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『蘇る戦士 』
葉月・政人1855)&エターナル・レディ(2196)&水無月・夕香(2314)


 オフィス街にある一軒の高層ビルが忽然と消え去る事件から一夜明けた東京は大騒ぎになった。新聞もニュースも今はただ無意味に広がる荒野となった場所に関する話題をトップで報じた。警視庁はその周囲を立入禁止区域に指定し、多数の捜査員によって実況検分や被害予想、そして二次災害の予防に努めた。
 昨日夜半から行われた警視庁での合同記者会見では謎の白いフラッシュ現象やビルが消えた数時間以内に地下に埋設してあったガス管の破裂によるものと思われる大規模な爆発が起きたという報告などがあったものの、はっきりとした原因がつかめていないことやテロ組織などからの犯行声明が出てきていないことを理由に判明した事実を並べるだけのものとなった。該当区域への立入禁止措置は継続して行うという発表を最後に席を立った警視庁幹部の面々。しかしそんないい加減な説明でマスコミが納得できるはずはない。レポーターから矢のように放たれる質問や野次をかいくぐって逃げていく幹部の姿はそれらと同時に報道されたため、警視庁の威厳は一気に失墜した。一部マスコミでは警視庁はおろか自衛隊の危機管理能力を批判する記事や論評を披露するところもあるほどだ。
 マスコミが騒がしたこの事件は、老若男女を問わずその日の話の種となった。次はどこが狙われるのか。果たして誰の陰謀なのか。ビルに自爆スイッチでもついていたのか。はたまた宇宙人の侵略なのか。午後を過ぎると今度はさまざまな憶測がメディアやインターネット、そして携帯電話によるメール通信で飛び交う始末だった。しかし、今の警視庁には口が裂けても言えない事実があった。まさか警視庁対超常現象特殊強化服装着員が正体不明の戦士たちと激しい戦闘の末敗北し、さらに行方不明であるなどとはとても……


 そんな事件と現場からほど遠い場所にある高校の門から大勢の生徒が出てきた。終業の鐘はすでになった後で、今は放課後だ。玄関を飛び出すのは家に帰る生徒だけではない。ユニフォームを着てそのままグラウンドに向かう者、制服のままいったんクラブルームに向かう者とさまざまいる。そんな人の波に紛れて、ひとりの少女が生徒玄関からひとりぽつんと歩き出した。彼女の名は水無月 夕香といい、平凡を振る舞う少女だった。もちろん今まで説明した一連の騒動とはまったく関係のない一般市民だ。ゆっくりと学校を取り囲む塀に沿ったの歩道を進み、そのうち人気のない学校の裏手に向かった。彼女はいつもこのルートで帰る。
 教室の中はおろか学校全体を包み込んだ今日の噂を小耳に挟みながら、彼女も彼女なりにいろいろ考えていた。心霊学や物理学など、あらゆる視点からその分析を行ったがどうしても結論を導き出すことができない。事件自体にそれほど興味がないのもあるが、夕香はこのままじっと考え続けること自体に抵抗を感じていた。
 夕香はある事件以来、特殊な能力を持つようになった。引っ込み思案で人見知りもする普通の少女が手に入れた力とは恐るべき知能だった。彼女がIQ300という数値を発揮する時、その茶色がかった黒目が金色に輝く。その変化がコンピュータよりも正確で誰も知ることのない事実や真実を突きとめるのだ。しかしその才能は自分の姿に変化させるので、彼女はいつも平静を装い普通の女の子として生きるように心がけた。悩みを打ち明けられる友人がいる。真剣に進学の相談に乗ってくれる教師がいる。それはすべて、自分が普通に生きようとするからだと彼女は信じていた。

