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『汎用人型精神安定剤〜ウォルフver〜 』
ウォルフ・マイヤー0322)&アルノルト・ハウレス(0315)
●起きて抜け出す眠り姫
 アルノルトが過労で倒れてから、倒れてから数時間もしないうちの事である。
「誰だ?」
 ドアの外で物音がした。不審に思い、ドアを開けてみれば、そこにいたのは、つい先ほど、医務室に担ぎ込まれた筈のあいつ。
「お前‥‥そこで、何してやがる」
 俺‥‥つまりウォルフ・マイヤーがそう声をかけた刹那、あいつ‥‥つまりアルノルト・ハウレスは、そのまま俺の腕の中に倒れ込むように、部屋へと上がり込む。
「あなたの顔を見に」
 とすん‥‥と、抱きすくめられたあいつは、かすれた声でそう言った。
「休んでろって、言われなかったか?」
「寝てばかりじゃ、退屈ですから」
 呆れた表情の俺の言葉に、アルノルトは首を横に振りながら、そう答える。
「その割には、青い顔してるぞ」
 彼の言う通り、腕から抜け出そうとしているアルノルトの顔色は、病人そのものだ。「もう大丈夫ですよぉ」と、やや間延びした声で告げるあいつに、俺はこう言ってやる。
「そうか? なら、コイツはどういうわけだ?」
「あ‥‥」
 今まで、繋ぎとめていた腕を、解放する俺。支えをなくしたあいつは、俺が少し指の先でつついただけで、床にへたり込みそうになってしまう。
「ほらみろ。ふらふらじゃないか」
「ちょ、ちょっと眩暈がしただけですから、もう平気ですってば」
 何とかして、自力で立とうとするアルノルトだったが、壁によりかかり、俺に掌を取って貰って、ようやく支えているのが現状だ。
「そう言うのを体調不良って言うんだ」
 その様子を見た俺は、ぴしゃりとそう言うと、支えていた掌を引き寄せ、腰に自身の腕を回す。そして、あっけに取られているアルノルトの膝裏にもう片方の腕を差し込むと、そのままひょいと持ち上げてやった。
「何をするんですかぁ‥‥」
 俗に言う『お姫様抱っこ』と言う奴である。怖いのか、身体が浮いた刹那、アルノルトは俺の首筋にしがみつきながら、じたばたと逃れようとしている。だが、オールサイバーに生身の人間が適う筈はない。しっかりと押さえつけられた足と腰は、容易には動かなく、俺はそんな彼の動きを無視すると、そのまま部屋の外へと出て行った。
「どこへいくんです?」
「お姫様をお城までご案内だ。つべこべ文句を言うな」
 放っておいたら、また仕事だの何だのと呻きだすに違いない。そう思い、俺は迷わず医務室へ向かって歩き出した。
「むー‥‥」
 頬を膨らませて、態度で抗議するものの、俺の面の皮は、その程度では破れない。そうこうしているうちに、あっという間に医務室へついてしまった。幸運の女神様は、イイ男二人を、誰にも見せたくないらしく、部屋には、都合よく医者も看護婦も不在のようである。
「ほら、ご到着だ。ああ、欲しいものがあったら、何でも言えよ? 持ってきてやるから」
 ベッドの上に、アルノルトをそっと下ろし、シーツをかけてやりながら、そう囁いてやる。と、アルノルトが意外そうな声でこう言った。
「今日は随分優しいんですね?」
「病人にひどい事するほど、俺もバカじゃないさ」
 そう言えば、今日は普段に比べて、よく口が回っている。皆の前では、アルノルトが何か話をふらない限り、黙っていると言うのに。
「じゃあ‥‥お願いがあるんですけど‥‥」
 コイツの前でだけみせる仕草。それがうれしいのか、アルノルトはこう言った。
「側に居て下さい。俺が、出かけていかなくても良い様に」
 ベッドの縁に腰掛けて、あいつの顔を覗き込んでみせた俺の手に、自分の指先を絡めながら、そう訴えるアルノルト。
