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『【ボトムラインアナザー――タイガーファング・ザ・スターVSザ・呪い〜邪神復活デスマッチ〜】 』
星・白虎0360)&ザ・呪い(0359)
 ――漆黒の闇に包まれた一郭にスポットライトの灯りが注がれた。
 照らし出されたのは会場に設置された祭壇だ。禍禍しい雰囲気に室内が包み込まれる中、漆黒の衣装に身を包んだMS(マスタースレイブ)が、怪しい音楽と共に機動音を響かせて姿を見せた。流石に観客も固唾を呑む光景だ。右手に持つ得物は悪魔が手にする大鎌そのものであり、赤い望遠カメラが闇に浮かぶ光景は不気味な印象を与える。
 祭壇に辿り着くと、胸部ハッチが開き、コクピットから同様に漆黒の衣装に身を包んだ小柄な影が姿を曝け出す。素顔はフードに遮られ、性別すらも定かで無い。観客が「ザ・呪いー!」と声援を送る所から、今回のボトムライン出場バトラーだと読み取れた事だろう。
 ザ・呪いは祭壇の上で拘束された鶏の首をひん掴み、鋭利な輝く切先を走らせ、首を掻き切った。刹那、鮮血がドクドクと溢れ出し、それを杯へと注ぎ、大きく掲げる。響き渡るは観客の拍手と歓声だ。
「タイガーファング・ザ・スター様! 今宵は貴殿の敗北を生贄に、わたくしめが崇める邪神を復活させて頂きます!」
 一連の儀式を終えると、ザ・呪いは少女のような声を響かせ、リングに向けて黒い手袋の指を向ける。先に捉えるは、胸に虎の顔が施された黄色と黒に彩られているMS『タイガーファング・ザ・スター』。虎模様の機体だ。
「ザ・呪い‥‥お前も俺の前に立ち塞がるというのか!?」
 機体同様の黄色と黒に彩られたMS用パイロットスーツに身を包んだ星・白虎は、薄暗いコクピットの中、望遠カメラ越しに映る漆黒の衣装の者を睨む。その表情は苦渋に彩られていた。
 かつて仲間としてタイガーネストで修練を共にした同士。裏切り者として闘う覚悟は当に出来ていたものの、やはり辛い。
「だが俺には、孤児院で待っている子供達がいるんだ! 俺は勝たなければならないッ!!」
 力強くMSの手に拳を模らせるタイガーファング・ザ・スター。ザ・呪いはフッと口元を緩めると、颯爽とコクピットの中へと滑り込んだ。二体のMSが対峙する中、観客の声援と歓声が闘技場に響き渡る。
 ――ボトムライン。
 かつて警察で行われたMS同士の賭けバトルが始まりだという闘技は、オールバニ、プロビデンスを経て、現在は荒涼とした砂漠の土地フェニックスで開催されている。中でもボトムバトラー団体『タイガーネスト』が開催するボトムラインは奇抜な趣向が多く、来客の入りも盛況だ。
 この物語はタイガーネストを抜けた星・白虎と、裏切り者として彼をリングの上で抹消せんとするタイガーネストの刺客による、血涌き肉踊る激闘の記録である――――

●ピット・ファイト――邪悪なる魔法陣トラップを越えろ!
