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『衝撃! 特殊強化服『FZ-01』VS 特殊強化服『FZ-02』! 』
葉月・政人1855)&高千穂・忍(2138)


 深夜の警視庁に一台の大型トレーラーが配置されていた。その中には数多くの機材が搭載され、まさに国家機密に関わるであろう高性能コンピュータで埋め尽くされていた。これだけの装備をもってしても、この車は満足という言葉を知らない。一番重要なものを搭載すべく、特別な任務を帯びた工作員たちが警視庁の中から運んでくる『あるもの』を待っていた。そして数分後、黒いベールに包まれた人型の何かが運ばれてきた……それは誰にも姿を明かさないように厳重に包まれていた。それを大の男が3人掛りで積み上げる。他の機材とは比べ物にならないくらい慎重にトレーラーの中に運び込む工作員たち。その作業を行っている背後にある男が現れた。彼らは重要なものを乗せ切る直前だったため、来訪者の顔も見ずに失礼を詫びた。

 「あ、すみません警視。ちょっと手が離せないんです。どうせこれを乗せたら出発ですから。ご安心ください……よいしょっと。」
 「そうか、もう出発か……それはありがたい。そのトレーラー、中身も全部この俺がもらうぜ。」
 「な、なんだあんたは……な、なぁ、なんなんだあんた……か、怪物だぁがっ」

 目の前の男はみるみるうちにその姿を変え、運搬に携わる人間をすべて倒していく……怪人は工作員たちをトレーラーから地面に蹴り落とし、無人となった庫内で大切に運ばれた荷物のベールを乱暴に剥がす。するとそこには警視庁対超常現象班が誇る特殊強化服『FZ-01』を思わせるフォルムの装備が誇らしげに立っていた。怪人は軽くひゅーっと口笛を吹くと、マスクの頬を触るのだった。

 「今日から俺がお前のマスターだ……これからは一緒に遊ぼうぜ?」

 彼は自らトレーラーを運転し、その場を去っていった……



 この警視庁の大失態はすぐにマスコミが発表した。盗まれたトレーラーで何を運んでいたのかは、政府が軍事機密として取り扱っていたため正確な情報は世間に流れなかった。しかし裏づけのない情報がなくとも想像で記事を書くのが今のマスコミだ。あることないこと週刊誌やゴシップ紙に書きたくられ、それに便乗する形でテレビのワイドショーも大いに騒ぎ立てた。世間が警察に不安を感じている頃、被害者である警視庁対超常現象班のメンバーの顔色は世間以上に真っ青だった。彼らはそれに何が乗せられていたかを知っていた。それを開発したのが彼ら自身なのだから知っていて当然だ。悪くなった顔色のままいつものように職務をこなす彼らの中でただひとり平静を装っている青年がいた。『FZ-01』の装着者である葉月 政人だった。いつものように報告書に記載する内容を黙々とパソコンに入力している彼を見て、気弱そうなメカプログラム担当の細身の青年が話しかけてきた。

 「は、葉月くん。君は思ったよりも落ちついてるね。心配じゃないの、あれのこと?」
 「心配は心配ですけど、結果的にあれを止めるのは僕の仕事です。あまり焦っても仕方ないですし……」
 「そう聞くとなおさら心配になっちゃうよ、はぁ……」

 「ところでお聞きしたいんですが、あれはロボットのように全自動で動かすことは、できるんですか?」
 「できなくはないけど……そうなると網膜認識装置とか余分な装置を取り外さないといけないし、データ自体が大きく入れ替わっちゃうから普通の研究所レベルじゃ改造は無理だよ。だいたい現行型よりもシステムが複雑になってるし、全自動は無理なんじゃないかな。結局は人間が入らないと意味のない装備ってこと。それに、あの中に入るには身体的に優れた才能を持つ若い人間が入らないと動かせないしね。君みたいな。」

 葉月の問いかけで少し安心したのか、青年は愉快に笑う。そんな人間がこの世の中で何人もいるものかと最後に付け加え、手に持っていたコーヒーを一気に飲み干す。一方の葉月はみるみるうちに顔色を変えていった……胸に残る気持ち悪くどす黒い感覚が広がっていくのを確かに感じていた。


 その日の深夜、沈鬱な雰囲気に包まれていた葉月の部署に向かう存在がいた。彼は堂々と正面玄関から入り、廊下を歩き、エレベーターを使ってここまでやってきた。そこまでには無数の警察官と瓦礫が崩れ落ち、彼がどこを通ったかは一目瞭然だった。対超常現象班の部署まではまだ少しある……目の前のセンサーを頼りに歩くその敵は物陰から踊り出た警官に向かって銃を構える! 警官も横っ飛びの状態で拳銃を発射しようとしたが、それよりも先に敵の高性能光線銃が火を吹いた!

