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『魔王様は悪戯が好き 』
仮染 勇輝(gb1239)

 キルメリア・シュプール(gz0278)、彼女は天使の外見と魔王の性格を持つという世にも珍しい(?)アンバランス少女。
 母親の前だけは猫を被って接しているのだが、以前悪行がばれてしまったという過去もある。
 しかし何故かな、人々は『萌え』と『癒し』を混ぜた新語で彼女を呼ぶ。

 そう、もやし――と。

「トリックオアトリート!」
 にっこりと天使の微笑みで通行人に話しかけるもやしことキルメリアは手を差し出していた。
「あ、ハロウィンか。はい、お菓子どうぞ」
 話しかけられた男性はぱらぱらとクッキーやキャンディーなどをもやしに渡した‥‥のだが。
「ふぅ‥‥此処はお金でしょ? 今時お菓子を貰って『わぁい、ありがとう♪』なんて喜ぶ奴がいると思うの? 馬鹿じゃない? そういう幻想は自分の夢の中だけにしてなさいよね」
 もはやハロウィンのお遊びではなく、恐喝になりつつあるのは気のせいだろうか。
「い、いや‥‥でも、こ、こういうのでお金なんてちょっと現実過ぎるっていうか、ねぇ?」
 男性も苦笑しながら言葉を返すのだが「ここが夢の中に思えるの? 馬鹿じゃないの、だったらさっさと布団被って寝てろよ、馬鹿」と酷い言葉を返す。
 さてはて、こんな魔王娘をどうするかは貴方次第。
 一緒になって悪事を働くもよし、自らを犠牲にして彼女を止めるもよし。
 さぁ、貴方はどうする?


視点→仮染 勇輝

「ふふふ‥‥まだまだお姉ちゃんは甘いのにゃ‥‥!」
 白虎は通行人の男性(A)と話すキルメリア・シュプールを見て不敵な笑みを浮かべる。
「甘いというか‥‥何か完璧にハロウィンを勘違いしてるようにも見えるけど‥‥」
 仮染 勇輝も苦笑しながら呟く。
 ちなみに今回はハロウィンと言う事もあり、白虎は中華服にお札を使ってキョンシーに仮装しており、仮染は顔が隠れる大きなローブと大鎌を持って死神風の仮装をしている。しかしハマりすぎなのか黒いマスクの上に骸骨マスクをしている為に怖いを通り越している姿だった。
「‥‥にゅ、勇輝さんちょっと怖いにゃ、ハロウィン満喫しすぎにゃ」
 白虎が呟いた時に「何してンのよ」とキリーが話しかけてきた。
「こんにちは、キリーさん」
 勇輝が(マスクの下で)にっこりと微笑みながら話しかけると「だ、誰よ‥‥私にはあんたみたいな知り合いなんていないわよ」とキリーは一歩下がりながら言葉を返す。
「え、えぇと‥‥勇輝ですけど」
 勇輝、という言葉を聞いた後に「何よ! ゆーきのくせに私を怖がらせて! 針十万本飲んできなさいよね!」とどんな約束を破ったんだというような罰ゲームを言い渡す。
 ちらりと勇輝が白虎を見ると、何故か自分に対して哀れむような視線が送られていて少しだけ悲しくなった。
「そういえば、あんた達は何しに来たわけ? お菓子が欲しいという卑しさで来てるわけ? お菓子くらい買いなさいよ」
 キリーの言葉の後「今日はお姉ちゃんに真のハロウィンを教える為に参上したにゃ!」とビシッとキリーに指を指しながら言葉を返した。
「奪うか奪われるか! お菓子を持つ者と持たざる者との戦いだ! どっちが多くお菓子を持って来られるか勝負にゃ!」
 勝負、その言葉を聞いてキリーが「ふ」と不敵に笑い、魔女に仮装している為足元まであるマントをひらりと翻しながら「返り討ちにしてあげるわよ」と笑って言葉を返した。
「お姉ちゃんが負けた場合は、ラスボス風魔王衣装を着てもらおう!」
「ふ、いいわよ、私が負けたらラスボス風だろうが露出が多い水着だろうが着てやろうじゃないの」
(「‥‥露出多い水着、それはちょっと困るから止めよう‥‥俺が勝ったら何をしてもらおうかな」)
 白虎とキリーのやり取りを見ながら勇輝が考えており「それじゃ俺は‥‥」と言いかけた時だった。
 凄くにっこりと、まるで本当に天使のような微笑で「ゆーき、あんたは負ける事はないわよ」と言葉を遮られた。
「――え?」
 まぁ、勝つ事もないけどね――そんな事を呟きながら魔王の微笑みをするキリーに勇輝は気がついていない。
「さぁ、それじゃ勝負にゃー!」
 そう言葉を残して白虎はイチャイチャカップル達の方へと走り出していった。恋に落ちてもあくまで『しっと団総帥』として行動しているのだろう。
「さて、俺は‥‥」
 どうしようかな、勇輝が呟いた時だった。ローブを『ぐい』と引っ張りにっこりと微笑むキリーの姿があった。
「ゆーき、手伝って♪」
 その瞬間に勇輝は悟った、先ほどキリーが言った「あんたが負ける事はない」という言葉の意味を。
(「最初から手伝わせるつもりだったんですね‥‥」)
 勇輝は心の中で呟き、苦笑しながら意気揚々とお菓子略奪の為に動くキリーの後ろをついて行く事にしたのだった。
「トリックオアトリート♪ お菓子くれなくちゃ殴っちゃうよ」
 既に言葉が変わっているキリーに驚きつつも勇輝はぺこぺこと頭を下げる。ちなみに話しかけられた人物にとっては「殴っちゃうよ」というキリーよりペコペコと頭を下げる死神仮装をしている勇輝の方が怖く感じていたのを2人は知らない。
「にゅあー!」
 それからもお菓子を求めて二人は様々な人間に話しかけていた時、突然白虎の叫びが耳に響いてきた。
「お菓子を出すのか出さないのかどっちなのにゃー!」
 どうやらカップルの桃色空気に当てられすぎているようだ。何とかお菓子はゲット出来ているものの、なにやら白虎が震えているのは気のせいだろうか。
「にゅあー!」
 なにやら白虎がお札を貼り付けて、ピコハンで叩きながら去っていく。
「大丈夫ですか?」
 状況を理解できていないような表情で互いを見つめる二人に勇輝が近寄り、フードを散りながら話しかける。
「きゃあああっ」
「うわあああっ」
 フードの下から出てきたのは骸骨マスク、リアルに出来ていて覚悟してない時に見ると怖い。
「あんたも性格悪いわねー」
 けらけらと笑うキリーに「まぁ、ハロウィンですから許されるでしょう」と勇輝は言葉を返したのだった。
 それからも順調にお菓子を集めていた二人だったのだが‥‥。
「な、何してるにゃー!」
 白虎の叫びが響き、二人は其方へと視線を向ける。アイスクリームを食べながらきょとんとしたキリーは「何って、お菓子集めてるんじゃない‥‥‥‥ゆーきが」と言葉を返してきた。
「それはズルいのにゃ! 一対一の勝負なのに何で勇輝さんを手伝わせてるにゃー!」
「は? 何処で一対一って言った? 勝負だとは言ったけど一対一なんて言ってないハズよ? だからこれはルール違反じゃないわ。ほら、何見てンのよ、さっさとお菓子を集めなさいよね、負けたらどうするの!」
(「何か女王蜂に働かされている働き蜂みたいだなぁ‥‥」)
 心の中で勇輝は呟きながらも必死にキリーの為にお菓子を集めている。
「こ、こうしてる場合じゃないのにゃ!」
 白虎はハッとしたように呟き、慌ててお菓子を集めに走り行く。