 超常現象にも似た事件のことなどさっさと忘れ、今日の宿題をいつするかということに頭を悩まそうと考えた夕香は少し首を曲げた。だがその時、車道に見たこともない高級車が猛スピードで停車した。そのブレーキ音はすさまじく、道の左側に設置された歩道を進む夕香を振り向かせるには十分だった。そして止まると同時に助手席から美女が現れた。夕香はその女性に見覚えがあった。抜群の記憶力のおかげで彼女が誰だかわかったのはいいが、実際に会うのはこれが初めてだということに気づいた。実は夕香はテレビ画面やポスターなどで彼女を見ていたのだ。紫色の衣装に身を包んだ彼女の胸のあたりには「テクニカルインターフェース」の文字が刻まれている。彼女はコマーシャルなどでも有名なエターナルレディと呼ばれる、超巨大企業『テクニカルインターフェース』のキャンペーンガールだった。彼女は初対面の夕香に近づき、側のガードレールで脚を組んでセクシーなポーズを見せつける。

 「はぁ〜〜〜い、ごきげんいかがかしら。あたし、エターナルレディでぇ〜〜〜す!」
 「は、はぁい。」

 テンション高めでとにかく一言一言で可愛い子ぶったアクションを取るレディの勢いに負けたのか、思わずそのままの調子で返事をしてしまう夕香。そんなおかしな相手は宝石のように青く輝く瞳と明るい表情をずっと自分に向けていた。これはキャッチセールスよりも訳が悪い……夕香はレディをそう簡単に撒けそうにはないなと諦めた。車の中には同乗者がいるらしいが、その姿はプライベートガラスで見えなくしてあった。夕香はいつもの調子で話しかける。

 「あ、あ、あの……テレビに出てるような人と別に私……」
 「あ〜ら、かわいいのね、あ・な・た♪ はじめまして、夕香ちゃん。あたし、あなたのことずーーーっと探してたのよ。高校ってお勉強の時間が長いのね。お姉さん、車の中で退屈しちゃった。えーーーん♪」

 そのまま泣く仕草を見せるレディだったが、すぐに笑顔に戻った。別の意味で不安になる夕香を安心させようと彼女は本当の目的を伝え始める……周囲には目に見えるか見えないかほどの塵が舞い上がりはじめた。そんなことも気にせず、いつもの調子でレディは話す。

 「実はぁ、貴女は我がテクニカルインターフェースにおいて特別なエリートと認定されたんですぅ! もちろん社長のお墨付きね♪ それであなたは我が社に向かえることが決定したんで〜〜〜す! とっても名誉なことなのよ、こ……て。お友達……自……できま……」

 夕香の反応など気にせず話し続ける元気なレディ……しかし当の本人はすでに話を途中から聞いていなかった。急激な眠気に襲われた夕香は話の急な展開に疑問を持ちながらも、なぜかそのまま目を閉じて崩れ落ちてしまったのだ! 彼女の周囲に舞い上がっていた塵の正体はレディが発した催眠作用を持つ燐粉だった!
 ターゲットが意識を失ったのと同時に車の中からスーツの男が後部座席からふたり飛び出し、さっさと夕香を車の中に回収する。その時レディが見せていた顔は部下を操る女の顔をしていた。しかし、あの口調だけは止むことがない。

 「あ〜〜〜ん、女の子だから乱暴に扱っちゃダメなんですぅ。もしそんなことしたら、社長からルシファーズスマッシュを落とされるんです♪」

 そう言いながらまた優雅な立ち振る舞いで助手席に座ると、車はそそくさと走り去っていった。行き先はもちろんテクニカルインターフェース社のどこかである。そう、すでに夕香の力を調査し認識していたテクニカルインターフェースは彼女をエリートとして迎え、あわよくばその才能を世界支配のための利用することを早々に決めていたのだった。


 到着したのはテクニカルインターフェースが運営する系列病院の隔離病棟だった。もちろんそれは表向きの話で、実際には遺伝子配列の変換による改造人間の手術などを行う研究施設であった。ふたりの男性に抱えられ、ゆっくりとその中へ連れていかれる夕香。レディは玄関に入ったところにあるインターホンを取ると、何者かに報告をし始めた。

