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『舞と南瓜パーティー 』
朔月(gb1440)

「パンプキンパーティー?」
室生 舞(gz0140)はかくりと首を傾げながら呟いて、ハロウィン仕様に描かれたチケットを見る。
「そう、取材先の人から貰ったのよ。私はどうせ行けないし、あんたが言ってくれば? そのチケット一枚で最大6人までいけるんだって」
彼女を拾い、育ててくれている女性がチケットをひらひらとさせながら呟いた。
そのチケットを見ると、仮装パーティーらしく立食形式になっているビュッフェではハロウィンに相応しく南瓜料理が多く書かれている。
「料理も一流シェフらしいし、パーティーとは言っても簡単なモノみたいだから気軽に行けるしね。あ、仮装衣装は貸し出しのみみたいだから持参していかないように」
その女性はそれだけ言い残して「それじゃ取材に行って来るから楽しんでらっしゃい」と玄関から出て行ったのだった。
女性が出て行った後、舞はちらりとチケットを見る。
「どうしようかな‥‥」
舞は呟きながら誰と一緒にパーティーに行こうか悩み始めたのだった。

視点→朔月

「朔月さん、今日はお暇ですか? 実はハロウィンのパンプキンパーティーチケットを貰っちゃったんですけど、一緒に行きませんか?」
 それは朝の九時過ぎに朔月の携帯電話に掛かってきた。相手は本部のオペレーター訓練生として日々勉強のをしている室生・舞だった。
「それって何時から?」
 朔月が少し考えながら舞へと言葉を返した。
「えっと、10時から入場可能で、それ以降の時間ならいつでも入って大丈夫みたいです」
 舞がチケットを見ながら言葉を返すと「悪ぃ、朝は用事があるんだ」と朔月は少し申し訳なさそうに言葉を返した。
「そう、ですか‥‥もし行けそうなら電話して来てくださいね。夜の8時まではパーティーが開催されてるみたいですから」
 舞は少しだけしょんぼりしながら言葉を返して電話を切ったのだった。

「‥‥悪い事したかな、でもどうしても外せない用事なんだ、ゴメン」
 ツー、ツーと繰り返される無機質な音を聞きながら朔月は小さく呟き、携帯電話をバッグへ入れて家を出たのだった。
 彼女の手に持たれているのは金木犀の枝と紅茶。金木犀はゆらゆらと揺れるたびに甘い良い香りを放っている。
 そして彼女が向かう先は‥‥本部の近くにある霊園だった。今日は平日と言う事もあり、あまり人がおらず、霊園の中はひっそりと静まり返っていた。
(「ま、元からあんまり騒ぐ場所じゃねぇしな」)
 苦笑しながら朔月は霊園の中を歩いていく。今日は少し風もあり、備えられた花がゆらゆらと揺れている。
「今日は良い天気だ、金木犀も良く香るよ」
 朔月が足を止めたのは、霊園の端に建てられた新しいお墓だった。そして彼女は金木犀と紅茶を供えながら口を開き始めた。
「今日は‥‥舞の近況報告をしようと思って来たんだ。あいつ、舞は週刊記者を辞めてオペレーターになったんだよ」
 ふ、と朔月は優しく微笑みながら言葉を続ける。
「まぁ、オペレーターって言ってもまだ訓練生みたいだけどな。それでも一生懸命やってるみたいだよ」
 でも、と朔月は少しだけ表情を曇らせ、そして空を仰いだ。
「きっと、舞はまだお前の仇を取るのを諦めてない、そんな気がするんだ‥‥俺だって『お前』と同じあいつの親友だからな。何となく分かるんだ」
 朔月はお墓の前に座り込む。ふわりと金木犀の匂いが朔月の周りを取り込む。まるで返事をされているように思えて、朔月は苦笑した。
「でも、少し前みたいに暴走する事はないと思うんだ。あいつは、舞は自分が出来る範囲を理解したはずだから」
 朔月は苦笑しながら「分かるまでに結構危ない目に遭ってたけどな」と言葉を付け足した。
「きっと、お前とも生きている時に会えたら‥‥もしかしたら親友になれたかもしれないな――俺は約束するよ」
 先ほどまで微笑んでいた朔月の表情が真剣なものへと変わり、ひた、と冷たい墓石に触れる。それが『死』を感じさせてどこか悲しい気持ちになってしまう。
「舞を危ない目に遭わせないって。俺が守る。だからお前は安心して眠っていてくれ‥‥そして出来るなら、舞の幸せを願って見守っていてやってくれ」
 朔月は言葉が終わると同時に立ち上がって墓石に背中を向けた。
「これから舞と約束があるんだ、きっとアイツはしょんぼりしてるだろうけどさ‥‥‥‥‥じゃあな、また来るよ――――――ハル」
 背中越しに軽く手を挙げて朔月は霊園を後にする。
 金木犀の枝が揺れ、その下で眠るのは朔月にとっては話した事もない他人のハルという少女だった。
 今の世の中を脅かすバグア側の者によって殺害され、そしてキメラへと改造されてしまった哀れな少女。朔月が親友だと言う舞の親友。キメラにされた者を救う手立てはただ一つ、安らかに眠らせてやることだった。
「‥‥眠らせる、か」
 聞こえはいいけれど、結局は殺すしか方法がなかったのだ。キメラと化したハルを討伐した後、廃棄処分される所だったのを朔月が遺体を引き取って埋葬したのだ。
 だけどこの事実を舞はまだ知らず、朔月自身もハルのことをバラすつもりはなかった。彼女が何を思ってハルを埋葬し、何を思って舞に知らせないのか、これを知る人間はいない。
「もしもし、舞? 俺の用事が終わったから、朝に誘ってくれたパーティーに行かないか?」
 朔月は霊園を出た後で、舞へと電話をした。すると電話の向こうからは「それじゃ、ボクは用意して待ってますね」と嬉しそうな言葉が返ってきて、思わず朔月にも笑みが零れたのだった。

END


―― 出演者 ――

gb1440/朔月/13歳/女性/ビーストマン

―― 特別出演者 ――

gz0140/室生・舞/15歳/女性/オペレーター訓練生

―――――――――

朔月さま>
こんにちは、今回はご発注ありがとうございました。
番外編をお望み、との事でしたので書いたのですが‥‥い、いかがでしょうかっ。
気に入ってくださる内容に仕上がっていれば良いのですが‥‥。
それでは、今回は書かせて頂き、ありがとうございました!

2009/10/20
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2009年10月21日

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