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『『FZ-01』、壮絶なる最期…… 』
葉月・政人1855)&貴城・竜太郎(1865)&高千穂・忍(2138)


 FZ-02が奪われ、さらにそれを葉月が所属する警視庁対超常現象機動チームを敵視しているアスラが装着し襲いかかってきた……その事実は警視庁上層部の計画を根底から覆してしまった。すべての計画は白紙になり、部長は対応を協議する会議に出席する毎日を送っていた。その慌しさを彼は部署内に持ち帰り、部屋中の人間をそれ以上に慌てさせている。その中で装着員である葉月はひとり冷静にその事実を受け止めていた。端から見ると、彼はただの傍観者にも見える。それほどまでに見事な落ちつきようだった。
 葉月は自分の役目をよく理解していた。自分は戦うためにここにいる。今、上層部や部長が大騒ぎしているのはそれを未然に防ぐための策を話し合っているからであり、不測の事態を生み出さないことに全力を注いでいる結果なのだ。そして仲間たちは不測の事態に備えるための用意をしている。そして自分は……不足の事態が起こった時に自ら先頭に立って戦う。それぞれがそれぞれの役目を果たしている。だから彼は何も言わずそこに立っているのだ。部長の口から出る報告の言葉と自分が持っている意見とが食い違う時もある。だが、そこで自分が動いてはチーム、しいては組織のためにならない。そう判断したのだろうか……彼はこの部屋の影のようになろうと心がけた。
 そんな葉月に唯一、部長から上層部が決定した任務を伝えられた。FZ-02の破壊、そして操作している人物の確保。それが新たに与えられた葉月の任務であり最優先事項だった。刑事の立場としての活動を優先させられることとなった葉月にとって、この決定は己の信念を揺るがす要因になったのは確かだ。だが、自分が思い描く理想からは決して外れていない。葉月はその時、静かに首を縦に振った。自分に似た相手を撃破することを皆の前で誓ったのだ……


 あの日からどれくらい経っただろうか……昼食前に部署内の誰もが小さな揺れを感じた。所員は地震だろうかと何気なくテレビをつける。だが、そこには信じられない光景が広がっていた。葉月はおろか部屋にいた全員が我が目を疑う。画像は土煙る都内某所を逃げ惑う人だけを映しているように見えたが、実際はそうではなかった。我を忘れて逃げ惑う人々に押されカメラは真実を映していなかった。だがカメラマンはなんとかして持っているテレビカメラを固定し目標物を狙う。
 テレビマンの執念が画面に映る。しかしそこには何もなかった。画面の右上に場所が書いてなかったら誰もどこかわからないだろう。だが、人間はいる。背広やスーツを着て車道も何もお構いなしに逃げている。それも驚きの表情で。そんな中、リポーターの声が聞こえた。彼女はその場の混乱をそのまま電波に乗せた。

 「い、今、この付近を取材中に……ビルが完全に、完全に消えてなくなりました! こっ、ここには、35階建てのオフィスビルがあったんです! それが一瞬、何かが光って、それでここに何もなくなって……本当なんです、とにかくこの場から消えたんです! 瓦礫もガラスの破片も残さず、すべてが消えてしまい……」

 それ以上の説明は必要なかった。気弱そうな所員は緑茶の入った湯のみをそのまま地面に落とした。湯のみが割れる音に反応する人間は誰ひとりとしていない。『あまりの展開の早さに頭がついていかない』というのは、こういう時に言うのだろう。だが、葉月は誰よりも早く部屋を出ていこうとした。割れた湯のみの欠片を危なっかしい手振りで拾っていた所員がそれに気づき声をかける。

 「は、葉月くん、どこに行くんだい……これは機動隊や自衛隊の仕事だよ。まだ出動命令は出てないんだし……状況把握もできて」
 「僕のFZ-01には、人を救うための情熱にあふれています。かつてこの部署がエイドライアットだったあの時からの気持ちを……いつまでも胸に抱いて僕は動きたい。そんな気持ちで彼を動かしたいんです。わがまま言って、すみません。皆さん、装着準備のお手伝いをお願いします。」

