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『『奇跡の起こる日に』 』
アーク・ローラン(ha0721)

 12月24日。
 その特別な日に、アレハンドロへのお使いの依頼を受けることが出来たのは幸運だったかもしれない。
 物資を運ぶだけのその仕事は、人手は必要だけれどさほど時間はかからない。
 仕事を終えた後は、翌日まで自由に過ごしていいそうだ。
「来てくださるでしょうか……」
「寧ろ、着てくれるかどうか」
 寒空の下、リリー・エヴァルトとアーク・ローランはブリーダーギルドの前で、友人達を待っていた。
 自らの手を重ねて白い息を吐いているリリーを見て、アークはギルドの中に入っていてと、声を掛けようとした。
 病弱な彼女を外に立たせておきたくはないから。でも、その瞬間……。
「これで満足か」
 不機嫌そうな声が響いた。
「……ブレンス、さん?」
 近付いてきたサンタの男に、リリーが目を瞬かせながら尋ねる。
「見れば分かるだろ」
「見て分からないから聞いてるんだよ」
 言って、アークは思わず笑い声を上げた。
 サンタの衣装を着てくれないかと、飲みの席で頼みはした。
 リリーと一緒にプレゼント選びをしていた時にみつけたサンタの衣装を一緒に送りつけたりもした。
 だけれどそれは、帽子と真っ赤な上下の衣装だけだったのに。
 目の前に現れた男、ブレンス・デアルヌは、真っ白で立派な鬚に、真っ白な眉毛もしっかりと顔にくっつけている。そして大きな白い袋まで持っており、完全に年寄りサンタだった。
 声を聞かなきゃ誰だか分かりはしない。分かりっこない。
「あんな中途半端な格好で、素顔を晒せるか」
 すっごく不機嫌そうに顔をそらすが、着てきたということはそこまで本当に嫌がっているわけではないようだ。
 何より、自分達は変装していた方がいいとも思ってのことだろう。
「こ、こんにちは……」
「ティニナも一緒だよ!」
 ブレンスの後からひょっこり顔を出したのは、ルサナ・ラルソウド。そして彼女の被っている帽子の中から、小さな妖精――ティニナ・レイソナリが顔を出す。
「お久しぶりです。……ルサナさんとティニナさんも、サンタですね」
「出ておいで」
 リリーは微笑みを浮かべ、アークはブレンスの後に隠れているルサナの腕に手を伸ばして、引っ張り出す。
「きゃ……っ」
 ルサナは皆の前に引っ張り出されて、顔を真っ赤に染める。
 彼女はサンタの帽子に、サンタのミニワンピース姿だった。靴も布製の赤と白色の可愛らしいサンタブーツだった。
「ブレンスさんが着なきゃダメだって……!」
「ティニナもティニナも〜」
 ティニナもルサナの頭の上で、お揃いのサンタ服のミニミニバージョンを着ていた。
「ブレンス……恥ずかしいから2人を道連れにしたのか。でも2人とも、とっても可愛いよ。ね、リリー」
 アークの言葉にリリーは目を細めながら頷いた。
「凄く可愛いです」
「じ、じゃあとで服交換しましょーっ、は、恥ずかしくて」
「リリーに薄着させたらダメだよ」
 アークがそう言うと、ルサナは首を縦に振る。
「わかってます。だからアークさんにお願いしてるんです」
「……ん?」
「こういう服装凄く似合うって皆さんが言ってましたから! この衣装フリーサイズですしーっ」
「そうですね。アークさんにも似合いそうですよね」
 リリーがほんわりと自然に言った。
「い、いやフリーサイズっていっても、俺の身長じゃそのスカート短すぎるんじゃ……」
「長さではなく、寧ろ穿くことを否定したらどうだ!? 女装の趣味もあったのか。ったく、お前の服の趣味ときたら……」
 ブレンスはなにやら1人ぶつぶつ呟きながら、ギルドの中に入っていく。
「趣味じゃない。決して」
 そう言うアークだが。
 だけれどなんだか、自然に女装する流れになることが多くて。
 これから行く先の姉妹にも、その姿を見られていることから、なんだかそういう流れになりそうな気持ちがあるような、ないような……。
「それじゃ、行きましょうか」
 くすくす笑っているリリーに、アークは頷いて。
「交換……交換……っ」
「ルサナの方が似合ってるから、絶対」
 赤くなっているルサナの腕を引っ張り、リリーに渡して、ギルドの方に歩き始めた。