 「うぐあぁぁーーーー!」
  ぱあぁぁーーーん!

 肩を狙われた警官は拳銃をあらぬ方向に撃った……天井にめり込んだ弾を見ながら、敵は地面に伏した警官の腹を蹴る! わずかに身体が揺れるのとは対照的に、大きな悲鳴をあげる制服警官。そこへ強化服を来たFZ-01がやってきた! 倒れこむ警官の肩を抱きながら必死に声をかける。

 「大丈夫ですかっ……貴様か、警視庁に殴り込みをかけてき……お、お前は!!」

 モニターの認識番号を見て驚く葉月。それもそのはず、認識番号は『UNKNOWN』ではなく『FZ-02』と表示されていたのだ! FZ-01に似たフォルム……赤いバイザー、漆黒のボディ、そして彼の目の前で光線銃を回転させながら持っている右手から左へ、左から右へとしている敵こそ新型強化服『FZ-02』だった! 彼は光線銃を高く放り投げ、FZ-01に向かって構える……危険を察知した葉月は静かに警官を床に寝かせる。

 「お前が侵入……」
  シュパ、シュパーーーン!!
 「うわっ!!」

 落ちてきた銃を器用に構え、そのままFZ-01に数発撃ち込むFZ-02。葉月はとっさに長い廊下を生かして後ろへ飛び退いた。そして自分の銃を構えようとするが、敵の踊るようなガンアクションに翻弄されてなかなか戦闘態勢を整えられない。タイミングを微妙に狂わせながら銃を撃つFZ-02……葉月は対超常現象班の置かれている部屋まで退くしかなかった。2体の力の差は歴然としていた。頼りない敵を見るに見かねたのか、銃を持った腕を折り曲げて悠然と首を回すFZ-02は実に楽しそうな声が周囲に響かせる。

 「……どうした、その程度か。お前の力は。」
 「そ、その声は……!」
 「ああ、アスラだよ。その程度ならしょうがない……俺のシュートダンシングで楽しく踊りな。」

 FZ-02の正体が高千穂 忍、そしてアスラであることを知った葉月はゆっくりと後ろにたじろく……その姿を見ながら不敵な笑みを響かせて追う忍。光線銃はどこかに留まることはない。いつも忍の手によって周囲を踊るようにして宙を浮いていた。いつどこから光線を発射されるかわからない。FZ-01は電磁警棒を抜いて接近戦を挑もうと猛然とFZ-02に襲いかかる! しかし忍は背後に回りこんだ銃を左手で受け取り、そのままFZ-01に向けて発射する!

 「お前のセンサーは反応が遅いな……それともお前が鈍いだけか?」
 「しま……うぐわあぁぁぁーーーーーーーっっ!!」

 銃口から発射された光線はFZ-01を貫く……彼は横にあった地下への階段を転げ落ちていく。位置的にも不利な状況に追い込まれた葉月は踊り場で倒れこむ暇もなく、そのまま下へ下へと降りていく。無様に逃げていくのを見て上機嫌になったのか、FZ-02は威嚇も兼ねて銃を踊り場に向けて撃ちまくる!

 「ははははは! はーっはっはっは!!」

 勝ち誇る忍の声などお構いなしに駆け足で逃げるFZ-01はある部屋のドアを開く……そこはいつも葉月がトレーニングに使っている地下訓練場だった。部屋に入った葉月は側にあったスイッチを押すと、あろうことか訓練場の一番奥まで逃げてしまった。これ以上逃げ場はない。もはや絶体絶命の危機だ。視線を前に飛ばせば半開きになっているドアを蹴り崩し、FZ-02が入ってくるではないか。強化コンクリートの壁を背に立ち竦むFZ-01を見て、苛立ちながら言い放つ。

 「お前……まさかもう戦えないとか言うんじゃないだろうな?」

 しっかりとFZ-01に銃は構えているものの、その態度はふてぶてしい。首を回し、萎縮しているように見える敵を挑発する忍。しかし彼に反抗することなく、葉月は弱々しい言葉を口にする。

 「FZ-02は……僕が装着するFZ-01を改良と修正を加えて完成したより高度な力を持つ強化服だ。そんなのが急に来て戦えと言われてもね……」
 「性能の差を怯えながら解説するわりには元気だな。自分の身体で性能の差を感じてみてはどうだ? とぉりああぁぁぁ!!」

