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『ダンタリアンの真なる力 』
風宮・駿2980)&ブラック・ドリルガール(2644)&ザ・スコーピオン(2202)


 東京都内で警察署が次々に襲われる事件が発生し、遠く離れた千葉県柏にある科学警察研究所にもその報告が入った。その時、警視庁超常現象対策班に所属している風宮 駿も偶然にして居合わせた。以前に同じ強化服での戦闘を行った際、FZ-01Eを装着した風宮は大きなダメージを受けた。この日は本格的な修理を行うため、複数の整備員を伴ってこの施設に来ていたのだ。幸いにして大きな故障個所は存在せず、まもなく作業は完了しようとしている。名目上、彼は警備のためにここに来ているが、強化服がこの状態ではどうしようもない。
 彼らがここにやってきたのは、実はそれだけではなかった。先に説明した戦闘で、風宮の先輩が奪取した謎のベルトの分析を平行して行っている。こちらはずいぶんと解析に時間がかかっているようで、小出しにされる情報を文章化したものを風宮は暇つぶしを兼ねてボールペンを回しながら読んでいた。通称『ダルタニアン』……新たなる可能性を秘めた強化服と表現されたそれは、誰も見たことのない数々の神秘を内在しているという。身体中に配置されている生命の石とタロットカードの組み合わせでさまざまな力を発揮するダルタニアン。風宮はかつてこの姿を一度だけ見たことがある。その時はまったくそういったシステムを垣間見ることはなかったので、この分析結果は驚くべきものとなった。さすがは科学者と舌を巻きながら次々と渡される書類に目を通す風宮……
 そんなことを繰り返しているうちに、対策本部から新たな情報が入った。都内を襲った犯人の目的はこちらを油断させる罠であり、本当の目的はダルタニアン奪還にあるという。風宮は思わず椅子の上で大きくのけぞった。正直、この事件は自分には関係がないと思っていたからだ。本命がこちらだというのなら話は別だ。彼は近くで休憩をしていた整備員を捕まえて、FZ-01Eの装着準備を始めるよう指示する。もちろんアナウンスの中でもそれを意味する言葉が出てきていたので、整備員たちの動きは速かった。風宮も迫り来る敵を迎え撃つため、FZ-01Eを保管している部屋まで急いだ。


 研究所に続く長い一本道に若い男女が立っていた。彼らはダルタニアン奪還のために選ばれたテクニカルインターフェースの特別破壊工作員だった。目の前にある建物が科学警察研究所であることを超感覚などで確認した男は長い髪を振り乱しながら叫ぶ。

 「戦いだ……久々の戦いだ……!」

 赤い目を輝かせるとその姿は硬質の甲羅に包まれた赤い蠍へと変化する! テクニカルインターフェース社の特殊破壊工作員、その名もザ・スコーピオン。彼は今から始まる戦いに心躍らせていた。
 その隣で一枚のカードを手に取り、静かに右手に装着されたブラックバイザーにかざそうとする女性。彼女は健康的な小麦色の肌をした女子高校生に見えたが、その目は鋭く前を見つめている。その容姿には似合わない殺気を帯びた瞳は目の前の黒い門を見据えていた。

 「せいぜい私の邪魔をしないように暴れるがいい。目的を忘れるな、任務はダンタリアンに変身するためのベルトの奪還だ。わかっているな?」
 『そこまで物覚えは悪くないぜ、バカにすんな。』
 「注意しすぎることは決して悪いことではない。悪く取るな……変身。」
 『……ベオーク』

 ルーンカードをバイザーにかざすと右手にドリルを備えた黒い戦士『ブラックドリルガール』へと変身した! 目の前のディスプレイには遥か彼方にある門が映し出されていた。すぐにブラックバイザーはその付近のサーチを始める……すると、ひとりの人影をサーチした。認識名『FZ-01E』。彼女はすぐにそれが何であるかを理解した。

 「やはり楽に仕事はさせてもらえないようだ。気をつけろ、敵はバイクに乗って特攻してくるぞ。」
 『望むところだ、うひゃひゃひゃ!!』

 ブラックドリルガールはイオノクラフト装置を密かに作動させる……特攻してくる敵を自分だけでも避けようという魂胆だった。しかし敵も銃を構えている。もしかすると自分が狙われるかもしれない。さまざまな状況判断をしながら敵の出方を待つふたり。
 固く閉ざされた門の前にFZ-01Eを装着した風宮が特殊白バイ『ラピッドチェイサー』にまたがり立ち塞がる。もちろん彼も敵の存在に気づいていた。風宮は自分から仕掛けた。待っていても敵はドリルを持っている。あの武器なら門を破ってしまえると予測したためだ。昼間でありながら黒い雲が上空を覆い、周囲が少し暗い。そんな中、サイレンを唸らせてFZ-01Eがふたりの敵を確保するために先手を取る! すさまじいスピードでバイクが道路を駆け抜ける!

