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『Eternal 』
霞・優舞1574)&天壬・ヤマト(1575)


 目が合ったその瞬間、心臓が止まるかと思った。
 だって、それは大好きだったあの人だったから。
 世界で一番、大好きだったあの人。
 今はもう、いない。
 永遠に逢うことの出来ないはずの、あの人だったから・・・。







 その日、買い出しに来た優舞がコンビニに着いたのは、すでに夜も遅い時間だった。
 優舞は小走りにコンビニへと入る。
 深夜の女性の一人歩きは危険だ。
 特に帰り道にある電灯のない通りは、優舞にとってもあまり好ましくない道である。
 用事を済ませて、早く帰りたかった。
 誰かと一緒に来ればいいのだろうが、生憎と今は優舞しかいない。
 一緒に来てくれる誰かが居れば・・・。
 その時、心の中に浮かんだのは一人の男性。
 だが続く虚無感に、優舞は重いため息をついた。
 そう・・・あの人は、もういない。
 世界中どこを探そうが、どこにもいないのだ。
 大好きだったあの人は、もう存在しない。
 再び襲ってきた激しい悲しみに、優舞は思わず立ち止まり俯いた。
 恋人だったわけではない。
 そうなれればいいなっ思っていたし、実際に二人だけで何度も一緒に遊んだ事がある。
 気持ちが通じ合っている。
 そう思っていた。
 彼が亡くなったのは、そんな矢先の事であった。
 優舞は悲しみとも絶望ともつかぬ気持ちに、どうする事も出来なかった。
 あれからどれぐらい経ったのだろうか?
 不意に訪れる悲しみは、今でも優舞を重く突き落としていた。
 その時である。
「どうしました?お客さん。気分でも悪いんスか?」
 掛けられた声に、優舞はハッとした。
 いつの間にか物思いに沈んでいたらしい。
 こんな事ではいけない。
 たとえ一人でも、自分がしっかりしなくては。
 もうあの人には二度と逢えないのだから。
 心にそう言い聞かせて、優舞は慌てて顔を上げると、謝ろうと口を開きかけた。
 だが。
 瞬間、優舞は驚きに目を見開いていた。
 優舞の顔を覗き込んでいたのは、一人の男性であった。
 このコンビニでは見かけない顔だ。
 どうやら新しい店員らしかった。
 きょとんとした顔が、優舞をまっすぐ見つめてる。
 だが優舞はそれどころではなかった。
 その顔を見た瞬間、思わずその店員の腕をガシッ掴んでいた。
 立ち止まった優舞に、不審がるでもなく声を掛けてくれたその人は・・・。
「ヤマト!」
「え・・・?」
「ねぇ、ヤマトでしょ?ヤマトなんでしょう?」
「あの・・・?」
 ―天壬ヤマト。
 それが彼の名前だった。
 失ったはずの大切な人。
 もうこの世にはいない。あの人。
 だが、今ここに。
 彼はここにいる!
 死んでなんかいなかった!
 彼は生きていたんだ。
 あれは・・・・嘘だったんだ・・・。
 あまりの嬉しさに、優舞は涙ぐんだまま微笑んだ。
「ヤマト・・・・」
「お客さん?」
 嬉しさのあまりに涙ぐむ優舞と対照的に、彼は不思議そうな顔をして優舞の顔を見つめた。
「ヤマト・・・?」
 どうした事だろう?
 彼は自分が判らないのだろうか・・・?
 まさか。
 そんなはずが無い。
 彼が、私を判らないなんて。
 優舞は無意識に口を開いていた。
「一度だけのキス、覚えてる・・・・?」
 たった一度だけ交わした口付け。
 優舞にとって忘れられない思い出だった。
 彼だって、忘れるはずが・・・・。
 だが、そんな優舞の思いとは裏腹に、軽く目を見開いた後、彼は笑った。
「確かにオレはヤマトだけど・・・。誰かとオレ、そっくりなんスか?オレ・・・記憶所々無くしてるから」
 微かに不安げな笑みを浮かべる彼。
「・・・・・」
 優舞は、そっと彼の腕に伸ばした手を離した。
「そっか・・・そうだよね・・。そのはすが・・・ないよね」
 優舞の顔に自嘲的な笑みが浮かぶ。
 そうだ。
 そうなのだ。
 彼はもういないのだから・・・。
 こんな所で、会えるはずがない。
 他人の空似なんだ。
 そう思って、優舞が肩を落とした時。
 目に入ったのは、その胸にあった名札。
『天壬ヤマト』
 やっぱり・・・・!
 思わず、優舞はコンビニを飛び出していた。
 やっぱり、彼だったんだ。
 やっぱりヤマトだった!
 一度は死んだはずの彼が何故生きているのか、とか、何故私のことを覚えていないのか、とか。
 疑問は沢山あったが、今はそんなことはどうでもよかった。
 自分が彼を見間違えるはずがない。
 たとえ、どんな姿になっていも、私が判らないはずがない。
 絶対に、判るんだから!
 たとえ、離れ離れになろうとも。
 私には判るから。
 彼は生きていた。
 生きて、私の目の前に・・・。
 確かに存在していた。
 そう思うと涙が溢れて止まらなかった。
 それは、嬉しさなのか、哀しさなのか。
 本人にも判らないまま、優舞は泣きじゃくっていた。
 もう、忘れない。
 絶対に忘れないから。
 再び出会えた夜を。
 もう一度出会えた、この奇跡を。
 昔の事も全部、私が覚えてるから。
 絶対に忘れないから。
 大好きだよ。
 そっと、泣きながら優舞は呟いた。





 ヤマトは女性が飛び出した背中を呆然と見送りながら立ち尽くしてた。
 自分に所々記憶が無い事は自覚していた。
 それでも不自由なく今までやってきた。
 だが・・・・。
 女性が掴んだその場所を、上からそっと手を重ねてみる。
 すでに温もりすら残っていないそこに、あの女性の存在を感じるようで、ヤマトはジッと腕を見つめた。
 自分の事を「ヤマト」と言ったあの女性。
 何者なのだろうか?
 自分には、面識はないはずだ。
 なのに、彼女は俺を知っていた?
 失われた記憶とは、一体何なのか・・・。
 もしや、彼女が深く関わっている?
 確かに自分の傍には誰かが居たような気がしていた。
 気配さえ覚えては居ないけど、それでも、その居心地のよさは、心の何処かに残っているような気がするのだ。
「あの人は、誰だろう・・・?」
 そういえば、寂しそうな顔をしていたな、と思った。
 どっかで・・・逢った事がある?
 記憶にすらないあの人に、何か懐かしさを感じながら、また逢えればいいな、と思った。
「そういえば、名前聞いてなかったな」
 出来ることなら、慰めさめてあげたい。
 傍にいてあげたい。
 そっと、抱きしめてあげられたなら・・・。
 そんな自分の心の動きにも気づかず、ヤマトはその場に立ち尽くしたのだった。
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東京怪談
2003年06月27日

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