 「首尾は上々ですわ。あとは優秀な夕香ちゃんをクローンとしていっぱい作るだけね、社長。そしてその娘たちに霊能力の才能を与えて無敵の女の子集団を作るのね。キャッ、すごいわっ♪」

 電話の主はなんと社長だった。端から見たら友達と連絡を取り合っているようにもみえるが、これはしっかりとした成果報告だった。レディの長電話はその後も続いたが、それは社長からの指示を聞いていたからだった。彼女にはここですべき仕事がいくつも用意されている。レディはこう見えても忙しい身分だった。

 研究所の半ばを過ぎたあたりだろうか……夕香は苦しみながら目を覚ます。両腕をがっしりとした男たちにつかまれたまま、研究所の奥に連れていかれる彼女はとっさに身の危険を感じた。そして目に入ってきた右手の文字盤を見て、そっと小声で男に話しかけた。

 「あ、あの……トイレ……トイレに行きたいんですけど……」
 「と、トイレですか? わ、わかりました。外でお待ちしています。」

 意外にも簡単にトイレを許可した男たちだったが、そのまま夕香と一緒に女子トイレに入ってこようとした。彼女がさすがにそれは困るという表情を浮かべると、ふたりとも入り口で彼女が戻ってくるのを待つことにした。そしてひとりでトイレに入った夕香はこじんまりとした洗面台を通り抜け奥へと進む。左側に個室が3つあり、それらはすべて洋式。そして突き当たりには小さな窓が配されていた。夕香はその窓を開けると外からの空気が吹きこんでくる。特に鉄格子も何もない場所で、よじ登りさえすればここから脱出することができるだろう。そこで彼女は考え始めた。

 「どうすれば……ここから脱出できるんだろう……?」

 彼女は金色の瞳を輝かせながら開け放たれた窓の下に自分のハンカチを落とし、とりあえず出入口から一番近い個室に入ってわざと鍵をかけずに時が経つのを待った。密閉された空間で彼女はこの施設から逃げ出すことよりも彼らから逃げ出すことを優先した方がいいと判断したのだ。
 案の定、しばらくすると男たちはどたどたとトイレの中に入ってきた。彼らが洗面台を曲がると目に入るのが、開け放たれた窓だった。まず彼らの頭の中にあったのは『彼女がここから逃げる』という行動だった。男はそこから首を出すと、彼女のものとおぼしきハンカチが落ちているではないか。

 「逃げられた!」

 ひとりがそう叫ぶとそのままもうひとりが急いで廊下へと出ていく。そして叫んだ男も窓から外へと出ていった……両者の足音は次第に遠く離れ、女子トイレには静けさを取り戻した。それを確認して夕香が静かに個室のドアを引き開けた。そう、洋式トイレの個室へのドアは押さなければならない。静けささえ保てば、誰もそこにいないと錯覚しても仕方がない。夕香の考えは成功し、なんとか虎口を脱した。

 ひっそりとするトイレを抜けた彼女だったが、危険な状況には変わりはない。とりあえず彼女はそれほど考えずにトイレより遠く入り口より近い研究室に駆け込んだ。先に続く部屋に光のないことを確認しつついくつもの扉を開き、奥へ奥へと進む彼女が最後に訪れた場所は……手術室だった。たくさんのライトに照らされるはずのベッドの主は息をせずにただ静かに眠っていた。それは若い青年だった。顔にできた傷などには十分な処置が施されていたが、その命までは救うことができなかったらしい。冷たくなった青年を見つけた夕香は恐怖で声を上げそうになるが、自分が追われる立場になっていることに気づきなんとかそれを飲みこんだ。
 彼女は近くに置いてあったカルテを見た。他に同じようなものがないところを見ると、これは目の前の患者に関するものなのだろう。夕香はその内容を静かに読み始めた。

