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『Enjoy×Error Xmas 』
アレスディア・ヴォルフリート2919


招待状

 日ごろのご愛顧に感謝して
 ここにささやかながらパーティの席を設けさせていただきました
 皆様お誘いあわせの上、ご参加をお待ちしております

                   2009年 オーナー




















 高さ20階建てのホテルの最上階で行われるパーティの入り口では、ボーイが招待客を出迎える。
 招待状を貰ったからには参加しようと、相変わらず黒装のアレスディア・ヴォルフリートは、コールとルミナスと共に、ホールでルツーセとアクラの到着を待っていた。
 実際、招待状が必要な場所は最上階の会場前のため、ホテルに入ることはなんら支障無い。
「ごめんね、アレスディアさん! やっぱりどうしてもアクラは見つからなかったの」
 可愛らしいワンピースドレスに身を包んだルツーセがアレスディアの元へ駆けてくる。
「アクラ殿は別の用事があるのであろう。無理ならば仕方ない」
「うん、誘ってもらったのに、本当にごめんね」
 シュンっと肩を落とすルツーセは、今はいないアクラに小さな文句を言いながら、息を吐き出す。その様を苦笑気味に見つめながら、
「では、会場へ向かおうか」
 一同は頷き、アレスディアに続いてエレベータに乗り込んだ。