「わかった。お前がそう言うなら、今日の任務は副司令殿の護衛だ」
 きしぃ‥‥と、軽く音をさせて、隣にもぐりこむ俺。
「あなたが護衛についてくれるなら、安心して眠れます‥‥」
 最後まで、言い切れていないアルノルト。
(子どもみたいな顔して‥‥。だからいつまでも坊や扱いされんだよ‥‥。まぁ、俺の時だけかもしれないがな‥‥)
 腕の中に抱き寄せ、クーラーの風から守ろうと、盾代わりの位置に移動すると、アルノルトが目を覚ましかけたのか、もぞもぞと動いた。
「ああ、大丈夫だ。心配しなくても、俺はここにいるから‥‥。よしよし」
 彼のサラサラの髪をなでながら、そう囁いてやる。その言葉を聞くと、アルノルトは、再び安心し切った寝息で、俺へと甘えてくるのだった。

●起きている時に見る夢は〜ウォルフ〜
 あいつを医務室まで送って‥‥、せがまれて、側で見守って‥‥いつの間にか、俺まで眠ってしまったらしい。
「ん‥‥」
 隣で、あいつがもぞもぞと身動きしたのを、腕の中で感じ取って、ようやく現実に引き戻された。
「ふあ‥‥? 目ぇ覚ましたか。俺も少しうとうとしちまったな‥‥」
 すでに差し込んでいるのは月明かり。それも、天空遥か高く。時計を見る気はさらさらなかったが、仕込まれた俺の体内時計は、すでに夜遅い事を告げていた。
 と、薄明かりの中であいつは、ぽけーっとした表情で、俺の方をじーっと見つめている。
「どーして‥‥?」
「あん?」
 まだ頭が回転していないのか、ろれつが回っていない。
「どーして、うぉるふがここにいるんですかぁ‥‥?」
「どうしてって、お前が側にいろっつったんだろうが」
 オマケにさっき人の部屋に押しかけてきた記憶まで、ぶっ飛んでいるらしく、こんな事を言い出した。
「え? そんなこといいましたか‥‥?」
「覚えてないのかよ‥‥」
 真顔そのものですっとぼけられたら、呆れるなって言う方が、無理ってもんだ。俺の神経はそこまで繊細には出来ていない。
「そういえばー、やけにやさしいうぉるふのゆめをみたようなきがしますぅ‥‥」
「バカ、現実だ」
 人がせっかく気を使ってやったってんのに、コイツはー‥‥!
「だって‥‥。あんなに優しいウォルフなんて、ありえない‥‥」
 俺だって、いつもいじめっ子な訳じゃない。あれは、コイツがもっと構ってくれオーラを無意識に出すから‥‥っつっても、自覚はねぇだろうけどな。
「本当にそう思ってんのか?」
「うん‥‥」
 自信のない回答を言うような表情するんじゃねぇ。それでも要塞の副司令か!
(仕方ないな‥‥)
 不安そうなあいつを放っておくわけには行かず、俺は目を閉じて、その魅力的な唇に、軽くキスをする。
「これでもか?」
 間近でにっと笑いかけてやると、あいつは頬を真っ赤にしてしまった。この辺りが可愛いんだ。
「現実なの‥‥?」
「ああ」
 お姫様は、王子様のキスでようやくお目覚めになった様で、幾分もとに戻った口調で、こんな事を要求してきた。
「じゃあ‥‥好きって言ってくれますか‥‥?」
「どうするかな‥‥」
 一度はそう言ったものの、内心は口から思わずこぼれそうになる愛の言葉を押さえるので、必死になっていた。
「言ってくれないの‥‥?」
 オマケに、こう言う時に限って、あいつは何かをねだるような視線をしてきやがる。
(やべぇ‥‥。このまま行ったら、止まらなくなるなー‥‥)
 ここで、あいつの要求に応じてしまったら、それこそその先まで、しっかりお応えしちまいそうだ。と、あいつはそんな俺の葛藤なんざ見透かした様に、哀しそうな表情をする。
「やっぱり夢なんですね‥‥」
 本当に寝ぼけてんのか? こいつは。本当は、もう目はばっちり覚めてて、確信犯的に誘い文句を言っているんじゃないのか?
