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『『躾とお仕置き』 』
クレア・マクドガル3389)&ジュディ・マクドガル(0923)&(登場しない)



 マクドガル家の屋敷にも冬が訪れようとしていた。
 屋敷の女中達は、屋敷内の暖炉を掃除したり、厚手のカーテンに変えたり、庭に溜まった落ち葉を掃いたりと、冬を迎える準備で毎日せわしくしているのであった。
 この屋敷の主人の娘であるジュディ・マクドガル(じゅでぃ・まくどがる)は、膝上の短いスカートに白いブラウスを着て、台所に入り冷蔵庫を開け、冷やしてあったフルーツを食べていた。それが今晩の夕食のデザートである事は知っていたが、成長期であるジュディは、少し動けばすぐに腹が減ってしまう。
 買い食いはいけないが、自分の家のものなら食べてもいいだろう、そんな気持ちでつまみ食いを始めたのであった。
 オレンジとパイナップル、メロンを甘い汁で存分に冷やしたデザートは口当たりがよく食べやすく、ジュディはついもう1口を思いながらもう、3人分も平らげてしまった。
 いつもデザートは多めに作ってあるし、あとは自分の分は先に食べてしまったと言えばいい。母もこれぐらいなら許してくれるだろうと思っていた。
 食べるのにすっかり夢中になっていたので、ジュディは母に掃除を言いつけられていた事などすっかり忘れていた。少し食べたら後でやればいいと思っていたのであった。
「ジュディ、何をしているのですか」
 振り返るとジュディの母親、クレア・マクドガル(くれあ・まくどがる)の無表情な顔がそこにあった。
「お母様、あたし、お腹が空いちゃって」
 ちゃんと謝れば許してくれるだろうと思っていた。
「夕食のデザートはいらないよ、だって、もう食べたんだもの」
 しかし、クレアは表情1つ変えなかった。
「お母様、怒っているの?」
「ジュディ、デザートを先に食べてはいけないとは言ってない。若い貴方がお腹が空いてしまうのはしょうがない事だわ。でも、貴方はいけない事を2つやったの。何かわかる?」
 無表情のまま、クレアが静かに問いかけてきた。
「お母様に、黙って、デザートを食べた事と」
 ジュディは、母親と目を合わせないようにしながら答えた。母は無表情だけれど内心では怒っているのを、感じたからだ。
「台所に入った事?」
「1つ目は合っているけれど、2つ目は違う」
 クレアはジュディの顔をじっと見つめた。何も命令はしなかったけれど、その無言の表情で何を言おうとしているのか、ジュディにはわかっていた。
「ジュディ」
 母が自分の名前を呼ぶのと同時に、彼女はスカートを捲り上げて母に背中を向けた。
 母クレアの躾は厳しい。ジュディは間違いやイタズラ、言いつけを守れなかった時には、クレアにお尻を叩かれる。軽い時は五十、重いときは百回も叩かれるのだ。今彼女が履いているスカートも、いつでもすぐにお尻を出せるようにする為に、母が決めた事であった。
 毎日のように叱られ、お尻を叩かれていたが、ジュディは文句は言わない。母も少女時代には厳しくされていたこと、厳しさが母の愛情からなのだと知っているからだ。
 以前、母に叱られてお尻を叩かれた時、ジュディはクレアがその母、ジュディの祖母もまた厳しく娘を躾けていた事を聞かされた。母は単に感情的になって叱っているのではなく、自分の将来を心配し、またジュディが一人前の女性となる為に厳しい躾をしているのだと知った。だからジュディは、母の言いつけは守り、沢山叱られていつか母の自慢の娘となると心に決めていたのだ。
 とはいえ、まだ15歳のジュディは遊び盛りで、楽しい事に夢中になり、つい母の命令に反した事をしてしまう。母に見つからないようにこっそり遊んだり、つまみ食いをする事もしょっちゅうであったが、いつもクレアに見つかってしまう。母は娘の行動など、全部見抜いる様であった。
「お腹が空いたらちゃんと言えばいいの。勝手に冷蔵庫のものを食べてしまったのはいけない事です!」
「お母様、あたし、また悪いことしてしまいました。おしおきして下さい」
 ジュディはスカートを下着を下ろしてお尻を高くし、母へと差し出した。
「家の物だから食べてもいいと思ったのでしょう。でも、自宅でもルールというものがあるのです!」
 1発目のお尻への平手打ちが、ジュディのお尻に入った。
「いいですか、貴方はこの屋敷の令嬢なのですよ!」
 2発目、クレアがお尻をより強く叩く。
「令嬢というものは、常に上品な振る舞いに心がけなければなりません」
 さらに母のお尻へのビンタが、台所に響き渡った。
「その娘がつまみ食いだなんて恥ずかしい。ます、貴方はやろうと思った事を必ず母に言いなさい。貴方はまだ子供なのだから、間違ってしまうの」
 母にお尻を叩き続けられ、だんだんお尻に痛みが蓄積していく。
「よその人が見たら何て思うかしら。あの屋敷の娘はつまみ食いとしている、何て品格がないんだと言われてしまうのよ」
 もう何十回と叩かれ、ジュディは痛みで涙をこぼしてしまった。
「だけど、貴方の一番いけないところは、言いつけた掃除をしていなかった事」
「お母様、後でやろうと思ったの!」
 母に言われて、ジュディは掃除をすっかり忘れていたことを思い出した。後でやろうと思っていたと、つい言い訳してしまったが、クレアがそれで納得する性格でないことぐらい、ジュディにもわかっていた。
「口答えは許しませんよ、ジュディ。言われたことをきちんとやれるのが、立派な大人です」
 さらに強烈な痛みが、お尻へと入った。何回打たれたのが数える余裕はなかったが、同じ箇所を叩かれているので、お尻が腫れ上がってきていると感じていた。
「返事は?」
「はい。ごめんなさいお母様。これから気をつける」
 そう答えると、クレアはようやく手を止めた。ジュディはスカートを下ろし下着をつけると、言いつけられていた掃除をすぐにやるため、まだ無表情の母を台所へ残し庭へと走った。庭の落ち葉の掃き掃除が、クレアに言われた仕事であったからだ。
 令嬢といえども、家の事はしっかりとさせる。それがクレアの躾であった。