 ボーイが両端に立つパーティ会場の中は、外から見ている限りでは何かしら変なことが起こっている様子は無い。
 アレスディアは人知れずほっと息をつく。万一何か起こったときに動けない服装では都合が悪いと、今回も黒装で参加したわけだが、ソレが言い訳であることに、アレスディアは全然気がついていない。
 入り口のボーイに招待状を渡し、アレスディアは警戒半分、安心半分の気持ちで一歩会場内に足を踏み入れた。
「あ……」
 それは誰の呟きだっただろうか。
 不思議そうに振り返ったアレスディアの瞳に入ってきたのは、自分よりも少し小さい程度だったはずのルツーセの腰元。屈んだ覚えは無い。が、視界がやけに低いのは気にかかる。
「えっと…」
 柔和だが、ちょっと眉根を寄せるような微笑で言葉を捜しているルミナス。
「わぁ。どうしてかな? アレスちゃん小さくなってるよ」
 少々対応に困ったルミナスに反して、コールはぱぁっと笑顔を浮かべると、膝を折ってアレスディアの頭をなでる。
「小さく…?」
 確認するように見た自分の両手はどこかふっくらとして、小さい。明らかに子供の手だ。
「む…?」
 確かに何かしら事が起こってもいいようにと思って会場に来たわけだが、今回の騒動はまさに想定外と言ってもいいレベル。
「可愛い♪ アレスディアさん!」
 きゃ〜と、ルツーセは両手を組み合わせて、恍惚とも呼べるようなテンションで嬉しがっている。
「あ、いや、可愛いと言われても……」
 ルツーセの感激ぶりが良く分からず、自分の格好を首を動かして見回してみる。
 自分が子供になっていることは分かったが、それ以外で変わった部分は見受けられ―――
「な…なな!?」
 黒かったはずの衣装は真っ白で、しかもフリフリだ。恐る恐る両手で頭を触ってみると、左右に1つずつリボンがついていた。いわゆるツインテールである。
「これは一体!?」
 子供になるだけならばまだしも、がっつりばっちり着飾った子供服。
「…………」
 事実を認識しようとフル回転した頭はフリーズし、アレスディアの動きが止まる。
 どうしてこんなことに?
「んと、帰る?」
 止まったアレスディアの顔を覗き込み、コールは問いかける。
「あ…いや……」
 今までのクリスマスパーティのことを思い返してみれば、実に些細な悪戯だ。イロイロな仮説と持論が一通り頭の中を巡りきった後、アレスディアは吹っ切れた。
「コール殿たちに何かしら事が起こらなくて良かったとも言える。私一人のトラブルで帰るというのは、お誘いした手前申し訳ない」
 せっかく時間を作って付き合ってくれているのだ、自分はこんなことになってしまったが、彼らには楽しんでもらいたい。
 アレスディアは素直にそう感じて、このままパーティを楽しむことにした。
 パーティはブッフェ式の料理と、音楽隊が奏でる音楽に合わせて踊るホールに自然と人が分かれていた。
 身長が小さくなってしまった手前、下手に人ごみに入ると逸れてしまいそうだ。
 唯一の救いは、コールの身長がそれなりに高くて、その頭を追いかければ、足元が見えなくても追いかけられるということ。
「うわっ」
 が、追いかけられるが、リーチもかなり短くなっているわけで、追いつけるかと言われれば、少々駆け足になってしまう。
「アレスちゃん、大丈夫?」
 それに気がついたコールは足を止め、人が流れるのも気にせずアレスディアの前で座り込む。
「う…うむ、大丈夫だ。心配をかけてしまってすまない」
 アレスディアはコールに向けて、にっこり微笑む。
 誰しも幼い子供の時期というのはあるものだが、過ぎてしまえば勝手を忘れてしまう。ただ、それだけのことだ。が、何を思ったのかコールは顎に指を当てて、んー。と考え込むと、ぱっと顔を輝かせ、
「こうすればいいよね!」
 と、物凄くいいことを思いついたというノリで宣言すると、幼くなったアレスディアをその腕の上に抱き上げた。
「コ…コール殿!?」
 確かに視界も高くなり、人の流れに攫われそうにはなら無いが、いかんせん恥ずかしい。
「本当に大丈夫だ! それに、重たい故降ろしてもらえぬか!」
 ピョンと飛び降りようにも、落ちないように抱きかかえられているためソレもできない。
「気にしない。気にしな〜い」
 遠目から見たらまるで親子のように見えるかもしれない。
 ははっと笑うコールに、アレスディアは赤面したままコールにしがみついて、ルツーセとルミナスが陣取ったテーブルへと向かう。
 たどり着いたテーブルで、やっと降ろしてもらったアレスディアはほっと息を吐き、いつものように一般用の椅子に座る。
 が。
「……まさかここまでとは」
 座った自分の目線がちょうどテーブルの上に出る程度になってしまい、これでは満足に椅子に座って料理が食べられない。
「えっと…子供用の椅子を借りてきましょうか?」
「背に腹は変えられぬ…か。お願いしてもいいだろうか」
「ええ。では、ちょっと行ってきますね」
 たぶん、ルミナスがこう言い出さなければ、コールが膝の上に乗せると言い出したような気がしてならない。
 椅子を借りに行ったルミナスを見送り、アレスディアは自分に何ができるかを考える。
 料理を持ってくるくらいは出来そうだ。
「このような場でまで、世話になりっぱなしでは、やはり誘った手前申し訳ない。料理を取りに行ってこよう」
「迷子になっちゃ駄目だよ?」
「何言ってるのコールさん。幼くてもアレスディアさんだよ? 迷子になるのは、どちらかというとコールさんでしょ」
 尤もな突っ込みを返すルツーセに苦笑しながら、アレスディアは料理が並ぶテーブルへとたったと駆け出した。