 「葉月 政人、25歳。警視庁対超常現象特殊強化服『FZ-01』装着員。昨日の人工衛星のレーザー照射後の高層ビルでの戦闘で瀕死の重傷を負うも外傷に対する治療は完了。しかし本日、脳改造手術前に心肺機能の停止を確認した……って、まさかこの組織があの高層ビル消滅の首謀なの? そんなことって……で、でも今はそれを考えるよりも今はこの人を助けないと!」

 人命救助を優先させた夕香の瞳は金色に輝き出す……今までの治療経過などから分析し、必要な薬を見つけて葉月の近くにある滑車のついたテーブルの上に次々と置いていく。いくつかの薬品を調合した液体を小さなビンに入れ、そしてそれを注入するための注射器と針を並べていき、あっという間に医療器具で埋め尽くした。そして彼女は近くにあった電気パッドを両手につかみ、その電源を入れて葉月の胸に押し当てた!!


  ビリビリビリ!!


 あまりの衝撃に葉月の身体が跳ねる……パッドを持つ夕香の身体も少しよろめいた。しかしそんなことではめげない。彼女は必死に何度もそれを繰り返し、折を見て注射器で薬品を投与する。そしてはじめて心拍数などを掲示する機械に電源を入れると……ハートのマークが緩やかではあるがゆっくりと動き出した。本当の医者でさえ見放した葉月の命を少女が救ったのだ。その速度はどんどん早くなり、ついには葉月が目を覚ました。

 「う、うう、ああ……こ、ここ、は……………?」
 「テクニカルインターフェース社の病院よ、葉月さん。ここは改造手術を専門に行ってる部署みたい。私の処置にミスがなければ、たぶん普通に逃げることはできるはずです。私と一緒に逃げましょう。」
 「そ、そうか。ルシファーとの戦いに負けた僕はここで改造されそうになっていたのか……君、君が僕を助けてくれたのか?」
 「私、水無月 夕香です。私だけじゃ絶対にここから逃げられないんです。お願いです、手伝って下さい。」

 瞳を金色にさせたまま語る彼女の言葉に間違いなどない。細腕の彼女がこの病院から脱出することは不可能だろう。病院の機能とセキュリティーを考えれば、再び捕まるのがオチだ。葉月ならこの状況をなんとかしてくれると信じた彼女は必死にお願いした。一方、ゆっくりと身を起こした葉月は窓ガラス越しに見える部屋に『あるもの』が吊り下げられているのを見てはっとした表情を浮かべた。そして、すぐさま顔を夕香に向ける。

 「夕香ちゃん、だっけ。手伝ってくれるって言ってくれたけど、本当かな?」
 「本当です。たいていのことならお手伝いできると思います。」
 「だったらさ……………」

 葉月は夕香にあることをお願いした……


 夕香の罠にまんまと引っかかった男たちはエターナルレディの怒りを買っていた。ふたりと前にしてさっきと同じ玄関前のインターホンでさっきと同じ人物と通信しているレディ。しかし今度の会話は驚くほど短かった。レディはふたりに社長の言葉を聞かせる。

 「はぁ〜い、おふたりさん。このまま夕香ちゃんを逃がしたらあなたたちは抹消されまぁ〜〜〜す。何かの実験の道具にしちゃうんですって、ぶるぶる! それが嫌だったら、早くあの娘を捕まえるんです♪ お姉さん、ちょっとだけ待っちゃうか・ら・ね♪」

 ふたりは顔を青くさせながらもその身体に秘めたる力を発揮し、それぞれ白と黒の馬型の化物へと変身した! そしてさっき歩いた廊下を疾走する……すると壁をぶち破って謎の戦士が姿を現した! その姿はFZ-01にも似たフォルムで、夕香と同じ瞳の色の茶色い強化服……もちろん中には葉月が入っていた! 装着方法や武器の使用法などをすべて夕香に説明してもらった葉月はそれを自由に扱えるようになっていた。その強化服専用の槍状の武器を頭上で回しながら構える葉月の後ろには、敵が確保すべき存在の夕香が控えていた。ふたりは彼女を見つけるとまずは葉月に襲いかかる!