 「おとなしくするんだ、俺は警視庁超常現象対策班強化服装着員の風宮! すぐに変身を解け!」
 『俺に指図するんじゃねぇぇぇ! やかましいんだよ、警察の犬ぅ!!』

 スコーピオンが彼の注意を引いた隙に、ブラックドリルガールが空に舞い上がろうとする……そう、彼はわざと大きな声で風宮を罵ったのだ。だが、彼は先輩たちの情報ですでにブラックドリルガールの存在や特徴などを知っていた。彼女の魂胆はすでに読めていたのか、急ブレーキでバイクを止めて空高く飛び上がった彼女を銃で狙撃する!

 「確保!!」
  チュンチュン、チュィィィーーーーン!!
 「うぐうぐぅ……! しまった、読まれていた。やはりこいつを倒すのが先決だ……やれ、スコーピオン!」
 『だから俺に指図するんじゃねぇ! うおぉぉぉっ!!』

 防御の動作なしで風宮に向かって走ってくるスコーピオン。銃を向け、敵を撃退するためにトリガーを引くFZ-01E。しかし彼はあまりにも無防備な敵を目の前にして一抹の不安を感じていた。なぜ何も考えずにまっすぐに走ってくるのかが疑問だった。
 その答えは銃弾が教えてくれた。ザ・スコーピオンの紅蓮の装甲は恐ろしく固く、すべての弾をあらぬ方向に跳ね返したのだ! 風宮はその姿を見て、慌てて別の武器を装備しようとバイク前方に腕を伸ばす……その隙を突いてスコーピオンはバイクに接近し、そのまま鋭いはさみで設置されていた剣を真っ二つにしてしまった!

 「あああ、お前よくも……!」
 『言ってる場合か、バカがぁぁ! 死ねぇ!!』

 そう叫ぶスコーピオン。奇妙な緑色をした液体を先端の針から垂らしながら、猛スピードでFZ-01Eを狙う! それが風宮の胸元に命中すると、みるみるうちに装甲が溶け始めるではないか……そう、あの液体は腐食性の毒だった。さすがの風宮もこれには焦るが、敵がそれを見逃すはずがない。今度はブラックドリルガールが道の先から弱くなった装甲を狙ってドリルを突きつける!

 『……ヤラ』
 「消えろ、FZ-01E!!」
 「うおおぉぉぉーーーっ、やばい、このままじゃ負ける! 何とかしないと……うごあぁぁぁーーーーー!」

 回転数がアップしたドリルで風宮の身体は空中に突き上げられる! その衝撃は強固な門を超えて、そのまま研究所内部まで飛んでいく……! その間、FZ-01Eの装甲はボロボロと胸元からはがれ始め、風宮の肉体が露出した。あのまま落下すると衝撃が身体に伝わってしまう……風宮はうめき声を上げながら受身を取ろうと必死になっていた。非常に危険な体勢で飛んでいった風宮を見送ったふたりはニヤリと笑う。

 『なんだ、あっけねぇじゃねぇか。面白くも何ともねぇ。』
 「中に入っているのは本来の装着者じゃないからな。先を急ぐぞ。あとはベルトを手に入れるだけだ。」

 ブラックドリルガールは地面より少し高めに浮きながら、そしてザ・スコーピオンは道路を歩いて前へ向かう。だんだん大きくなる警報音に心を躍らせながらゆっくりと接近する……自分たちの気持ちをじらすように、一歩一歩を踏みしめながら進んで行く。
 突如、目の前の門が開かれた。研究所が敵を迎え入れようというのか……スコーピオンもブラックドリルガールもさすがにこの行動は理解できず、大きく首を傾げる。だが、その答えはすぐにわかった。開かれた門の中心にひとりの若者がベルトを持って立っている……そのベルトこそ、彼らが狙うダンタリアンのベルトだった! そこにはFZ-01Eの装甲を脱ぎ去った風宮がいた。そしてベルトを腰に巻き、一枚のカードを手にして立ち尽くす。さすがのふたりもその光景を見て焦った!

 「な、なんだと! 貴様、そのベルトで変身するんじゃない!!」
 『あのバカ……面倒なことしやがるぜ……!』

 さっきまでの余裕はどこへやら、ふたりはその場から一気に攻勢をかける! しかしそれも時すでに遅し、風宮はさっきまで読んでいた書類の通りに『世界』のカードをベルトの宝玉・イエソドにゆっくりとかざす!

