▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『+ パンプキンケーキ大王を食せ! + 』
マーオ2679



「で」
「で、じゃ」
「紆余曲折あってカボチャ王国の危機は去ったんじゃなかったのか?」
「紆余曲折あってカボチャ大王であるわしが調理されてもうた」


 今異世界人の目の前にあるそれは『元』カボチャ大王。
 以前は人間サイズの南瓜に顔が付いており、頭には王冠が被せられていた……が。


「なんで部下達より先に王様自ら調理されてでっかいパンプキンケーキになってんの!?」
「むむ、そこは突っ込んではならん。それでもわしは大王なんじゃ」
「『パンプキンケーキ大王』?」
「ジュニアとか二世とかいうノリじゃと嬉しい」


 えっへん。
 どこが胸なのか分からないがウェディングケーキサイズのパンプキンケーキが偉ぶる。
 周りは一面の南瓜畑。大王はその中でも一際大きい南瓜『だった』。過去形って重要。
 色々あってうっかり調理され、ハロウィンパーティのメインであるケーキにされてしまったという。


「綺麗に飾ってくれたあーんどちまっと酒入り効果で今のわし超最高気分じゃ!」
「でもそのままだと食われちゃうよ!? とっても美味しそうだよ!?」
「ハロウィンが終わった後は食えない南瓜より食える南瓜! さあ、わしをお食べ!」
「…………王様」
「さぁ、さぁさぁ!」
「……」
「さぁああ!!」


―― ……このケーキ超うぜぇ。


 ある一人の異世界人はフォークと皿を構えながら心の中で突っ込んだ。



■■■■



 さて、此処は『元・カボチャ大王』、『現・パンプキンケーキ大王』主催のパーティ会場である。


 多種多様のお菓子、飲み物に囲まれ参加者達は気分良く時間を過ごしている、が。
 その中に一人、狼男に仮装した子供――ザド・ローエングリンがしょぼーんっと付け耳である動物耳と尻尾を垂れさせしょげる。赤い瞳には涙が溜まり、今にも零れ落ちそうだ。
 何故そんなにショックを受けているかと言うと、カボチャ大王が料理されてしまった事に対して大層驚いてしまったらしい。
 ザドの傍には幽霊のマーオと白銀の髪をみつ編みに結った青年、ユーリ・ヴェルトライゼンが居り、それとなく宥めているような――宥めていないような。


「かぼちゃさん……りょうりされちゃった」
「へへ、凄く時間が掛かったけど、美味しいケーキに仕上がったよ! でも大王凄いよね、料理されても大王としての威厳は無くならないし、むしろ堂々としてるんだもん!」
「俺もケーキ作りは得意だし、趣味だし、ついでに凝り性な面が出ちゃってかなり気合いれたんだ。大王に感謝だ」
「マーオ、ユーリっ。どうしてりょうりしちゃったの〜!」
「大王は他の皆が料理されそうだったのを庇ったって聞いたなぁ」
「あと、『わしはいっそ食えない南瓜より食える南瓜になりたいんじゃ〜!』と喚いていたから遠慮なく、な」
「ふぇええええ!!」


 ふよふよと浮きながら他の参加者達にケーキを切り分けているのは幽霊のマーオ。
 こちらは魔女っ子捕獲の際にはお化けの仮装をしていたが、今は普段着の上に料理人に借りたエプロンを装着している。ウェディングケーキサイズとなるとカッティングも大変困難。そこで浮遊能力のあるマーオに上部のケーキを切って貰う事になった。


「ほらほら、大王様も何か言って〜」
「あうっ!」
「そうそう此処は王様らしくなんか言ってやってよ。よいしょ」
「くっ! そこはくすぐったいんじゃぁ!」
「あ、今何か」
「うわ、何か出た!? ……って、さっき入れたブランデーか」


 ユーリやマーオが切る度に大王が「あうっ!」っと痛みなのか快感なのか良く分からない声で叫ぶ。
 ケーキに仕込まれたあれやこれやが出る度に恥ずかしそうに、けれど擽ったくて可笑しいのか笑う。
 だがそこは王様、すぐにきりっと顔を引き締め涙目になっているザドへと話しかけた。


「ザド、わしはこの姿になったことを後悔しておらんぞ。マーオも言ってくれたように食えない南瓜よりも食える南瓜の方が皆の役に立つとわしは思ったんじゃ。お前さんが食ってくれること……それが何よりわしにとって幸せじゃ」
「かぼちゃだいおう……」
「さあ、わしをお食べ。そして後世にわしの味を伝えてくれ。それがパンプキンケーキ大王であるわしの願いじゃ……!」
「っ……!」


