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『ディスコでダンパ! 』
白峰・愛里2028)&月見里・千里(0165)&結城・二三矢(1247)


 ここは何の変哲もないディスコ。中ではダンスミュージックが流れ、人が蠢き、激しい閃光が乱反射する。カクテル光線の中でわずかな時間を楽しむのは……なんとコスプレイヤーたちだった。今日はコスプレでダンスパーティー。フラッシュはカメラ小僧の持ち物からの産物だ。目線を下さいと叫び、お気に入りの一枚を撮ろうと必死になっている。そんな空間の中を自由に歩き回る3人組がいた。まずはこのパーティーに行こうと誘った白峰 愛里。そしてそれに気軽に乗った月見里 千里とその彼氏であり婚約者である結城 二三矢。彼女たちはそれぞれが用意したコスプレで楽しんでいた。愛里は現在放送中の山羊戦隊テラレンジャーのテラピンクバトルモードに扮していた。彼女の中では最近このキャラがヒットしているようだ。千里は特撮番組に出てくる白山羊をモチーフにした戦闘用スーツを華麗に着こなし、二三矢は巨大ロボットを操縦する仮面のパイロットになっている。せっかく友人同士で来ているというのに、全員の顔がマスクで隠れている状態なのだ。二三矢だけは目のあたりを隠したマスク、愛里と千里は顔全体を覆うマスクだった。
 実はこれには理由がある。愛里と千里はコスプレという趣味の一致があるから何の問題もない。二三矢はこういうところは初めてらしいが、食わず嫌いでもないのでそういう意味ではまったく問題ない。ただ千里が「二三矢には仮面を!」という強い希望をしたのだ。どうやら彼女は、二三矢がどこの誰かもわからぬ女に言い寄られるのを恐れたらしい。稀にそういう話が出てくるのがダンパである。用心に越したことはないと準備したのが、このコスプレだった。そのおかげか、今のところ二三矢の安全は守られている。しかし二三矢の視界がマスクで狭くなっているので横や足元をちょっと見るだけでも首を動かさなくてはならないというリスクを背負っていた。初めて東京に来た田舎ものみたいな動きをする二三矢を連れて場内を歩く。

 さすが趣味というだけあってコスをチョイスするセンスは抜群だ。愛里や千里のみならず、二三矢もカメラ小僧や同じレイヤーに呼び止められて写真をお願いされる。正直、ダンスどころではない。コスプレ初心者の二三矢もポーズをとってそれに応えるようにしている。そこらへんはすべて愛するちーからインプリンティング……いや、学習済みだった。ちなみにその横からキャラやシナリオに関する詳しい萌えや燃えを解説したのは愛里だが。それを聞いた生真面目な彼はレンタルビデオを借りてきて事前学習したのでもうバッチリ。愛里が密かに「こういうとこ、毎回連れてきてもいいんじゃない?」と千里に囁いたのは秘密である。
 3人は少し疲れたのか、ダンスミュージック風のアニソンが鳴り響く場内を出てロビーに向かった。そうでもしないと話すらできないのだ。特に女性ふたりは仮面が声を遮断する。

 「今日も多いわね〜、カメラ小僧が!」
 「愛里ちゃん、その人たちはロビーにもいるからちょっと小声で……」

 愛里と千里はいったんマスクを脱いだ。百戦錬磨の同人娘である愛里が作ったマスクは通気性がいいものの、それでも中は少し熱気が入っている。千里も額に少し汗を流していたが、それを二三矢が自分のハンカチで拭く。ここでもふたりのラブラブ振りが発揮された。千里は嬉しそうに「ありがとう」と言うと、二三矢も口元を緩めた。

 「結構暑いんだね、ちー。マスクつけてるのって大変だな。俺もこれ外して涼しも」
 「ダメダメ! 二三矢はダメ! 我慢するって約束したじゃない!」
 「あっ、そうだった。ゴメンゴメン。」
 「……………見てるこっちが暑いわよぉ。まったくもう。でも二三矢くんもなかなか似合ってるわ!」
 「そう? ありがとう、愛里さん。」

