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『一風変わった?親子デート 』
ロルベニア・アイオス1351)&ダージエル・ー(1416)

〜血のつながりはなくても、親の愛はあるモノさ〜
                       ある吟遊詩人の言葉。

夏真っ盛り。蝉の鳴き声が五月蠅いほどだ。
「いつもフラフラしてるんだもん…ドコ行ったんだろ…」
ロルベニアはため息をついた。
ロルベニア・アイオスは、恋人の魔術師が(兎に角おかしな奴なのだが)またどこかに行ったので、日傘を差して探し歩いていた。
心当たりとすれば、あやかし荘。他にも心当たりはあるが、何となくそこにいて、遊んでいるのではないかと向かっていた。
また、あることがきっかけで、ある人物に逢えるかもしれないと思っているのだ。その人物とは、異世界の神だった。彼女にすればそのことは問題ない。その神は事あるごとに彼女を助けてくれたのだ。初めて出会ったとき何も偏見もなく自分を人間として扱ってくれたこと。恋人とは違う愛情を感じた。

それは、親の愛。
ロルベニアが欲しかったモノの一つだ。

彼女のハンデ…両性具有者故、祖母にも両親にも不気味がられ、抱かれることがなかった彼女。しかし、何も言わずして親のような優しさをもって接してくれた相手を親と思っても不思議ではない。
あやかし荘にたどり着くと…その神がいた。長い金髪で右目をかくし、額に蒼い宝石、左目に傷を持つ男、ダージエル。
「あ、ダージエル」
「ロルベニアか?こんにちは」
「こんにちは!」
ロルベニアは彼を見つけるやいなや、駆け寄ってダージエルに抱きついた。神は驚くことなく彼女を抱きしめる。そして頭をなでてあげた。
彼女は、彼の大きな手で撫でられることが嬉しかった。
「どうしたの?」
「息子に用があってな。今終わったところだ」
ダージエルはピラピラとあるチケットをロルベニアに見せた。
「それは?」
「遊園地の無料入場チケット。当然遊ぶのもタダだ」
「ユーエンチって何?」
「ふむ…。英語で言えばAmusement groundらしい。いろいろな乗り物があって、それを楽しむ所…有料の遊び場だ」
「ふーん…」
「ロルベニアは、知らないんだな…」
「うん…」
少し、ロルベニアは俯いた。ダージエルは彼女に目線を合わせてしゃがみ込む。
「じゃ、私と一緒に行くか?どういうものか知るために」
「え?ホント?」
「そうだよ」
「うん!」
喜ぶロルベニアを優しく撫でるダージエル。
「決まりだな」
ロルベニアは彼の腕を掴んで、一緒にその遊園地に向かっていった。

ダージエルは電車や自動車という文明の利器に頼ることは面倒なので、一気にロルベニアを連れて目的地まで瞬間移動(テレポート)する。そうしなければ夕暮れになるだろう。
その遊園地は東京有数の大型遊園地。東京と名前の頭に着いておきながらなぜか千葉にある、有名なアメリカのアニメーション作家のテーマパークなのだ。
1日でも全部回ることはできない大きな遊園地。
「実際は、行きも帰りもかなり人混みをかき分ける必要があるがね…」
「そうなんだ…」
2人は、チケットを見せて、中に入る。フリーパスを手首に付けて、しばらく歩いていくと大きな白い城を見た。
「わぁあ…」
ロルベニアはその大きさにびっくりした。生まれた土地では儀式以外では外に出ることがかなわなかった彼女…城を見るのはテレビぐらいだろう。
着ぐるみがやってきて、無言で挨拶をする。ロルベニアは驚いてダージエルの後ろに隠れた。
「ははは、大丈夫だよ、ロルベニア」
「う―ホント?」
おずおずと代表的なネズミの着ぐるみと握手するロルベニア。
「マスコットキャラの着ぐるみだからね。他の所にもいっぱいいる。ファン達は彼らと写真を撮ったりするんだよ」
「そうなんだ…あ、ホントだ」
若い女性のグループが、着ぐるみ達と一緒に写真を撮っている所をみて感心しているロルベニア。
頭を撫でてダージエルは話を続ける。
「他にも、夜にはパレードがあるな。それのために来る人もいるそうだ。みたいか?」
「見たい!」
「では夜までいっぱい遊んでパレードを見ような」
「うん!」
ロルベニアは子供のような笑顔で答え、ダージエルは微笑んだ。
「さて…何に乗りたい?」
ダージエルは地図を見せてロルベニアに訊いた。
「高いところ…ボク苦手…」
「ふむ…ではジェットコースターや観覧車は無理だな」
「あと…暗くて怖いホラーハウスもだめ。暗いところだと…「視て」しまうの…」
「霊感が高いからか?」
「うん…だめだった?」
ロルベニアは不安そうに上目使いでダージエルをみる。その仕草が可愛い。
ダージエルは安心させるように頭を撫でてあげこういった。
「いや、そう言う乗り物は人気があって、何時間も待たなくてはならないな。2人で楽しめるようなゆっくりできるもので行こう」
「うん」
ロルベニアはまた無邪気な笑顔に戻った。