    *    *    *    *

 日が暮れる前に仕事を終えた5人は、アレハンドロを発ってとある集落へと向かう。
 エカリス側に位置する、のどかな集落だ。暴走エレメントやモンスターが襲来することも滅多にないという。
 広い庭を持つ家々が立ち並んでおり、その1つ――小さな平屋のブリーダー用の貸家の前で5人は立ち止まる。
「男は入れないって言われたら、煙突から入らなきゃね」
 軽い笑みを浮かべながら、アークは小さな家のドアをノックした。
 しばらくして……。
「いらっしゃい!」
 玄関から顔を出したのは、長い黒髪の女性、ミリア・クリアリアだった。
「こんばんは、元気?」
「お久し振りです」
「こんばんはっ」
「こんばんは〜」
 アーク、リリー、ルサナ、ティニナが挨拶をして、ブレンスは後方で軽く会釈だけする。
「お久し振りです。よく来て下さいました。まあ、サンタさんが沢山。素敵です」
 ミリアはドアを大きく開けて、皆を迎え入れる。
 玄関を入ってすぐ、居間がある。
 大して広くはない部屋だ。
 建物も新しくはないけれど、丁寧に掃除がされており、テーブルには真っ白なテーブルクロス。花瓶には色とりどりの花が活けられている。
 壁も色紙や綿で飾りつけられていて、隅には小さなツリーが飾られている。
「ツリーはいらないと思ったんだけどね。ツリーみたいな人いるし」
 キッチンから苺のケーキを持って現れたのは、フュラ・パンナリナだった。以前より髪が短い。そしてシャツにズボンといった格好は、以前よりも洒落っ気がなく、少年のような出で立ちだった。……だけれど、その髪には、髪にだけ可愛らしいお花の髪飾りが挿してあった。
「ツリーみたいな人って……もしかして俺のこと?」
「もちろん」
 アークの問いに、フュラは真顔で答える。その直後、同時に軽い笑みを浮かべた。
 それからフュラはリリーの方へと顔を向ける。
「いらっしゃい。忙しい時に、来てくれてありがと……」
「今日は特別な日ですから」
 リリーは優しい笑みを見せる。 
 こくりと頷いて、フュラはケーキをテーブルに置くと、椅子を引いた。
「どうぞ」
「ありがとうございます。でも、準備手伝いますよ?」
「大丈夫です。もう殆ど準備終わってますし。今日は皆さんをお持て成ししたいんです。……感謝とお礼の日ですから」
 フュラが姉、ミリアを見るとミリアは微笑んで頷いた。
「はい」
 と、リリーも微笑んで席に着く。
「ルサナ、隣来る?」
 アークはリリーの隣に歩きながら、入り口で突っ立っているルサナに微笑みかける。
「また女の子に囲まれようとしてる。ルサナさんはこちらへどうぞ。サンタさん?はその隣へ」
 フュラがルサナに歩み寄って、リリーの向かいに招き、その隣にサンタブレンスを呼んだ。
「すまない」
 しわがれた声を出したブレンスに、リリーとアークが小さく笑う。
 どうやら誰だか知られたくはないらしい。とはいえ、ブレンスとフュラ、ミリアはさほど殆ど面識がないのだが。
 以前ならこういう席にはあまり着かず、ルサナの護衛として後方で立って見守っていることが多かったブレンスも、少し変わった。
 全員が席について、ティニナがルサナの帽子の中からちょこんとテーブルの上に下りると、ミリアがシャンパンを持って現れてグラスに注いでいく。
「アルコールは殆ど入ってないわよ。酔った振りして変な行動しないでよね」
 フュラはアークのグラスに注ぎながらそう言う。
「なんかフュラ、さっきから随分厳しいね?」
 アークが笑みを浮かべながら問いかけると、フュラよりも先にミリアが答える。
「久し振りに会えて嬉しくて仕方ないみたい」
「お姉ちゃんっ。……あ、うん、皆が来てくれて凄く嬉しいのは本当です。ツリーさんも」
 フュラはぺこりと頭を下げると、一番端の席に腰掛けた。
 ミリアも彼女の向かい――ブレンスサンタの隣に腰掛けて、グラスを持ち上げた。
 そして。
「メリークリスマス」
「メリークリスマス!」
 笑い合って乾杯をする。
「めりくりー。えい、えいっ」
 ティニナは飛びまわって、彼女用に用意された小さなグラスを全員のグラスに重ねていくのだった。