 葉月の言葉を聞いて、その男性所員はまた欠片を落とす。しかしその目の奥は静かに光っていた。所員たちは持ち場へと走り始め、上司への報告などを始める。そして彼も欠片を持ったまま、葉月が走り出す廊下に向かって背中越しに叫んだ。

 「葉月くん、荷電光子霊波ライフルはラボに行ってる。今回の出動には持っていけない。何かあった場合は既存の武器で対応してほしい。人命救助が主な任務になるだろうから、最初からガトリングライフルはアンカーユニットを装着しておいた方が効率的だと思う。また事態は把握されていない。何らかの形で二次発生する可能性も考えられるから、救援物資をトップチェイサーに積ませるからね。状況の空気に飲まれるな、いつもの君でいれば大丈夫だ!」
 「……はい! わかりました!!」

 一瞬だけ後ろを振り向いて返事をする葉月。それを見届けると、彼も情報を得るために自分のパソコンへと走っていったのだった……


 FZ-01の出動許可はトップチェイサーで現場に急行している最中に受けた。目の前のモニターにそれを示すグリーンの文字を見て、葉月はひとり勇気付けられる。命令を待たずに飛び出した彼に対し、上層部は何のためらいもなくその後押しをした証拠がここにあった。彼は警察官でよかったと心から思った。バイクにはアンカーユニットが装着されたライフルが今か今かと出番を待っている。彼は問題の荒野へと急ぐ。
 その時、通信員の女性から信じられない報告を受ける。葉月も突然開いたウインドウのセンサーを見て驚きの声を上げる。そこには『FZ-02』の表記があった!

 「FZ-02……まさかあの場所にいるのか!!」
 『葉月さん、危険です! トップチェイサーには救助のための装備しか搭載してないんです!』
 「でもあいつが……あいつが、もしかしたらあいつが、罪もない人々を傷つけるかもしれないんだ。放ってはおけない!」
 『葉月さん!!!』
 「通信終わり!!」

 葉月は通信を一方的に切りアクセル全開、今まで以上の音量でサイレンを響かせる……トップチェイサーは宿敵に向かって街を駆けるのだった。


 そして誰もいなくなった無人の荒野にFZ-01が降り立った。さっきまで放送していたテレビクルーや逃げ惑う人々はすっかり消え失せ、周囲は近くを侵入禁止にするために活動する機動隊のサイレンだけが鳴り響いていた。ビルがあったとされる場所にゆっくりと歩き出す彼を砂塵が包む……だが次の瞬間、自分の身体に火花が舞う!!

 「うお、うおおおぉぉぉ! や、やはりここにいたかアスラ……!」

 土煙が消えていくと、目の前には銃を構えたFZ-02が現れる! 彼は何の言葉も発さないまま発砲を続け、目標を蜂の巣にしようと企む。しかしそれを前転でかわし、じりじりと距離を詰めていくFZ-01。手にはすでに強化警棒が握られていた。空しく地面に乾いた音を弾かせるFZ-02は飛びかかってくる敵に向かって銃を構えなおす!

 「遅い!」

 葉月の声が早いか動作が早いか、強化警棒はFZ-02の持つ銃を手の届かないところに弾き飛ばした。武器を失ったFZ-02はよろよろと揺らめく……その隙をついて今度は警棒で敵の腹をえぐった!

 「アスラ……………今度こそ確保だ!」
 『ピピ、ピピピピ……』

 葉月のその声に反応したのか、FZ-02は奇妙な機械音を発しながら動き始める。鋭い突きを食らってその身を宙に浮かせていたにも関わらず、妙な体勢から重いキックを繰り出す! それをカウンター気味に食らったFZ-01は一瞬にしてバイクの側まで吹き飛ばされた! ボールのように何度か地面を弾んだ彼は、地に伏したままわき腹を押さえて苦しむ。そしてあり得ないタイミングで動き出した移動予測のセンサーを疑った。あんな体勢から攻撃できるはずがない……そう分析していた彼は痛みで気持ちを引き締める。しかしそうしても葉月の頭の中の疑問は晴れない。

