▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『お姉様のこれくしょん〜深淵にて、石膏像を作成す 』
海原・みその1388)&海原・みなも(1252)


 深淵のわたくしの部屋にも色々と『これくしょん』が増えました。
 絵画や人形、ふぃぎゅあに自動人形…椅子、等々。
 すべてひとつの『てーま』があるものです。
 魔女のお婆にお手伝い――造る為の特殊な材料の調達をして頂いて、殆ど…まぁ、時折例外はありますが、殆ど自分で作成したものなのですけれど。
 この事を思い付き、実行に移すようになってから…魔女のお婆とも随分親しくなりました。
 似たもの同士と言うのは話が通じ易くて良いものです。
 石膏像が造りたいので材料を、とお願いしただけで、魔女のお婆はわたくしの意図を確り汲んで下さいました。
 嬉しい限りです。
 ここまで揃えると、実物大の彫像…なんかも欲しくなりますからね。
 その為の、用意です。


 …わたくしの『これくしょん』の『てーま』はみなもです。
 ずっと傍に置いておきたい可愛い妹に『お手伝い』してもらって作ったぐっずが、わたくしの『これくしょん』の対象なのですわ♪


 今回欲しいものもまた同様にみなもに『手伝って』もらわなければならないもの。
 幸い、今は夏休みですからみなもも時間はあるでしょう。
 そう思って、呼びました。
 少し困惑したような顔もまた『きゅーと』です。
 そう、呼ばれて困惑している――つまりはそろそろ、わたくしがみなもをここに呼び出す理由も…確りみなもにはばれていまして。
 とは言っても、元々、わたくしの方は本気で隠す気は全然無かったのですけれど。
 それでも、全部わかった上で、今でもみなもは姉であるわたくしを慕ってくれます。
 わたくしを信じてくれるんです。
 …本当に嬉しい限りのこと。


 ですからね。
 ………………色々と『えすかれーと』してしまうのも、わかってくれますわよね?


■■■


「え、っと石膏像…ですか」
「ええ」
 微笑むみそのの顔に、みなもは少々停止します。
「また裸、ですか」
「ええ。型を取るだけ、ですわ」
「…えぇ…っと、うー…ん」
 みなもはにっこりと嬉しそうに微笑むみそのの顔を見て、ちょっとばかり悩みます。
 …それはみそのお姉様に呼ばれた時は何度も似たような事をやっているからで、みなもにしてみると多少の不信感がある事も否めません。相手が大好きなお姉様なので構わない事は構わないのですが…それでも、恥ずかしい事は恥ずかしい訳で…。
 ちなみに、裸と言われた時点で顔は真っ赤です。
 そんな恥じらう姿もまた可愛らしいとみそのは内心思っていました。
 が、勿論欲しいものの為には容赦する気はありません♪
 …もっとも、何をしてもみなもがわたくしに逆らいはしない事、わかっていますけれど。
「………………わかりました」
 やがて蚊の鳴くような儚い声でみなもは答えます。
 こくりと頷き、着衣を脱ぎ始めました。
 一枚一枚、嫌々…躊躇いながら服を脱いで行くその姿がまた可愛らしい♪
 それを楽しく見ながら、みそのは嬉々として石膏像作成の用意に入ります。


