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『クリスマスキャロル 』
レイン・シュトラウド(ga9279)

「はぁ、結構街の中もクリスマスのイルミネーション一式だなぁ‥‥」
小さく呟きながら寒さを少しでも凌ごうと手に息を吹きかけながらキラキラと綺麗に輝くイルミネーションを見る。
クリスマス――それは一年の中で最も聖なる日、特別な日。
恋人達は甘い雰囲気に酔いしれながらその日を過ごす。
「あ、この遊園地――クリスマスの日は夜までしてるんだ‥‥」
ふと目に入ったのは遊園地の案内広告、いつもは6時で閉園となるその遊園地はクリスマスの日だけ夜の11時まで営業するのだとか。
「あ、でもこっちのクリスマスライトショーも捨てがたいかも‥‥」
別の広告には植物園をクリスマスっぽくライトアップするという案内もあった。
それぞれの場所は正反対、両方に行く事は無理なのだが――あなたはどちらに行きますか?

視点→レイン・シュトラウド

「植物園か‥‥舞さんを誘ってみようかな‥‥? 最近、デートしてないし」
 植物園の案内に目を留めたレイン・シュトラウドは小さく呟く。任務の報告などで顔を合わせる事はあるが、オフの日に顔を合わせる事は中々ない。
(「休みだといいんですけど‥‥」)
 レインは期待と不安に駆られながらも携帯電話を取り出して舞へと電話する。
『もしもし?』
 早いというには少し遅い時間なのだが、舞は眠たそうな声で電話に出る。
「もしもし? 僕ですけど起こしちゃいましたか?」
『あ、大丈夫です。本当はもう起きてなくちゃいけない時間だったから』
 どうしたんですか? 首でも傾げていそうな口調にレインは少し苦笑する。
「いえ、植物園のクリスマスライトショーがあるみたいで、もし良かったら一緒にいきませんか?」
 レインの言葉の後「今日はお休みですし、一緒に行きたいです」と嬉しそうな声が電話の向こうから聞こえてホッとレインは胸をなでおろした。
「それじゃ、時間に迎えに行きますから待っててくださいね」
 迎えに行く時間を決めてレインは電話を切る。
(「久々のデート、か――そうだ、アレを頼んで置こうかな」)
 レインは少しだけ微笑み、約束の時間が来るのが待ち遠しくなったのだった。


