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『クリスマスキャロル 』
ライル・フォレスト(ea9027)

「はぁ、結構街の中もクリスマス一式だなぁ‥‥」

 小さく呟きながら寒さを凌ごうと手に息を吹きかけながらキラキラと輝くイルミネーションを見る。
 クリスマス――それは一年の中で最も聖なる日、特別な日。
 恋人達は甘い雰囲気に酔いしれながらその日を過ごす。

「あ、この遊園地――クリスマスの日は夜までしてるんだ‥‥」

 ふと目に入ったのは遊園地の案内広告、いつもは6時で閉園となるその遊園地はクリスマスの日だけ夜の11時まで営業するのだとか。

「あ、でもこっちのクリスマスライトショーも捨てがたいかも‥‥」

 別の広告には植物園をクリスマスっぽくライトアップするという案内もあった。
 それぞれの場所は正反対、両方に行く事は無理なのだが――あなたはどちらにいきますか?

視点→ライル・フォレスト

「う〜ん‥‥どっちにしよう」
 ライル・フォレストは二枚の案内広告を交互に見比べながら遊園地に行くか、それとも植物園に行くかを悩んでいた。
「どっちも捨てがたいけど、行くなら遊園地かな♪」
 結局ライルは遊園地に行く事に決めた、賑やかな場所が好きなライルは色々な人で騒いでいる遊園地の方へと惹かれたのだろう。
「でも、1人は寂しいから十四郎誘ってみよっと」
 せっかくのクリスマスに男からの誘いで悪いけどさ、ライルは言葉を付け足しながら来生 十四郎へと連絡を入れて遊園地へと誘ったのだった。

 ライルと十四郎が遊園地へとやってきたのは日が暮れかけた夕方だった。折角綺麗なイルミネーションがあるのだから、と夕方から来て閉園ぎりぎりまで遊ぼうと2人で決めていた。
「そういえば、俺ってこういう所に来るの初めてだからあそこの人に入り方とか聞きに行こうよ」
 ライルは「入場券とかフリーパスとか買えばいいのかな?」と呟きながら入場口に立っている少し派手な服を着た男性へと話しかける。
「ねぇ、どうすれば遊園地で遊べるの?」
 ライルが男性に問いかけると「まずは、あちらの窓口で入場券を購入して下さい」とにっこりと営業スマイルで言葉を返される。
「入場券だけでも幾つかのアトラクションは楽しめますが、フリーパスの方をご購入されると園内の全てのアトラクションに入る事が出来ますので、フリーパスの方がお得かもしれませんね」
「それじゃ、フリーパスの方を買うか」
 十四郎が自分の財布からお金を取り出そうとする。
「ストップ!」
 慌てたライルは少し大きめの声で十四郎へと言葉を投げかける。逆に十四郎は驚いたのか目を丸くしながら「な、なんだ?」と言葉を返してきた。
「十四郎の分の代金は、誘った俺が払うね」
 ライルは呟きながら自分の財布からお金を取り出す。十四郎の分まで払う、これは誘いをかけた時から決めていた事で、ライルも譲るつもりはなかった。
 そして2人分のフリーパスを購入して1つを十四郎へと渡す。
「気を遣わなくてよかったんだぞ」
 苦笑しながら言う十四郎の言葉に「いーの、さ、楽しもう!」と言葉を返して2人は遊園地の中へと足を踏み入れたのだった。