 服をすべて脱ぎ終わると、みそのはそれ用の木組みをみなもに見せました。
 その中に座って下さい、とお願いし、渋々ながら、と言った様子でみなもはみそのの言う通りにします。
 で。
 みそのは能力を用いて――それが結局一番やり易かったので――その中に石膏をとろとろとろと流し込みます。
「って、あの、お姉様…?」
「はい?」
「型を取るだけって、これ…」
 流し込まれた石膏はみなもの腰までを埋めました。
 それもこの石膏、今入れたばかりだと言うのに、みなもの腰から下はもう動けません。
 みなもは俄かに困惑します。
「…いきなり石膏に思えるんですが。って言うか動けません。もう固まっているみたいなんですけど…」
「ええ、そうですわ。動いてもらっては困りますもの」
 にこやかにそう返しつつ、みそのお姉様は白い液体――木組みに流し込んだ物と同じ「溶いた石膏」をするりとみなもの上半身に纏わり付かせ始めました。
 少しずつ。
 みなもに見せ付けるように。
 …それでもみなもはお姉様を信じ、一応、逃げません。
 場合が場合かとも思いますが、大切なお姉様のする事なので、みなもにとってはお姉様に直に確認するのが先です。
「…って型を取るだけって…?」
「“陸”の造り方とは少し違いますの。大丈夫、窒息しないようにちゃんと最低限の空気の“流れ”は外と繋げておきますわ」
「窒息!? ってお姉様…っ」
 不穏なみそのの科白に対し、再び何か言おうとしたそこでみなもの息が詰まります。
 苦しげに歪むみなもの顔。
 わたくしを見つめる視線も痛々しくて良い感じです♪
 みそのはそこで再び溶いた石膏を舞わせました。くるくるくるとみなもの素肌を、今度こそ包みます。
 台座として初めに埋めた腰の上を、くまなく。
 やがて均一に石膏で覆われ、本当にみなもの動きが無くなりました。
 …これで、胸像の完成です。


 やっぱり、可愛いですわ。
 さすが、わたくしの可愛い妹。
 石膏の中に封じ込められた貴方。苦しむ姿がありありと思い浮かびます。
 何処か艶めいた笑みを見せ、みそのはその胸像をじっと眺めます。
 硬く冷たい、白い肌に触れてもみました。
 髪にも、目にも。
 もっとずっと触れていたい気分になります。
 けれど今は、次。
「…次は、全身像ですわね♪」
 にこにこにこ。
 ひとしきり楽しんでからみそのはその胸像のコピーを作成します。…もう、魔女のお婆はその方法と材料まで何も言わなくとも当然のように渡してくれますから。
 上機嫌なままでみそのはみなもを縛めていた石膏を解きます。
 漸く、みなもの身体に自由を戻しました。
 と。
 みなもの半身が倒れ込んで来ました。
「あ、あの…お姉様、苦し…」
 みそのを見上げ、呼吸困難で喘ぎ、けほけほと咳込みながら訴える可愛い妹の姿。
 …堪りません。
 が、そんなみなもをみそのは慈しむよう見ます。
 そして、気遣っている、そうとしか思えないような手付きでぜいぜいと上下する背を撫でました。呼吸を助けるような仕草です。そこで安心したのかみなもはみそのに身体を委ねました。
 ………………まだ甘いです。
「大丈夫ですわね、それじゃ、全身像の方を始めますわよ?」
「え…ちょ…おね…さ、待…っ…!」
 呼ばれたお姉様当人は搾り出すような叫びも聴き入れません。
 妹が苦しむその目の前で、大丈夫、と言い切ったのもわざとです。
 焦る姿も、微かな苦鳴も、また…。
 みそのはうっとりとみなもを見つめます。
 そして先程上半身にしたように、溶いた石膏をみなもの全身に纏わり付かせました。
 わたくしの操る石膏に翻弄されるままの姿も、いいものです。


 …欲しいものの為には容赦はしない。
 特に、それがみなもであるならば。
 わたくしはそう心に決めておりますからね♪


 …白い像が出来ました。
 全身像、実物大のみなもの像です。
 みそのは愛しげにその像を眺めます。
 静かに触れ、頬を寄せました。
 耳を当て、冷たい感触に酔ったりもしてみます。
 …鼓動は微かにも聴こえない。


 ああ、素敵。
 ………………この、しっとりと冷たい石膏像の中にみなもが苦しんでいると思うと、胸がきゅんとします♪
 このまま私の手許に置いておきたい。
 ああ、こればかりは戻してしまうのが本当に勿体無いですわ♪


【了】
PCシチュエーションノベル(ツイン) -
深海残月 クリエイターズルームへ
東京怪談
2004年09月03日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.