 「うぐおあぁぁぁ……なぜだ、なぜあいつはFZ-01のシステムに予測できない動きを何度もするんだ……?」

 FZ-01はバイクにあったライフルを持ち出し、鈍く光るアンカーをFZ-02一直線に撃ち出した! かつては敵を捕らえるために使った武器を極めて単純に使ったのには訳があった。今日のFZ-02は何かが違う。武器を失った時に見せた反応の遅さ、一方では攻撃を食らった後に繰り出した反応のよさ……葉月にはこのギャップがどうしても埋まらなかった。だからわざとこちらが単純な行動を見せて相手の出方を伺ったのだ。錨型の金属はしっぽを揺らしながら敵に迫り……そしてそのまま命中した。

 「な、なんだって!?」

 予想外の結果に葉月も驚きの声を上げる。しかもFZ-02はその衝撃に耐え切れずゆっくりと地面へと崩れ落ち、そのまま背中から倒れこんでしまうではないか。ライフルを操作してアンカーを巻き戻しながら、彼は警戒しつつFZ-02の元へと歩く。一歩進むごとに葉月の疑問はどんどん膨らんでいく。これを解決するには、装着していた人間を確かめるしかない。少なくとも、中に入っていたのがアスラではないという自信はあった。
 ビルの隙間を縫って吹く風がFZ-02の仮面を葉月の足元に転がす……それを見て葉月は息を飲んだ。そこには誰もいなかった。そう、中には何も入っていなかったのだ。その事実を知った葉月は頭が混乱しそうだった。

 「どうなっているんだ、これは……??」
 「こういうことなんだよ、お前。」

 さっきと同じ銃声がFZ-01の耳元に響く……! 同じ攻撃を今度は側面から受け、がらんどうの強化服の上に倒れこむ葉月。その返事は聞き慣れた声だった。怒りと痛みに震えながら視線を横にやると、彼が捜し求めていた緑の戦鬼がそこに立っていた!

 「どうだった、ランチには持ってこいだっただろう? だが、楽しいディナーは今から始まるんだ。今日こそメインディッシュを頂くぜ。」

 声の主はFZ-01と同じ強化服を着たアスラだった! 彼はFZ-02が装備していた銃を上に放り投げると、すかさずホルスターから自分の銃を抜き、それを原型がなくなるまで撃ち続けた……そして地面には金属の雨粒が落ちてくる。FZ-01はただそれを黙ってみるしかなかった。アスラは首をひねりながら葉月に問いかける。

 「あんなオモチャ、別にいらねぇだろう? お前にはそれがあるんだしな。」
 「お、お前のような奴に壊されて……お前のような奴に壊されて、FZ-02は悲しんでいる! お前たちの考えているようなことのために生み出されたんじゃない! 彼はもっと大切なものを守るために作られたんだ、お前! お前は絶対に許さない!!」

 『……………そうですか。貴方は自分がFZ-02にそういった願いを込め、その崇高な目的のためにそれがあると思っていたのですか。』


 遥か上空から響く声……それはアスラが発した言葉ではなかった。それを証拠に彼も天を見上げている。そしてFZ-01とアスラの真ん中にひとりの戦士が空から銀色の閃光を放ちながら降り立った! 翼にも似た飛行装置をつけ、白銀の鎧をまとい、黄色い瞳を持つ戦士はゆっくりと立ち上がり、FZ-01を見る。彼を見たふたりの行動はあからさまに違った。葉月は驚いたような素振りを見せたが、アスラは驚きもせずにただ彼の出現に頷いているだけ……そう、彼がFZ-01の敵となり得る存在であることは誰が見てもわかることだった。
 アンカーユニットを備えたライフルを構え、再びしっかりと地を踏みしめるFZ-01は空から現れた存在に問いかける。

 「お前は……何者だ!?」
 「私の名はルシファー。卑しくも神の名を冠した戦士です。先ほどはその力の一端をお見せしましたが……どうやらお気づきではないようですね。」
 「気づく、だって?」
 「失礼。先ほど貴方が戦ったFZ-02は私が操作した人形だったのです。私が貴方の活躍を直に拝見したかったので、是非もなく使った能力です。」