 遊園地の中へと入ると同時に2人の視界に入ってきたのは大きなクリスマスツリーだった。赤、青、白、黄、色々なライトが明滅を繰り返してオーナメントも通常のツリーより数倍のものが使われていた。
「出来れば、こういうのに乗りたいんだけどいいかな?」
 ライルがきらきらとした表情で見せてきたのは園内の案内パンフレットに載っているアトラクションの1つ、見るだけでもかなり怖いと分かるジェットコースターだった。
 そのパンフレットを見た後、十四郎は何かを考えるようにジッとパンフレットに見入っている。
「あ、もし嫌なら別に無理して乗らなくてもいいよ?」
 黙ったままの十四郎に少し不安になったのかライルが話しかけると「いや、大丈夫だ」と十四郎は短く言葉を返してくる。
「それじゃ、乗ろっか♪ えぇと、何処かなー」
 きょろきょろとライルは周りを見渡しながら目的のアトラクションを探し始める。
「えぇー、何処にあるんだろ? この辺のはずなんだけどなぁ」
 ウロウロとしているうちにライルが人とぶつかってしまう。
「すまない、ほら、こっちに来い。あんまりうろちょろするな、そんなにうろうろしなくてもジェットコースターは逃げないだろうが」
 呆れたような口調で十四郎が少しだけ口うるさく言うけれど「ごめんごめん」と楽しくてしょうがないのか、ライルはにこにこと謝ってくる。
 そして2人が目的のジェットコースターの所へやってくると、乗り終わった女性だろうか、泣きながら「もうこんなの乗らない」と涙声で呟いている。
「へぇ、結構面白そう。ほら、早く並ぼう」
 ぐいぐい、と十四郎の腕を引っ張りながらライルは列へと並び、自分達の番が来るのを待っていた。
 そして10分後、ライルと十四郎の番がやってきて一番後ろの席へと案内される。
「ちゃんとベルトをした後に安全装置を下げてくださいね」
 女性係員がジェットコースターに乗り込んだ客全員の安全を確認すると手を軽く挙げ、その後に『ブー』と音が響き渡り、ガコン、と音を立ててジェットコースターが動き始める。最初に高い所まで上った後に急降下して、その後には回転が二回連続でやってきて、再び急降下。ライルは楽しそうに笑っており、隣の十四郎が固まっている事に気がつく事はなかった。ジェットコースターが終了した後「あー、面白かった♪」とライルは大きく伸びをするのに対して十四郎は放心状態になっており、漫画的な例えをするならば魂が半分以上抜けかけている、そんな感じだった。
「次は何に乗ろうかなー」
 パンフレットを見ながらライルが楽しそうに呟いていると「悪いが、少し休憩させてくれ」とげっそりとした表情の十四郎が話しかけてきた。
「いいよー、時間はまだまだあるし、ちょっと休憩しよっか」
 ライルが呟き「何か買ってくるよ」と歩こうとすると「いや、俺が買ってくるからいい」とライルに座っているように促す。
「誘ってもらったお礼に飲み物くらいは奢らせてくれ」
 十四郎はそれだけ告げると飲み物や軽食の売っているフードコートへと歩き出したのだった。
「次は何に乗ろうかな〜」
 十四郎が飲み物を買いに向かった後、ライルは再びパンフレットへと視線を落とした。パンフレットの中にある『大人気アトラクション』と書かれた所には先ほどのジェットコースター、子供などにも人気の空中ブランコ、ウォータースライダー、そして観覧車が載っていた。
「うわぁ、これ綺麗だなー、最後に乗りたいかも」
 空を見上げればオレンジ色だった空は漆黒へと姿を変えており、あちこちできらきらと輝くイルミネーションが見られる。このイルミネーションを高い所から見下ろせばどれだけ綺麗だろう、考えるだけでもライルはわくわくとしていた。
「少し待たせたな」
 2人分の飲み物と軽食を持って十四郎が帰ってきて「ううん、パンフット見てたから」とライルは言葉を返した。
「ねぇ、次はこれに乗ろうよ」
 ライルは先ほどまで見ていたページを十四郎へと見せる。すると十四郎は苦笑しながら「だったら早く食っていくか」と言葉を返してきた。
 それから2人は空中ブランコ、ウォータースライダーなどありとあらゆる絶叫系に乗りつくした。その度に十四郎は放心状態となっていたのだけれど。
 その後、閉園時間も迫ってきた事から最後に観覧車に乗る事に決めた。
「俺‥‥こんなに遊んだの、生まれて初めてかも。今まで賑やかな場所には縁がなかったし一緒に遊んでくれる人もそういなかったし‥‥」
 窓に手を当てて外を見ながらライルがポツリと呟く、その表情から今日は本当に楽しかったと感じている事が十四郎にも伺えた。
「うわ、それにしても綺麗だな‥‥まるで宝石箱を見下ろしてるみたいだ」
 ライルの言葉に十四郎も外を見る、確かにきらきらと明滅を繰り返すイルミネーションが宝石のように綺麗で見とれるのも理解できる。
「今日は一緒に遊んでくれて、遊園地に付き合ってくれてありがとな!」
 にぱっ、と笑ってライルが言葉を返すと「こっちこそ誘ってくれてありがとな」と十四郎が言葉を返し、観覧車から降りた後、それぞれ家へと帰っていったのだった。楽しい思い出を胸に秘めて。


END

―― 登場人物 ――
ea9027/ライル・フォレスト/26歳(52歳)/男性/レンジャー

ea5386/来生 十四郎/34歳(34歳)/男性/浪人

――――――――――

ライル・フォレスト様>
初めまして、今回執筆させていただきました水貴透子です。
今回はご発注をありがとうございました!
内容の方はいかがだったでしょうか?
少しでも面白いと思ってくださるものに仕上がっていれば嬉しいです。

今回は書かせて頂き、ありがとうございました!

2009/12/27
WS・クリスマスドリームノベル -
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2009年12月28日

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