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『■ 真夏の夜 泡沫の幻 』
華岡 紅子(eb4412)

 ● 一

 青い空、青い海、輝く太陽!
 窓辺に腰を下ろせば聴こえて来る、寄せては返す波の音はとても涼やかで真夏である事を忘れさせるような――。
「あづー‥‥」
 のんべんだらり。
 さすがに波の音色だけでは涼しくならないようだが、それでも都会の只中で狭い教室に四〇名もの生徒が集まって黙々とペンを動かしていた昨日までに比べれば天と地ほどの差があるはず。
 そうでなければ、わざわざ『海を合宿の地に選んだ』甲斐がない。 
「ほら、しゃんとしろ。その格好では生徒達に示しがつかない」
「‥‥つーか、おまえの髪が暑苦しい」
 半袖は肩まで捲り上げ、ジャージは膝上まで捲り上げ、片手に団扇、空いている片手で同僚の長い金髪を引っ張るのはアシュラ高校の社会科教師・滝日向(ez1155)。
 一方で髪を引っ張られた数学教師のリラ・レデューファン(ez1170)は眉を顰めたが。
「失礼ですが」
 不意に背後から声を掛けられて振り返れば、雰囲気がキツめの美人が立っている。その威圧感にはさすがの日向も立ち上がり、ジャージの裾を元に戻した。
「何か?」
 問うたのはリラ。
 答えたのは後にローラ・イングラム(hz0004)と名乗った彼女。
「ソルパ高校の保険医を勤めています。今日はこちらのホテルで他の高校も合宿中だと聞いたものですから、‥‥ご挨拶を、と」
 言い換えれば偵察というか事前調査というか。
 早い話、問題を起こしてくれるなと前以て釘を刺しに来た訳だ。
「そちらも来月の全国模試で結果を出すための大事な期間です。他にもダテンショウ高校や神聖都学園の生徒さん達もいらしているようですが、お互いに有意義な合宿にしましょう」
「ええ」
「ご心配なく、うちの生徒は皆イイ子ですよ」
 最後にさらりと反論した日向に、しかしローラは全く動じる事無く会釈して立ち去った。
「‥‥俺はああいうタイプは好かん」
「誰もおまえの趣味は聞いていない」
 あっさりと言い放ったリラは「しかし」と天井を仰ぐ。
「そんなにたくさんの高校が集まったのか」
「つーかだな。それだけの生徒が集まって何も起きないわけがあるかっつーの」
「‥‥おまえは教師のはずだが?」
「何を間違ったか、な」
 そうして日向が軽い溜息を吐いた頃、彼の予想は悲しいかな的中。
 ホテルを抜け出そうと計画する生徒達がいる事に彼らはまだ気付いていなかった――。