 敵に対してあまりに丁寧に話しかけるからか、アスラは少し拍子抜けしてしまったらしい。重要な話は小耳に挟む程度にし、自分は銃を指で回して遊んでいた。しかし話し相手の葉月にそんな余裕などない。アスラが退屈そうにしている様子を見ると、ライフルを持つ手に力がこもる。だが葉月がふたりを過剰に警戒するあまり貝のようになってしまった。すると話はルシファーが一方的に進めていく。これがいけなかった。葉月は聞いてはならないことを自分から聞いてしまう……

 「FZ-02を操ったのには理由があります。そう、これはもう用済みなのです。人を救うために必要なデータも貴方の戦いの記録もすべて頂きました。ですからこういう廃棄方法を選んだのです。つまり……」
 「まぁ、しいてはお前の着ているFZ-01も用済みってことなんだよ。BANG!」

 空いている左手で銃の形を作り、FZ-01を狙い撃ちにするアスラ。その事実を聞いて葉月はショックで言葉が出ない……
 自分たちがつい最近まで築き上げようとしていたあの行為はなんだったのか。すでに敵が先手を打ち、自分たちのさらに上の上へ行ってしまっていた現実に捕われてしまった彼の口からは何も出てこない。あの高き理想は警視庁という小さな枠の中で響くうつろなものへと変わっていくのを葉月は感じていた。彼はそうしてしまおうとしている存在を恐れ、むやみに声を張り上げる。

 「必要ないものなんて……この世にはない!」
 「そうです、貴方のおっしゃる通りだ。」
 「……なんだとぉぉ!!」

 あくまで冷静に接するルシファーに対し、葉月は激怒する。すでに彼は自分を見失っていた。心が、理想が、徐々に過去の写真のように色褪せていく。敵はそれを楽しんでいるのだろうか……そこでルシファーは奇妙な提案を持ちかける。

 「貴方が装着しているFZ-01のデータはFZ-02からすでに採集済みです。その強化服はまったく必要ありません。ただ……葉月 政人という人間は我々に必要な存在です。貴方自身は選ばれたエリート、このままFZ-01とともに破滅の道を選ぶにはあまりにも惜しい人材です。貴方はこの社会の評価を超える存在になろうとは思いませんか。この私が、その地位をお約束しましょう。」
 「俺と一緒に、ゲームを楽しもうぜ……なんてな。」

 甘い誘いの言葉に対し、意外にもあっさりと大きく何度も首を横に振る葉月。その荒い息遣いは周囲に漏れ、その苦しみは顔を見ずとも理解できた。彼は精一杯の声で叫ぶ。

 「簡単に人を手にかけるような悪人の評価に躍らされるほど、僕はバカじゃない! お前たちの仲間に入れば、僕は大切なものを失う! 人を、自然を、社会を、そして……僕は僕であることを失ってしまう! お前たちに協力する気は少しもない!!」

 「待ってたぜ、その言葉を。ならば死ね、FZ-01!」
 「はっ……ぐあ、ぐあああぁぁぁぁ!!」

 組み入る気がないことを確かに聞いたアスラは急に銃を打ち鳴らし、それをすべて命中させる! さっきよりも強力な弾丸に踊らされるFZ-01は決して手に持ったアンカーユニットを放しはしない。それを使って一気にふたりを絡めとろうと力を込めて撃ち出した! しかし、今度はがらんどうの人形が相手ではない。アスラとルシファーでは役者が違う。葉月が考えていることはすぐに読まれ、ルシファーは身を屈めてそれを避ける。そしてアスラはFZ-01に向かって舞い上がり、空中で回転しながら銃を乱射する!