 キラキラ。
 会場のスポットライトの一つ何故か二人だけを照らす。其処だけ輝く様はまるで二人だけの世界のよう。――会場裏ではスタッフが電圧の調整ミスで落ちてしまった他のライトの調節をしていた事は誰も知らずに。


 やがてぱあっと会場全体に光が戻る。
 それとほぼ同時にザドの顔にも笑顔が戻り、手はごしごしと涙を拭った。


「うん、たべる。おうさま、そんなにも皆のことかんがえてくれてるなら、ぼくもうなかない!」
「あはは、じゃあもう少し切るね〜♪ さくっと!」
「あれ? この辺りにメープルシロップ入れたと思ったけど??」
「あう! 優しく! お願いもっと優しく切ってっ!」


 アルコールが入っているせいか大王はテンションが高く、体が切り分けられる度にやかましく喚く。
 だがそれが痛々しい悲鳴ではない事が唯一の救いと言えよう。それゆえか畑のカボチャ達から王様へと向けられる視線は尊敬以外の何者でもない。
 ザドは二人に切り分けてもらったケーキを受取り、フォークで一口サイズに切り分けてから口へと運ぶ。
 その瞬間、へこんで垂れていた獣耳と尻尾がぴこーん!! と跳ねた。


「甘くて、おいしい……っ! ん、んっ。かぼちゃだいおうのこと、わすれないよ! このあじも絶対にわすれないからっ!」
「ザド、あのね、あのねっ、僕もケーキ作るの手伝ったんだよ! 生地を混ぜたり、デコレーションをしたりね。だってパティシエだしね。こんなに大きなケーキ作るの本当に楽しかったなぁ。でも部下さん達を飾り付けに使わせてもらおうと思ったら怒られちゃった……。あ、この高いところの飾りつけは僕がやったんだよ♪」
「高いところ?」
「そうこのてっぺんの部分とか――うわ!?」
「マーオ!?」
「なんだ、何があった!?」


 ユーリもまた美味しそうな部分を見つけると嬉々として切り分け他の面々に与えていたが、突然叫んだマーオに慌てて視線を向ける。
 飾り付けた部分をマーオが指差す。
 場所はケーキの頭頂部にあたる一番上のスポンジだ。ケーキとなった大王の顔もそこに存在している。だが今、マーオが示した場所には一本のナイフが突き刺さっていた。
 それを刺した手は小さく細く、マニキュアの塗られた赤い爪が印象的。手先からそぉっとマーオは刺した人物の顔へと視線を巡らす。それに倣う様にザドとユーリもまたその手の持ち主へと視線を向けた。


「クヒッ、心だけでなくお腹も満たそうだなんて、良い心意気だわ。このウラ・フレンツヒェンに食べてもらえるのよ! 光栄に思いなさい」


 嬉しそうに唇を持ち上げて怪しく微笑むのは一人の少女。
 彼女は天使の仮装らしく、白レースが豪華に飾られたゴシックドレスに白い翼を背負っていた。ザドはその翼が偽物である事にすぐ気がつく。自分の身近な人物にも翼を持つ人間がいるためだ。けれどその少女が背負う翼はライトに煌いていて、思わず「きれいだなぁ……」とほぉっと見惚れる。


 残念ながら幼い彼女に浮遊能力はなく、無作法ではあるがイスの上に立ってケーキの頭頂部へと腕を伸ばしていた。白ブーツはきちんとイスの下で脱ぎ揃えられていた事が唯一のマナーだったかもしれない。
 だが彼女は作法を特に気にした様子はなく、リキュールがたっぷり染み込んだスポンジと生クリーム、そしてユーリ製作のカラメルで飾られた場所を遠慮なく切り分ける。す、すっとカッティングする手際の良さと大胆な行動に一部の人間は目が離せずにいた。


「あう、あう、小刻みにナイフを動かされるのはくすぐったいんじゃ! 一気に! 一気にー!」
「魔女っ子捕縛作戦には興味はなかったけれど、ケーキになったお前には心惹かれるわぁ。ヒヒッ、さあ私の口に入りなさぁい」
「ああ、食われるぅ〜!」
「あら本当に美味しいわぁ。もちろん最高級の紅茶も用意してあるわよね? クヒッ、最高の南瓜ケーキには最高の紅茶が一番。ほらそこのお前達、このあたしがこのケーキを切り分けてやるから紅茶を用意なさい」


