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『太陽は東から昇りて、魔王は常に降臨す 』
白虎(ga9191)

あけましておめでとう。
今年もどうぞ宜しくしてあげるから感謝しなさいよ。

「つまんないなぁ」
フリル付きの天蓋がついたベッドの上でパタパタと足を動かしながらキルメリア・シュプール(gz0278)がため息混じりに呟く。
お正月という事でラストホープを離れて、彼女は自宅へと帰っていた。
いつもは傭兵家業であまり一緒にいられない母親もお正月くらいは、と考えていたらしいのだが‥‥急な任務が入って、キルメリアは1人のお正月を過ごしていた。
「お屋敷には誰もいないしなぁ」
お正月という事で彼女の屋敷で働く女中達は全員休暇を貰っており、屋敷にはキルメリアが1人ぽつんといるだけだった。
「何処かに遊びに行こうかな、それとも誰かを呼ぼうかな」
そう呟く彼女の表情には『どんな悪戯をしてやろうかな』と企んでいる魔王の笑顔が浮かんでいたのだった。

視点→白虎

 キルメリア・シュプールの自宅前にて立つのは最近しっと団総帥としての威厳を少しだけ失いつつある『マジ恋☆しっと団総帥』の称号を持つ少年・白虎だった。
「やはり予想通り暇を持て余していたにゃ♪」
 ふふん、と白虎は呟き、そして背後などをきょろきょろと見渡す。今回、キリーの家に来た事は誰にも知らせていない。むしろしっと団員や関係者に知られてしまうと、とても面倒な事になってしまうので白虎はお忍びで来ていた。
「あけまして‥‥おめでとうっ!」
 キリーの家の前で『誰にもバレなくてよかったにゃ』と心の中で呟いていると同時に背後から声が聞こえ、それと同時に首にとてつもな痛みが走る。
「にゅああああ‥‥」
 声の主は勿論この大きな屋敷で1人でお正月を過ごしていたキリー、そして白虎を襲った痛みはキリーのラリアットによってもたらされた痛みである。
「新年早々こんな事かにゃー! 折角1人で寂しいキリーお姉ちゃんを誘いに来てやったというのに‥‥!」
 白虎の言葉に「え?」とキリーは目を瞬かせた後に一瞬だけ魔王の微笑を見せ、その後は不自然なほどににっこりと天使の笑顔を見せた。
「そうなの? それなのに私ったらごめんね? どこかに遊びに行く?」
(「この笑顔が素敵に怪しいのにゃ‥‥ここで気を抜いたらボクは大変な事になりそうな気がするのにゃ」)
 心の中で白虎は呟きながらも「折角だから初詣に行くのにゃ♪」とキリーに言葉を返したのだった。
「初詣か、そういえば行ってないなぁ‥‥本当は今日お母さんと行く筈だったけどお仕事が入ったみたいだし‥‥」
 しゅん、としながらキリーは呟き「ちょっと粗茶でも飲んで待ってなさいよ、準備してくるから」と言葉をつけたし、白虎をリビングに残して自室へと向かっていったのだった。
「‥‥粗茶って」
 白虎はテーブルの上に置いてある『粗茶』を見て絶句する。何故なら茶葉だけが置いてあり『お湯は自分で沸かしなさいよね』とメモが残されていたからだ。
「お、お茶はいいのにゃ」
 白虎は呟くとふわふわのソファに座ってキリーの準備が終わるのを待っていたのだった。
 それから30分後、キリーが準備を終えてやってきたのだが「馬鹿!」と何故か白虎は叩かれてしまう。理不尽な行動に白虎が「な、な、何なのにゃ!」と抗議するのだけれど‥‥。
「準備お疲れ様、くらいの気持ちでお茶くらい淹れてなさいよね!」
(「そ、そう来たにゃー!」)
 何故か出発前からぐったりと疲れながらも白虎とキリーは初詣に出発するのだった。

