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『True feelings hidden in the lake 』
アンドレアス・ラーセン(ga6523)

「Trick or Treat?」
 歩き出した道には数々のカボチャたち。
 ゆらゆらと揺らめきたつのは色とりどりの蝋燭の炎である。
 舗装は黒で、夜にはまったく見えなくなると知りながら。
 蝋燭の明かりが星のように煌けば、そこは一面夜空と変わる。

 目指すのはどこなのだろうか。
 目の前にある、朧気な古城? それとも‥‥。

 何かが始まる、この一日に。
 せせら笑うのは巨大な月に化けた、カボチャのお化けだった。



「見たいものあるか? お望みのままに、俺の天使様」
 悪魔が誘惑したのは、夜の街だった。
 天使が降り立った、古城へとそっと忍び寄り、魅惑の囁きをかける。
 今宵は隠さずとも、その羽を咎める者は居ない。
 今にも白い羽を貪り食らいそうな瞳は、偽りの色で隠されて。
 天使は、悪魔に付き従うだけ。
 そう、道化の宴へと。
 今宵の自分の役回りを演じに、二人は舞い降りたのだった。


「カノンは何処に行きたい?」
 飛び出したのは、街のカーニバル。
 水面に映し出される仮面たちを駆け抜け、遠くへ連れ出そうと舵を握る。
 あの城から連れ出して、今宵の宴に参加して。
 だけれども‥‥自分の手の内に隠したくて。
 矛盾が木魂する中、今宵の道を選んでいく。



「わぁ、すごいですね」
 紅い瞳を大きく広げて、カノンは縁へと乗り出した。
 それに合わせて、船はちょっとだけ傾く。
「危ないぞ? ほら‥‥落ちないようにしなきゃな」
 後ろから抱きしめるも、船から見る街の景色に彼は夢中だった。
 古い路地も、メイン通りも、この街ではすべて水路で繋がっている。
 建物の間から出て、拓けた視界の先に見える大聖堂がライトアップにより抜き出されて幻想の世界へと誘ってくれてる。
 通りを歩く人たちも、深い色のマントを羽織、白いマスクをして。
 漕ぎ手へと進路を任せ、アンドレアスはそっとカノンを抱きしめる。
 縁にかけている手に、そっと自分の手を重ね合わせながら。
 キラキラとした瞳で振り返ってくる彼に、目を細めながら満足して。
 このまま、自分の物になってしまえばいい、心の奥底で願う。
「あ、アスさん?」
 腕の強さにそっと身を捩じらせても、アンドレアスの腕の中に捉われたまま。
 悪魔に捉われた天使は、どこに?
 行き着く先を知るのは、波次第なのだろうか。
 ゆらりゆらりとゴンドラは揺れ、水路を進んでいく。

 振りほどけそうで振りほどけない手に、カノンはそっと考える。
 彼は守ってくれるために‥‥それとも、自分を捕らえるために? と。
 強く抱きしめられ、見つめることが出来るのは外ばかり。
 決して振り向けない、彼の顔。瞳。
 あの、冷たいながらも暖かい光を放つ彼の青い瞳を、覗き込みたかった。
 そうすれば、この胸の鼓動の正体もわかる気がして。
 ちくりと首筋に痛みが広がる。
 自分は食されるのだろうか。
 道化の衣装の悪魔の名の下に、天使は、食されるのだろうか。
 血が、逆流していくのを感じる。
 そっと捉われているとは違うもう片方の手を首筋に当てると、熱くなった部分が腫れ上がっているのを感じる。
 つけられたのは、咎の印。
 それはどちらへの印なのか。


 長い暗部を抜けると、そこから澄み渡って見えるのは一面の星空だった。
 上ではなく、下へと広がる星空。
 星の瞬きを見つめ、きつかった束縛から解放される。
 しかし、手は捉われたまま。
 そっと振り返ると、あの優しい光が見つめていた。
 彼の瞳は、迷いがない。
 時折見せる、迷いの欠片すらも今は無い。
 それに安心しつつ、静かに瞳を見つめる。
 星空の海よりも、ずっとずっと透き通った北の海の色の瞳を。