 ――獣の咆哮の如きサイレンが鳴り響く。
「なんだ!? この模様はッ!?」
 段上になった客席を囲む中心にコロシアムが設置されており、二体のMSが対峙するリングに、淡い輝きを放つ魔法陣が浮かび上がったのだ。白虎が僅かに動揺する中、バトル開始のサイレンと共に漆黒のローブを纏ったMSが大鎌を構えて肉迫する。
『聞えますか? 貴方だけはわたくしめの手で!』
 赤い望遠カメラを淡く輝かせ、ザ・呪いが鋭利な切先を薙ぎ振るう。その洗礼を受けるまいと、タイガーファング・ザ・スターは機体を素早く後退させ、次々に風を切る大鎌を躱してゆく。
「ザ・呪い‥‥本気のようだな‥‥うおっ!」
 刹那、コクピットが大きな衝撃に揺れた。右足を基点として伝わる衝撃――何かが爆発した証だ。望遠カメラを素早く足元に流すと、マットの一部から煙が発っていた。恐らく虎の装甲には、幾つもの鉄球の痕が浮かんでいるに違いない。
「MS用クレイモアか? 否、地雷と合わせた‥‥ぐぅあっ!」
『バトル中に余所見とは余裕ですね、わたくしめを甘く見ない方が身の為ですよ!』
 響き渡る炸裂音。振動に揺れるコクピット。不意を突かれたタイガーファング・ザ・スターは、ザ・呪いの洗礼を受けてしまったのだ。腕を十字にブロックして、体裁きでダメージの減少に努めるのが精一杯だった。否、空手の達人である白虎だからこそ、直撃を免れているといえよう。
 大鎌が振り回される度に鋼鉄の装甲に火花が迸り、甲高い金属を削り込む音に観客が歓声を涌きあげる。当然、子供達はタイガーコールだ。
 しかし、切先の洗礼を大きく躱して距離を置けば、設置されたトラップに嵌まり、派手な爆発と共に機体が体制を崩す。虎が悲鳴をあげる如き炸裂音が奏でられた。
「くそっ、このままでは‥‥ん? そうか! そういうカラクリか!」
 胸部から突出したマスターアームの中で操縦桿の傍にあるスイッチ類を巧みに操り、白虎は望遠カメラに敵機の軌跡を映し出した。
「幾ら仲間が設置したトラップとはいえ、縦横無尽にリングを駆ければ無傷とは行かない筈だ! 見えたぞ、ザ・呪い!!」
 大鎌の切先をスレイブアームで飛び込むように受け、機体の足を魔方陣のトラップが仕掛けられた箇所へと運ぶ。刹那、クレイモアが爆発し、その反動で猛虎が獲物に飛び掛かる如く、漆黒のMSへと吹っ飛んだ。同時にタイガーはインパクトマインの装填された鋭い鉄拳を繰り出した。
「なに? 爆発の反動を利用して!? トラップの位置がバレたというのですか!? きゃうっ!」
 ザ・呪いのコクピットが激しい衝撃に揺れ、強烈なインパクトに身体が前に持って行かれ、胃の中のモノを戻しそうな衝動に駈られた。愛用の眼鏡が飛ばされ、赤い髪が舞い踊る中、同じ色の瞳が狂気の色で輝く。
「流石はわたくしめの愛した男‥‥。でもマダです、わたくしめの愛の証をその身体に刻み込んであげます!」
 機体の体制を整えると、ザ・呪いは再びトラップへとタイガーを追い込もうと切先を振り回した。だが、魔方陣とトラップの位置関係に気付いた虎は、簡単に罠へと導かれはしない。切先が振るわれると大きく出来た隙に、MSの鉄拳を炸裂させ、機体の可動範囲限界の廻し蹴りを叩き込んだ。激しい打撃音と衝撃に、漆黒の装甲が歪み、破片が吹っ飛ぶ。
 客席では射撃戦無しである『イングリッシュバトル』の熱い打撃戦に子供達が立ち上がっての歓声を響かせ、ザ・呪いの反撃を期待する声援が吹き荒れる。
『ザ・呪い‥‥タイガーネストの卑劣なトラップは既に見切った! もはやおまえに勝ち目がない事は自分自身が分かっているだろう!』
「タイガー‥‥」
 突然の通信にザ・呪いは躊躇いながら口を開いた。
 ――わたくし、タイガー様のファンなのです。何時の日かタイガーネストに入団して、あなた様と共にリングでタッグマッチを組めたら良いなって‥‥。
 ――そうか、俺は何時でも歓迎するさ! 追い掛けて来い!!
 ――はいッ!