 ● 二

 教師達がそんな話をしていた頃、滞在中のホテルから徒歩で二十分程歩いた砂浜の一角に建つ海の家からは、合宿の合間の短い休憩を楽しむ生徒達の声がしていた。
「はいよ、焼きそば上がりー!」
「お待たせしました」
 海の家のアルバイトをしている兄妹が運んできてくれた料理に、真っ先に手を伸ばして預かろうとするのはリィム・タイランツ(eb4856)。
「いいよいいよ、テーブルにはボクが並べるから行って。他のお客さんが待ってるんでしょ?」
「ぁ‥‥ありがとう」
「何だよリィム、気が利くじゃん。それとも学校の友達の前だからって猫被りか?」
「そんなんじゃないよっ」
 ムキになって言い返せば兄の方が声を立てて笑う。
「ははっ、まぁ助かるのはホントだしな。さすが生徒会長ってか。――じゃ、頼んだぜ」
「もう!」
 調子の良い青年に眉を吊り上げながらもしっかりと料理を預かるリィムへ、今度はレイン・ヴォルフルーラ(ec4112)がくすくすと微笑いながら手を伸ばす。
「テーブルの上、空けましたから此方に下さい」
「わ‥‥さすがレイン! ありがとね」
「いえっ、私は紅子先輩に習っただけで‥‥っ」
 褒められるのは慣れていないのか、頬をほんのりと朱に染めて首を振る少女に「可愛いな‥‥」とぽつり小さく呟いたのは良き先輩であり友人のリール・アルシャス(eb4402)と、恋人アルジャン・クロウリィ(eb5814)である。思いがけず重なった互いの言葉に二人が剣呑な目線をぶつけ合うと、華岡紅子(eb4412)が失笑。
「何だか皆といると、普段とは違う場所にいるんだって事を忘れてしまいそうね」
「そう、だろうか」
「‥‥それは喜んで良いこと、かな」
「勿論よ。一緒にいて楽しいっていう意味だもの」
 紅子に微笑まれるとアルジャンにもリールにも反論する理由はなく、ですよねとレインが同意を示せば「そうか」という気になってくる。
「私は学年も違うし、先輩達と会えなくなる夏休みなんて短くなっちゃったら良いのにって思っていたんですけど‥‥こうして、名目は合宿でも、先輩達と海に来られるなんて嬉しくて」
「あら、私もレインちゃんと海に来られて嬉しいわ」
「もちろんボクもね♪」
 紅子、リィムが笑い返す。
「僕は言わずもがなだ」
 アルジャンの大きな掌が、レインの長く滑らかな黒髪を耳上からサラリと撫でた。すると、先刻までとは違う理由で真っ赤に染まる少女の頬。
「あ、あの‥‥っ」
「ん?」
「その‥‥人前では‥‥えっと‥‥」
 恥ずかしがる少女の黒髪を指先に絡めて悪戯っ子のような笑みを浮かべるアルジャンに対し、リールが卓を小突く。
「レインが困っているのが判らないのか?」
「ん?」
 聞いたのはリールなのに、アルジャンはレインに聞く。
「ぇ‥‥っと‥‥」
 ますます顔を赤くする少女にアルジャンは微笑、リールはこめかみを引き攣らせた。
「僕はレインを困らせているつもりはないよ。むしろ困っているのは君だろうリール。僕達にはスキンシップでも君には目の毒だったかな」
「! どうしてそういう物の言い方をするんだっ、厭味も甚だしいぞ」
「厭味とは心外だ。これでも気遣ったつもりだが」
「どこがっ!」
 言い合う二人から、紅子とリィムは料理を取り分けた小皿を持って一歩後退。レインは二人の間に割って入ろうとするがタイミングが掴めない。
「リール、君はもう少し思考を柔軟にした方が良い。でなければ貴重な好機も逃げて行く」
「余計なお世話だ!」
「いーーー加減にして下さい!!」
 バンッ、と。
 両手で卓を叩いたのは――レイン。
 アルジャンとリールは目を丸くして彼女を見遣り。
「どうしてお二人はいっつもいーーっつもそうなんですかっ」
 全体的にはアルジャンの言い様の方が問題を多分に含んでいそうだが、そこは恋故。多少の贔屓目は仕方が無い。
「お二人がちゃんと仲直りしてくれるまで、もう絶対にっ、二度とっ、口利かないんですから!!」
 ふいっと横を向いたきり固く口を閉ざしてしまったレインに二人は顔を見合わせる。
「いや、これは‥‥そう、コミュニケーションだよ、レイン! な? アルジャン」
「む、無論!」
「ぷんっ」
 そんな言い訳は聞き飽きたとばかりに無言を貫く少女に、慌てる二人。こちらもいい加減に見飽きた三人の光景に、紅子とリィムが隠れて苦笑い、騒ぎに気付いて近付いてくる先程のアルバイトの兄妹。
「ケンカ‥‥かと思ったんだが、そうでもないのか?」
「‥‥大丈夫なの‥‥かしら」
「うん、平気、平気。いつものことだよ♪」
 リィムが片手をひらひらと振る。そんな三人の遣り取りに紅子はもしかしてと口を切る。
「三人って昔からの知り合いなの?」
「ん? そう、昔ホームスティさせてもらっていた家の人達で、偶然、此処で再会したんだよ」
「あら、素敵な偶然ね」
「でしょー♪」
「なぁにが素敵な偶然だ」
 ポンと兄の手がリィムの頭を撫で回す。
「そう言うんだったら、もっとイー女になってろっての」
「あ、ひどーい!」
「‥‥お兄さん‥‥オヤジ臭いわ‥‥」
「――」
 リィムの反論は笑って流したが、妹のキツいツッコミには胸が痛む。
「さ、さて‥‥仕事に戻るか‥‥」
 よろよろと厨房に向かう彼と、リィムに軽く頭を下げてから彼を追いかける彼女。そんな二人をリィムは僅かに切なそうな瞳で見送り。
(「あら‥‥」)
 敏く気付いた紅子は、けれどあえて口を噤んだ。と、その時。
「‥‥素敵な偶然、ッスか‥‥」
 ぽつりと呟いたのはそれまで何故か黙り込んでいたフルーレ・フルフラット(eb1182)だ。
「‥‥どうしたの、フルーレちゃん」
 紅子が訪ねても彼女は「ほぅ‥‥」と溜息を吐くばかり。
「素敵な偶然‥‥って、二度も続くものでしょうか‥‥」
「??」
 理由が判らずに小首を傾げた紅子とリィム。
 アルジャンとリールは変わらずレインの機嫌を直そうと頑張っていた。