 赤い光が残像を残してFZ-01に向かっていったかと思うと、今度は激しい殴り合いになった! 腰のホルスターに銃を収め、FZ-01に乱打戦を挑む忍。その力は圧倒的にFZ-02が勝っている。ザ・グラスホッパーとしての身体能力、テクニカルインターフェース社が製作したアスラの経験、そして最新鋭のデータやサーチ機能を搭載したFZ-02……これに勝る能力はFZ-01にはない。一発として反撃の拳を出すことができず、葉月はただサンドバックのようになっていた。

 「お前の力はこんなものかぁぁぁ!!」
 「かかった、い、今だ! チェック!!」

 FZ-01が入ってきたドアに向かって前転しながら逃げていく……しかしその際に不可解な言葉を口にした。忍はそれを気にしつつ光線銃を抜き、逃げる相手に向けたその時、不気味な機械音が訓練場に響く!

 『レーザー、ロックオン。目標に向け発射シマス。』
 「な、なんだあのメカは……なぜ急にレーザー砲が出てくるんだ!?」
 「ここは僕の訓練場だ! お前は罠にはまったんだ!!」
 「な、生意気な……俺にこれが避けられないとでも思ってるのか!!」

 FZ-02の姿を認知した訓練場のメカは容赦なく最高出力のレーザーを吐き出す! しかし、忍はそれを身をよじることでなんとか紙一重で避ける……その姿はザ・グラスホッパーを思わせるような動きだった。レーザーが周囲の壁を大きく揺らす時、忍は再び奇妙な音を聞くこととなる。入り口に立ちふさがるFZ-01が今までの戦いで見せたことのない武器をこちらに向けているではないか! 彼はレーザー砲が発射される隙にハンガーからこの武器を準備していたのだ。FZ-01の身体を大きく包み込むような巨大なフォルム……下腹部と背中で武器を固定して使用するところを見ると、恐ろしく強力な武器であることが見て取れた。その銃口に恐ろしいほどのエネルギーが集束している!

 「す、すさまじいエネルギー反応だ。さっきの訓練用レーザーの比ではない……か、荷電光霊波ライフルだと? そんな装備が開発されていたのか!」
 「今しかない! 行くぞ、アスラぁぁ!! 荷電光霊波ライフル、ファイヤァァァァ!!」

 さっきよりも大きく太い光線がFZ-02に襲いかかる! そのレーザーの周囲に雷のようなエネルギーが発揮され、その力は誰が見ても強大なものだった。忍は部屋のサイズに合わせたジャンプでそれを凌ごうとしたが、初めて見る武器の攻撃にセンサーが対応できず、タイミングを誤ってしまった!

 「し、しまっ……うごおぉぉあぁぁぁわあっ!!!!!」
 「や、やったか……?!」

 ライフルを構えながらFZ-02を見る葉月……しかしジャンプに失敗したと判断した忍がとっさに右に身体をくねらせたため、攻撃は右半身にしか命中していなかった。この一撃で強化服FZ-02を完全に破壊することはできない。レーザーを吐き終えた荷電光霊波ライフルを大事そうに抱えるFZ-01。しかし、そんな彼に体当たりを敢行するFZ-02……それをまともに食らってしまった葉月はライフルと共にその場に崩れてしまう。

 「なっ、うがっ!!」
 「や、やるじゃねぇか……下手な芝居に付き合ったせいで思ったより楽しめたぜ。今日はここまでだ、またデートしようぜ……あばよ。」

 忍はFZ-01が倒れこんだ隙を突いてそのままドアをくぐり、階段を駆け上がっていく……また上階では銃声が響くが、忍はこの場から逃げおおせるだろう。葉月はそう感じていた。
 それよりも彼が気にしていることがあった。それはFZ-02から発せられていた異常音だった。あの音はFZ-01と同じもので、相当のダメージを受けないと聞くことのできないものなのだ。最後に放った荷電光霊波ライフルの一撃だけであの状態に……この武器がなければ自分はあっさりとやられていただろう。不意にライフルを撫でる葉月は静かにつぶやいた。

 「お前には……助けられたよ。今度も……これからも頼む。」

 警視庁内にけたたましい警告音が鳴り響く中、彼は壁を背に倒れこんだ……つらく厳しい戦いは続く……

PCシチュエーションノベル(ツイン) -
市川智彦 クリエイターズルームへ
東京怪談
2004年03月10日

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