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『乙女の友情 』
飛鷹・いずみ1271)&今川・恵那(1343)&ローナ・カーツウェル(1936)

■華麗なる乙女達
 神聖都学園。幼稚園から大学、果ては様々な各種専門教育までと、一環した教育を施し、未来を担う健全なる若者の育成を目的とする、巨大複合教育施設だ。
 様々な人種の人間がー時には人間以外の生物までもー生徒としてこの学び舎へ通っているが、彼らが共通して持っている、特殊な力についてはあまり知られていない。
 怪奇な現象があちこちに見られるとの噂の高い、この学園で起こる現象の多くが、実は生徒や教師達の能力が原因とされている。普通の学校ならばそれを抑制し、不穏な噂を払拭するところだが、ここではそういった能力は「個性」のひとつとして認め、素質のある者達は更なる教育を施しているのだという。
 そういった特異な力と技量を持つ彼らは、学園を飛び出して幅広い場所で活躍していた。
 ただ、その目立った存在故に人に恨まれることも多い。そのため、彼らは自然とお互いに寄り添うようになり、常に行動を共にする友人を学園内で作ることが多かった。

 彼女ら、飛鷹・いずみ(ひだか・いずみ)とローナ・カーツウェルと今川・恵那(いまがわ・えな)も、仲の良い友人達としてお互いを認めている。
 登下校も一緒、クラスも一緒。いつでも共に行動している3人であったが、いずみは少しだけ気になっていたことがあった。
 それは背の高さ、いわゆる身長だ。
 ローナと恵那は170センチ以上のすらりとした長身であるのに対し、いずみは平均的な高校生より少し小さい150センチ程度だ。
 長身の2人に挟まれ、複雑な気持ちを抱えつつも、いずみは校舎内へ足を踏み入れた。
 いずみと2人の身長差はだいたい頭1つ分。同学年というより、先輩2人に引き連れられて登校してきた新入生のようだ。
 
 だが、校舎内に入った途端、いずみの態度が変わった。
 表情をきりりと引き締まらせ、あくまでも優雅に胸を張る。優秀で美麗な優等生、それがこの学園内でのいずみの姿なのだ。
 すぐさま、彼女達を見つけた生徒達が頭を下げて挨拶をしてきた。
「おはようございます、飛鷹副会長」
「ごきげんよう、皆さん」
 天使の笑顔を浮かべ、いずみは生徒達へ小さく手を振る。その笑顔に男子生徒は顔を緩ませ、女子生徒は黄色い歓声をあげる。
「相変わらず、バツグンなfavoriteデスねー」
 肩をすくませ、ローナ・カーツウェルはあきれた口調で言った。彼女の裏の姿を知っているだけに、表の姿の人気ぶりが少々気に食わないといったところだろうか。
「あら、ローナもチアリーディング部でのエースでしょ。その気になれば、次期生徒会長も容易な程の人気ぶりとお聞きしてるけど?」
「non.ミーは腹黒い政治家より爽やかなスポーツマンが性に合ってマスネ」
 持っていたバトンを回し、ローナはにこりと微笑む。
「それに、生徒会なんてやったら、danceの練習が出来なくなっちゃうネ。そうなったら華麗に踊るミーの姿、見られないよー?」
「……先週の県大会で、ひとりだけリボンを投げるタイミングがずれたのは誰だったかしらね」
「アレはうっかり回りすぎたダケねっ! small mistakeしただけダヨ!」
「まあまあ2人とも、廊下で大声出しては皆さんがびっくりしてしまいますよ」
 会話を聞いていた今川・恵那(いまがわ・えな)が2人を仲裁するように間へ割りこんできた。
「ほらローナ、今日は朝練があったんでしょ? 早く行かないと始まってしまいますよ」
「oh! ソーでした、急いで体育館に行かないとっ。それじゃ2人ともsee you!」
 軽やかな駆け足でローナは階段をかけのぼる。その様子を見送った後、お互い顔を見合わせて恵那は微笑みあった。
 
■体育の授業にて
「いくよー!」
 長身の恵那の体から放たれた一撃は、一瞬にして相手コートの床を叩き付けた。
 直後、鋭い笛の音が鳴り響く。
「さっすが恵那、バレー部にいるだけあるわね」
 タオルを差し出しながら、いずみは恵那に声をかけた。
「うん、でもぎりぎりで勝ったから、キャプテンが見ていらしたら怒ったでしょうね」
 ボードの点数をちらりと見て恵那は苦笑いを浮かべる。
 体育の授業の一環なのだから、別に勝ち負けは関係なのだが、やはり部活に所属してる者としてはそれなりのプライドがあるのだろう。
「次はいずみちゃんのチームとの対戦でしたっけ……お互いがんばりましょうね」
「もちろん、勝たせてもらうから覚悟しなさい」
 いずみはにやりと口元を緩ませた。負けないよ、と恵那も強気に返事をする。
 その時だ。
「おいっ! お前だろう、犯人は!」
 コートの向こう側から聞こえた罵声に、生徒達は一斉に顔を上げた。
 見ると、男子生徒が数人集まってローナに迫ってきている。
「……どうしたのかな……」
 異文化の血が混ざった派手な外見の彼女は、ただでさえ目立つ存在だ。その上、かなり特徴的な口調と活発な行動力のせいで、どうしてもトラブルに巻き込まれやすい。
「行きましょ」
「ええ」
 級友達の制する声を無視して、2人はローナの元へと駆けていった。
 