 それからしばらくして、何とか機嫌を直したレインと共に皆でホテルへの帰路についた一同は、その途中で奇妙な噂を耳にした。
 曰く、この海の南側には鬼泣塚と呼ばれる石碑が建っており、かつて鬼女と呼ばれた女が海に身を投げたとされる。手厚く弔った事もあって以後、恐ろしい話はほとんど聞かないのだが、彼女が身を投げたこの季節になると、石碑の傍に佇み、海を見ながら涙する女の幽霊が現れると言うのだ。中には、そこを肝試しの折り返し地点に定める若者達も多く、石碑の周りには到達した事を証明すべく参加者が持っていくために用意されたのだろう紙片などのゴミが散乱しているらしい。
「今夜、行くか」
「いいねー。夜になったらホテル抜け出してさ‥‥」
 擦れ違う、同じ学校の生徒達がそんな言葉を掛け合う。

 だから彼女達は――。




 ● 三

 此処まで来たのは間近に控えた全国模試で結果を出すべく勉強するため。それはもちろん判っているし、受験生であればこそ、その大切さも自覚している。――とはいえ季節は夏で、此処は海。
 勉強は後回しにして遊びたいのだと、考えないわけがない。
 時刻は夜八時を回った頃で、外はすっかり暗く、肝試しに行くとはしゃいでいた生徒達がホテルを抜け出す一時間前。
「‥‥ふぅ‥‥」
 紅子は胸元に拳を置いて、深呼吸一つ。
 伏せていた瞳を開くと左右を確認、意を決して目の前の扉を叩いた。中からはすぐに応えがあった。
「はいよ、って――」と顔を出した日向は、訪問者が誰かを知ると僅かに目を瞠った。
 それから彼もまた左右を確認した後で紅子を部屋に招き入れると、そっと扉を閉める。
「驚いたな‥‥忍んで来るにしちゃ時間が早くないか?」
「会いたかったの、なんて、ね」
「へぇ?」
 可愛い事を言う彼女を抱き寄せて口付ける。耳から頬を撫で、首筋をなぞる指先。
「‥‥んっ‥‥」
 くすぐったくて声を漏らせば日向が小さく笑った気がした。
「昼間、海で泳いだのか?」
「ぇ、ええ‥‥休憩中にレインちゃん達と‥‥判る?」
「ああ。潮の匂いがする‥‥夏の香りだ」
「っ」
 柔らかくウェーブの掛かった髪に口付け、指先は首筋から肩を通り腕へ。身体が微かに震えたこと、気付かれてしまっただろうか。
「‥‥で、こんな時間に男の部屋を訪ねて来たのはどういうつもりだ? これでもあんたの卒業まで一線‥‥いや、三線目くらいを越えるのはさすがに我慢するつもりなんだが」
 からかう声音を耳朶に落とす日向に、紅子は努めて平静を装う。
「いやね‥‥私だって『先生』に会いに来たのよ?」
「ん?」
「生徒達がホテルを抜け出そうって計画しているわ」
「は?」
「肝試しするんですって。夏の風物詩よね?」
 紅子がようやく部屋を訪ねた本題を語れば、日向は絶句した後で項垂れる。
「‥‥ったく、どうしてそう予想通りの問題を起こすんだか」
「だって夏合宿だもの」
 がくっと肩を落とす日向だが、彼女の語る理由は実に納得し易くて。
「‥‥私も抜け出すつもりよ?」
「あんたも?」
「ええ、‥‥そしたら、何が起こると思う? 他所の学校の男の子達にナンパされちゃうかも」
「――」
「ね? 何かあったら大変だし『監視』が必要じゃないかしら?」
「‥‥なるほど」
 紅子の言葉は強気で、彼女らしいけれど。
 接する体温から伝わる鼓動は言葉よりも如実に気持ちを語る。
「確かに二人でこのまま部屋にいるよりは外に出た方が安全だな」
「‥‥教師にはあるまじき台詞ね」
 笑って見せる紅子に日向は吐息を一つ。
「教師である前に男なんでね、あんたの前じゃ」
 言い置いて腕の中から彼女を解放すると、上着を持って扉へ。
「さ、行くぞ」
 そうして差し出された手に手を重ねる紅子の表情は、はにかんでいた。