 そして青い空が姿を隠し、オレンジ色に染まる頃――三人は公園へと来ていた。
 白虎が集めたお菓子はバッグいっぱいと両手いっぱいの袋。キリー(もとい勇輝)が集めたお菓子も同じくらい。
 引き分けか、そう思った時だった。
「私の勝ちね」
 不敵に微笑むキリーが取り出したのは自分で集めたお菓子の袋。1つだけと少なかったけれど勇輝の分と合わせれば白虎のお菓子を僅かに上回る。
「ひ、卑怯なのにゃー!」
(「俺も少し卑怯だと思う‥‥」)
 勇輝が心の中で呟くが「勝てばいいのよ、勝てば!」と高らかに笑うキリーに言えるはずもなかった。
 高らかに笑うキリーに「こうなれば、このお菓子をかけて直接対決するのにゃ!」とピコハンを2つ取り出してきた。
 つまり、この2つのピコハンで叩きあいをするということなのだろう。
「ふふ、いいわよ。返り討ちにしてあげるわ」
 ピコハンを構えながら言葉を返すキリーだが‥‥何故か嫌な予感を勇輝だけが感じていた。
「行くにゃ―――『ばちん』いたいにゃー!!」
 白虎がピコハンを振り上げた瞬間、キリーからのびんたが炸裂して白虎は痛さに悶える。
「馬鹿ねぇ‥‥『このピコハンで』って言葉を言ってれば私はびんたしなかった‥‥かもしれないのに」
 くくく、と魔王の微笑みで白虎を見下しながら可笑しそうに笑う。
「負けたあんたにはこれが相応しいわ」
 そう言ってキリーからプレゼントされたのは『負け犬☆総帥』と書かれたタスキ。予め用意していたあたりが何とも言えない。
「さ、お菓子でも食べようっと、勇輝は手伝ってくれたからあげるわ。白虎、あんたにもめぐんであげるわ」
 ぽいぽいとお菓子を渡しながら「今日は楽しかったわ」と珍しく魔王ではなく天使の微笑みで2人へと言葉を投げかけた。
「わっ」
 その時、勇輝が躓いて転び「トロいわね」とキリーが手を差し出した時、勇輝の腕がスポンと抜ける。
「きゃああああああああああああ!」
「にゃああああああああああああ!」
 2人の驚く声が公園中に響き渡る。最も実際に抜けたのは本物の腕ではなく、勇輝がひっそりと仕込んでいた義手なのだけれど。
「義手ですよ、驚きまし‥‥た?」
 ごごごご、と怒りに震えるキリーが義手を振り上げながら「ばかあああっ!」とゴスゴスと彼を殴る。
 お菓子を食べながらほのぼのと終わる‥‥ハズもなく、結局はいつものドタバタ騒ぎで一日を終えるのだった。


END


―― 登場人物 ――

ga9191/白虎/10歳/男/ビーストマン

gb1239/仮染 勇輝/18歳/男/ファイター

―― 特別出演 ――

gz0278/キルメリア・シュプール/13歳/女/サイエンティスト

――――――――――
仮染 勇輝様>

こんにちは、今回はご発注をありがとうございました。
今回は白虎様と二人での共演でしたので、同じシーンでも少しだけ描写が変わっている部分があります。
内容の方はいつもと同じ(←)でドタバタな感じに仕上がっていますが、気に入っていただければ嬉しいです。
今回はご発注、本当にありがとうございました。

2009/11/17
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2009年11月17日

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