 『ブヒィフィフィフィ!!』

 「ていやぁ! とうわぁあっっ!!」
 『ブゲッ!!』『ビギャア!』
 「さあっ、一緒に逃げるよ!!」
 「はいっ!」

 強烈な一閃で敵を入り口とは逆の方向に吹き飛ばした葉月が夕香と手を繋いで玄関を目指す……それを見たエターナルレディはぴょんぴょん飛び跳ねて悔しがる。

 「何してるのぉ、あなたたち! もっとがんばらないと、お姉さん怒っちゃうわよ!」
 『グヒイィィィィ……………』

 超感覚でその声が聞こえたのか、はたまた悪い記憶が蘇ったのか、敵は再び葉月を狙う! しかし今度は白い馬が頭上を、そして黒い馬が突進するという連携プレーを見せた! 葉月はとっさに振り返り、夕香の腕を引いて自分の背後に回らせ、自らは細身の槍を風車のように振り回し、まずは頭上の敵を叩きのめす!

 『グゲアァァァ!』

 頭を削られた白い馬は足元で突進している黒い馬の行く手を阻んでしまい、共倒れになってしまった。葉月はそこを狙い、槍についていたスイッチを押してふたりを串刺しにする!!

 「うおおぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
 『ブヒェアガアガガガ………ガガァ……………』

 蒼い炎とともにすさまじいエネルギーが槍からほとばしり、それが二匹の馬を貫いた! 小さないななきを残したまま、彼らは燃え盛る……病院内はその炎でけたたましい鐘が鳴り響く。その音で我に返った葉月と夕香は玄関を目指して走り、そのまま敷地の外を目指して逃げる。さっきまでそこにいたはずのエターナルレディはいつのまにかその姿を消していた……が、彼女はこの隔離施設の屋上からふたりの姿を監視していた! そして今度は通信機で通話をしていた……

 「えーーーん、無能な人たちが有能な人たちを逃がしてしまいました〜〜〜っ! でも安心ね。あなたなら絶対になんとかしてくれると信じてま〜す。そんなあなたに朗報です。実は葉月くん、蘇っちゃいました! どう、グッドニュースでしょ? だからお姉さんのこと、怒らないでね♪ さ、早く本社からこっちに来て来て〜!」

 今度は広大な敷地内を逃げ惑う葉月と夕香だったが、なんとか救急車両が出入りする門を見つけそこに向かって逃げていた。後ろからは何者かが発砲してきたが、葉月の強化服には左脚にホルスターがあり、そこにはめられていた銃を抜いて応戦する。いつも装備していたFZ-01ならモニターにターゲットが表示されるのだが、急場凌ぎで装備したこの強化服にはそのようなサポートがなかった。それでも装着することで身に付いた超感覚を頼りに、葉月は常に命の恩人である夕香を守りながら逃げ道に背を向けてゆっくりと進む。もはや彼らの脱走は完了しつつあった。だがその時、葉月のマスクに聞き慣れた声が響き渡る……その強化服がテクニカルインターフェース社製であることを葉月に思い出させるには十分だった。そしてあの悪夢を思い出すにも十分だった。

 『よぉ……お前、また遊んで欲しいらしいな。待ってろよ、今すぐ行ってやるからな。』

 葉月はマスクの中で血相を変えた……あの何もない荒野での戦いを思い出し、その身を震えさせた。あいつが来る……ここにあいつがやってくるのだ。葉月の恐怖による震えを夕香も手から感じていた。

 「葉月くん。あなたには十分恐怖を味わってもらいま〜〜〜す! お姉さん、ホントに楽しみぃ〜〜〜♪」

 屋上からそれを見つめるエターナルレディの表情は明るい……ほんの少し、その唇が片方だけ上がっていた。

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市川智彦 クリエイターズルームへ
東京怪談
2004年04月05日

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