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『双子のお茶会 』
宮小路・綾霞2335)&天薙・さくら(2336)

 興信所近くのカフェテラス。てのんびり紅茶を飲み会話している女性2人。
 一人はシックなスーツ姿で良く喋っている30代の女性。そして、もう一人は同じ歳の和服美人だ。
 何故か違和感がない。
 顔などをよく見れば似ている。双子の姉妹のようだ。
 スーツ姿は宮小路綾霞、着物美人は天薙さくらと言う。
 実のところ、すでに40を越えている。しかし、30代前後に見えるのは、2人には不老術の神秘を持っているのかと勘ぐりたくなる。ぶっちゃけ、その若さとお肌の秘密を伝授して欲しいところ。
しかし、女性に歳の事を訊くのは、命に関わる。この辺で突っこむのは止めておこう。
 綾霞がマシンガントークでさくらに話しをしている。桜は聞き手に回ってニコニコと相槌を打っているのだ。それでも静と動の美しさは変わらない。


「あたしの息子はね〜。女性を大事に接しなさいと教えたけれど」
綾霞が自分の息子のことを語り出す。
「いい加減、彼女の一人ぐらい作りなさいって思うわけ」
「そうですか。あの子ももうそんなお年頃なのですね」
「母親として不安よ。彼女いない歴20年って……お見合いはさせたくないから」
「私たちは恋愛結婚でしたから♪」
「そうよ! やはり政治的な陰謀の結婚よりロマンスがステキなのよ!」
 力説するスーツ妹。其れにニコニコ笑う和服姉
 2人揃って、熱烈な恋愛結婚で結ばれた。特に妹は宮小路家の現当主とは駆け落ちするぐらいの熱愛ぶりだったそうだ。子供にもやはり本当に好きな人と一緒になって欲しい。
「あ、ところで姉さん」
「なんですか?」
「姉さんの子はどうです? 噂じゃ天空剣師範代と仲が良いと聞いているわ」
「え? そうですわねぇ。わたくしも少し小耳には」
「でしょ! でも、あの子、天然入っているから、天然同士ですれ違いが……。他にもライバルがいるみたいだから、姉さんかあたしが後押ししなくちゃ」
「ええ、そうですわねぇ」
 姪の話になった時点で、綾霞の話は更に激しくなる。

 綾霞の宮小路家は財閥であり、大きなコネクションとネットワークを持っている。それ故、大きな事件の調査でありとあらゆる情報を拾ってくる。それが、つまらないものでもだ。因みに、姪のその噂もそのネットワークから手に入れたものらしい。
 
 内容は自分たちの子を心配しているのではなく、話のネタにして楽しんでいるとしか見えない。それでも、自分の子供は立派に育って欲しいと思っている。幸せになって欲しいものだ。
 綾霞は、姉のさくらに自分が思いついた姪と天然剣客がどう関係を深めていくのか気になって仕方ない、と延々語るのだ。自分の娘が何を考えているか気になるさくら。ハッキリはしておくべきだろう。
「そうですわね」
 ニコニコと笑って相槌をうっていた。
 カフェテラスの周辺にいる人達(一部SP)は、綾霞の話しを聞いて笑っている事も忘れ、綾霞は姉にずっと話しかけている。


「〜♪〜♪」
 草間零が、スーパーのビニール袋を持って興信所に帰ろうとしている。
「ああ、兄さんも引っ張ってくれば良かったなぁ……1人様1パックで88円(税込み)の玉子〜」
 と、主婦感覚で独り言。
 零が暫く興信所を切り盛りしていたので、生活レベルは向上していた。しかし、兄が帰ってきたことで、煙草代が復帰、又節約生活となった。色々な人が差し入れを持ってくるので何とかなるが、たまに食えない物が冷蔵庫に入っているのは悲しい。
「今日の夕ご飯は何にしようかなぁ」
 と、ブツブツ言っている零。
 そのまま、カフェテラスを通り過ぎようとした時、
「零ちゃん! こっち、こっち!」
 見知った顔の人が手を振って呼んだ。
「あ、綾霞さん」
 綾霞は、席を立って零の手を掴んだ。
「一緒にお話ししましょう」
「え? で、でも、帰ったら夕ご飯が」
「まだ決めてない顔しているじゃない」
「え、まあ、そうですけど……」
 と、零は綾霞に連れられ、カフェテラスで雑談(綾霞の演説)に参加することとなった。
「ごめんなさいね」
 苦笑しているようなさくらが、零に謝った。
 綾霞は零がとてもお気に入り。いっそ娘にしたいというほどだ。それは推測だが、本当は有無なら女の子が欲しかったのだろう。息子が生まれたが、其れは其れで良い。しかし、姉が娘を産んだからやっぱり娘が欲しくて仕方ないのだろう。
 で、切り出しが……。
「ねぇ、零ちゃん家の娘にならない?」
 此だった。
「え? そ、そんなこといきなり言われても……困ります」
 零は困惑している。
「綾霞、我が儘言っちゃ駄目ですよ。零さんごめんなさいね。綾霞はいつもあなたのことお話しするの」
「は、はぁ……」
 さくらもフォロー(?)に回るのだが、もはや綾霞のペースに追いつくことが精一杯である。綾霞は、自分のペースを保ちながら、零を質問攻めにするのだ。
「零ちゃん、たしか妹がいるみたいだけど?」
「はい、いますよ」
「それじゃ、今度紹介してね♪」
と、綾霞が訊いた。
「はい、もちろん喜んで」
 ニコリと笑って、答える零。
 
 その後も、3人はおしゃべりに熱中するのだった。主導権は綾霞ではあるが……。
 
 
 ――興信所で腹を空かしている人物のことも忘れてしまって。
PCシチュエーションノベル(ツイン) -
滝照直樹 クリエイターズルームへ
東京怪談
2004年05月13日

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