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『 HANDs and BRAVe (ハンズアンドブレイブ) 』
七海・露希8300)&七海・乃愛(8295)&(登場しない)

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 時狭間の一角。
 海斗達が生活している契約者居住区と、マスターが滞在している時神の監視塔。
 丁度、その中間あたりにある、質素な休憩スペース。
 そこには、白いテーブルとソファだけが置かれている。
 ここの他にも、各所に不可解な空間はあるのだが、時狭間は広い。
 探すことに夢中になってしまえば、あっという間に迷子になってしまう。
 まぁ、乃愛と露希の場合、迷子になっても "扉" を出現させることができるので、脱出は容易いが、
 一度にたくさんのことを知るよりも、ひとつずつ、ゆっくりと時間をかけて覚えていくほうが楽しい。
 そう思うところがあるから、二人は、必要以上に時狭間をウロウロすることをしない。
 それに何より、二人は、この空間が好きだった。
 必要性も、長居する価値も見当たらない、その雰囲気が好きだった。

 ソファに並んで座る乃愛と露希。
 二人は、意見交換を含めた雑談で、時間を共有していた。

「鋏、使ったの?」
「うん。久しぶりに使ってみたくなったんだ」
「どうだった? 上手に使えた? 使い方、忘れてなかった?」
「うん。ばっちり。でも、挟んで潰すのは無理だった。海斗、すばしっこいからさ〜」
「あぁ …… 確かに。でも、結果的には、それで良かったと思いますよ」
「やっぱり、お姉ちゃんも、そう思う? 僕もなんだ〜。へへへっ」

 足をパタパタさせながら楽しそうに笑う露希。
 乃愛は、その様子を静かな笑みを浮かべながら見つめている。
 遣り取りに覚えるであろう違和感は、おそらく、二人が "素" の状態だからかと思われる。
 乃愛は、いつもの可愛らしい口調ではなく、しっとりと大人びた表情と口調になっているし、
 露希は、いつにも増して子供っぽく、何をしでかすかわからない悪戯な雰囲気も感じさせる。
 この状態こそが、二人の "素" の部分。二人の本来の姿なのだ。

「あ、そういえば、私 …… 糸の回収を忘れてました。まだ使えたでしょうに」
「あ〜。もったいないことしたね。でもさ、海斗のことだから、もう燃やしちゃってるよ、きっと」
「ふふ …… そうかもしれないですね。まぁ、代わりはいくらでもあるので構わないんですけど」
「ねぇねぇ、お姉ちゃん。でもさ、僕さ、鋏だけじゃなくて、爪も使いたかったんだよ〜」
「どうして使わなかったんですか? 換装すれば良かったでしょうに」
「そうなんだけどさ〜。ついね、ムキになっちゃって」

 二人が今話しているのは、
 先日、成り行きで引き受けてしまった海斗との疑似バトルに関することである。
 戦った時間に差異はあれど、結果として、乃愛も露希も、海斗に勝利する形でバトルを終えた。
 二人の鞄の中には、あのバトルの意味を物語るものとして、魂銃タスラムのレプリカが入っている。
 仮とはいえ、マスターと契約を締結して、時の契約者となった二人は、時狭間に出入りする正当な権利を有しているのだ。
 だから、以前のように、出入りする度、海斗たちの部屋にそれ(乃愛たちの来訪)が知らされることはない。
 部外者ではなく、れっきとした関係者になったことで、監視されることがなくなったのだ。
 つまり、時狭間の何処で何をしても、全てが自己責任ということで許される。
 何か問題が起きても、海斗たちは助けにこないという厳しい意味にも受け取れるが。

「ねぇ、お姉ちゃん」
「はい。何ですか?」
「ここでも、ありのままの自分でいられるように …… なるかな?」
「どうでしょう。でも、私達にその気がない限り、表に出ることはないでしょうね」
「僕ね、一回だけ、ちょっとだけ、外に出ちゃったことがあるんだけど。お姉ちゃんは?」
「私は、まだですね。今のところ。でも、そう遠くはない気がします。勘でしかないのですけど」
「そっかぁ …… 。でもさ、僕達って、みんなからしてみれば、タチが悪いよね。そう思わない?」
「露希。自分自身に対する否定的な発言は止しなさい。私達は、ただ …… 少し、不器用なだけですよ」
「 …… うん。そうだね。ごめん、お姉ちゃん。もう言わないよ。絶対。約束する」
「ふふ。大丈夫ですよ。心配しなくても、皆はきっと、わかってくれますから」

 時の契約者として、時狭間に出入りする正当な権利を得たこと。
 その事実があるからこそ、露希は不安を隠せずにいるのだろう。ありのままの自分を隠している今の実状が、
 何だかとてもいけないことのように思えて、罪悪感のようなものを覚えているところがあるのだろう。
 先々の不安を口にすることはつまり、それだけ、未来のことを考えているということになるわけで、
 それは、露希の中で、時狭間という場所そのものが、居心地の良い場所になりつつあるという結論にも至る。

 もしも、普通だったら。こんな身体じゃなければ。

 過去に何度も、数えきれないくらい考えた、その葛藤が不安になって出てくることは、
 心を開き、ありのままの自分でいたいと思わせる、そんな成長と変化に満ちている何よりの証だ。
 乃愛の優しくも妖艶な笑みは、そんな露希の "変化" が見て取れることへの喜びの表れかもしれない。

