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『Spun the stars and the sun song -Sun 』
柚井 ソラ(ga0187)

「空を彩るは、硝煙か‥‥」
 遠くで、争いの報せを聞く。
 どうせ彩るのなら、この身を焦がすほどの情熱の華がよいと。
 そんな事をそっと心の中で呟きながら。


◇◆◇

 高らかに響く男達の声。色取り取りの提燈の灯り。
 群がる人たちは親子連れで逢ったり、友人同士であったり、恋人同士であったり。活気溢れるこの場は一時の戦を忘れさせてくれるものであった。


 幼い時から夏祭りは楽しいものであった。祖母に引きつられ、袖を通した浴衣も今では一人でうまく着こなせる。去年よりは少し短くなった丈に少しだけ悦びながら、肌になじむ生地が夏をより思いださせた。少し腰の位置から下げて結ばれた腰紐に結びつけた青い珠、背中に挿したのはちょっぴり大きめの団扇で。まだあどけなさを残す顔とは違い、少し男を意識した服装なのは何故だろうか。
 それはきっと、この道を進む場所で待っている彼女を意識してかもしれなかった。ふわりと微笑を返してくれる、優しい光の星のような彼女を。
 2つ年上のはずなのだけれども、柔らかな彼女は周囲に流されること無く優しい時間を、空間を造っていて。
 その空気を一緒に味わうのが、いつの間にか嬉しくなっている自分がいたりするのだ。今もまた、もうすぐ待ち合わせの場所だと思うだけで、綿毛に包まれたような気持ちになっていく。思わず、ソラはくすりと笑みを浮かべていた。
 まだ見ぬ浴衣姿を脳裏に抱き、足はいつしか駆け足へと変わっていた。





「クラウさんっ」
「ソラくんっ」

 互いに道の角を曲がった所で一直線となった道は、この二人の姿を対峙させていた。どちらともなく、ドキッと胸が高鳴る。
 普段見ている姿と異なるその姿は、暑い風よりも自ら発する熱の方が高いのではなかろうかと錯覚させるもので、それは身体の‥‥いや、顔の一部へと集結していくのだ。
 気付いているのかいないのか、それはわからない。だが、流れる柔らかな風が、二人を笑顔で包み込んでいた。

 並び立つ縁日の屋台達はとても良い香りを送り出していた。はしゃぎ走る子供たちが、人を縫うように進んでいく。けしてそれほど人で溢れているわけではないのだが、進む方向にいつの間にか人垣が出来ていた。道の反対側の店を覗こうとするも、ちょっと背伸びをしただけでは難しそうで。
「ソラくん、これやろうよ!」
 クラウはそういうと、ソラの手をそっと握り引っ張った。自分とは違う、少し華奢で細い指にソラはどきりとした。少し夜風にさらされていたためか、冷たい感触に。まだ、ほのかに高い体温を持つ自分の手から、熱が移り行く。
 人を縫いながら進む中、はぐれないようにと結ばれた手。目的の場所は、ちょっとだけ人がいっぱい居て、着くと同時に少し屈んで押しのけるように前方へと顔を出した。
「おじさんっ! やりたいっ」
 丁度良く前に居た1組が破けたカップの取っ手を返却していた。目の前には水が入った子供用のプールを連想させる広いイケス。そこに泳ぐ波、大小様々な、赤と黒の金魚。
「ん? お二人さんかい」
 ちょっぴり強面顔の店のオヤジが、にかっと笑い白い歯をきらりと光らせる。思わず一歩下がってしまったソラの手を、クラウは少しだけに強く握り返し、多き頷いた。
 小銭と引き換えに受け取ったのは、洗濯ばさみを取っ手とした薄いモナカで出来たカップ。ソラは、その懐かしさに少しだけ笑みを浮かべた。よく祖母の家で使っていたのに似たお碗がどうやら掬った後の金魚たちの休息地であるらしい。
「ドキドキするねっ」
 あまり水に浸しすぎたらだめだよねと、ソラに確認しつつ、クラウはすぐに目を輝かせながらゆっくりと魚に狙いを定める。
 その真剣な面持ちにほくりと笑みを浮かべ、ソラは手早く手を動かしていた。
 ソラの手元にある器には、大小の金魚がゆっくりと泳いでいた。
「あっ!」
 しっかりと持った取っ手よりもやや下の部分から、すっかり濡れそぼったモナカは虚しく金魚たちの中へと落ちていった。
「はわっ、も、もう一回やりますか?」
 しょんぼりとしたクラウの器にはまだ金魚の姿は無く、ソラは自分の手を止め伺い見る。ふるふるとゆっくり左右に首を振ると、次にソラの視線へと合わさる場所で、クラウは笑みを浮かべた。
「ううん、ソラ君が取ったもの」
 そして嬉しそうに取っ手を店のオヤジへと手渡すと、楽しかったとお礼を言い。まだ残るソラの手元を優しく見つめる。
 クラウの微笑に意識を捉われていたソラは、見つめられていることに気付き慌てて再び金魚へと集中を試みるものの、手元が滑って水の中へと吸い込まれていく。
「兄ちゃん、残念だったな」
 にかっと笑われ、少しだけがっかりしたソラにオヤジは顔に似合わず丁寧な仕草で器に入っていた金魚たちを袋へと移しかえていた。

「でも、ソラ君すごいねっ!」
 金魚屋を後にして、クラウはとても嬉しそうに話し出す。
「結局2匹しか‥‥」
「ううん、2匹も取ったじゃない。1匹だったら寂しいけど、2匹だったら楽しそうだよねっ!」
 
 ふわりと両手を包まれて、手首にぶら下げた袋がゆらぐ。
 正面には同意を求めるクラウの笑顔。
 後ろで大きく華が開いた。
 

 いつの間に深くなっていた夜に、いつしか2人は並んで夜空を見上げていた。
 繋がれた手の間で揺れ動く袋の中では、そんな2人と同じように2匹の金魚が仲良く泳いでいる。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ga0187 / 柚井 ソラ / 男 / 16 / スナイパー】
【ga6559 /クラウディア・マリウス /女 / 16 / サイエンティスト】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 この度は発注ありがとうございました。
 いつもと違い、あくまで進展しそうに無い二人が進展したら!?ということで、淡いイメージで書かせていただきました。
 本編でも、このような発展が有るのか甚だ疑問に思いますが、この二人であったら気づかぬうちにと思ってしまいます。
 大好きな子犬2匹を書かせていただき、こちらは嬉しかったです。

 それでは、またお会いすることを願いまして。

 雨龍 一
なつきたっ・サマードリームノベル -
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CATCH THE SKY 地球SOS
2009年10月09日

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