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『宿命の対決 ドリルガール対ブラックドリルガール #3 』
ブラック・ドリルガール2644)&エターナル・レディ(2196)&銀野・らせん(2066)

 テクニカル・インターフェイス・ジャパンのある地下プラント。大きな水槽から一人の少女が眠りから覚めた。彼女は、あの時のことを良く覚えている。“オリジナル”に負けたと。
 彼女の部屋の壁は、水槽。そし彼女の同じ姿をした“何か”が浮かんでいる。
「私の“代わり”にしては多すぎる……。あの女は何を考えて?」
 彼女は、水槽の液体を近くに備えてあったタオルで拭き、いつもの服装を着て、その場から去った。
 ――黒野らせん。そう、ブラックドリルガールだ。

「精神攻撃を主として、生き物に致命傷を与えないと言う事ね」
 エターナルレディは自分の研究施設で過去、ドリルガールとブラックドリルガールの戦いを分析、方針を考えていた。とはいっても、辛さで有名な炭酸飲料を飲み、ギネス認定の激辛唐辛子使用した此も又有名なスナック菓子をゴミ箱いっぱいになる迄食べている。普通ならもう舌が辛さで麻痺するのだが、彼女は平然とスナック菓子を食べていた。
「あ、あの子起きたみたいね」
 黒野らせんがプラントから起きたことをカメラで知る。
 装甲自爆で死亡した『彼女』は、全て第二の身体に全てのデータを移され、ある意味で“生き返った”のだ。本来なら、倫理的に問題があるクローン技術、科学的にも不可能とされる記憶のバックアップである。
「ま、超常能力って神秘的でぞくぞくするわぁ。でも其れは結局私たちの力に勝てないのよ♪」
 彼女は、コンピュータのモニタに映し出される謎の鉄塊を眺めていた。
「奥の手を使っていないとしても、今回で詰めね」
「何が詰めというのだ?」
「おはよう。御寝坊さん」
 後ろには黒野らせん。それを笑いながら挨拶するレディ。
 黒野は、訝しげにレディを睨む。
「あの水槽にあった『アレ』は何だ?捨て駒か?」
「捨て駒じゃないわよぉ♪ もうヤキモチ?」
「真面目に答えろ。私の“代え”にしては多すぎる」
「確かに多いわねぇ。でも気にしないで。貴女自身のキャパには耐えられないだけの人形よ」
「ふん……私とて人形ではないか……」
 睨み付ける黒野。
 レディは悲しそうな顔で言った。
「そんな顔しないで〜。ドリルガールの最期を飾るためのお姉さんの愛の援助なのよぉ?」
「援助?“オリジナル”に勝つためのか?」
 黒野の質問に笑いのみで答えるだけのレディ、
「ドリルガールの最大の欠点よ、そして此が貴女の新しいお・も・ちゃ♪」
 彼女はそう言って、鉄塊が映し出されたモニタを指さした。


 銀野らせんは、ショッピング中だった。
「これでいいかな?あとは、あそこのブティックで良いもの無いかなぁ?」
 前の戦いの悲しみは何処へやら。いつもの元気ならせんであった。おそらく魔法のドリルが、何とか元気付けたのだろか。
 彼女にしてはTI社の陰謀で自分の“クローン”と戦うことが恐ろしくなっている。何故に自分が狙われるかは心当たりがある。本来ならば早く決着を付けたいところであるが。流石に人を殺める事に躊躇するのだ。
「何か言い方法はないものかな……」
 先日の黒きらせんとの戦いを思い出す。幾らあれが目くらましの爆破としても殺し殺される状況は変わらない。心半分はその事でいっぱいといえる。相手は非情な軍事企業、何時何処で自分が狙われるか……。力は格段に上がる事で、相手も其れ相応の科学技術で狙いに来るだろう。
 ――今日は何もなければいいけど。
 彼女はため息をついていた。

「目標補足〜♪」
 黒いワゴン車の中には沢山のコンピュータ。其れにはらせんを映し出しているモニタがある。
「さ〜て、らせんちゃん♪本当の力を見せてね♪ お姉さんは期待しているのだから♪」
 激辛スナックを頬張り、激辛飲料を飲み……端末機のエンターボタンを押した。
「作戦開始〜。名付けて『1万ブラックドリルトルーパー♪』よ〜。う〜辛い」
 レディは、ぷはーっと息を吐きながら。又スナック菓子に手を付けていた。

 銀野らせんは、何か危機感を感じた。同時に自分の真上が暗くなる。
「曇りじゃない!まさか!」
 空を見上げた。
 其処には、飛行型の軽装備“黒きらせん”が飛んでいる。その数はらせんでは数えられない。その場にいる人はパニックに陥り、逃げ出していった。
「うそ!そんなことって!」
 あるわけがないと彼女は否定する。幾ら何でもコレだと他の警備組織も黙ってはいるまい。烏の大群で全ての町を破壊するほどの数だとらせんは思った。
「馬鹿げたことを!」
 彼女は怒る。自分の偽物を此処まで作り上げて何をするというのだと。
 既に、ドリルガールに変身し、黒い群れを睨んでいた。
「モクヒョウホソク。コウゲキカイシ」
 機械じみた声が空から聞こえる。一斉に軽装備ブラックドリルガールは彼女に向かって急降下攻撃を仕掛けてきた。
「らせん……アレはただの人形だ。気にすることはない」
「でも……クローンでも生きている……殺せない……」
 らせんの言葉でため息をつく魔法のドリル。
 確かに生命反応はあるが、此は何か違うとドリルは思った。
 らせんには其れを伝えず、黙するしかない。戦いの中に身を置いたというなら、自分自身で何をすべきかを見極めることが必要だろうと思ったのだ。