 ――なぜです? タイガー様がタイガーネストを裏切るなんて‥‥。わたくしが、きっとタイガー様を振り向かせます――――
「タイガー様‥‥わたくしめが振り向かせて見せます!」
『振り向かせる‥‥だと? おまえは‥‥』
「今はバトル中です! わたくしめの愛の証を刻み込んで差し上げます!」
 望遠カメラ越しに映るザ・呪いは、大鎌の柄の部分から新たな鎌が引き出し、高周波の唸り声を響き渡らせた。
「高周波ブレードか? だが、得物を換えたとて、腕が未熟なら意味はない! 虎の洗礼を受けて目を覚ませ! ザ・呪い!!」
「お喋りはそこまでです!」
 柄の中心を持ち、残像を描きながら両刃を回転させる漆黒のMSが疾駆する。タイガーファング・ザ・スターは、機体の重心を低く、スレイブアームを前に身構えて、反時計回りに足を運んだ。
「アハハハッ! 馬鹿ですね。その先はトラップの場所、右から薙ぎ振るえば逃げ場はありませんよ!」
 タイガーの望遠カメラに足音を響かせて肉迫するザ・呪いは、左方向へ跳び込み、右から大鎌の切先を左へ横一文字に薙ぎ振るった。
「今だ!!」
 ――それは一瞬の差だった。
 薙ぎ振るわれる切先にタイミングを合わせたタイガーの右廻し蹴りが、重心を安定させたザ・呪いに繰り出されたのだ。鋼鉄のマットがMSの踵が返す高速の動きに火花を散らせ、気合の雄叫びと共に渾身のカウンター攻撃が刃の如く薙ぎ放たれた。刹那、漆黒のMSが右方向に吹っ飛ばされ、反動で間合いが広まり、鋭利な切先が薄くタイガーの装甲を削り飛ばす。そんな中、ザ・呪いは予想以外の方向に機体を飛ばされ、その身にクレイモアの鉄球が叩き込まれていた。空かさず虎が背後に寄り、敵機の腰に両腕を回す。
「な、何を!?」
 動揺の色を浮かべるザ・呪いを両腕でロックすると、脚部から杭がマットに打ち込まれる中、タイガーの肩の駆動系モーターが激しく唸りをあげ、そのまま漆黒の機体を宙に浮かせる。
「必殺!『タイガー稲妻落とし』!!」
 火薬の破裂するような音が腰部で響き、タイガーの機体は大きく後方へとザ・呪いを抱えたまま仰け反った。彼だから可能な大技だ。身体が柔軟でなければ背骨を折ってしまう荒業ともいえよう。
「ひいぃぃぃぃっ!!」
 ザ・呪いは上か下か分からぬ視界に振り回され、激しく赤い髪を舞い躍らせていた――と、次に襲ったのは強烈な衝撃だ。望遠カメラが弾け飛び、機体の頭部が拉げる違和感を感じつつ、少女は意識を跳ばして白目を剥いていた。
 タイガーファング・ザ・スターはMSバトルでバックドロップを炸裂させたのだ。拉げた頭部から白煙を噴き上げる漆黒のMSは、二度と動く事は無かった。
 慎と静まる闘技場。
 ザ・呪いをマットに眠らせ、タイガーは腰部の強制復帰モーターを作動。半身を起こした機体は高くスレイブアームを天井のライトへと突き上げた。
 観客の割れんばかりの拍手と歓声が津波の如く押し寄せ、勝者を称えるセッションが何時までも奏でられる中、タイガーの声が外部スピーカーから響き渡る。
「卑劣なるタイガーネストよ! 俺は何時でもおまえ達の挑戦を受けてやるッ! 虎は決して眠りはしないッ!!」
 ――辛くもタイガーファング・ザ・スターは刺客の魔の手から打ち勝った。
 だが、彼が彼女の事を思い出したかは定かでない。
 裏切り者として命を狙われる者に、過去の因縁は死神の如く付き纏う事だろう。
 行け! 行け! タイガー! 己の信念を貫く為に!!
 この物語はタイガーネストを抜けた星・白虎と、裏切り者として彼をリングの上で抹消せんとするタイガーネストの刺客による、血涌き肉踊る激闘の記録である――――

●あとがき(?)
 ご購入有り難うございます☆ お久し振りですね、切磋巧実です。
 久し振りにボトムラインを描かせて頂きましたがいかがだったでしょうか?
 K.K.K.風の〜ごめんなさいッ、検索したけど分かりませんでした。
 ボトムラインらしさとして最大限に努めましたので、楽しんで頂ければ幸いと思います。感想お待ちしていますね♪
PCシチュエーションノベル(ツイン) -
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PSYCHO MASTERS アナザー・レポート
2003年11月25日

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