 午後6時30分――ライトショーは7時から予定されているのだが、舞の住むクイーンズ編集室から歩いていけばちょうど良い時間になるので少し早めに植物園へと向かう事にした。
「2人きりでのんびりデートするなんて、久しぶりですね」
 どちらかが手を差し出したわけではないが、自然に手を繋ぎながら歩き、レインが話しかける。
「そうですね、ボクもレインさんも忙しいですから‥‥でもボクは会えない時間も嫌いじゃないんです」
 にっこりと笑って舞が呟く言葉の意味が分からずレインが首を傾げる。
「だって、会えない時間が長かったら会った時の嬉しい気持ちが大きくなりますもん」
 満面の笑みで言葉を返す舞にレインは少し顔を赤くしながら「そう、ですね」と短く言葉を返した。
「わぁ、レインさん、見て! 凄く綺麗です」
 植物園が近くなると既に7時を回っているのかきらきらとした光が植物園を包んでいるのが遠くからでも分かる。
 2人は植物園の入り口にいる係員に入場料を支払い、植物園へと足を踏み入れる。
「「うわぁ」」
 2人はほぼ同時に感嘆のため息を漏らした。中に入ると中には赤、緑、黄、青など様々な色のライトで植物が飾られており、サンタやトナカイの形に刈られた木がいくつも存在した。
「綺麗ですね、レインさん」
 キラキラと明滅を繰り返すライトを見ながら舞がレインに問いかけると「そうですね、でも」と言葉を一度止める。
「でも、舞さんの方が可愛くて素敵ですよ」
 レインの言葉に舞は一瞬きょとんとした後、顔を真っ赤に染めて「あ‥‥ありがとうございます」と俯きながら言葉を返した。
「あ、ちょっとあそこに寄っていってもいいですか?」
 レインが指差したのは普段は花売りをしている小さな店。今日はライトショーと言う事もあって花の販売はしていないようで、普段は花が置かれているであろう棚もがらんとしていた。
「え? えぇ、いいですけど‥‥ライトショーの為に花の販売はしてませんって書いてますよ?」
 首を傾げながら舞が呟くと「えぇ。分かってます」という言葉が帰ってくる。
「すみません、昼間に電話したレイン・シュトラウドですけど」
 店の中にいる初老の男性にレインが話しかけると「あぁ、聞いてますよ。これでしょう」と言ってオンシジウムの花を持ってくる。
「ありがとう」
 レインは代金を払った後、そのまま花を持って舞の所へと戻っていく。
「少し早いですけど、メリークリスマス」
 レインは呟きながら舞にオンシジウムの花を渡す、渡された舞は「え? え?」と目を瞬かせながらきょとんとしている。
「オンシジウム、舞さんにぴったりですから」
 照れたように少しだけ頬を赤く染めるレイン、最初に植物園のパンフレットを見た時から彼は舞にこの花をプレゼントしようと決めていた。
 オンシジウムの花言葉、それは可憐、清楚と言った言葉であり舞を現すのにぴったりだと思ったかららしい。
「ありがとうございま‥‥くしゅんっ」
 少し薄着の舞に夜の冷たい風はつらかったようでお礼を言う途中でくしゃみをしてしまう。
「あ、舞さん。これを着てください」
 レインは自分が着ているコートを舞に羽織らせる。しかしコートの下はレインも薄着であり、舞は「い、いいですっ。レインさんが風邪引いちゃいますよ‥‥!」と慌ててコートを返そうとするのだがレインがそれを止める。
「コートなんてなくても、傍に舞さんがいてくれるだけで、ボクは十分暖かいですから」
 にっこりと笑って返された言葉に舞は照れながら「ありがとうございます」とお礼を言う。
「あ」
 そして何かを思い出したように舞は自分のバッグの中から細長い箱を取り出した。
「あの‥‥これ、そんなに高いものでもないんですけど」
 渡された箱を見て「開けてもいいですか?」とレインが問いかけると舞はこくりと首を縦に振る。青いリボンで飾られた包みを開けていくと‥‥そこには時計があった。茶色の革ベルトに文字盤は金の縁で飾られたシンプルな時計。
「12月24日、レインさんの誕生日ですよね。それは誕生日プレゼントです‥‥それと、これは――古いものですけど、良かったら」
 舞が差し出したのは古びたペンダントだった。
「これは?」
 ペンダントを手に取り、レインが問いかけると「お母さんの形見です」と舞は静かに言葉を返した。
「昔、お父さんがお母さんに送ったペンダントらしいので結構年季が入っているんですけど」
 そんな大事な物はもらえない、レインが返そうとするが舞は首をゆっくりと横に振る。
「レインさんに持っていて欲しいですから」
 舞の言葉に「ありがとう、ございます」とレインは小さく言葉を返す。
 するとその時だった。近くで周りを気にする事もなく大胆にもキスをするカップルを発見してしまう。
「あっ、あの‥‥す、少し離れたところに行きましょうか?」
「そ、そうですね‥‥」
 それから2人は顔を真っ赤にしながら植物園を見て回るのだが、先ほどのカップルの衝撃が強かったのかあまり植物園の綺麗さが頭の中に入ってこなくなってしまっていた。

 そして帰り道、すっかり夜も遅くなってしまったのでレインは舞をクイーンズ編集室へと送る事にしていた。
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」
 先ほどのキスのせいで2人はどこかぎこちなくなってしまい、お互いに顔を真っ赤にしている。
「レインさん?」
 ぴたりと足を止めたレインを不思議に思って舞がくるりと振り返ると――触れるだけのキスをレインがしてくる。
「いきなりすみません。何だか舞さんがあまりに可愛くて、つい‥‥」
 顔を真っ赤にしながら呟くレインに「謝らないでもいいですよ?」と舞がくすっと笑って言葉を返してきた。
「‥‥ボク、嬉しかったですから」
 舞の言葉にレインは少し目を丸くして「もう一度、キスしても良いですか?」と今までよりさらに顔を赤くしながら舞に問いかける。
「レインさん‥‥その、そういうのは、出来れば聞かないでほしいなぁ‥‥とボクは思います‥‥その、いいです、よ?」
 舞の許可が出たことでレインは舞を優しく抱きしめながら先ほどよりも長いキスをした。クリスマスには少し早いけれど、どんなカップル達よりも甘い日を過ごしたのは彼らかもしれない。

END


―― 登場人物 ――

ga9279/レイン・シュトラウド/15歳/男性/スナイパー

―― 特別登場人物 ――

gz0140/室生 舞/15歳/女性/オペレーター訓練生

――――――――――

レイン・シュトラウド様>

こんにちは、いつもご発注ありがとうございます。
今回はクリスマス関連と言う事でいつもより甘めにしてみた‥‥つもりですっ。
さりげない優しさを見せるレイン君にドキドキしつつ執筆させていただきました。
ご満足して頂ける内容に仕上がっていれば幸いです。

それでは、今回は書かせて頂きありがとうございましたっ。

2009/12/18
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2009年12月18日

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