 夜の、暗い道も。
 二人で並んで歩けば怖い事など何もなく、明かり一つない世界に波音だけが響く道筋は此処だけ切り離された別空間のようにも感じられた。
「ったく、これであんたの成績が落ちたらどうするんだ」
「あら、その心配なら要らないわ」
「へぇ?」
「だって、成績が上がったらご褒美をくれるんでしょう?」
 悪戯っぽく微笑う紅子に、日向は一瞬言葉を詰まらせた様子だったが、すぐに表情を崩した。
「一体どんなご褒美が希望だ?」
「そうね‥‥」
 どんなのが良いかしらと考えながら視線を夜の海に移せば、聞こえて来る波の音に誘われた気がした。
「ねえ先生、海に入らない?」
「海? こんな夜にか」
「泳ぐんじゃないわ、足を浸すだけ」
「ぁ、おい」
 腕を引かれて砂浜に足を付ければ、柔らかな大地に靴が沈む。隙間から中に入り込む砂。
「はだしの方が動き易そう」
「って‥‥」
 サンダルを簡単に脱ぎ捨てて行く彼女に慌てながらも、仕方ないと日向も自ら靴を脱ぐ。
「転ぶなよ?」
「大丈夫」
 足の裏から伝わるひんやりとした感触は心地良く、海に浸せば波が引くのと一緒に足元の砂が流れて行く奇妙な感覚が日向の口元を綻ばせた。
「こんな、海の間近に来たのは久々だな」
「そうなの?」
「ああ。俺にとっちゃ一人で来るような場所じゃないし、仲間と来る時間があれば‥‥」
 紅子と二人、他の生徒と顔を合わせずに済む場所で過ごしたい。そのためには太陽の下で過ごす事が難しくて。
 思えば、教師と生徒なんて立場を鑑みずに互いの心を通わせた事で彼女には随分と切ない想いをさせている、と。
「悪いこと、してるよな」
 低く呟く彼に、紅子は。
「! 冷てっ」
 何を思ったか手の平で掬った海の水を日向に浴びせる。
「なに‥‥」
「悪いことされたなんて、思ってないわ」
「え‥‥」
「だって、私‥‥」
 ばしゃばしゃと海水を浴びせ続ける彼女の表情に気付いた日向は、その腕を取る。
「紅子」
「なによっ」
 思わず語調強く言い返した紅子は、気付けば彼の腕の中。
「すまん」
 囁くように告げられる言葉には我知らず涙が溢れてくる。
 たとえば二人、付き合う事が世間的には許されない関係でも。
 太陽の下で手を繋いで歩く事は出来なくても。
 好きな人と一緒に生きていける事は奇跡にも近い幸せだ。それだけはきちんと解っていて欲しかった。
「‥‥日向さんのバカ‥‥っ」
「ああ。本当にバカだよな‥‥すまん」
 ぎゅっと抱き締められた温もりから伝わる鼓動は波の音を遠ざけるほどに近く、速く。
 此処には二人きり。
「来年‥‥あんたが卒業したら、今度は昼の海に来よう」
 太陽と青空の下の、青い海に。
「約束?」
「ああ、約束だ‥‥」
 静寂が背を押すように重なろうとした唇は――。
「あの辺りがいいんじゃないか?」
「っ!」
 不意に届いた子供の声に二人はハッと我に返り、そちらを見遣れば、夜の闇に紛れてバケツや花火を持って砂浜に降りてくる少年少女達の影が見えた。
 どうしてこのタイミングでと思うものの、あれが同じ学校の連中であれば気付かれると拙い。
「ったく!」
「あ、靴」
 紅子に言われて思い出した日向は走って二人分の靴を片腕に抱えると、もう片方の手を彼女に差し出す。
「行くぞ!」
「ええ」
 手に手を重ねて波打ち際を走る。
 二人一緒。
 決してその手を放す事無く。
(「どこまでだって‥‥二人一緒なら、行けるわ」)