 悩むのは、性に合わない。俺は、覚悟を決めて、耳元で低く囁く。
「好きだ」
 で、予想通りあいつは、俺がそんな事を言うなんて思っていなかったらしく、目をぱちくりさせている。
「ウォルフ?」
 そんなに俺が口説き文句を言ってるのが珍しいのかよ。俺だって、好きな奴が具合が悪い時は、素直になるさ‥‥。
「ああ、コイツは夢さ。熱にうかさて見る夢。でも、夢の中でも愛してやまない‥‥」
 言いながら、ベッドの中で、その細い身体を抱きしめてやる。俺にはない心臓の鼓動が、あいつの身体から伝わってくる。どきどきと脈打つそれは、あいつ自身の俺への愛しさの現れ。
「俺も‥‥」
 すり寄ってくるアルノルト。
「ん‥‥」
 そのまま、唇を重ねてやる。今度は掠めるようなお子様キスではなく、大人の‥‥しっとりとしたキス。
「もっと‥‥。いっぱいキスして‥‥」
「ああ、いいぜ」
 そして、そのまま舌を絡めあう、濃密な口付けへとなだれ込む俺達。
「ふ‥‥ぅ‥‥」
 長い長いディープ・キスの後、吐息を漏らすアルノルトのしぐさが、何ともいえない色気をかもし出していた。
(ダメだ‥‥。やっぱりとまんねー‥‥)
 病人に酷い事をしちゃいけないなんつー俺の理性は、ぐらぐらと揺れ始めていた。
(それに、疲れてれば、この後うろちょろ‥‥なんてこともねぇだろうしな‥‥)
 決めた。後で文句を言われるかもしれないが、こんな美味しそうなアルノルトを見逃すくらいなら、とっとと理性を爆破しちまった方が早い。
「ウォルフ‥‥?」
「お前が、そんな美味そうな顔するからだぞ」
 離した唇を、頬から首筋へと滑らせて。うなじのあたりをした先でつついてやると、ようやく俺がやろうとしているコトに気付いたらしい。
「だ、ダメです‥‥。明日仕事に行かれなくなってしまいますぅ‥‥」
 押しのけようったって、そうは行かない。そもそも、アルノルトの細い腕じゃ、俺の身体はびくともしない。
「夢の中でまで、仕事するつもりか?」
 どうせ、明日も休みだ。俺の仕事の方は‥‥退屈すぎる待機任務なんざ、他の連中に押し付けとけばいい。
「そうじゃないですけど‥‥」
「なら、いいじゃないか」
 着込んだ連邦の制服を、一つ一つボタンを外して、その拘束をほぐしてやる。と、まるでよく熟れた桃の皮をはぐように、中からほんのりとピンク色に染まった素肌が、俺を待ち構えていた。
「あ‥‥」
 やっぱり仕事する気はあったらしく、お邪魔虫な目覚まし時計が、うっとおしく鳴り響く。
「うるせぇな」
 止めようとするあいつの腕を遮って、俺は、サイドボードに会った奴の銃で、そいつを粉々に打ち砕いてやった。
「何をするんですかぁ‥‥」
「人の逢瀬を邪魔する奴は、俺に撃たれて壊れてしまえって言うだろ。それにな」
 俺は意地悪く笑って見せ、「それに?」と、聞き返してくる奴の耳元で、こう囁いた。
「倒れるほど疲れてりゃ、仕事なんて出来ないだろうが」
 文句が出て来る前に、もう一度キス。今度は、手順なんて踏んでやらない。蕩けるようなキスで、一息にその気にさせてしまう。
「う‥‥、ん‥‥ッ」
 上気した頬を確認しながら、俺は胸元の蕾をぺろりと舐めた。
「動くなよ」
「は‥‥い‥‥」
 いつもなら、嫌だの何だのとわめき倒すくせに、今日はそれがない。
「今日は随分と大人しいな。抵抗しないのか?」
「するなって言ったの、ウォルフの方じゃないですかぁ‥‥」
 俺が、口説いてきたのが、そんなに珍しかったのか? それなら、今日は少しくらい、アレな格好をさせても、許してもらえるかな‥‥。
「違いない」
 そう言って、俺はアルノルトの膝を押し広げ、自分の膝の上に乗せた。
「あ‥‥そんな‥‥ぁ‥‥やだ‥‥こんな格好‥‥」
 頬の朱色具合が増した。だが、相変わらず抵抗はして来ない。
「俺しか見てないだろ。まさか、他の奴に見せるのか?」
