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『みなもとお姉さまとアロママッサージ 』
海原・みなも1252)&海原・みその(1388)
 
 
 やっぱりというか、なんというか。お姉さまは、あたしの想像していたとおりの格好をしていて、思わずため息がでてしまった。
 アロマオイルやマッサージクリームを買ったお姉さまが、効果が分かりにくいから、一度あたしで試したいというのは理解できるのだけど。
「どうしてお姉さまは裸なんですかっ」
「どうしてって、さあ、どうしてなのかしら?」
 お姉さまは小首をかしげた。いつもこんな調子なので、本気なのか冗談なのか、妹のあたしでもちょっと分からない。
 それにお姉さまは十三歳にしては、羨ましいくらい身体つきが豊で、みているあたしが恥ずかしくなってしまう。あたしは年相応な身体だし……。
「それよりみなも、こちらにきて座りなさいな。お茶も用意しておいたわよ」
 言われたとおりにした。
 お姉さまが用意してくれていたお茶を一口飲んでみる。ハーブの香りが強いけど、なんだか気分が落ち着く。
 そういえば部屋全体も、ハーブの香りがする。これはラベンダーなのかな?
「アロマテラピーというのはリラックスするのが大切だそうよ。カリカリしていたら効果があるものもなくなってしまうわ。お茶を飲み終えたら、服を脱いでベッドにいらっしゃい」
「……やっぱり脱がなきゃ駄目?」
「当たり前でしょう? 服を脱がないで、どうやってアロマオイルを塗るのかしら? それとも、みなもにはそういう趣味があるの?」
 服を着たまま全身にオイルを塗り、お姉さまにマッサージをされているところを想像して、あたしは恥ずかしくなってしまった。たぶん、顔は真っ赤になっちゃってるはず。
「恥ずかしい?」
 こくり。
「大丈夫。みなもが恥ずかしがるといけないから、わたくしが先に裸になっておいたから」
 さっきと全然違うことを言っちゃってる。それに、似たようなセリフを古い映画で聞いたことがあるような……。
 観念して、あたしは服を脱いだ。文句を言われる前に、下着も。うーん、お姉さまに比べると、やっぱり貧弱な身体だなあ。お姉さまが異様なくらい発育しすぎている気もするけれど、やっぱり憧れちゃう。
 あの身体でこれから……っていけない。なに考えてるんだろ、あたし。もしかして、お姉さまの影響を受けすぎ?
 
 
「まずはマッサージオイルから作りますわね」
 ベッドに座っているあたしの横で、お姉さまはいくつかの小瓶と、少し大きめの瓶をとりだした。小瓶のほうがエッセンシャルオイルといって、ハーブから抽出したもの。それをキャリアオイル──少し大きな瓶のほう──で一パーセントくらいに薄めて使うらしい。
「そのときの気分や状態で使うエッセンシャルオイルは選ぶらしいのだけど、みなも、どこか具合が悪かったりしないかしら?」
「特にないけど」
「では、わたくしが選んでいいのね?」
「うん」
 お姉さまは小瓶の中から一つ選び、マッサージオイルを作った。どんな花を選んだんだろう? ちょっと気になる。
「香り、かいでみる?」
「うん」
 うなずくと、さっきの小瓶を手渡してくれた。ジャスミンに似た、甘い香りがする。
「イランイランよ。──さ、仰向けになって」
 ベッドに横たわると、お姉さまは背中にオイルを塗ってくれた。ひんやりとして、ちょっと気持ちがいい。今度はそのオイルを、ゆっくりと優しく手で伸ばしていく。
「イランイランって、どんな効果があるの?」
 聞くと、お姉さまは耳元で静かに、
「えっちな気分にさせてくれるの」
「な、ななな……」
 あわてて身体を起こし、
「なんで、わざわざそんなのを選ぶんですかっ!」
「怒った顔もかわいいわよ」
「──」
 一瞬、なにをされたのか分からなかった。
 やわらかい感触がくちびるに残ってて、数センチ先にはお姉さまの顔があって……。キスをされたんだ、と理解したころに、もう一度くちびるを重ねられた。なんだかドキドキしてしまって、怒る気力が萎えてしまった。
「でも、おかしいですわね。イランイランには鎮静作用もあって、心をおだやかにすると聞いたのだけど。効果がないのかしら?」
 それは、お姉さまのせいだと思うけれど……。声にはださないで返事をしてみる。実際にいったら、あとが怖いし。
 きっと、いつものようにお姉さまにからかわれてるだけなんだろうなあ。あたし、家族のおもちゃになってるみたいなとこあるし。
 