 心から、そう思った。




 ● 四

 夏の海辺に火の花が咲く。
 長くは保たない、咲けばあっというまに散ってしまう姿は生花と変わらず、命の短さの分だけ灯る熱と輝きは、寄せては返す波の音と共に人々の心にいつまでも今日という思い出を残すだろう。

「そぉーれ!」
 四本の花火に同時に点火し、片手に持ってぐるぐる回すリィムから慌てて距離を取ろうとする同級生達は、けれどとても楽しげな声を上げながら砂浜を駆けた。
 そんな彼女を見ながら、日向は苦笑う。
「まるで子供だな」
「あら。子供だと思っていたらある日突然‥‥なんて事もあるんですよ、セ・ン・セ?」
 意味深な眼差しと共に言ってくる紅子には、身に覚えが有り過ぎて思わず絶句してしまう社会科教師。そんな同僚に軽い息を吐く数学教師も、今日ばかりは皮肉ることが出来なくて。
「‥‥この年頃の少女というのは、怖いな」
「怖いっておまえ」
 あんまりな表現に日向が笑えば「そうよ?」なんて紅子が脅す。
 十代の後半、多感な年頃。
 いまだからこそ出来る事、訪れる変化の有る事を、忘れないで。
「せ、先生」
 そこにリールが持って来たのは花火。
「‥‥一緒にどうです、か」
「ああ」
 先に日向が受け取って紅子に手渡し、リラに顎で促す。
「その手で花を咲かせましょうってな」
「‥‥ふっ」
 おまえらしくもない言葉だとリラは苦笑い、それを受け取った。

 花火の輝きはあまりにも儚いけれど、だからこそ美しく。
 繰り返し見つめたくなるのは、人々の憧憬がそこにあるから。

「フルーレ先輩?」
「わっ、あ、お‥‥っ」
 レインに声を掛けられて驚いたフルーレは、手に持っていた紙片を風に攫われそうになって慌てる。
「待っ‥‥」
 砂浜に落ちたそれを二メートル先で拾い上げたのは、アルジャン。
「良かった!」
 自分のせいでフルーレの大切なものを失くさせてしまうところだったと慌てるレインは、紙片の飛んだ先に恋人が居た事を喜んだが、フルーレは逆だ。
「アルジャン先輩っ、それを見てはいけませんっ!」
 慌てて取り返そうとして、かえって相手に興味を持たせてしまい。
「どれ」
 ひらりと裏返した先に書かれていたのは、男の名前とメールアドレス。
「‥‥へぇ?」
「――‥‥っ!!」
 意味深に微笑まれればフルーレの顔が火を吹き、レインは目を瞬かせて戸惑う。
「どうかしたんですか?」
「何でもないッス! えぇ何でもないですからそれを返してください!」
 海に響く、若人の声。

 夏は過ぎても、君達の時間はこれからだから――。




 ―了―

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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● eb1182/フルーレ・フルフラット/女性/23歳/ナイト
● eb4402/リール・アルシャス/女性/38歳/鎧騎士
● eb4412/華岡紅子/女性/25歳/天界人
● eb4856/リィム・タイランツ/女性/29歳/鎧騎士
● eb5814/アルジャン・クロウリィ/男性/28歳/鎧騎士
● ec4112/レイン・ヴォルフルーラ/女性/19歳/ウィザード

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 華岡紅子様

 この度は当方への「なつきたっ!ノベル」のご注文、誠にありがとうございました。
 毎度の事ながら、かなり自由に書かせて頂いてしまいましたが…だ、大丈夫でしょうかっ(滝汗)。
 お待たせした分だけ楽しんでいただけるノベルに仕上がっている事を心より願っています。

 またAFOの世界でもお会い出来ますように。
 季節はこれからだんだんと寒くなって参りますがくれぐれも体調を崩されたりなさらないよう、お体ご自愛くださいませね。



 月原みなみ 拝 

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なつきたっ・サマードリームノベル -
月原みなみ クリエイターズルームへ
Asura Fantasy Online
2009年10月29日

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