 「しま、あがあがががーーーーーっ!!」
 「そんな武器じゃ、俺たちと遊べないぜ?」

 アスラがゆっくりと歩み寄ると、FZ-01の首を恐ろしい力でつかんで顔を近づけて話す。その握力に負けたのか、FZ-01はついにライフルを地面に落とした……

 「どうした……まさか終わりか? あっちのバイクにはいっぱい武器が詰んであるんだろう? 拾ってくる気はないのか?」

 そう言いながら葉月の顔を無理やりトップチェイサーに向けるアスラ。しかしバイクの中には救護用の道具しかなく、何をどう見てもこれ以上の武器は搭載されていない。それでも葉月の視線はそちらに向けさせられる。彼はだんだんと頭から血の気が失せていくのを静かに感じていた……
 その刹那、白い閃光が周囲を包んだかと思うと、その場からバイクが忽然と消えた……ここに建っていたビルを消したのと同じ現象が目の前で再現された! センサーは超強力なエネルギー反応を感知し、一瞬だけ警戒信号を出したがそれを発信したのはすべてが終わった後だった。

 「ああ、あああああ……ああああああ……………」
 「これは『堕天使ルシファーの6枚の翼』とでも形容できる兵器の力です。我が軍事衛星から照射されるレーザーで消したのです。ビルを消したのも、必要のないものを消すために必要な手段だったからです。それにトップチェイサーも、貴方のようなこの社会に必要とされていない人間が使うのなら消そうと思いまして。そして……もうその強化服も貴方も必要ないです。お別れです。」
 「あばよ、楽しかったぜ。だが、デートはこれで終わりだ。」

 アスラがFZ-01を乱暴に投げ捨てると、そこに天空から薄い光を帯びたレーザーが降り注ぐ……が、それを受けてもFZ-01の姿は消え去らない。しかし彼が地を這いながら動こうとすると、そのレーザーも一緒に動く。まるで舞台の主人公を照らすスポットライトのようだった。それと同時に飛行ユニットで空を飛んだルシファーは数ある超高層ビルよりも遥かに高いところに舞い上がる!

 「ロックオン、完了……惜しいですね、倒すのが。」

 ルシファーが放つ必殺のキック『ルシファーズスマッシュ』は衛星が発するポインタめがけて繰り出される……後は装置に身をゆだね、脚に渾身の力を込めるだけでFZ-01を倒すことができるのだ。彼は惜別の言葉を残し、ゆっくりとFZ-01に向かって降下を始める!

 「く、来る……ル、ルシファーが……ぼ、僕には、僕には何も、できない、のか……」

 深いダメージを追い、意識が朦朧としながらもよろめきながらなんとか立ち上がるFZ-01。しかし、残されたものといえばその身ひとつだ。わずかに白く染められた世界で最後の力を振り絞り、ルシファーのキックを耐え切ろうと両腕を広げて待ち構える!
 だが、皮肉なことに結果はすでにわかっている。真っ赤に染まったセンサーが彼を警告している。だが、ここから逃げることはできない。通信を無理やり接続した通信員の女性が悲痛な声で叫ぶ。

 「葉月くん、逃げてーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
 「葉月、バカな真似はよせ……お前は俺の湯のみじゃないんだ。壊れたらそれまでなんだ。壊れたらいなくなるんだ……なのに、なのになんで逃げないんだ!!」

 仲間たちの声が耳に届いたのだろうか……しかし葉月は無意識のうちに言った。誰のためにでもなく、自分のために。
 

 「こっ、ここで、に、逃げたら………………はぁ、はぁ。ぼ、僕は……僕を、う、失って……しまう……」


 耳に残された音は高速で向かってくるルシファーの装置の音だけだ。しかし、ある高度からその背中にぐんぐん迫る者がいた。アスラだ。彼はルシファーの背中を蹴り飛ばすことでさらなる強力なパワーを与えようというのだ。その行為はFZ-01への惜別の気持ちもあるのだろうか……それとも自分でとどめを刺したかったのだろうか。そのキックを放ったことで音速を超えたルシファーは待ち構えるFZ-01に向かって突進する……!!


 「とりゃあああーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっ!!!」
 「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーっっ!!!」


 荒野を爆音が包む……赤い炎がこぼしたワインのように広がる。
 もう、そこに青い戦士の姿はない。燃え盛る炎の中から姿を現したのは、白銀の悪魔と緑の戦鬼だけだった。
 そのふたりの足元に、ひび割れたFZ-01の仮面が無残に転がっていた……

PCシチュエーションノベル(グループ3) -
市川智彦 クリエイターズルームへ
東京怪談
2004年03月29日

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