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『楽園の扉 』
鬼柳・要1358)&久々成・深赤(1370)

ホンの少し、遠くへ行くのでもいい。
笑っちゃうくらい近場でも、構わない。

ただ――

(少しばかり、周りの喧騒を離れて深赤とふたりで過ごしたいんだ、俺はっ)

そんな思いを表すかのように眉間に縦皺が刻まれる。
つい最近、お互いの好意を確認しあったのは良いのだが、鬼柳要の方も久々成深赤の方も友人が多く――何と言うのだろう、「野次馬」と言うか興味深々にこちらを見られ、果ては尾行され!

ふたりで過ごそうにも木の陰に友人らが居ないか式神が飛んでいないかをチェックするのだけでも時間が過ぎてしまう。

(……一体全体、誰と過ごしてるんだって気分になってくるってモンだしなあ……ホント)

友人らにも尾行以外に違う趣味を…とは言えない自分がいるのも事実ではあるが。
…多分、自分たちが尾行されるのではなければ喜んで要自身が尾行を楽しむ方だからではあるからだが……悶々と考え込めば、また時間が過ぎ……。

(だぁぁ! だから、俺はッ!)

暴れ出したくなった瞬間、眉間へと触れられる手の感触があり要は思わずその手の持ち主を見た――いや、見上げようとした。
が、そうしようとするよりも先に隣に素早く座る姿に「ああ」と思う。
おかしそうに微笑う深赤の顔に自然と、要の眉間の皺も消えていく。

「何、百面相してるの? 傍から見ると凄く怪しいよ?」
「いや、つい考え事を…って、そんなに一杯ガイドブック持ってきたのか?」
「いいじゃない、どうせ此処で読む分にはタダなんだもの。それにふたりで見たら絶対早いから!」

そう、此処は要の家でもなければ相手の家でもない……どちらも絶対に来そうもない、と言うより試験があったとしてもお世話にはなりたくない、図書館なのだ。
……ある程度らしくないところを選ばなくてはならない苦肉の策でもある。
まあ、それももう少しの我慢だ。
出かけてしまえば、否、気付かれることなく出れたら問題なくふたりっきり!…で、過ごせる筈なのだから。

「了解。さて、何処に出かけたもんかねえ……」
「んー、やっぱりのんびり出来て遊べるところ?」
「じゃ某ネズミ王国の近くで一泊ってのはどうだ?」

目に付いたものをとりあえず言ってみる。
が、深赤の反応はといえば――

「ちょ、ちょっと待って……その周辺って、確か……」

何故か奇妙な点で慌てていて。
はた、と要も気付いた。

(そういやあそこらへんって確か……)

「無茶苦茶高い……筈だったかな?」
「無茶苦茶どころじゃないわよ! そんなところ泊まるって言ったらお祖父ちゃん、卒倒しちゃうし!」
「……何故にお祖父ちゃんなんだ?」
「え? だって出かける前にはお祖父ちゃんにも連絡しておかないと、でしょ?」
「……そりゃ、そうだが……んー、じゃあ……」
「あ、ねえねえ、これは? 冬の味覚満喫!なバスツアー♪ 添乗員同行なし、お土産&お弁当つき!」
「いいかも…だがそれなら、こっちの屋形船が!」
「どれ? えーと浅草からも行けるんだ…って、これ実は鬼柳さん、お酒飲みたいだけなんじゃないの?」
「…バレた?」
「勿論! んー、でもお刺身とかお酒のお土産がつくのは捨てがたいし……」

深赤も考えながら隣にいる要の顔を見た。

一緒に遊べるのなら、何処でだって、きっと楽しい。

(と言うより過程、かな? こうやって何処へ行くのか相談しあうのが楽しいものなのよね)

気になっていた存在から、色々経て晴れて付き合うようになって。
忙しくて構ってくれないときは、やはり寂しいし遊んで欲しいと言えなくて思わず不貞腐れてしまう事もある。

だから。
こうして一緒に出かけようと言う事が嬉しくて。
友人達に尾行されるのは、少し恥ずかしいけれど私は嫌いじゃない。

(でもやっぱり、ふたりって言うのも…その、抗いがたいものが!)