 お前達、そう言われたのはザドとマーオとユーリだ。
 少女に命令に近い口調で伝えられた言葉は紅茶の用意。楽しそうに、そして心から嬉しそうに少女はケーキを切り分け、他の参加者達へと手渡す。口調は若干きついものの、皆にケーキを渡す様子にザドとマーオは顔を見合わせると、えへへっと笑顔を浮かべ彼女の言う通りボーイの元へと紅茶を貰いに行った。
 一人残されたユーリはどうしようか思案する。


「ま、いいか。ほら他にも欲しいやつ居たら言えよ。切り分けてやるからさ」


 改めて切り分け用のナイフを手にケーキに差し込む。
 小さな子供達がケーキ皿を手に並び始めたので自分が作った部分を主に切り、そして皿に乗せた。
 子供達相手なのでアルコール分の少なそうな下の部分にさくっとナイフを入れる。
 断面を見れば其処にはユーリ製作の砕いたナッツが敷かれており大変美味しそうだ。香ばしい香りが辺りを漂い鼻先を擽る。ケーキを食べ喜ぶ子供たちを見るとケーキ製作に関わって良かったなぁと彼は心から和む。


「かなり気合入れて上等なブランデーを使ったからな。大王も気分良い筈だぞ」
「ふむ、ほわほわするのぉ」
「此処らへんは何入れたっけ? お、苺が出て……ってパンプキンケーキに苺を仕込むのって美味いのか? 乗せるならともかくさ!」
「あ、そこら辺はなんだかむずむずする! あああ!」
「……あーもー、いちいち刺す度に叫ぶな!」
「いやじゃー!」
「さーてこっちを刺せば何が出てくるかな。お、バナナ」
「――わしの身体、一体何が仕込まれてるんじゃ……!?」


 楽しげに会話を交わすユーリと大王。
 もはやケーキを切り分ける事が目的ではなく、切り分けて何が出てくるのか楽しむ事が目的となっているのは気のせいではない。
 そんな風に戯れていれば横で切り分けていたウラがくぅっと口角を持ち上げて微笑む。
 何故かその笑みを見た瞬間、ユーリと大王はぞくりと背筋に冷たいものが走るのを感じた。


「カボチャ大王、クヒッ、違ったわね。今はパンプキンケーキ大王ね。最高に美味しい南瓜ケーキとしておまえのことは記憶しておいてやるわ」


 大王との戯れが気に入ったのか彼女は恍惚とした表情でナイフを刺す。
 顔を狙ってナイフを入れるのだが、大王はその度に素早く顔の場所を移動させる。そして、刺される度に「あう、あう!」とテンションの高い叫び声をあげていた。


 肩をあげる度にウラの黒くて長い髪の毛が揺れる。
 ふと、彼女の腕を誰かの手が掴みやんわりと止めた。眉を顰めながらウラが振り返れば、其処には死神の仮装をしたまま会場内の手伝いをしていたルド・ヴァーシュの姿があった。緩く結われた長めの髪の毛は青掛かった黒。黒い瞳の中にはウラの姿が綺麗に映り込む。


 その後ろにはザドとマーオの姿があり、二人が会場内でまるで執事の様に給仕していたルドを呼んできたことは明白だった。
 ユーリも手を止め二人の姿を目に入れる。
 ウラは赤い舌で、これまたルージュが引かれた赤い唇をちろりと舐めた。


「なぁに? 何故止めるの?」
「そんなに身体を傾けていると生クリームが髪に付くぞ。それからその綺麗な衣装にもな。あと折角履いて来たブーツも脱ぎっぱなしだと可哀想だろう」
「あらこのあたしに注意するの? ヒヒッ、意外だわ」
「可愛い衣装とブーツなのに勿体無いだろう。ほら、足を出せ」
「自分で履けるわよ」
「パーティ会場の真ん中という目立つ場所で女性に屈み込ませて履かせるのは男としてどうかと思ってな」
「クヒッ。お前、言うわね」


 ルドは片膝を折り、イスの横に揃えられた白いブーツを手に取る。
 紐を緩め足が入りやすいように空間を作ると、少女の方へとそれを傾ける。未だ椅子の上に立ったままだったウラも此処までされては何も言い返さない。
 いや、むしろルドの行動が可笑しくて彼女はゆっくり椅子に深く腰掛けた。そして緩慢な動きで片脚を持ち上げるとブーツへとその爪先を引っ掛ける。それを見たルドは静かにその細く長い足をブーツへと沈ませることにした。


