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『FZ−01VSアスラ 謎の助け 』
里見・勇介2352)&葉月・政人(1855)&高千穂・忍(2138)

里見勇介は、平凡な日常を送っている。しかし、彼はある秘密がある。
―平和を守る宇宙生命体である。平和のために戦いたい。
と思いこんでいる記憶喪失の幽霊だ。
この東京にそう言う幽霊がいてもおかしくはないだろう。この世の中、謎生物やら規格から外れた吸血鬼、異世界から来ている妙な神などが闊歩している以上、些細なことだ。人に害を与えない限り良いわけだから。
彼が街を歩いていると、どこかで戦いらしき音が聞こえる。
「なんだ?」
里見はカツカツとその方向に向かっていった。
場所は町の廃工場。銃撃と爆発音がする。用心深く隠れながら近づいていくと…。
「装甲兵が戦っている…」
里見は驚いていた。
青の装甲兵と軽やかに動く緑の装甲兵が廃工場の中庭で戦っているのだ。


「俺のシュートダンシングを見せてやる。」
と、緑の装甲兵…アスラが二挺拳銃で青い装甲兵FZ−01に向かって華麗な跳躍と連射で追いつめている。何とか其れをかわし、遮蔽物で身を守るFZ−01。
「つ、強い!」
FZ−01の装着員葉月はハンドガンで応戦するも、アスラにすんなりとかわされる。
何故、こういう状況下になっているか。
アスラの装着員高千穂忍の所属するテクニカルインターフェース社が葉月を誘い込むように誤情報を流したのだ。本来なら、目的はある謎の少女のデータ取りだったが、高千穂はそれだけではつまらない、ゲームを楽しませろと言う意見が通ったことによるものだ。
前回は謎の少女と連携で彼を撃退できたが、今回彼女はいない。
「生憎と助けは来ないぜ。あの嬢ちゃんは今頃アリーナでゲームの最中だ。さあ、俺を愉しませろ!」
「ゲームだと?」
「人の心配する暇があるか?ほらほらほら!」
アスラの拳銃連射は止まらない。蝶のように踊り、隙を作らず弾倉を取り替え射撃、オーバーヒートした拳銃を捨てても、予備を取り出し其れを指で回して構え撃つ。装甲兵で其処まで可能なのかと言わんばかりのバク転で、FZ−01の反撃さえかわしているのだ。
しかし、葉月も愚かではない。確実に彼を接近戦に持ち込める範囲まで近づいている。手には高周波ソードを持っている。接近戦に持ち込めば何とかなる。必ずあのガン=カタ(シュートダンシング)に隙があるとアシスタントから通信が来ているのだ。
回って、跳ねて、円を描く。円とは体の自然な動きを表す。格闘をかなりのレベルで身につけているなら、自然と同足歩行(同じ手足がいっしょに前に出る歩行方法)になってこうした技を通常よりは容易に得られる。葉月も気がつけばその歩行になる程の格闘技の腕前を持つのである。
「どうした?臆したか!」
高千穂は高らかに笑い、葉月を追いつめている実感を得ていた。先のことなどお見通しだ。
彼が弾切れになった拳銃を踊りながら捨てたその瞬間、葉月は走って高周波ブレードを振りかぶった。
「うぉ―――――――――――!」


其れを隠れてみている里見。
「青い方、分が悪いな…」
どっちが正しいのか分からない。今の状況では。何か手がかりになる物はないか周辺を見渡す。
ただ、この所謎の怪人と警察の装甲兵の戦いが頻発しているとニュースで聞いている。怪人の破壊行動は何処の組織からなのかさっぱり分からない。彼にとって、IO2や、TIの裏など知るよしもない。
目をこらしてよく見れば、青い方に『POLICE』と書かれている事が分かった。白バイらしきものにも『POLICE』と書かれている。
「じゃ、あの青い方が警察ってことか…」
緑の方はかなり戦いを楽しんでいる。普通なら殺し合い等好む物は悪人と相場が決まっている。此はテレビで見た情報だ。
「うーん、手助けしたいが…どうしたものか」
と、銃声の嵐の中をのんびり考えてしまう里見だったが、
「あいつ…」
青い方が、かなり接敵していることに気付いて
―勇気があるな
と感心していた。
彼は勇気のある者を好む。自分が平和の使者である以上、共感が持てる所があるのだ。おそらく中にいる装着員は正義感溢れる熱血漢だろうと思った里見。
そして、青と緑が交錯した瞬間に心奪われた。