 ローストビーフが花の形に巻かれていたり、鳥の唐揚げを使った料理も数種類。
 ケーキは、苺に、チョコレート、チーズケーキの定番の三種類。
 サラダはポテトにカボチャに野菜に、更にフルーツサラダまで作られていて、まるでお花畑のようにテーブルの上は綺麗に彩られていた。
「紅茶淹れますね」
 皆がケーキを食べ始めた頃、フュラが立ち上がってキッチンへと向かった。
 アークとリリーが顔を合わせ、ルサナもブレンスの方を見る。
 フュラがティーカップとティーポットをトレーに乗せて戻った途端。
「お誕生日おめでとう」
 まず、リリーが小箱を1つ、取り出してフュラに差し出した。
 フュラはトレーをテーブルの上に置いて、戸惑いの目で皆を見回した。
「全員分用意してあります。誕生日だから、最初に」
 そうリリーが言うと、フュラは首を縦に振って、手を伸ばして小箱を受け取った。
 ――箱の中に入っていたのは、水色のオルゴールだった。
 蓋を開けて、流れるのは懐かしい音。
 1年前に貰った曲「雪華―エカリス―」が、可愛らしい音で響き渡る。
「大切な、曲ですもの」
 そう笑って、リリーはその場に集まった全員に、色違いのオルゴールを配っていく。
「ありがとうございます。素敵な曲ですね」
「ティニナにも蓋開けられる〜」
 ルサナは白いオルゴールを嬉しそうに受け取り、ティニナははしゃいでいた。
 ブレンスは礼の言葉の変わりに、軽く会釈をし、ミリアは微笑みながら「大切にします」と言う。
「ありがとう、リリー」
 アークは若草色のオルゴールを受け取って、微笑みを浮かべる。
 これは1年前に『家族』に贈った曲だ。
 リリーはこれをこの場にいる全員に渡したいと、思った。
 受け取り方はそれぞれでいいけれど……。
 ただ、大切で。
 守りたいと想って。
 繋がっていたいと、願った日々と、人達がいる事を。
 開く度に思い出してくれるだけで。良い。
 そんな想いを抱きながら、喜ぶ皆の顔を、リリーは見ていた。
 そして最後に、またフュラに目を戻す。
 感慨深い表情で、フュラはオルゴールを見て、聞き入っている。
(奇跡の起こる日に生まれた貴女。これからも沢山の祝福がありますように)
 目を細めて、リリーはそっと彼女の為に祈る――。
「俺からはこれを」
 アークが取り出したのは、『ことりのぬいぐりみ』だった。
 驚きの表情を見せるフュラに、蒲公英色のぬいぐるみを差し出した。……その首には、シルバーのプレートネックレスが巻かれている。
「あ、ありがと」
 両手で受け取って、フュラは愛らしそうにぬいぐるみを見つめる。ネックレスにはぬいぐるみと同じ色の石が埋まっている。
「……素直にはしゃげばいいのに」
 小さな声で言うミリアを、フュラが軽く睨む。
「10年前とは違うんだから」
「17歳、ですものね」
 リリーがそう言うとフュラは首を縦に振る。
 笑みを浮かべながら彼女の様子を見守った後、アークは袋の中に手を伸ばして、皆の分のぬいぐるみも取り出していく。
「リリーにはこの色を」
「ありがとうございます」
 リリーが受け取ったのはリラ色のことりのぬいぐるみだった。やっぱり首にはシルバーのプレートネックレスが巻かれており、ぬいぐるみと同じ色の石が埋められていた。
 ティニナには若笛色を。ミリアには向日葵色、ルサナにはライラック、ブレンスには藍色のぬいぐるみをアークは渡していく。
「かわいーっ。お家にかえったらおへやであそぶ〜」
 ティニナは早速ぬいぐるみの背に乗っかっている。
 リリーとルサナそれからミリアは互いのぬいぐるみを見せ合って微笑みあっており、ただ1人ブレンスはぬいぐるみを前に非常に難解な表情だった。これをどうしろと? という声が聞こえてきそうだ。
「私達からもプレゼントがあるんです……!」
 そんなブレンスの心を察してか、いや察することができる娘ではないルサナが、ブレンスが持っていた白い袋を持ち上げた。
 袋の中から取り出したのは飴玉だった。透明の袋の中に赤と青と飴が3個ずつ入っている。
「これは私が作った声の変わる飴玉なんです! ラッピングはブレンスさんが……」
「余計なことは言うな」
「は、はい」
 ブレンスに言葉を遮られるも気を取り直してルサナは飴玉の入った袋を皆に配っていく。
「赤い飴は、声が高く幼くなる飴。青い飴は低く、大人の声になる飴です。こういったパーティの時の余興にでも使って下さいっ!」
「ありがとうございます。遊びだけではなくて、楽しく使えそうですね」
 リリーが微笑んで受け取る。
「ありがと。可愛い趣味してるね、ルサナ、ティニナ、とブレンス」
 アークが笑みを向けると、ブレンスは思い切り顔を逸らした。彼は終始厳しいサンタさんだった。
「ジェイリーがいたら、擽られてるぞお前」
 さっきの一言以外、ブレンスは一切口を開いていない。こういう場は苦手らしい。
「……ジェイリーさん、遅いですね」
 今、どこにいるのかも定かではない男、ジェイリー・ベイガーへは、研究所を通じて手紙を送って今日のことは伝えてある。
 返事は一言だけ『必ず行く』とだけカードで届いていた。
 不安気な目で、リリーは窓の方を見た。
 外は暗くて、何も見えはしないけれど……。
「……外に明り、灯してくるね」
 フュラが立ち上がった。
「俺も行くよ。あ、リリーはここで待ってて。外、寒いし。ジェイリー見つけたら、急いで引っ張ってくるからさ」
 アークが立ち上がり、一緒に立ち上がろうとしたリリーを止めた。
「ううん、私とお姉ちゃんだけで大丈夫だから。お客様は座ってて」
「ジェイリー様迷っているかもしれませんし、私は集落の外までちょと見に行ってきます! ほら、私サンタですし!」
 ルサナが立ち上がると、ティニナも飛び立って、護衛であるブレンスも立ち上がった。
「それじゃ頼もうかな」
 アークは再び、リリーの隣に腰掛けた。彼女を1人にしておくことは出来ないから。 