 
 やっぱり前言撤回。
 キスをされたくらいで、怒る気力が萎えちゃいけないと思う。抗議すべきときには、きちんと抗議しないと。
「マッサージすることで、気脈や生命力の流れを正すのよ」
 と言ったお姉さまは、あたしの背中に胸を押しつけて、ゆっくりと弧を描いた。胸のやわらかい感触は確かに気持ちいいのだけど……。
「なにやってるんですかっ」
「なにって、こうすると殿方は喜ぶのよ?」
「あたしは女です!」
 これって絶対、お姉さまの趣味が入ってるっ。
 こういうことをされると覚悟はしていたけれど、実際にされると、やっぱり恥ずかしいし、変な気持ちになってしまいそうで、精神的にちょっと疲れてしまいそう。
「それにね、みなも。さっきも言ったけど、アロマテラピーはリラックスすることが大切なのよ」
 それは分かっているけれど。
「変なふうにはしないから。安心して、わたくしに身を任せておきなさい」
 すでに充分、変なことをされているような。
 それに、その言葉も誤解を招きそうだし。ううん、なにも知らない人が今の状態をみたら、きっと誤解する。そう思ったら、ちょっと泣きたくなった。
 それからのお姉さまはやっぱり趣味に走っていて。
 足の裏にはツボがたくさんあるのよ、と言っては、あたしの足の指を口に含んだり。意味もなく(少なくとも、あたしはそう思う)太ももを絡ませたり。舌でおへその周囲をなぞったり。くすぐったいような、気持ちいいような、不思議な感じになってくる。
「気持ちいい?」
 また、いじわるな質問を……。ダブルミーニングのようで、答えづらいんだけど。
「気持ちよくないなら、やめてしまうわよ」
「……気持ちいい、です」
「素直でよろしい」
 お姉さまは満足そうに笑った。
「もっと気持ちよくさせてあげるわね」
 まだ本気じゃなかったんだ。お姉さまは夜伽で培った技術があるから……っていけない、すっかりお姉さまのペースにはまっちゃってるかも。
 バストアップするマッサージ。美肌にするマッサージ。ウエストと足を細くするマッサージ。説明をしながら、お姉さまの指はあたしの身体を撫でていく。
 触れられるたびに、あたしの身体は熱を帯びていく。快感が走るたびに身体が溶けていくような感覚に陥り、あたしもお姉さまもひとつになっていくような。なんだかもう、思考回路が麻痺してしまいそう。
 
 
 マッサージが終わったころには、胸も腰も足も顔も、触れられなかったところはなくて。
 お姉さまはケロッとしているのに、マッサージを受けていたあたしは全身汗だくで。でも、不思議と身体は軽くなった気もする。なんだかんだ言って、やっぱり気持ちよかったし。
「お疲れさま。最後にお茶を飲みなさいな」
 お姉さまがカップを差しだした。
「また、変な効果があったりしない?」
「ただのジャスミンティーよ」
 それを聞いて、安心して口に運んだ。確かに普通のジャスミンティーみたい。
「でも、ジャスミンには性的刺激あり、って聞いたかしら?」
 ……騙された。
「それより、みなも。若いからといって、あんまり油断していると、いつか後悔するわよ。それに、あんまりイライラしない。お肌によくありませんわよ」
 それはお姉さまのせいだと思うんだけど。
 ちょっと考えて、それは言わないでおいた。こんなお姉さまでも、やっぱり大好きだしね。


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東京怪談
2004年08月09日

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