いて自分の仮寝床で眠る。
「ふぅ」
 荷物には直ぐに渡したい友達のためのお土産用トランクも買ってしまった。
 ドイツの某所で買った日本人絵葉書画家の絵葉書で親戚筋に送っておき、後の直ぐに要らない荷物は別方向で送り返すことにしたのであった。


 直接日本に向かう便は少ないので、一度どこかの中継点で降り、そのまま成田に向かう。半日をあの鉄の箱の中にいるのがイヤだという居候からの文句でそうなった。
 無事に成田に着くはずなのだが、そこで困ったことになろうとは。
 何か様子が変だった。成田に到着して、もう手続きを済ませる時間であってもおかしくないのに。
 客がどよめき始めた。
「落ち着いて下さい……きゃあ!」
 キャビンアテンダントが何者かに脅されている。
「ヒョッとして“ハイジャック”ってヤツか?」
 居候がニヤリと期待する。
 焔寿達はファーストクラスに乗っているのだが、そこにも幾人“いかにも”という風貌の男が現れる。
 何を喋っているのか分からないが、“動くな”と言うことだろう。
「むー、ヤッパリこのご時世、こういう事ばかりなのでしょうか」
 と焔寿は溜息をつきながら、こっそり雫にメールを送った。

「た、大変! でも面白いかも」
 メールを受け取った雫の一言。
 いや、今リアルタイムでそのハイジャック事件が巨大モニターに映し出されているからだ。
 しかも、政府高官の娘と言う(親はいないのだが)が乗っているとなると、スクープである。
「でも、どうしよう、どうしよう」
 友人が危ないことと、こんなスリリングな事の秤にかけている雫だった。

(で、どうするよ? 早く帰りたいんだけどな)
(仕方有りません、暫く様子を)
 ひそひそ話をする焔寿と居候。
 因みに猫は、我感ぜずといった具合で寝ている。いい気なものだ。

 焔寿は、この場合私が何とかしなくてはと思った。多分人質の身代金要求だろう。
「不景気と言っても、裕福ですからね……日本」
 溜息をつく。
 霊視の応用千里眼で、内部を確認。
 機関室2 各地点に4、エコノミーには5あたり、リーダーらしきは、今自分に銃口を向けている人物。
 厄介なことに、この人物片手が鉄甲義手だ。
「白里、あの退魔の一族だな!?」
 ――あれれ〜、私目当て?
 確かにまぁ、私は母方がそうでございますが〜と冷静に思っている焔寿。
 流石に猫も慌てているのが分かる。
「お前だけ仲間になれ」
「なにゆえに?」
「同じ力の持ち主、世界を変えるべきとは思わないか?」
「有りません」
「仕方ない……この場で……」
 その男のセリフが言い終わる前に、彼は突っ伏した。
 焔寿が力少なめで、悪意の浄化を行ったのだ。
 霊視もかねて部下を精神支配している男が目の前にいれば、自分の睨みで悪意、支配呪ごと解呪・浄化しただ。流石にフルパワーでする必要もない。そうすると業火で焼き尽くしてしまう。
「はぁたすかりました」
 緊張とストレスでまた溜息をつく。
「俺が暴れたらよかったんだよ」
「駄目です。他の方が似迷惑でしょう? 死者がでなくてよかったです」
 
 
 そう、死者はまったくでていなかった。
 統制が取れなくなったテロ〜実のところカルト組織だったらしく〜は実行犯の失神で部下は何をやっていたのか混乱してしまい、搭乗員や客、特殊部隊に取り押さえられたのだ。
 負傷者など全くなし。
 
 雫とであって再会を喜び合う焔寿。
「大丈夫だった?」
「ええ、大丈夫でしたよ」
「でも、只のテロ組織のハイジャックではネタにならないよねぇ」
 雫はもう終わったことだと思いこんでがっくりする
――いえ、何か有ると思うのです。
 雫に危険な目に遭わせぬように、「残念ね、でもまだ不謹慎よ」と言う焔寿であった。


End
PCシチュエーションノベル(シングル) -
滝照直樹 クリエイターズルームへ
東京怪談
2004年10月01日

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