「甘い!」
高千穂は既に粒子ビームソードを持って、受け止めていたのだ。そして葉月を押し返し、しっかり握りしめて斬りかかる。
またも防戦一方のFZ−01の葉月。アスラの高千穂は軽々とソードを振るう。機動性に於いてはやはりTI社のアスラが上のようだ。其れもそのはず、前にFZ−01のデータを使い更に改良強化されているのだ。元はTIの最強兵器に使うデータであるが、高千穂の魅力にTIの社長が惚れ込んだ事に依るものである。FZ−01は実際かなり重装備で重く、動きが僅かにぎこちない。
葉月がブレードを振りかざすも、素早さの面ではアスラが上で、ブレードをはじき飛ばされた。
「っく!」
手に損傷を負う葉月。その部分が完全に剥がれている。
「楽しみはこれからだ」
と、高千穂は笑う。後ろに緑のバイクが移動してきて、何かを発射した。アスラにとってその発射速度は「渡すために放り投げた」程度のもので軽々とキャッチする。
「!!」
葉月は驚く。
緑のドリル…前に助けてくれた謎の少女と同じ形だ。ただ、本当の掘削機のごとくかなり物理攻撃を意識した先端部分になっている。
「面白い玩具だろ?」
アスラは其れを手にはめて…FZ−01をそのドリルを、回転させ突き刺した。ドリルの掘削音が戦場に響き渡る。
「――――――――――――――――――!」
葉月は悲鳴にならない悲鳴をあげるものの、何とかそのドリルが装甲を貫く前に、小型ブレードで回転を止め脱出した。しかし、彼に殆ど動く力は無かった。
ドリルはその衝撃で壊れる。
「耐久性に難有りか…ま、所詮玩具だ…」
つまらなさそうに、その「玩具」を捨てて銃をまた構えた。
「こいつで最後だ」
その銃は、合体することを意図して作られたものだった。今までの銃は単なる対装甲兵器・対戦車兵器だったらしい。
「なかなか楽しかったぜ…しかし残念だ。もう遊べないってのは…」


里見は、FZ−01がまた危機になっているのを見逃すことは出来なかった。己の力だけで何とかしようとする責任感に心打たれたのか、心配で見ていられないのか分からない。助けなくてはならない。すでに決着はついている。仮に自分が見付かってこのからだが「壊れた」としても又何かに「宿れば」いい。しかし、あの装甲兵は人間だ。あの緑の銃で殺される…。
助けなければ…
「こうなったら融合合体だ。ブレイブセット!」
彼は今の「肉体」を捨て青い装甲兵の白バイ〜トップチェイサー〜に乗り移った。


「食らえ!アスラバス…!!」
高千穂は目の前の事に不意をつかれた。トップチェイサーがいきなり走り出し、自分を弾いたのだ。
何とか、受け身を取って立ち上がるも、すでに其処にはバイクではなく何かのロボットになって拳で殴られる。
「な、なんだ?!」
動揺する高千穂。その隙を里見は見逃さない。フック2連発とボディを入れて、アッパーで吹き飛ばした。その吹き飛ばした距離は9メートルほど。
突然の出来事に葉月も戸惑いを隠せない。
里見はこの白バイに重火器があることを理解し、其れを利用して対戦車用キャノンに変身させた。
「早く撃て!」
「あ?あああ」
戸惑いながら葉月は喋る大砲のコントロールパネルに向かう。そこには馴染みのガトリングのグリップがあった。
里見が直ぐに立ち上がろうとしているアスラに向けてターゲットロックしている。
「今だ!」
里見の声に葉月は撃った。
「FZランチャー!!」
里見が叫ぶ。
その威力は、廃工場の半分を吹き飛ばした。
瓦礫が落ちる音の中にまだ人影を見つけた。
「しぶといな」
里見は呟いたが…その姿に驚く。

アスラの装甲は破壊され、高千穂は飛蝗の姿…すなわちザ・グラスホッパーの姿になってあの衝撃を緩和したのだ。あの異常な動きが出来るにはこういう理由なのだろう。
「な…人間でない」
葉月は驚く。今まで中が同じ人間だと思っていたのだ。しかし、この現実を見て驚かざるを得ない。
「惚れ直したぜ…」
緑のバイクが彼を守るように移動して、そのまま彼はバイクにのり
「あばよ…」
と、口らしき所から昆虫独特の体液と人間の血が混ざった不気味な色の液体を流し走っていった。
「…」
葉月はその場で動け無かった。


里見は直ぐにバイクを元に戻し…いつもの肉体に戻った。
「なんだったのだ?あの男は…」
そして、葉月に気付かれぬよう去っていく。
「あの、飛蝗のような奴の正体を突き止めなければ…」
と思っていた。


一方、帰還した後でも葉月は…
いきなり戦闘中に色々な姿に変わったトップチェイサーをマジマジと眺め、
「もしもし?聞こえてますか?」
と、愛機に尋ねている。
一応班のメンバーにAIや変形機能を設置したのか確認をしたのだが、そんなことはしていないと言う。
しかし、事実動いたのだから実はと思ってバイクと喋っているのだ。確かにアシスタントもその現場はカメラで見ている。
「返事してください。ちゃんとお礼を…」
もちろん里見がいないのだから、返事をすることはない。
アシスタントの2人は
「湯豆腐が掬えない次は…幻覚でも…」
「其れ言っちゃダメよ!」
と、悲しそうな目で葉月を見ていたのだった。
PCシチュエーションノベル(グループ3) -
滝照直樹 クリエイターズルームへ
東京怪談
2004年03月04日

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