 らせんが、黒い軍隊に精神攻撃の一撃を与える。敵は全く傷つかないが何故か精神損傷を受けていない事に驚いた。
「ど、どうして!? 」
 驚いて当然のことだろう。
 生きている者には少なからず精神がある。戦う意志、人でもなくてもその種に基準とした意志が。本能といえる部分などが一切感知できない。
 その戸惑いの中でも何とか、攻撃を防ぎ、かわし、距離を置く。しかし、周りを完全に囲まれており、黒い軍隊から逃げることが出来なくなった。
「多勢に無勢だな」
「呑気に言ってるっばいじゃ! きゃあ! 」
 10人の敵に攻撃を受け、その反動で地面に落下するらせん。建物は壊れ、砂埃を上げる。間髪入れずに、敵はドリルをミサイルの様に放って、追撃する。大爆音と共にその周辺の建物が灰燼と化した。
「うそでしょ?」
 何とかかわして空中に逃げたのだが、先を読んでいたのか、今度は全方向から襲いかかってくる軍隊。
「かわしきれない!」
 もう1万という出鱈目な数相手にらせんは為す術がなかった。
 人形達は彼女を中心に、黒い大型球体を空中に形作っていた。


「まだ生命反応はあるわねぇ」
 レディはまだ、納得いっていない表情でコンピュータを操作し、“人形”を動かしている。1万体の“人形”を有る程度の軍隊を分割しておけば、後はコンピュータが“人形”を効率よく動かしてくれる。彼女は単におおざっぱな調整とらせんを見ていればいいのだ。
「防御一辺倒ではしまいに倒れるわよ〜」
 クスクスと笑うレディ。
 この程度、打ち破れるはずだと確信しているのだ。
「奥の手を出して……あの時手を抜いたのは知っているんだから♪」
 彼女はパラメータを見て聞こえているはずのないドリルガールに話しかけていた。
 そう彼女が言った時だった。
「生命反応と、熱源が高まっている?」
 モニタに映し出されているドリルガールのデータが上昇しているのを見て言った。
 ――そろそろの様ね。
 レディはほくそ笑んだ。


 黒い球体の中で異常な数のクローンと戦うドリルガール。しかし、精神攻撃が効かないために物理攻撃に切り替えたかったが、あの時が蘇る。
 ――アリーナで戦った『彼女』の“死”を。
 だが、そうも言ってられない。
「本当は使いたくなかった!でも!此では!」
 彼女は既にからだがボロボロになっている。服は破れ、肌も切られ、徐々に体力を奪われている。服は既に自分の血で赤く染まっていく。綺麗な肌も何筋もの赤い線が描かれている。
 ――真の力を貸して!!
 らせんは心の中で叫んだ。魔法のドリルが呼応し太陽のように光る。
 周りにいる“人形”はその光に耐えられず、どんどん離れていく。
 らせんの体の傷は治っていき、今まで機械的だったドリルガールの装甲は、徐々に中世かかつての神話時代の鎧に、フライングジェネレーターは本当の天使の翼に変わった。更に魔法のドリルは、今までの長さから、螺旋状の剣に変わる。右手にはしっかり籠手でその螺旋剣は固定されている。
 「ドリルガールエンジェルフォーム!」
 彼女の一言で、完全な変身を遂げ、神々しい光で1万ものクローンをはじき飛ばした。
 銀野らせんは、まさに剣を携え悪を倒すために地上に舞い降りた天使の姿になっていたのだ

「えくせれんと〜」
 大きな黒い球体が光で霧散される所を見てレディは笑った。
「とってもキュートに格好良く変身しちゃってるわぁ。お姉さん感激♪」
 と、狭い車の中で飛び跳ねる。当然、天井に頭をぶつけ彼女は苦しんだ。
「あら、感づかれたみたいね」
 モニタに映し出された天使と目が合ってしまった。
「もう『玩具』に用済みだし……いっか」
 そして、天使は神速の速さでレディの元に飛び込んでいった。


 レディの乗る車が爆発炎上。それにより、1万体の『大隊』は墜落し、簡易装甲に備え付けていた自爆装置で無惨に灰となった。街は灰燼と“死の臭い”のなかで、天使のらせんと、優雅に蝶の羽で舞うレディのしかなかった。
「もう、貴女の目的に終止符を打つべき時が来たわ!覚悟しなさい!」
 らせんは、剣をレディに向ける。
「可愛い♪」
 至って余裕のレディ。
「もうクローンがいない今、何故そんなに余裕をもてるの!」
「ふふん。あのクローンなんてただの余興に過ぎないのよ、らせんちゃん」
 怒りを露わにしているドリルガールに対してまだ余裕の笑みを浮かべるレディ。
「何ですって!」
 剣を握る力が強くなる。
 其れに反応して、螺旋剣はいつものように回転し、魔力を放出する。
 その時、2人の真上がまた真っ暗になった。
 地上も揺るがす轟音が、らせんの上から聞こえてきた。
「な、なに?」
 見上げると、宇宙ステーションとも言える巨大コンテナが宙に浮いている。まるで、移動要塞だ。その中心部に見たことのある姿があり、らせんは驚いた。
「本物のブラックドリルガール!」
「さぁ決着を付けよう、ドリルガール!」
 移動要塞から数多のドリルアームと巨大ドリルのキャノン砲が展開された。
 らせんは其れに対抗するかのように、翼を広げ、巨大要塞に向かっていく……。

 超常現象のドリルガールと軍事科学技術の結晶・ブラックドリルガールの戦いが切って落とされた。


 To Be Continued




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東京怪談
2004年04月16日

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