 バタバタと皆が出て行ってしまって。
 部屋にはリリーとアーク2人きりになっていた。
 2人でいることは、珍しいことではなく。
 特に緊張したりもしない、はずなのに。
 リリーの不安気な目が自分に向けられたことに、アークは戸惑いを覚える。
「……ジェイリーならきっとすぐ来るから」
 そう言葉をかけると、リリーは首を縦に振った。
 だけれど、彼女の不安は瞳の中に色濃く刻まれ、渦巻いていて。
「ジェイリーさんが戻ってきた、ら。……今度はアークさんがいなくなるような予感が、いつからか在って」
 以前、アークはリリーに『1人にしない』と約束をした。
 約束通り、ジェイリーが街に姿を現さなくなっても、彼はリリーの傍にいた。
 一緒に彼の帰りを待っていた。けれど……。
「取引、しようか」
 アークが笑みを浮かべる。
 リリーは不思議そうに瞳を揺らした。
「『リリー・エヴァルトが我儘を言うこと、笑うこと、泣くことを忘れない』なら、『俺は君のいる場所に、戻る』」
「……」
 その言葉に、リリーの瞳が揺らいで。
 続いて彼女が浮かべたのは、微笑み――だけれど、その瞳は泣き出しそうなほど切なげで。
「嬉しい、けれど」
 リリーは開いていた手をそっと握り締めた。
「取引は『契約』ですから」
 軽く目を伏せて、嬉しさと悲しみの混ざる瞳を自らの手に向けて――。
「貴方が自分から戻ってきてくれなければ、意味がなくて」
 彼女の細い声が、アークの瞳を揺らめかせる。
「これも我が儘、なんですけれどね」
 言って苦笑を浮かべるリリーに伸ばしかけた手を。出しかけた言葉を引いて。
 アークはいつものように、軽い笑みを浮かべた。
 何をしようとしたのか、どんな言葉を出そうとしたのか、自分でも判断が出来ず。
 苦笑と笑みを向け合ったまま、数秒の長い時が過ぎて――リリーが口を開いた。
「笑う事と泣く事は……忘れません、よ」
 アークは首を縦に振った。
 もう取引、契約。とは口には出来なかった。
 だけれど、約束という言葉も出せなかった。
 リリーは微笑みの中に隠れているアークの感情に、黒い瞳で迫りながら、声を出さずに呟く。
(「いつか」の為に、覚えていて貰えたら……と、思うから)
 リリーに真直ぐな感情を向けられて、言葉ではない想いを投げかけられて……。椅子に座っていなかったら、アークは理由をつけてこの場を逃げ出していたかもしれない。
 彼女の黒い瞳は綺麗過ぎる。
 彼女の真直ぐな瞳は眩し過ぎて。
 とてもとても大切な宝物。
 手を伸ばせば届く位置にあり。
 引き寄せれば、胸に抱ける場所にいて。
 抱きしめて、耳元で『ずっと傍に居る』と約束をすれば、もっと安心させられるだろうと分かっていても。
 “約束は出来ない”
 そんな嘘をつきたくもないし、嘘は、彼女には見破られてしまうだろう。
「……あ……っ」
 ふっ、と。
 リリーが笑みを浮かべた。
 2人、同時に窓を見る。
 音が響いてくる。
 鈴の音と、陽気な声。
 立ち上がって、微笑みあって。
 一緒に玄関へと向かう。
 ドアの外、冷たい空気の先に、暖かい光が見えた。
「ジェイリーさん、会いたかった……っ」
 リリーが涙が混じりそうな声を上げた。
「美人発見!」
 リリーの姿を見つけた途端、彼、ジェイリー・ベイガーが駆けてくる。
「キミの数千倍俺の方が会いたかったぜーっ!」
「ちょっと! お姉ちゃんに何する気!」
 2人の間に飛び込んだフュラごと、ジェイリーはリリーをぎゅっと抱きしめる。