「そんな‥‥事は‥‥ッ」
 そこで、即答してくれれば、俺も暴走する事などなかったと思う。
「ないとは言いきれないよな。こんなもの用意してるんだから」
 一度、癪に障る事があると、後は止まらない。脱がしかけた上着から顔を覗かせていた『デート券』を、取り上げる俺。
「返して‥‥」
「やなこった」
 目の前で、びりびりと全て破り捨ててやる。
「どうして‥‥」
「お前を‥‥誰にも、渡したくないから」
 ぴしゃりとそう言って。
「そう言うわけには‥‥」
「お前の都合なんかどうだっていい。俺は、お前を他の奴には渡さない。触れさせもしない。勿論、敵さんに殺させるなんて持っての外だ」
 一度離れかけた細い身体を、ぎゅっと抱きしめて、そう言ってやる。
「ウォルフ‥‥。あなたは‥‥」
「一度しか言わないから、良く聞けよ」
 たぶん、こんな事を言うのは、これっきりだ。
「俺は要塞なんかどうだって良い。お前さえいればな」
「それは‥‥」
 咎めるようなアルノルトの視線。わかってる。外に知れたら、軍法会議にかけられたって、文句は言えないような事を、口走っているのだから。
「正直、戦争なんて興味はねぇ。ただ、ここにはお前が居る。お前の居場所がある。だから、俺はお前の居場所を守る。ただそれだけだ‥‥」
「ダメです‥‥そんな事‥‥ッ」
 膝の上で、聞きたくない‥‥いや、聞くわけにはいかないと、しがみついてくるアルノルト。
「こんな時じゃないと言えないだろ。言わせろよ」
「だって‥‥それは‥‥」
 それを無理やり引き剥がし、俺はこう言ってやった。
「それとも‥‥聞きたくないのか?」
「‥‥聞きたい‥‥」
 ふるふると首を横に振るアルノルト。軽く息を吸い、その髪をなでながら、俺は他の奴には拷問されたって見せない笑顔で、こう続けた。
「俺は、お前の為に戦ってる。お前以外の為には、戦わない。たとえこの要塞が落ちてもな‥‥」
「あ‥‥」
 残りの上着を脱がせて、床に落とす。
「愛してるぜ。アルノルト」
 ズボンも、下着も何もかも奪い取って。隠すのなど、何も与えずに。
「俺も‥‥愛してます‥‥。誰よりも‥‥」
 今度は自分からキスしてくれるアルノルト。
「イイ子だ」
 こうなると、俺の服の方が邪魔だ。けれどあいつは、そんな俺の感情を悟ってか、俺の上着を外そうとしてくれる。意外と手先は不器用で、照れも手伝ってか、中々上手く行かない。
「自分で脱ぐから、大丈夫だよ」
「わかった‥‥」
 あやすようにそう言って、俺はその上着を脱ぎ捨てて見せた。
「ん‥‥」
 その夜、外界から完全に隔離した、月の光の差し込む薄明かりの部屋で、俺は心ゆくまでアルノルトの一番可愛い表情を堪能するのだった。

 そして。
「背中と首筋と胸元に傷ありますね。どこの子猫をたぶらかしてきたんです?」
 当然の事ながら、メンテナンスの時に、担当医にばれて、こっぴどく大目玉を食らい、反省文書いて来なさい等々、まるで小学生の悪戯後のよーな大騒ぎになっちまった。
「プライベートな事柄だ。深くは聞くな。作戦に支障ないなら、残しておいてくれ」
 もっとも、あたふたしていたのはあいつの方で、俺は、痛くも痒くもなかった。むしろ、大人の余裕とか言いながら、医師にそう申告してみせている。
(たぶらかされてるのは、俺のほうだ‥‥)
 それが、俺なりの愛し方だと、あいつが気付くのは、まだまだ先の話だろう。
(ま、当分離す気はないしな)
 のんびりと、落として見るさ。そう思い、俺は医務室を後にするのだった。
PCシチュエーションノベル(ツイン) -
姫野里美 クリエイターズルームへ
PSYCHO MASTERS アナザー・レポート
2003年07月29日

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