何と言ってもふたりで過ごすことの方がまだ少ないんだもの。

色々と楽しい思い出を作りたい、そう思うのは欲張りじゃ無いはずだし。

(ね、鬼柳さん♪)

深赤は心の中で要へと呼びかける。
気付いたのか、気付いていないのかガイドブックを見ていた要の顔が、こちらを向く。
陽の色さえも照り返すような銀の瞳が深赤を、まっすぐに捉えた。

「……ところで深赤」
「な、何?」
「俺が見惚れるくらい良い男ってのは解るんだが……そこまで見つめられると穴が開きそうだ」

そう言い、にっと微笑う。
一瞬、何を言われたか解らなかった深赤だが漸く言われている意味を理解し、赤くなる。

「な、な……何言ってるのよ!? 全く!」
「一応、日本語のつもり…だけど、聞き取れなかったか?」
「聞き取れたけど…穴が開きそうって…開きそうって……」
「深赤は自分が持ってる瞳の力を知らないから言えるんだな……ああ、ちょっと近場だけど、此処どうだ?」

ふくれた方がいいのか、殴った方がいいのか。
だが要の顔をもう一度見て、そんな考えは綺麗に飛んでしまった。

顔が、微かにではあるけれど赤い。

(……じっと見すぎて悪いことしちゃったかな?)

自分だって、じっと見られてしまったら、きっと赤くなってしまうに違いないし……気を取り直して深赤は「どれ?」と本を見る。

とあるページを指し「此処だ、此処」と言う要の声に心地よさを感じながら。


                    +++                    


「…うーん……」
「何だ、その意味深なうーんは」
「……この遊園地なら浅草のあの遊園地の方が。空中分解しそうなジェットコースターがスリリングで♪」
「そっか? けどこっちはスケートリンクがあって、それが楽しいんだがなあ」
「…手取り足取り滑る訳?」
「そ、転びそうになる深赤の手を引っ張って」
「し、失礼ねえ! 運動神経は私、良いんだから!」

思わず大声で叫んだ深赤に「しーーーっ」と辺りから、声を顰めるよう注意がかかる。
「す、すいません」と謝りつつも「怒られたじゃない!」、そんな風に要に食って掛かったりもする。

(…何つーか、色々…新鮮だよなあ)

こんな風に過ごせることは幸せなことであるのかもしれない。
膨れたり、顔を赤らめたり、慌てたり……見ているだけで飽きない表情の変化。
色々と悪いとは思いつつもからかい混じりの事をやってしまうのは、それらが楽しいからだ。

「そうだっけか? 悪い悪い。んで、どーする?」
「むぅ……どーしよっか?」

要も深赤も、うーんと唸ってしまう。

ふたりだから、楽しい。
ひとりなら見れないところもふたりなら違う風景さえも見れるから。
だから、行くところは何処でだって本当は構わない。

けど。
けれども――?

「友人連中が来ない所……否、来れないところ……いっそ、海外なんてどうだ! 料金は少しなら俺が持つし!」
「……鬼柳さんってば、海外旅行なんてそれじゃまるで新婚旅行じゃ……」
「へ? あ、ああ……そ、そうか…な…?」

(そ、そこまで考えてなかったが言われてみると確かに…!)

けど、そうか。
深赤は新婚旅行は海外のイメージなんだな、と照れながらも冷静に受け止める要自身も居たりして、どうしたら良いものかわからなくなってしまう。

(あー……頬、熱……)

深赤はと言えば深赤で。
深赤が言った言葉にかなり照れまくる要を、不思議に思いながら自分で言った言葉を心の中で反芻させた。

『まるで新婚旅行みたいね』

はた、と気付く。

(そ…それって、つまりは結婚することを予想して言ってるような……ち、違くてそうじゃなくて〜!! ……うぅ、ど、どう言えば……っ)

五月蝿いと再び周囲の人から言われてしまうのも嫌なのでぱたぱたと心の中で暴れてしまう。

(……も、もう少し言葉を選ぶようにしなきゃ……)

お互いの顔が見れないまま、俯く。
自分たちの顔が赤いのは傍目から見てもわかりすぎるほどに解るだろうが、見ていない自分たちも相手の赤さが解るほどに熱い。


図書館の中へ、午後であることを知らせるように柔らかな冬の陽が差し込んでいく。
少し冷めた頬をお互い、感じながら目を見合わせて、同時に笑って。

ある意味、今日もバトル中なふたりの、とある休日風景。

後にふたりが、何処へ出かけたかは――"ふたり"の間の内緒事。
一緒に居られれば何処ででも楽しい、と言うことを実践するように楽しい時間であったことは間違いないようである。




―End―
PCシチュエーションノベル(ツイン) -
秋月 奏 クリエイターズルームへ
東京怪談
2004年01月22日

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