「僕も、使い魔 …… 欲しいなぁ」
「言うのは簡単ですよ。ちゃんとお世話できますか?」
「できるよ! お姉ちゃんとお揃い …… ってわけにはいかないだろうけど、似たようなのが欲しいな」
「そうですね。使い魔は、人それぞれですから。でも、欲しいのなら、先輩に、そう伝えれば良いでしょう」
「ん〜〜〜。大丈夫かなぁ。作ってくれるかなぁ。後輩のくせに生意気だ! とか言われないかなぁ」
「ふふ。何ですか、それ。私だって、露希と同じく、先輩から見れば後輩ですよ?」
「じゃあさ、じゃあさ、お姉ちゃんも、ついてきてよ。ねっ? ねっ?」

 乃愛の腕にピットリとくっつき、可愛い声と仕草で御願いする露希。
 乃愛は、仕方ないですねとクスクス笑いながら、露希の頭を優しく撫でた。
 ソファに座り、二人きりでお話を始めて、どのくらいの時間が経過しただろう。
 ふと、時間が気になった乃愛は、ポケットから携帯電話を取り出して時刻を確認した。
 その "時間を確認する動作" に、露希は不思議な寂しさを覚え、ふっと悲しい表情を浮かべる。
 どうしました? と乃愛が尋ねると、露希は、何でもないよと言って笑い返すのだが、実際は寂しくて切ない。
 でも、どうして、そんな気持ちになるのか、露希本人にもわからないから、何でもないと返すことしかできない。
 何て言うんだろう。そう、それは …… デート中に、恋人が時間を気にし始めた時の、あの感じに似ているだろうか。
 まぁ、露希が、そんな例えを提示するには、まだまだ、時間を要するだろうけれど。

「 …… 露希。ひとつ、聞いてもらってもいいですか」
「あっ、うん。なになに? 何でも聞くよ?」

 携帯電話をポケットに戻しながら、小さな声で乃愛は言った。
 何だか様子がおかしいな、とは思ったが、聞きたくないだなんて、思ってもいないことを言えるはずもなく、
 露希は、ニッコリと笑って、乃愛の口元をジッと見つめた。どんなお話なんだろうと、あれこれ考えながら。

「最近、同じ夢ばかり見るんです」
「ふぅん? 珍しいね? 何かを伝えようとしてるのかも?」
「小さい頃の私が歩いているんですが、その隣に、背丈も歳も同じくらいの男の子がいるんです」
「 ………… 。ふぅん? それで、それで?」
「その子と一緒にいる時の私は、とても幸せそうで …… でも、男の子の顔は、いつも隠れているんです」
「隠れてる …… ? どういうこと? その子が自分で隠してるの?」
「いいえ。空から差す白い光で、見えなくなっているんです」
「 ………… 。そうなんだ。何だか、意味深な夢だね」

 毎晩続けて見る夢の話。
 寂しそうに、切なそうに話す乃愛だが、それ以上に切ない表情を浮かべているのは、露希だった。
 すぐに、気付いたからだ。乃愛の夢の中、隣を歩いている男の子が自分であることに。
 それ、僕だよ。そう言いたい気持ちはある。そりゃあ、あるさ。でも、言わない。
 言葉じゃなくて、感覚で。いつか、そうやって思い出して欲しいと思うから。
 いや、いつか、そうやって思い出させてみせると心に決めているから。
 切なさの根源は、すぐにでも教えたい衝動と、まだ早いって踏み留ませる抑制心。その狭間にある。

 カラーン コローン ――

 計ったかのように鳴り響く鐘の音。
 それは、時神の監視塔、そのてっぺんにある時の鐘が歌う音だ。
 この鐘の音は、どこかの世界で、誰かが時兎に寄生されたことを告げる意味合いを持っている。
 つまり、仕事の時間。のんびりとお話なんて、していられない。すぐに、居住区へ移動し、
 海斗たちと合流して、どの世界のどんな人が被害に遭っているのか確認しなければ。

「行きましょう、露希」
「うん」

 すぐさま立ち上がり、乃愛は露希の手を引いて歩き出した。
 繋いだ手指を伝っていく、お互いの体温。涙が出そうになるくらい、優しい気持ち。
 ねぇ、いつも、こうやって手を繋いで歩いてたんだよ。僕が、お姉ちゃんの手を引いてたんだよ。
 お姉ちゃんは、恥ずかしいよって照れ臭そうに笑っていたけれど、僕は、手を離さなかった。
 だって、約束したから。お姉ちゃんのことは、僕が護るんだ! って。約束したからね。
 あのね、お姉ちゃん。お姉ちゃんはね …… 本当に、僕の "お姉ちゃん" なんだよ?

「きゃ! どうしたんです、急に」
「ううん。別に何でもない。ただ、前にいたいだけ」
「 …… ふふ。露希は、いつまでたっても子供ですね」

 クスクス笑う乃愛に、露希は、プゥと頬を膨らませて笑う。
 もっとゆっくり、二人でお話していたかったとは思うけれど、
 あのまま、お話していたら、我慢できなくなっていた可能性も高い。
 そう考えると、非常に有難いタイミングで鐘が鳴ってくれて、助かったかも?
 なんて、そんなことを考えながら微笑み、乃愛の手を引き歩く露希。
 その背中が、可愛らしくも …… 少し、頼もしく見えることに、
 乃愛は、不思議な感覚を覚えて首を傾げていた。

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 CAST:

 8295 / 七海・乃愛 / 17歳 / 学生
 8300 / 七海・露希 / 17歳 / 旅人・学生?

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 Thank you for playing.
 オーダーありがとうございました。
 2010.01.21 稀柳カイリ

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PCシチュエーションノベル(ツイン) -
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東京怪談
2010年01月21日

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