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『芸術の秋〜深遠にて、お姉様の思惑 』
海原・みその1388)&海原・みなも(1252)

 ――みなもをずっと側に置いておきたい。

 具体的にそう考えたのかどうか、自分では良くわかりません。
 ですがわたくしは、その漠然とした想いのままに、何度も何度も思考を重ねました。

 ――思い付いたのが、『絵』、でした。
 お手伝い、と頼めば、あの子はきっと来てくれるでしょう。

 思い立つなりみそのは…知り合いである海の魔女を尋ねました。
 必要な道具を手に入れる為。
 その為ならどんな代償でも――と言う訳にはさすがに参りませんが、深淵の巫女であるわたくしで許される事でしたら何でも致しましょう…と思い、みそのは彼女にお願いしました。
 …すると、海の魔女もわたくしの話を、面白がってくれるではありませんか。
 後で結果を教える事を条件に、無償も同然に特製のキャンバス、青色、緑色を中心とした特製の絵の具、絵筆、そして特製の造型用の石膏、等々の…道具を下さいました。

 そして、実際の描画も…素人ながら練習致しました。
 大きな特製のパレットに絵の具を溶き、大きな絵筆に付け――練習用のキャンバスにぺたぺたと。

 けれど、ふと思います。
 ………………これでは何となく、『やりたい事』には間に合いそうにありませんわね?

 少し考え、みそのはやはり自分の“力”を使う事を考えました。
 パレットに意識を向けます。
 するり、と先程溶いた深い青色の絵の具が浮き上がりました。

 溶いた絵の具は、“流れ”ます。

 みそのはその宙に流した絵の具を操り、するするするとキャンバスに描画して行きます。
 この方が早いです。
 その上に、上手くも行くようです。
 この方が慣れているからでしょうか。

 やがてキャンバスの上に描画された絵は、可愛い妹、みなもに何処か似た――妖精の姿でした。
 みそのはそれを見て、静かな笑みを浮かべました。


 そして。

 …実際に。
 みなもを呼びました。
 お手伝いをお願いします、と。
 まずはそれだけを伝えました。
 そして素直なみなもは、何も知らないままみそのの元までやって来ます。
 今度こそ、みそのも素直に、具体的に今お願いしたい事、をみなもにその場で伝えます。

 ――みなもを絵の素材にしたい事。
 ――その為に、服を脱いで欲しい事。

 え、と少し困ったような顔をしはしましたが、みなもはそれでも素直にみそのの頼みを聞き入れます。
 本当に素直で可愛い良い子です。

 で、服を脱いで。
 スカートを落とした時点で何か考えるところでもあったのか、固まっていたみなもの身体を――大気の“流れ”を操り浮かせます。その方が、隅から隅まで綺麗に造れるでしょうから。
 …そしてみそのは、自分の身体が浮いている事実におろおろとする――みなものその姿に。

 ぐるぐると色を巻き付けて行きました。

 青色を、緑色を。
 白色を、藍色を、黒色を、水色を。

 様々な表情を見せる、その色を。
 海の魔女の元で準備しました――この、特製の絵の具を使い。

 無防備なみなもを捕らえ、キャンバスに縫い付けて行きます。
 するすると纏わり付く様々な色とみなもが一体化して行く姿。
 そのままキャンバスに貼り付けられ、わたくしの望み通りに、ひとつの作品になって行く姿。

『絵』に取り込まれながらも、微かに見えるみなもの感情の揺らめきが――何処か頼り無くて。
 それは今、わたくしが為している事に寄るものだ、と言う事実に。

 みそのは。
 獲難い心境に陥りました。
 何と表現したら良いのでしょう。

 みなものこの表情といったら。
 これを、ずっとわたくしのものにしておけたなら。
 動けないまま。
 わたくしの。

 ………………“陸”ではサドとか百合とか…言うのでしょうか?
 良くはわかりませんが…似た感情を表す言葉を探すと、そうなりそうな気がします。
 支配欲の一種なのでしょう。
 …わかっていても止められない事はあります。

 やがて、みなもの意識が完全に失われました。
『絵』の中で。
 美しくも可愛らしい、わたくしだけの『海の妖精』。
 …貴女の事ですわよ。みなも。
 完成したその絵にみそのはそっと触れ、その固められた姿に頬擦りしました。
 思わず…触れたくなってしまいましたので。
 みなもの…いえ、『海の妖精』の…その柔らかそうな頬に、指を滑らせます。

 このままにしておきたい。
 …そうは思いますが…そうも行きません。
 このままにしておいては死んでしまいます。
 それに、動くみなもが…いつ欲しくなるかもわかりませんし。

 仕方がありません。
 …複製を造りました。
 海の魔女に、教えて頂いた方法で。
 …但し、彼女御本人に手伝っては頂いていません。
 だって。
 こんなみなもを他の誰かの目に触れさせるなんて――勿体無いですもの。

 静かに心の中で囁いて、みそのは何とかこの『絵』の型を取り色を流し――複製を造りました。
 そしてみなもを元に戻します。

 何も知らずに昏睡しているみなもの姿。
 彼女にみそのは柔らかなブランケットを一枚掛けました。
 本当に可愛い子。
 その寝顔を静かに見、みそのは酷く優しい顔になります。
 複製の『絵』の方ももう一度確認し直しました。

 やはり本物ではないのは残念ですが…。
 …この『絵』も、複製とは言え良い調度品となる事でしょう。

 みそのはひとり、頷きます。
 ええ。
 ………………他に、みなもでやってみたい事も――まだまだたくさん、ありますからね。
 思い、静かに瞼を伏せました。

【了】
PCシチュエーションノベル(ツイン) -
深海残月 クリエイターズルームへ
東京怪談
2003年10月31日

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