 デザートが好きなことは分かっているため、メインとなる料理から、何を皿に盛っていこうか迷い、取り合えずテーブルの周りを一回りしてから考えようと、アレスディアは人の隙間から顔を突っ込む。
「これは、なかなか美味しそうだ」
 半分以上取り分けられて無くなっている大皿もあれば、出てきたばかりで山盛りの大皿もある。
 一つの皿に乗せられる量には限界があるし、胃袋にだって限界があるため、沢山料理が並ぶ中から厳選して盛る必要がある。
 ……と、そこまで難しいものではないが、やはり、好きなもの、一番自分が美味しいと思うものを食べたいと思うのは、仕方が無いことだ。
(ん?)
 人とテーブルの隙間。何やら揉めている男女一組。
 分かることは、女の方がとてつもなく嫌がっているということ。
 見た目が幼くなったとしても中身は生真面目なアレスディアだ。揉め事に回れ右できるような性格ではない。駆け足で二人に近づくと、きりっとした目つきで男を見上げた。
「理由が分からぬが、彼女は嫌がっておられる。その手を離していただけぬか?」
 一瞬、場が止まった気がした。もしかしたら何と古風な子供だろうと思われたかもしれない。
「い、いや、僕はね、お嬢ちゃん。彼女が一人で寂しそうだったから――」
「だから! 大きな世話だっつってんだろ!!」
 たいそう口汚いが見た目だけは可憐な少女は、ぶんっと手を薙いで自由を取り戻すと、最後畳み掛けるような罵詈雑言で男を追い払う。
 アレスディアはきょとんと、その様を見つめ、小首をかしげる。
「……………」
 声は、多少高いが、見覚えのある髪の色と、知っている少年に面影が残る眼差し。
「もしや、蘇芳殿……か?」
 変な緊迫感と緊張感が駆け抜ける。思い込みではあるが冷や汗まで流れた気がした。
「そのしゃべり方で、俺を知ってるって事は、まさか……アレスディア?」
 の子? と、続きそうになったが、年齢を逆算して、それはないと言葉を飲み込む蘇芳。
「理由は分からぬが、この会場に入った瞬間この姿に。それにしても、申し訳ない。蘇芳殿は男性と思っていたが、まさか女性だったとは……」
「いやいやいやいやいやいやいやいや。男だから、俺、男だから。俺も何かここ入ったら、こんななっちまったけど、ちゃんと男だから」
 否定具合の一生懸命さがなんとも哀れだが、効果は違えど、同じような悪戯を受けたのが自分だけでは無かったことに、アレスディアはちょっとだけほっとした。










 料理を乗せた皿を持ち、コール達が待つテーブルへと戻ったアレスディア。
 そこでまた、アレスディアはきょとんと瞳を瞬かせることとなった。
 何故、蘇芳は性転換などという悪戯を受けて、彼らは何の変化も無いのか。疑問を持ったまま問うてみる。
 答えたのはルツーセ。
「あれ、言ってなかったっけ? たぶん、この悪戯アクラよ。あたしは元々性別ってないし、ルミナスは対処に慣れてるし、コールさんは気づいてないと思うけど跳ね返してるから」
「……………」
 つまりは、アクラの悪戯に慣れていなかったから、その餌食になってしまった、と。
「すみませんでした。アレスディアさん。僕がもう少し早く気付いていれば、こんなことになる前に対処できたのですが……」
「いや、ルミナス殿のせいではないよ」
 なるほど。呼びに行ったときに居なかったのは、このためか。
 アレスディアの肩からとたんに力が抜け、自然と笑いがこみ上げる。
 何だか、首謀者がアクラだと分かるだけで、悪戯を許せるわけではないが、納得できてしまったのだ。
「効果範囲から出れば、元に戻れるから…帰る?」
 伺うようにルツーセが尋ねる。
 アレスディアは「いや」と首を振る。
 ずっとこのままだったらどうしようという不安は確かにあったが、それも解消された今、後は楽しむだけである。
 幼くなってしまったことを楽しむような甲斐性は、如何せんアレスディアには無かったが、ただ幼くなっただけで、後はやっぱり何も変わらない。
 アレスディアは、本当に何かしら危険が伴うパーティではなかったことにほっとしつつ、残りの時間を料理や談笑を楽しんだ。


















fin.











登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【2919】
アレスディア・ヴォルフリート(18歳・女性)
ルーンアームナイト


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 E×E Xmasにご参加ありがとうございます。ライターの紺藤 碧です。
 お届けが大変時期はずれになってしまい申し訳ありませんでした。
 アレスディア様に起こりましたErrorは幼児化でした。幼児化しましたので、お洒落もしました(笑)。大人の時はいつもの格好です。
 それではまた、アレスディア様に出会えることを祈って……

WS・クリスマスドリームノベル -
紺藤 碧 クリエイターズルームへ
聖獣界ソーン
2010年01月22日

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