 「これしか方法がないんだ。FZ-00は先輩が使ってるし、FZ-01Eの代わりになるベルトはこれしかない。俺がここでダルタニアンに変身するしかないんだ! 変身!!」

 『世界』を模したカードは瞬時に消え去り、目映い光を放ちながら身体のいくつかの部位をも輝かせ始める! その輝きは風宮の身体を覆い尽くすスーツのヴィジョンを生み出し、その姿をダルタニアンへと変貌させた! あの時の戦士になった風宮は向かってくるスコーピオンと対峙する。怒りが沸点に達した彼ははさみを固く閉じたナックルを繰り出す!

 『聞き分けのねぇ奴だな! 変身を解け!!』
 「ダルタニアンは正義の戦士だ! お前たちのような奴に……渡さない!」

 風宮はそう言いながら、高速で繰り出される敵の攻撃をいとも簡単に受け止めた!

 『な、なんだと……そんなバカな! ならばその手を切ってやる!!』

 今度は残った手ではさみを振り上げるスコーピオン。その瞬間、ダルタニアンが自由の利かない手をその手に向けて放り出した! その勢いと力はすさまじい……振り上げたはさみと放り出されたはさみがぶつかり、スコーピオンの体勢は崩れてしまう。その隙を突いて、ダルタニアンは新たなカード『力』を右手の甲に配置された生命の石・ホドに読みこませる!

 「うおおおおぉぉぉぉぉーーーーーっ、とああぁぁぁっっ!!」
 『う、うお、こ、このパワーは……このパワーわはあぁぁぁぁぁ!!』

 空高く舞い上がり、そのまま怪人に向かって強力なキックを放つ褐色の戦士! さすがにそれを止める術もなく呆然とそれを見つめるブラックドリルガールの目の前でザ・スコーピオンはキックを食らって爆発した! 爆炎の中から再び姿を現すダルタニアン……彼は自分の手を見てその力を確信する。

 「ダルタニアン……すさまじいパワーだ。FZ-01Eどころか、FZ-00にも引けを取らないかもしれない。」
 「戦いは終わってないぞ、ダンタリアン!」
 『……マン』

 仲間がやられるのをチャンスとして受け止め、非常に徹したブラックドリルガールは精神破壊攻撃を指示するカード・マンをかざす……するとダルタニアンに向かって精神波が繰り出される! すさまじい頭痛を引き起こされ、その場にうずくまる風宮。

 「かぁっ……うぐわぁ……あがあぁぁぁ!!」
 「今だ、死ねダンタリアン!!」

 ドリルを回転させながら突っ込んでくる敵を見ながらなんとか二枚のカードを引き抜いた。『正義』と『悪魔』を次々と右手の甲・ホドに読みこませ、自分の手に槍を出現させたダルタニアン。そのまま槍を握り、突っ込んでくるブラックドリルガールに向かって投げつけた! 風を切るのに反応したのか、青白いオーラが槍の先端を包み威力が倍増する……カウンター気味に攻撃されたブラックドリルガールはそれを避ける術を持たず、そのままそれを胸に食らってしまった! 彼女は無残にも地面に叩きつけられ、胸の装甲からは火花が散った。

 「きゃああぁぁぁーーーーーっ! くっダメだ、ここはひとまず退散だ。貴様、ベルトは預けた!」

 装甲に深いダメージを負ったブラックドリルガールはそう言い残すと、ジェットを使ってその場所から退散した。風宮は初めて装着するダルタニアンのベルトで敵を撃退することに成功した。しかし彼の頭は依然として精神攻撃の余波が残っていた。少し錯乱しているようで、変身を解除するためのカードを抜く手つきが怪しい。そして解除するためのカード『愚者』を手に取り、それを右手の甲・ネツァクに読ませると元の姿に戻った……


 「はぁ……はぁ……く、苦し、い。」

 脳にまとわりつく邪悪な力……風宮はそれに苦しみながらもなんとか立ち上がる。そしてベルトを持ったまま歩き出した。その方向はあさっての方向を向いている……後ろには研究所があるというのに。彼はそれに目もくれず、どこかに消えていこうとする。まっすぐには歩けない風宮は道の脇にある木に手をつきながらただ歩き続けている。

 彼、風宮 駿は自分のことを忘れかけていた。一歩踏み出すごとにわずかずつではあるがそれを失っていた。不幸にも彼は知らなかった。変身を解く際に使用する『愚者』のカードを無意識のうちに逆位置で使っていることに……実はその弊害で今の混乱があるのだ。だがそんなことなど露知らず、彼はその場から去っていく。急に降り出した雨が風宮の身体を伝う。今の彼にその冷たささえも感じることができない。ずぶ濡れになりながら、ただ誰も知らないところへ、運命のベルトを持ったままどこかへ……去っていく。

PCシチュエーションノベル(グループ3) -
市川智彦 クリエイターズルームへ
東京怪談
2004年06月21日

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