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『鴉VERSUS東京 』
ライ・ベーゼ1697

 東京、眠らない大都会。汚れた優しさもうらぶれた悲しさも、この街の空の下では嘘吐きになってしまいそうな、そんな、真っ直ぐには生き難い街だ。立ち止まれば飲み込まれてしまいそうなこの街東京を、味方にしている者が幾ら居るか?きっと指折り数えていったって、スパゲッティが少し伸びるくらいだろう。
 だがしかし、反対である東京を敵に回す者はそれより少ないはずだ。好き好んでこの巨大な街に反旗を翻す輩は、堅固な信念をもっているか何処かおかしいか、
 気が付かぬ内にその旗を背負っていた、かである。
 時代が大いなる流れである限り、意思は木の葉のように弱い。勿論時代は人の手だから、自ら動く事により新たな未来を拓く事も出来るが、その為には《今》が《何》であるか知っておく事が最低条件。とまぁ、随分と遠まわしな言い方になったが即ち、
 彼は今が何であるか知らないゆえに、反旗を背負っていた事も気付かず――いやでもさぁだからって普通予想できねぇって、
「鴉一匹捕まえるのに、何百人も出っ張るなんてさぁ」
 という訳で、
「玉撃つなこんちきしょうッ!?てかザッツ差別!鳩は豆鉄砲なのに俺はビービー弾!?食べ物をちっとは粗末にしろぉ!」
 という鴉でありながら人語を操れる鳥の言葉も、銃声に撃ち落されていた。てか羽根にかすってる、かすってる!
「バーカバーカッ!そんな玩具のエアガンで、空飛ぶ俺様を撃ち抜ける訳ねぇじゃね〜かってもんじゃねかぁ!ほんじゃままこの侭エスケープインザビッグスカイッ!残念だったな糞や」
 なぁ、っと、振り返って、見た、大地の彼等、は、
「ロケットランチャーですか?」
 冷や汗が毛の内側に浮かび上がった途端、ミサイルは発射され、
 瞬時で彼の直前にて発火、よって爆風、
「激しいのは恋だけで充分ぅ!?」
 爆風で吹き飛ばされながらの変な余裕がある捨て台詞も、当然打ち落とされてる訳で。という訳で彼等はまだ気付いてないのだ、その鴉が、オウムよりも路上販売のおっさんよりも弁が立つ世にも不思議な鴉である事を。
 ただその特殊さを知った所で、彼等の行動は止まる気配は無い。なにせ、
 鴉は東京の敵であるから―――
「目標の鴉はB地区へ逃亡ッ!至急撃退に回れ!」
 なんだか悪役のやられ役代表みたいな、グラサンかけた人がトランシーバーで号令をかけた後、ミサイルをぶっぱなした隣の男に、、
「というかお前ダンボールで作ったロケットランチャーぶっぱなすなよっ!?」「いや、折角だから使おうと」「バカヤロウ、無傷で保護しなきゃ」
 、
「ミートパイに出来ないじゃないかっ」
 《何》を知らなかったかは、そういう事である。


◇◆◇

 《今》
 昔々ある所に、都知事という人がおったそうな。東京の為に働くそのおじさんは、鴉問題に頭を悩ませておったそうじゃ。奴等のせいでゴミ捨て場はえらい惨状じゃからのう。
 ある日、都知事が机に座っていると、とある考えが浮かんだそうじゃ。
 そうだ、食ってしまえばいい。
 早速都知事はテレビ番組で実践、用意された鴉料理はそのどれも美味で、これはイケる、味としてもこの計画としても、と思ったそうじゃが、どういう訳か企画倒れになっておる。
 それを憂いたのが、東京が大好きな連中じゃった。ネットが拠点の彼等はきっと鴉の美味さが足りてねぇんじゃねぇ?とチャットで話しおうた。だが生ゴミを食ってる鴉が美味い訳なさそうだしというのも事実、結局チャットはそこで終わりを告げようとしたが、そこで写メールが届いたのじゃ。
 カラスがカフェテラスで美女と共に合席をして、黄金色の飲み物(シャンパンかジンジャエールか不明)を飲み干しているの。
 ―――すると彼等は光速になった、インターネットは便利だね。アングラサイトから改造しまくって最早武器と化したエアガンを調達、有志を募り行動を開始したのである。目指せ、美味なる鴉っ!
 ちなみに何故鴉がご主人様から離れてカフェテラスに居たかというと、
「いやぁ愛に種族は関係ないんだぜ?俺はキミという大空を飛びまくりたい訳でさぁ」
 このセリフから察してください、ついでに撃沈したってぇのと、このエロ鴉がマルファスだって事も。