 片方が終わればもう一方も同様に。
 決して苦しくならないように時折声を掛けて気をつけながら、ルドはブーツの紐を締め最後に蝶々結びをした。


 少女は自身への待遇に満足しつつ、切り分けたばかりのケーキにフォークを突き刺し自分の口に運ぶ。
 ふと目の前の男に視線を落とす。屈み込んでいる男の頭を見遣ると彼女は改めて一口サイズに切ったケーキをフォークに差し出した。


「食べなさい。お前、その様子じゃまだケーキに口を付けていないんじゃなくて?」
「確かに手伝いばっかりしていたもんだからまだ食べていないな」
「このケーキは本当に美味しいわ。――ヒヒッ、誉めているのよ、大王。喜びなさい」


 ウラが向けるケーキへとルドは口を寄せる。
 だがもろいスポンジで出来たケーキは不安定で、彼は少女の手首を捕らえ動かないように安定させてからそのまま口内に入れた。
 何度か租借し、甘く濃厚なカボチャの味を堪能する。目を伏せればその味はより鮮明に感じ取られた。
 こく、と喉が鳴る。皆はルドの感想を待ち望み、無意識だが彼へと視線を集めた。


「美味い」
「じゃろう、じゃろう! わし美味しく料理してもらえて最高な気分! やっぱり食える南瓜最高ー!」
「食える南瓜……か。姿は見えなくなっても、心に残る。考えも味も、さすが大王だ」
「そう言って貰えるとわし幸せ!」


 ルドの感想に更に機嫌を良くしたパンプキン大王はテンションをあげる。


「そうだよ、ルド! たべなきゃ! だいおう、とってもおいしいんだよ!」
「そうそう、さっき言いそびれたんだけど、この頭のデコレーション僕がやったんだよー!」
「ちなみにケーキの上から掛かってるカラメルは俺が作った。美味いカラメル作るのって結構技術いるんだぜ」
「あたしも手伝ったわ。大王、お前の頭を飾っている美しい王冠はこのウラ・フレンツヒェンが製作したのよ。感謝しなさい」


 掴んでいた少女の細い手をゆっくり離すとルドは立ち上がった。
 ケーキの上部を見れば切り分けられた部分以外には美しい飾りつけがなされている。確かに生クリームの形や添えられているフルーツの配分は素人のものではない。フォークを借りてカラメルの掛かった部分に刺し、一口口の中に放り込めば甘く、けれどほろ苦いカラメルソースの味わいが広がる。


「ユーリのカラメルは美味い。プリンとか得意か?」
「ああ、プリンも作れる。っていうか、そこのテーブルに乗ってるプリンは俺が作った。時間ある時にでも食ってよ、味は保証する」
「じゃあ後で頂こうか。ケーキの飾りつけはマーオか。中々のものだな」
「えへへ、折角のパーティだもん! 頑張ったよー!」
「乗っている王冠も繊細な細工でとても綺麗だ」
「当然ね。もっと誉めていいわよ」
「ルド、ぼくは、ぼくはー!?」
「お前は……そうだな。狼姿、良く似合ってる」
「ぶー、それケーキとかんけーない〜……」
「そもそも俺とお前はケーキ製作に関わってないだろう? と、忘れていた。紅茶がいるんだったな。紅茶を淹れるには少し湯が冷めてしまったから新しい湯を貰ってこよう」


 ティーセットが乗ったトレイはウラの手を捕らえる際テーブルに置いておいた。
 だがティーポットに触れた瞬間、温度が下がったことに気付き彼はトレイを持ってキッチンへと足を翻す。それを見送ると皆ケーキへと手を伸ばした。


「ん、おいしい! マーオは食べないの?」
「僕幽霊だから食欲はないんだよ〜、でも皆で作ったケーキだから一口くらい食べたいなぁっ!」
「じゃああーんして、口にいれてあげる!」
「へへ、いただきまーすっ」
「マーオ、こっちも」
「ユーリまで……ん、あむっ!」


 ザドは先程のウラを思い出し、一口サイズのケーキをフォークに突き刺しマーオに差し出す。
 マーオは嬉しそうに微笑を浮べるとそれを食べた。一口ずつ、計二口という少なさだがそれで彼にとってはそれで充分満たされる。だが口内に広がる甘さと僅かな苦さに飲み物が欲しくなり、きょろきょろと辺りを見わたす。やがてテーブルの上にまだ誰にも手を付けられていない飲み物を見つけそれに手を伸ばし、ストローに口付けた。
 ウラも同じ飲み物を口にしているし、ジュースだろうとそう思ったが。