ジェットコースターや観覧車に乗れなくても遊ぶ物はたくさんあるのだ。だいたいこの遊園地ではおまけに近い。本当の楽しみというのはアミューズメントハウスにある。このアニメをテーマに登場人物の家や遊び場があるのだ。
メリーゴーランドに乗ったあと、各アミューズメントハウスでアニメの歴史を堪能する。
ロルベニア自身、この二足歩行ネズミと仲間達、おとぎ話のキャラクターを知ることはなかったので食い入るようにみていた。実際ダージエルも話を聞くだけだったしアニメも観ないので(彼は流離う家無し神なのだ)一緒に楽しむ。移動に時間が掛かることもあるがゆっくり見て回るため、馬車に乗ってみたりする。喫茶店で彼女の好きな紅茶とシフォンケーキを食べて他愛のないおしゃべりをしていた。
ロルベニアには何もかもが新鮮に見えた。何ともいえない開放感があった。
ダージエルは彼女のペースに合わせついて行く。
はしゃぎすぎたのか…ロルベニアは疲れて眠ってしまった。
「もう少しでパレードが始まるというのに…」
と心の中でダージエルは思った。
「純真無垢な娘は可愛いな…私も本当に娘ができたようだ…気分が良い」
彼は、ロルベニアを負ぶって、人混みのいない静かな場所を選び…寝かせた。

ダージエル自身…過去を振り返れば、苦しいことの連続だった。
自分の故郷の世界では常に戦いの中に身を投じ…時代によっては邪神として恐れられていた。それもそうである…対極する存在…光と闇、愛と憎悪、生と死など…を司り、自由に扱える力を持っているのだ。神々の戦いはいったん幕を閉じ…故郷は平和になったし、徐々に自分を崇める存在ができた。何より、幸せも掴んだ。長年生きてやっと自分のやるべき事ができたのだ。平和になった故郷を離れ、異世界を旅し、自分のえた新たなる力と使命によりとの世界にいる…。
悲しき宿命を持ったロルベニアを本当の娘と思い、助けていこうと決めていた。
この、静寂も大事にしていたいのだ。

少し騒がしくなる。メインストリートでは人混みが多くなりつつある。
「パレードの時間だよ」
ダージエルは優しくロルベニアを起こす。
「う…う〜ん…。は…ボク寝ていた?」
「無理もない。広大な場所を走り回っていたんだから」
「だって、面白いんだもん」
「分かっているよ」
ロルベニアとダージエルは手をつないでパレードをみる。
「わぁああ」
その綺麗さはロルベニアに感動を与えた。
言葉も出ないほどの華やかさ、歌と踊り…彼女はそれに釘付けとなる。
その時間、ダージエルは何も言わず…「娘」を見つめていた。

パレードが終わったあと、二人して家路につく。
「楽しかった♪また行きたいナ♪」
ロルベニアはダージエルに笑っていった。
滅多に見せない笑顔。本当に心許した人にしか見せない笑顔。恋人にしかみたことがないのだから、ダージエルもかなり気分が良い。
「ダージエルはどうするの?あと」
「私か?君を送ってからは気ままに流離うさ…」
「そう…」
少ししょんぼりする。
一緒にいたいようだ。しかし、ダージエルが行っては…彼女が居候しているところで迷惑が掛かるだろうし、何より彼女の恋人が嫉妬の炎に身を包むだろう(そう言う展開もダージエルにとってとても楽しいのだが)。
「まだほんの少ししか楽しんでないよ。だからまた一緒に行こうな」
「うん」
ダージエルはまた優しくロルベニアの頭を撫でた。
ロルベニアはダージエルに抱きつく…親に甘える子供のように。
「『お父さん』…」
「ん?」
「今日はありがとう…」
「私も楽しかったよ…ロルベニア」

彼女の家に着いた。
「じゃ、またな…いつでも会えるからね…」
「うん…また」
ダージエルはロルベニアの額にキスをして…闇の中に姿を消した。
ロルベニアは頬を赤らめてしまったが、家のドアを開き、
「ただいま〜」
と、元気に声を出して中に入っていった。

End
PCシチュエーションノベル(ツイン) -
滝照直樹 クリエイターズルームへ
東京怪談
2003年08月20日

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