「アーク、お前も俺の胸に飛び込んできてもいいんだぞ〜♪」
「……遠慮しておくよ」
 ジェイリーとアークが笑い声を上げて、フュラは腕を突っぱねてジェイリーをリリーから剥がす。
「ナンパ師同士、公衆の面前で2人で好きなだけいちゃいちゃすればいいのよ。今日はどっちが女役?」
 フュラの皮肉気な言葉は、楽しげな響きの声だった。
「キミ達2人が男役をやってくれるのなら、俺ら2人とも女役でもいいぜ」
「それも面白いかもね」
 ジェイリーとアークが微笑む。
「……ったく、見境なしなんだから」
 ぷいっと顔を背けながら、フュラが笑い出し。近付いてきたミリアも微笑んでいて。
「お、お久し振りです。お久し振りです。お久し振りです……っ!」
 ルサナはひたすらジェイリーに頭を下げていた。
「えいえいえいっ」
 ティニナはジェイリーの髪の毛に絡み付いている。
 ブレンスは相変わらず後方で、むっつりしていて……。
 それは、変わらない光景。
 久し振りだけれど、皆、少しずつ変化はあったけれど。
 変わらない、関係。絆。
「それじゃ、パーティの続き、やろうか」
 フュラが室内に手を向ける。
「ん。全員揃ったしね」
「みんなで、もう一度乾杯しましょう」
 部屋に戻ろうとしたアークは、自分の服の裾をリリーが掴んでいることに気付く。
 ……大丈夫。キミがキミでいるのなら。
『俺は君のいる場所に、戻る』
 そう、言葉を込めて、リリーの肩をぽんと叩き、共に玄関から中へ。
「今日は俺の為にこんな会を設けてくれてサンキューな♪」
「あんたの為じゃないってば!」
 フュラが軽くジェイリーを睨みながら、シャンパンを手にとった。
「ジェイリー真ん中に座る?」
 アークの問いに、当然というようにジェイリーは頷く。
「リリーちゃんの隣で!」
「変わらないですね」
 リリーはくすくす笑いながら、席についていく。

 乾杯の声が、また響き渡る。
 光がひとつ、加わって。
 部屋の明るさは数倍に増して。
 明るい夜が、続いていく。

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【ha1286 / リリー・エヴァルト / 女性 / 21歳 / ハーモナー】
【ha0721 / アーク・ローラン / 男性 / 19歳 / 狙撃手】

●NPC
ジェイリー・ベイガー(hz0011)
ティニナ・レイソナリ(hz0019)
ルサナ・ラルソウド(hz0027)
ブレンス・デアルヌ
ミリア・クリアリア
フュラ・パンナリナ

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛

ご無沙汰いたしております、ライターの川岸満里亜(マスター沢渡 心)です。
思わぬクリスマスプレゼントを私が戴いてしまったような感覚を受けました。
お2人と楽しい時間を過ごせたことをとても嬉しく思います。

お2人だけのシーンは、ちょっと手が暴走しかけたので強制的に抑え付けました(!)
現在のお2人の関係に合った描写ができているといいのですが……。

発注本当にありがとうございました。とっても楽しく書かせていただきました。
WS・クリスマスドリームノベル -
川岸満里亜 クリエイターズルームへ
The Soul Partner 〜next asura fantasy online〜
2009年12月28日

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