 嬉しそうに話す二三矢を見ながら、思わず愛里は悪いことを考えていた。このまま彼もこの道に引きずり込んで、夏のイベントでは千里ちゃんと一緒に並ばせて売り子やってもらおうかしら……彼女は心の底でカップルごと巻き込んでしまえと息巻く。来るべき時に向けての布石を作ったという点では、今日は大きな収穫であると急に満足そうに笑った。
 そんな悪巧みを知らない千里は彼のハンカチを持ち、仮面の奥に手を入れて汗を拭きとってあげていた。我慢してよとは言ったが、誰も汗をそのままにしろと言ったわけではない。彼女の愛情は二三矢にそんなことを要求するわけがないのだ。額が見えるよう下から彼の顔を覗きこむ千里の姿はちょっとおかしなポーズだったが、それもご愛嬌。初めてのところでいろいろ不慣れなこともあっただろう。そう気遣いながらハンカチを丁寧に動かす。しばらくすると二三矢が彼女の手を取った。

 「ちー、ありがとう。もういいよ。」
 「うん。もう大丈夫、二三矢?」
 「さ、またかぶってあっち行きましょ! 変身前ポーズを写真に収めてもらってもいいんだけど、テレビでも一瞬しか映らないしね〜。それにせっかくのダンパなんだから踊ってもいいんだし。」
 「そうね〜、あたしも変身前ってあんまり関係ないコスプレだから。二三矢もそろそろ目が慣れてきたと思うからその辺は大丈夫だと思うよ。」

 そんなことを相談していると……会場の外からこの場にそぐわないあの声が聞こえる。愛里と千里ははっとした表情で振り返る。
 まさか、もしかして!?

 「愛里ちゃん、もしかしてこの声は……」
 「も〜〜〜〜〜ぅ、なんなのよ一体っ!」
 『い〜〜〜しや〜〜〜きいもぉ〜〜〜〜〜。ほ〜〜〜っかほか。い〜〜〜しや〜〜〜きいもぉ〜〜〜〜〜。ほ〜〜〜っかほか〜〜〜〜〜。』

 もう次に起こることは予測できた。その声に惹かれてか、ディスコ会場から続々とカメラ小僧もレイヤーも入り口に向かって列を作り始める。みんなちょうど小腹が減ってきたのだろうか……静かな場内で寂しく音楽が鳴り響いていた。それを見て愛里と千里が同時にマスクをかぶる。

 「「変身っ!」」
 「ああ、ちー! どこに行くんだよ!」

 3人は玄関の外に出ていく。すると、そこにはやっぱりなものが出現していた。屋台のてっぺんには金のシャチホコ、車の横には燦然と輝くヤキイモ教の文字。そしてたなびくのれんには『鳴門金時使用 ほっくほくの石焼き芋』などと書かれている。千里は先の展開を読んで、愛里のためにテラピンクのメーレイピアを精製してそれを手渡す。愛里はそれを受け取って、天井に陣取るくるくる巻き毛の金髪外人に叫んだ!

 「あんたっ! なんでまたこんなところに出てくるのよっ!!」
 「オーーーッ、イエェェェーーーッ! その声に聞き覚えがアリゾナ州ぅ〜〜〜。ユーはコミケに追い出されたおバカさんだったノースカロライナ州ぅ〜〜〜! でもミーは懐が深いでぇ〜〜〜す、マリアナ海溝よりもナイアガラの滝よりも深いでぇ〜〜〜す。オフセを払えばぁ、アナタにもほっかほかのヤキイモ差し上げまぁ〜〜〜す。」
 「キーーーーーッ、さてはあんた一部始終を見てたのね! そう言えば今年の夏は入場禁止だったわ、思い出したっ! キーーーーーッ、せっかく二三矢くんも売り子にしようと企んでたのにっ!!」
 「愛里ちゃん、いろいろとツッコミどころのあるセリフだけど……とにかく落ちついて。」
 「ちー、お腹減ったんだったら、俺がヤキイモ買うけど……」

 ひとり場違いなセリフを平然と言う二三矢。千里はともかく愛里の耳にはそれは届いていない。せっかくの楽しい空間がまたこいつに壊されてしまう……愛里は仕方なしにメーレイピアを振りかざして戦うことを決心する。このイベントから叩き出されたとしても構わない。どうせあたしに楽しい夏は来ないのだから。愛里は大声でモジャモジャの胸毛の外人に宣言する!