「ウザっ‥‥」
 あれから神社に到着した2人だったけれど、人の多さにキリーが小さく呟いた。恐らく皆が初詣に来ているのだろうけれど、その人の多さは半端なく小さな2人は少し油断すれば逸れてしまっても可笑しくはない。
 そしてお参りをする為に長蛇の列となっている一番後ろに並び、白虎たちの番がやってきたのは20分後くらいだった。
「今年こそは全てのカップルを爆破粉砕出来ますように‥‥!」
 白虎は両手を合わせて真剣に願い事をしているのだが、願われた神様としては少しだけ困ってしまう願い事でもあった。
「‥‥それからキリーお姉ちゃんと‥‥いやっ何でもない!」
 しかし地獄耳のキリーは自分の名前が出てきた事にピクリと反応して「何、あんた私を爆破しようとしてンのよ」と耳を抓られながら話しかけてきた。
「お、お姉ちゃんを爆破なんてしないのにゃー‥‥」
「爆破とか何とかの後に私の名前言ってたじゃない、つまりあんたは私に爆破して欲しいわけね――このやろう、あんたを爆破してやるわよ?」
 勝手な被害妄想で白虎は新年早々飛んだ災難である。
「違うのにー‥‥そういえばお姉ちゃんは何をお願いしたのにゃっ?」
 白虎が呟くと「は? 私のお願い?」とキリーが聞き返してくる。
「そうね、皆が私に逆らわないでほしい、とお願いしたわね」
(「‥‥酷いお願いなのにゃ」)
「あんた、酷いお願いとか思ったわね。あんたで餅ついてやろうか」
 ぎろり、と睨まれて「え、遠慮するのにゃー」と白虎はそそくさと視線を逸らす。
「そういえば初詣と来ればおみくじよね、去年は小吉だったから今年は大吉出るといいなぁ」
 キリーの言葉に「しっと団に大吉など不要にゃ! むしろ大凶出ろ!」と勢いよくおみくじ箱に手を突っ込んでおみくじを引く。
「‥‥大吉じゃん、私は何かなー‥‥はぁ?!」
 続いて引いたキリーのおみくじは『凶』という不吉な文字が現れている。
「あんたのせいで私が凶じゃない! 鏡餅にでもなってなさいよ、馬鹿っ!」
 白虎の髪の毛に『凶』のおみくじを括りつけながら「寄越しなさいよ!」と白虎の大吉おみくじをひったくっていた。

 白虎のおみくじ(元はキリーのおみくじ)
健康・病面は問題なし。しかし他者から受ける怪我に注意せよ。
旅行・遠くに行くべからず。同行者に問題あり。
恋愛・予測不能。

 キリーのおみくじ(元は白虎のおみくじ)
健康・運動すれば問題なし。
旅行・全て思い通りになるでしょう。
恋愛・あなた次第です。

「そういえば、ああいう服もいいにゃ〜♪ お姉ちゃんは着てみたい?」
 白虎が指差したのは巫女服を着て参拝客に笑顔を振りまいている女性だった。
「あ、本当だ。巫女服って可愛いよね」
 風情があるとでもいうのだろうか、独特の雰囲気を持つ巫女服を確かにキリーも可愛いと思っていた。
「とりあえずお参りもおみくじもしたし、帰る?」
「ふふふ、甘いのにゃ。お姉ちゃんはまだまだ甘いのにゃ‥‥この後はお年玉を貰うのにゃ!」
 白虎の言葉に「はぁ? あんたまさか私に請求してるんじゃないでしょうね」と拳を握り締めながら言葉を返すと「ち、ちがうにゃ!」と慌てて白虎が呟く。
「お年玉は‥‥貰うんじゃない、持っている大人から巻き上げるものだ!」
 そう言いながら「こんにちはにゃー」と白虎は桃色いっぱいのカップルへと話しかけて見事にお金と屋台のとうもろこしをゲットして帰って来た。
「‥‥貰ってきたにゃー! 2人でいる事を言ったら2人分くれたから一緒に食べるのにゃ」
 とうもろこしを1つキリーに渡しながら話しかけると「ありがと」とキリーはお礼を言って一口とうもろこしに噛り付く。
「この調子で沢山の大人から、カップルからお年玉を巻き上げるのにゃー!」
 白虎は『ぐっ』と拳を握り締めながら人ごみの中へと駆けて行ったのだった。
「元気ねぇ‥‥」
 とうもろこしをまた食べながらキリーはカップル達の前で良い子を演じる白虎を見ていたのだった。

 結局、2時間ほどの時間をかけて白虎が色々な食べ物やお年玉と称して巻き上げたお金が結構な額になっていた。
 そのお金でずらりと並ぶ屋台の食べ物を買い漁り、その後に『初商』と大きな看板を掲げている店へと入ってゲームなどを見に行った後にキリーの自宅へと帰って来た。
「折角だから私がお茶でも淹れてあげるわよ、感謝して這い蹲りながら入りなさいよ」
 何時もの如くキリーの毒舌に白虎は苦笑しながらも「お邪魔するのにゃー」と呟きながら屋敷の中に足を踏み入れたのだった。
 その後、2人は買ってきた屋台物を食べたり、初売りで安くなっていたゲームなどをしてお正月を過ごしたのだった。

『感謝してあげるわよ』

 遊びつかれて眠ってしまった白虎の頬に赤マジックで書かれた文字、それに白虎が気づくのはこれより数時間後の話である。


END

―― 登場人物 ――

ga9191/白虎/10歳/男性/ビーストマン

―― 特別登場人物 ――

gz0278/キルメリア・シュプール/13歳/女性/サイエンティスト

――――――――――

白虎様>
こんにちは、いつもお世話になっています。
今回はお正月ノベルにご発注いただき、ありがとうございました!
内容の方はいかがだったでしょうか?
相変わらずの魔王っぷりになってしまいましたが、楽しんでいただけると幸いです。

それでは、今回は書かせて頂きありがとうございましたっ。

2010/1/2
WS・新春ドリームノベル -
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2010年01月04日

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