 それから数日たったある日、ジュディは再び母から庭の掃除を言いつけられた。広い屋敷の庭なので植木も沢山あり、すぐに落ち葉で一杯になってしまう。
 この日は冬にしては心地よい天気で、風もほとんどない為、外で活動するにはうってつけの1日であった。
 ジュディは、もう母から叱られないようにと、庭の隅から箒で落ち葉を掃き始めたが、ほんの数分後には、庭に入って来た野性のリスを追いかけるのに夢中になり、掃除のことを忘れてしまっていた。
 庭に落ちていたどんぐりをリスへ投げると、リスはそれを小さな前足で取って、懸命に齧っている。その仕草が可愛らしく、ジュディはどんぐり集めを始めていた。
「お母様にも、一杯見せてあげよう!」
 スカートを捲り上げて、その上にどんぐりを沢山乗せたまま、ジュディは大広間へと入った。
「お母様!どんぐり一杯拾ったよ!」
 幼い子供のように、頬を紅潮させて大広間へと入る。
 大広間ではクレアが屋敷の女中達へ、何かを命令しており、女中はクレアの言う事にはい、と返事をしているところであった。
「あらジュディ。掃除しながら、どんぐりを拾っていたのね?」
 母が微笑んでそう言ったとたん、ジュディは掃除をすっかり忘れていたことを思い出した。ジュディの顔からは笑顔が一瞬消えたが、また母に叱られるとすぐに無理やり笑顔を作り直した。
 だが、その一瞬の娘の表情の変化を、クレアは見逃さなかった。
「ジュディ、また掃除を後回しにして遊んでいたのですね」
「お母様、ごめんなさい、あたし」
「この前も同じ事をしたばかりじゃないの!」
 クレアが大声を上げたので、打ち合わせをしていた女中達が急に沈黙し、一斉にジュディへと視線を向けた。
「小さな子供じゃないんだから!どうして、同じ事を繰り返すのです。この前私が言った事を、もう忘れたの!」
 クレアが目を吊り上げた。先日も、掃除を後回しにして怒られた。それをすっかり忘れてしまったわけではないのだが、つい、目の前の楽しい事に夢中になってしまったのだ。決して、掃除をやらないつもりというわけではなかった。
 クレアに、女中達が見ている前で大声で叱られて、恥ずかしさのあまりジュディは真っ赤になった。恥ずかしさで額に汗をかいていた。
「お母様、ごめんなさい、お母様!」
 そういい終わらないうちに、ジュディは女中達が自分を見ている目の前で、自分からスカートを上げてお尻を出してお仕置きの姿勢をしてみせた。
「お尻を叩いてください、あたしを、立派な、一人前の女性に、躾けてください!」
 女中達の視線がこちらへ集まっているのはわかっていたが、それでも母のお仕置きを受けなければと、ジュディは皆の前でお尻を出したのだ。
 母のお尻への百叩きはすぐに始まった。クレアは黙ったまま、お尻を叩き続けた。
「はう、痛っ!」
 あまりの痛みで、ジュディは涙を潤ませながら唇をぎゅっと結んだ。
「痛!お母様、ジュディは、悪い子です!」
 母が自分の事を思って、あえてこうして厳しい躾をしているのだと思うと、痛みよりもその母への思いで胸がいっぱいになり、涙が溢れてくるのであった。
 お尻はいつも以上に腫れ上がり、感覚すら鈍くなってきた。
 クレアがようやく手を止めた時、ジュディはいつもの通り百回叩かれたのだと気づいた。
「お母様!」
 ジュディは母の顔を見つめた。クレアは、それまでの厳しい顔つきから急に優しい表情へと変わり、娘を優しく、そして強く抱きしめた。
「ジュディ、よく頑張ったわね」
 母の柔らかい手が、ジュディの金色の髪の毛を優しく撫でた。
「厳しくするのは貴方の為ということを、わかってくれているのね。貴方が日に日に立派に成長する事が、母の楽しみなのよ」
「お母様、あたし」
 あたしはお母様の自慢の娘になります、と言いたかったが、涙で言葉がつまり、それ以上が出てこなかった。
 けれど、母が自分の事をいつでも大切にしており、だからこそ厳しくしているということがその抱きしめたぬくもりから伝わってくる。ジュディはクレアを世界で一番信頼し、愛し、そして尊敬しなければならないと、お尻を叩かれながら心の中で何度も繰り返していたのだ。
「あたし、絶対に立派な大人になります!」
 何度も何度も頭を撫でられながら、ジュディは母からの教えを絶対に守ろうと決意するのであった。(終)
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2009年11月19日

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