◇◆◇


 という訳で、ダンボール箱で作ったロケットランチャーのミサイルもまた花火の詰め合わせだったので、そんなに怪我してないマルファスは、東京で一番高い所へ避難していた。つまり、東京タワー。不安定なてっぺんでは無く、観覧部分のひらたい場所であるが。
「たくっ、俺様が何をしたっつーか……、嫉妬か?」誰がすんだよ。
「折角あいつの居ねぇグレェトな休日を楽しんでたのによぉ、これじゃあの本馬鹿につきあってた方がましじゃねーか」
 くはぁ、っと鴉の嘴から溜息。さぁてどうやってこの問題を解決したものか――
 バァンッ!
「ぎゃあっちぃあ!?」
 突然羽根に痛みと熱がっ!?「な、な、、なんだこら急にっ!?」と叫びながら振り返ると、どうやってここまで登ったか知らないが三人ぐらいのやられ役っぽいのが、
 ロケット花火が自分を狙っていた。(五十本程
 火の付いた、奴等は最早、止められぬ。マルファス、心の俳句。という訳で、
 星の雨のようにロケット花火急襲っ!?「いたっ!?熱っ!いたあついあつつつぅのぎゃあぁぁっ!?」
「よし、墜落したっ!」「捕獲班ネット用意っ!」
 身体をプスプス焦がして墜落する鴉を見ながらトランシーバー越しに指示を送る先は、東京タワーの足元っ!そこでお金で買える程度の価値のネットを広げて、カモン、鴉ぅ!
 だが鴉は直前で反転した。「何ぃっ!?」ネットに着弾ギリギリで翼を広げて滑空し、なんだか車の物陰に。
「畜生、捕まえるんだ!」お金で買える程度の価値を放り出して、彼等はすぐさま車の物陰へ、こんばんは、鴉のミートパイ!
 が、
「……あれ?」
 そこに居たのは、
「何かようか?」
 ただの人間だった。煙草の臭いが鼻につく。眼鏡をかけた、一見、寡黙そうな男。鴉では無い、
「あのう、」流れ的に正しい質問を、「こっちに鴉は」
 その時尋ねた男の手に、手錠がかかった。え?
 かけた人物を、煙草の臭いがする男はもう見ている、そう、警察である。以下、目の前でのやりとり、
「あんたら東京で暴れまくってたでしょう?被害とかはなさそうだけど」
「いやいや!私達は東京の為に」
「はいはい事情は後で聞くから」
 終了。
 そうして軽いテロ的な事をした彼等は捕まった。後日談を先にしておくが、彼等のカラスを捕まえる為だったという言い分が通らなかったのは当たり前というかなんというか。
 さて、物語を鴉の方に戻して、「ケッ!国民的俺様をバチアタリにした罰ってもんだぜ!」
「まだ人が居るんだから喋るな。……だいたいお前みたいな不可解が、日常に紛れ込む事が原因だったんだろう?」
「あーあー言ってくれるじゃね〜か、その不可解を商売にしてる男がよう」
 そう言われると黙るしかないのは、怪奇探偵草間武彦である。こいつの主人から首を絞める首輪の使い方聞いておきゃ良かった。
「とりあえず今日の所はあいつの所に帰れ、まだ捕まってない奴がいるかもしれないんだ、これ以上痛い目に会いたくないだろ?」
「んーでも美味しい目にあいたいぜ?」
 なんのこっちゃっと目を細めて冷や汗をかく草間武彦、に、
「お兄さん、妹さんを僕にくださいっ!……って感じ?という訳でレッツラゴー美少女パラダイ」
 草間武彦、手で首絞めた。
PCシチュエーションノベル(シングル) -
エイひと クリエイターズルームへ
東京怪談
2004年01月30日

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