■窮地(きゅうち)を救う者
「この看板を壊したのは、お前がやったんだろう?!」
「why? ミーはそんな事なんかしないよ!」
「嘘を吐くな! 俺達が来たときはもう壊れてたんだぞ。1、2時限目は誰も使ってなかったんだし、朝練で体育館を使っていたお前達しか犯人はいないんだよ!」
 男子生徒の足下には半分に折れた看板が転がっていた。今度の文化祭で使う立て看板のひとつだ。看板の表にはサッカー部主催のイベント案内の宣伝が書かれている。どうやら、彼らが先日まで作っていたものらしい。
「部活の奴に聞いたけど、朝練で最後まで残ってたのはお前だって言うじゃないか……一体どういうつもりなんだよ、ええ?」
「……」
「おい、なんとか言ったらどうだ? このエセ外国人!」
「……っ、Shut up! Show proof, if you say so much!」
「ンだとぉ、このっ!」
「待ちなさい!」
 男子生徒がローナを殴りかかろうとしたその瞬間、いずみが飛び出し、ローナの前に立ちはだかった。
「暴力はいけません、双方落ち着いて話をして下さい!」
「良い子ぶってんじゃねぇよ、副会長。だいたい悪いのはローナの方だろう?」
「……あなた方はローナさんを犯人と決めつけているようですが、本当にローナさんが壊したところでも見たんですか? 違いますよね、でしたら彼女を責めるのは間違っています」
 鋭い視線で相手をにらみつけながら、いずみは冷ややかに言った。興奮すればするほど、物事の把握は難しくなる。こういった場合、冷静に対処できた者の勝ちだ。
「いずみ……」
「ローナ、この看板に見覚えはある?」
「non……warehouseに看板があるのは知ってたけど、見るのは初めてだヨ」
「リアリーディング部以外に朝練にいた人は?」
「……そういえば、演劇部が荷物セーリに来てたネ」
「おい、副会長。そんな奴の話なんて嘘っぱちだ、聞くことねーよ」
「それを判断するのは当事者のあなたではなく、第三者である私の権利です!」
 口調はあくまでも静かに、だが怒りのこもった声でいずみは言った。
「いずみちゃーん」
 遅れて恵那が一同の元へと駆けてきた。どうやら体育教師を連れてきたようだ。
 いずみは教師に事情を説明し、男子生徒への処罰を求めた。壊れた看板と一同の姿を眺め、教師は考え込むも、とりあえず授業に戻りなさいと、生徒達に指示をした。
「でも、看板を壊した犯人は……?」
「それは後で先生が調べておきます。今は授業中なんだから、コートに戻りなさい」
 仕方なく、ローナの手を握りながら、いずみと恵那は自分達のコートへと戻っていった。
 
■それぞれの想い
 結局、看板を壊した犯人が誰かなのか分からなかった。
 演劇部の中にも怪しい人物はおらず、単に何らかの事故で壊れたのだろうということで決着はつけられたのだ。
 真犯人を突き止めたいと、いずみは教師達に懇願したが、証拠が少なすぎる上に授業に差し支えると言われ、引き下がるしかなかった。
 看板はまたつくり直されることとなり、サッカー部の生徒達はよけいな手間が増えた、と文句をつぶやいていたが、二度とローナを疑うような真似はしなかった。

 複雑な思いを残しつつ、3人は家路に向かっていた。
 長い沈黙の後、ぽつりとローナがつぶやく。
「それにしても、いずみが出てきた時にはビックリしたヨ。まるでheroineを助けるknightみたいだったネ」
「……ほめたところで何も出ないわよ」
「oh、照れるいずみもprettyね」
 ローナは笑顔でいずみの頭をなでる。
「そうやっていると、まるで姉妹みたいですね」
「笑ってないで、恵那も何か言ってよ……」
「あら、いずみが可愛いのは本当のことですもの、ね、ローナ」
「yes、2人は私のdear friendだよ!」
 ローナは2人を引き寄せて、ぎゅうと抱きしめた。ローナの胸に押し付けられる形になったいずみは苦しそうな声をあげる。
「ちょ……ロ、ローナ……くるしっ……」
「oh,sorry.苦しかった?」
「ったく、ローナはもう少し大人しくすることを学んだ方がよいわね」
「私は見ていて楽しいから、このままで充分と思いますけどね」
 にこりと恵那は微笑んだ。
「……恵那も言うようになったわね……」
「いずみちゃんに色々教わりましたから」
 表情を変えずに笑顔のまま、さらりと恵那は言う。その表情に、いずみはげんなりと肩を下ろした。
「ん……? いずみ、little背が伸びた?」
「え、そう?」
「この前までミーのこの位置だったけど、今は胸の上だったからネ」
 そう言いながら、ローナは手を胸のあたりで上下させた。
「だとしたら、私達と同じぐらいになるのも、そう遠い話ではないということですね」
「……それって喜んでいいのかしら」
「うーん……ミーはtinyないずみの方が抱きやすくて好きかナー……」
「……恵那、明日から朝のジョギングつき合うね」
「えっ、いきなりどうしました?」
「ローナ、いつまでも優位な位置にいられるのも時間の問題だからね」
「ok.いつでもfight大歓迎ヨ」
 2人はにやりと微笑みあい、互いに強く手を握りしめるのだった。

おわり

文章執筆:谷口舞
PCシチュエーションノベル(グループ3) -
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東京怪談
2004年09月06日

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