「おやお前。酒は平気なの?」
「え?」
「クヒッ、それ、甘いカクテルジュースよ。度数は低くてアルコールなんて無い様なものだけどね」
「お、さけ?」
「酒って言えば、ケーキも場所によってはアルコールがかなり染み込んでるけどな。さっき俺がマーオの口に放り込んだ場所とか……え、もしかしてヤバイ?」
「あれ、マーオ、ふらふらしてるよ〜!?」


 口元を押さえながら怪しげに笑うウラ。
 ユーリもそれに続いて思い出した事柄を口にすれば宙に浮いていたマーオがさぁあっと顔を蒼くする。
 ふらりふらり。
 蒼い顔は次第に内側からかぁあっと上がってくる熱に侵食され、視界が眩み始めた。


「や、やっちゃったぁ〜……!」


 完全に顔を赤く染め上げ、次第に身体を支える事も困難なほど揺れる。
 そんなマーオにザドは慌てて手を伸ばすも、支えきれず――。


 バッターンッ!!


「ヒヒッ、幽霊が酒に酔って倒れるなんてっ! ああ可笑しっ……!」
「おいおいおい……マジかよ」


 酒に目を回すマーオとそれに下敷きにされたザドを見て心底ウラは可笑しそうに笑い、ユーリは複雑そうに額に手を当て項垂れた。



■■■■



「うーん……あれ、僕何してたっけ?」


 ソファに寝かされていたマーオはそぉっと目を開く。
 幽霊の身にも何故かシーツが掛けられ、彼は驚いた。すでにパーティは終了し、会場内に人は疎らだ。


「あ、思い出した。お酒飲んじゃったんだ……う、まだ少しくらくらするよぉ〜」


 ずきんっとこめかみに痛みが走り、マーオはこめかみに手を押し当てる。
 頬に手の甲を触れさせれば仄かに熱い。こんなところまで人間と似てなくたっていいのに、と呟く。


「マーオ、起きたか」
「ユーリ、あ、ごめんね。突然倒れてびっくりしたでしょ〜」
「確かに吃驚した。そんなに酒弱かったならケーキ作ってる時から言ってくれれば良いのに」
「料理に使う分くらいじゃなんともないんだけど、こう直接飲んじゃうと駄目なんだ……うーん、パティシエ失格だなぁ〜」


 くたりと体を前のめりにしマーオは失態を恥じる。
 だがユーリは二度首を振りそれを否定した。それから手に持っていた皿を相手の前に移動させる。その皿に乗っているのはパンプキンケーキとウラが作った王冠だった。


「これ、お前の分」
「あ、でも僕食べられ」
「アルコールが入ってない下の方の部分だけを切って持ってきたから今度は大丈夫だと思う。それに大王のケーキ、マーオだけ食えないなんて嫌だろ」
「ユーリ……」
「此処は俺が作った部分だから美味いとは思う。いや、絶対美味しい!」


 真面目な顔をして宣言するユーリが可笑しくて、マーオは思わずぷっと噴出す。
 そんな相手の膝元に落ちないように気を使いながら皿を置き、近くのテーブルからジュースを取ってきた。彼はそれも手に握らせるとグラスをカンっとぶつける。


「このハロウィンの夜、食べられる大王に敬意を払って」
「乾杯だねっ!」


 カラン。
 氷が鳴る。


 何故だろうか。
 皿の上に乗ったケーキに顔は付いていないが、大王が笑っている気がした。







□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□

【3427 / ウラ・フレンツヒェン / 女性 / 14歳 / 魔術師見習にして助手】
【3364 / ルド・ヴァーシュ / 男性 / 26歳(実年齢82歳) / 賞金稼ぎ / 異界人】
【3742 / ザド・ローエングリン / 中性 / 16歳(実年齢6歳) / 焔法師 / レプリス】
【2679 / マーオ / 男性 / 14歳(実年齢30歳) / 見習いパティシエ / 幽霊】
【ga8751 / ユーリ・ヴェルトライゼン / 男性 / 19歳 / エキスパート】

□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■         ライター通信          ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□

 皆様こんにちは!
 今回は「パンプキン大王を食せ!」に参加頂きまして真に有難う御座います。
 実はこのノベル、3種類EDが御座います。他の方の納品物と合わせてご覧下さいませ!


■マーオ様
 またの参加有難う御座いました!
 今回はパティシエらしく御菓子作り担当です! あとオチ担当となってしまいました(プレイングがあまりにも可愛らしかったので/笑)
 ふよふよ浮きながらケーキを飾ったり、皆のために無邪気にケーキを切ったりしてくれるマーオ様、輝いておりました。
パンパレ・ハロウィンドリームノベル -
蒼木裕 クリエイターズルームへ
聖獣界ソーン
2009年11月20日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.