 アンドレスは囁く。
 耳に響く低音で。
 少し高めのカノンに対し、テノールの響きで彼の脳裏に焼き付ける。
「兄のように、親友のように‥‥恋人のように、愛してるぜ」
 それは、まるで呪文の様に彼を捉え、戒めの十字架を消し破る。

 蒼と紅、先に捉われたのはどちらだろうか。
 そして、どちらが先にひれ伏すのだろうか。
 己の持つ欲望に。
 白かった薔薇を、黒く染めていくその想いは‥‥。
 どこまでも、どこまでも続いていくだけで。
 想いは船を捨て、自らの羽を使い星の海へと堕ちていく。
 黒い羽で包み隠して、この、目を引いて止まない白い羽を食らいつくすかのように。




「‥‥さん。‥‥スさん。‥‥アスさん!」
 幾分強い衝撃に、アンドレアスは重い瞼を開いた。
「アスさん‥‥。みなさん待ってますよ?」
 起きた様子をほっとしながら見つめ、カノンは少し困ったような顔をしていた。
 まだはっきりしない様子で、ガシガシと頭を掻くアンドレアスに溜息をつく。
「ほら、約束していた時間になっちゃいますよ?」
「んあ‥‥」
 目の前に居る極上の天使に、幸せそうな笑みを漏らす。
 そんな蕩けそうな微笑に、カノンは思わず赤面をしてしまった。
「と、とにかく僕は約束どおり起しに来ましたからね? アスさん、時間ないですから!」
 いつも頼りがいになる人の子供のような笑みにたじろぐものの、取り乱していてはいけないと部屋の外へと急ぎながら。
 そんなカノンを寝ぼけ眼で見つめ、アンドレアスは夢の片鱗を思い出していた。

 白い首筋に、落とした咎の印。
 潤った様子で見つめてくる紅い瞳に囚われた意識。
 そして、共に堕ちた、星の海。
 這い上がろうにも、手をかける陸はなくて。
 悪魔が白い羽を全て食らいつくした、そんな夜を。

「っ!!」
 手が、口を覆う。駆け上ってくる血が、全身を熱くさせる。
 声が出そうになるのをすんでで止めると、そっと重い息を吐く。
 頬をつねると、そこには鈍い痛みが広がって。
 今が現実だと、アンドレアスは落ち着きを取り戻した。

 それでは、さっきまでの片鱗は?



 大きな月が、笑いかけてくる夜。
 住人たちが魔法をかける。
 古の魔法は、あまりにも誘惑的で。
 悪魔は付け入る隙を逃さないように見張っていたのだった。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ga6523 / アンドレアス・ラーセン / 男 / 28 / サイエンティスト】
【gz0095 / カノン・ダンピール /男 / 18 / NPC:一般人】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 この度は発注ありがとうございました。
 いただいたお言葉は、誠に事実ばかりで。
 はい。いつもお世話になっております。
 そして、長らくお待たせしまして申し訳ございませんでした。
 何度も、何度も考え抜いて書き直した結果、結論がコレでした。

 つまり、『うりゅ式』はいつものでいいって事ですよね?
 こっそり入れたカノンの気持ち、これは何と表現したらいいものやら。
 でも、それはここでのお話であって、本編には現れないちょっとした本音だったりします。

 見るものをと言いますか、文章を書く者に対し存在感を魅力で引き付けて止まない彼は今後どのような歩みを見せてくれるのでしょうか。
 思わず虐めたくなってしまうのは、きっと魅力的過ぎるからだと思います。
 彼の願いが叶う時が有るのか、それは私にはわかりません。
 きっと、それなりの価値を得るのだろうなと思いつつ、いつも落とし穴を考えさせていただいております。

 それでは、またお会いすることを願いまして。

 雨龍 一
パンパレ・ハロウィンドリームノベル -
雨龍 一 クリエイターズルームへ
CATCH THE SKY 地球SOS
2010年01月05日

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