 「あんたを倒して、私は生きる!」
 「HAHAHAHAHA! しょうがありません、今回もぉぉ、お仕置きタイム!」

 その声とともに顎割れに青ひげ顔の外人の乗る車はマシンへと変形する! その組み立ては明らかに物理構造を無視した変形で周囲のオタクたちを震えあがらせる。

 「あの軽トラックからなんであれだけの質量のものが出てくるんだ……?」
 「ふんどし外人の声だけで変形を始めたぞ、まさか最新のテクノロジー?」
 「これ、中国製?」

 いろんな声が飛び交う中、変形を済ませたトラックの上で腰を振りながらエプロン姿の外人が叫ぶ!

 「変形ぇぇぇ、ヤキイモロボぉぉぉ! ふんふんふんふんふん!!」

 ロボが完成すると周囲はあ然とする。何の美的感覚もない立ち姿。ただでかいだけの図体。ムチャクチャなカラーリング。そして外人のポーズ。すべてがツッコミの対象だった。が、しかしそれを口にする者は誰もいない。

 「あんな波動係数、あり得ないよ……あり得ない。」
 「愛里ちゃん、早くやっつけて。二三矢がパニック寸前だから。」
 「言われなくたって倒すわよ! 必殺っ、テラピンクシュートっ!!」

 愛里が渾身の力を込めてメーレイピアを投げる! それは外人に向かって一直線、風を切って飛んでいく! 愛里のその姿に周囲のギャラリーはようやく普通の反応を返すことができた。

 「おおっ、テラピンクが攻撃だっ!!」
 「ちょ、ちょっと愛里さん……あのレイピアの軌道、ちょっとまずい気が……」
 「二三矢、どうかしたの?」
 「あれ、外人さん気づいてないのかなぁ……」
 「ふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふん、ふんぬ〜〜〜〜〜〜〜〜!」

 外人はまだまだポーズを取り足りないらしく、怪しくそのまま腰を振り続けていた。そこに愛里の投げた棒が命中する! その瞬間、その場にいた男たちの耳元に除夜の鐘が一発鳴り響いた……

 『ゴイーーーーーーーーーン!!』
 「はぅわぁっ!!!!!!!」

 そう、これもいつかと同じ風景だった。外人の股間に棒がクリーンヒットしたのだ。そのまま前のめりになってロボの上から落ちていく外人のセリフまでその時と同じだった。

 「……み、ミーのお芋は……突かないで……ガクリ。」
 「二度も私の邪魔するからよ! 地球の平和は私が守るわ、メーリッシュ!!」

 とりあえず珍妙な敵を金的で倒した愛里はテラピンクになりきって決め台詞を出す。すると周囲もそれに飛びつき、写真を懸命に撮ったり一緒に撮ってもらったりともう人気者になってしまった。屋台の外人が気絶したこともあり、そのロボットにもたくさんのフラッシュが浴びせられる……玄関前は大混乱となった。
 ダンスパーティーは時間が経つといつもの風景に戻っていく。しかし愛里はみんなに捕まって二三矢たちのところになかなか戻れない。ふたりも彼女の帰りを待ったが、企画が終わるまでこのフィーバーは収まりそうにもなかった。千里は二三矢の腕をつかんで会場の中へと誘おうとする。

 「ちー、愛里さんを待たなくてもいいの?」
 「いいの、愛里ちゃんには二三矢の案内を頼まれてたから。今日は二三矢と一緒にいればいいの。帰りには一緒になるから大丈夫。」
 「そっか……だったらいいけど。」
 「さ、踊りに行こ、二三矢!」
 「そうしよっか、ちー。」

 ふたりも貴重な時間を楽しみに場内へと戻っていく。千里はふたりきりでダンスできることで大いに喜んでいた。もちろん二三矢も同様である。愛里は宿敵のヤキイモ教を倒して非難どころか英雄扱いされるのに喜んでいた。ようやくリベンジを果たした愛里もこれには大満足。みんながハッピーになれるコスパはなかなか終わりそうにもない。

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市川智彦 クリエイターズルームへ
東京怪談
2004年06月07日

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