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『甘い日をあなたと‥‥ 』
レイン・シュトラウド(ga9279)

バレンタインデー‥‥。
この日、女性は意中の男性にチョコレートを渡して告白をし、男性は自分の元にチョコレートが来るかドキドキする日である。

「こんにちは、チョコレートはいかがですか?」

バレンタインデー用の特設コーナーでエプロンドレスのような制服を着た女性が話しかけてくる。

「外国では男性が女性に渡すという所もあるので、男性から贈っても喜ばれるかと思いますよ」

にこにこと営業スマイルでチョコレートを進めてくる店員に赤い色やハートで飾られたコーナーへと足を踏み入れたのだった。

視点→レイン・シュトラウド

「そっか‥‥もうすぐバレンタインでしたね」
 店員の言葉にレイン・シュトラウドは小さな声でポツリと呟いた。店の中を覗き見てみれば女の子達が手作り用のチョコレートを作る為に材料を買ったり、高価なチョコレートのコーナーを見ていたりとしている。
 やはり女性にとってはバレンタインデーという日は最も特別な日なのだろう。
「舞さんに、あげてみようかな?」
 レインは小さく呟いて素材用のチョコレートを幾つか購入し、レジへと向かう。普通ならば逆チョコがあるとは言っても男性がチョコレートのコーナーに足を踏み入れれば少し哀れみの視線を受けたりするものなのだろうが、レインは中世的な顔立ちの為に周りからは『女の子』にしか見られていないようだった。
(「‥‥何も視線を浴びないというのも何か悲しいものがありますね」)
 苦笑しながらレインは購入したチョコを持って店から出て、自宅へと帰る。

 そして自宅に到着すると淡いピンク色のエプロンと三角巾という料理を作るために着替えて、手にはレインがレシピノート。レシピノートにはお酒を使ったチョコレシピもあったけれど、そのページはぱらぱらと捲るだけ。
「お互いお酒はまだダメだから、アルコールの風味が強いものは除外しないと‥‥」
 お酒を使わないチョコレートとは言ってもレシピは山のようにある。王道的にハートのチョコレート、チョコレートを使ったチョコプリンなど様々だ。
「‥‥あ」
 その時、レインはとあるページに目を留めた。そこに書いてあるレシピはガトーショコラだった。
「しっとりとしたガトーショコラなんて良さそうですね‥‥ってそこからこっちには入ってこないで下さい」
 レインが料理をしている、という事で少し遠くから母親と妹が見ている事に気づき、つまみ食いをされない為に予め釘を刺しておく。
 折角作ったものをレインの彼女である室生 舞ではなく母親や妹に食べられてしまっては作る甲斐がなくなるからだ。
 しかし後ろからは「えー」とか「けち」とか抗議の声が聞こえてきて「心配しなくてもちゃんとみんなの分も用意しますから邪魔しないで下さい」と振り返る事なく言葉を返した。
 それから数時間、失敗作などを幾つも重ねて漸く成功したのは生チョコのようにしっとりとしたハート型のガトーショコラだった。ケーキの上から粉砂糖を振るい、イチゴやラズベリー、ブルーベリーなどのベリー類、ハート型のマカロン、そしてチョコクリームで可愛らしくデコレーションがされている。
(「失敗作をあげるのは少し可哀想かな‥‥?」)
 幾つか積み重なった失敗作を母親や妹にあげようと考えていたため、レインは少しだけ心の中で呟く。勿論失敗作とは言っても普通に料理をしていれば成功としか思えないくらいの出来栄えのものだったりするのだけれど。
「舞さんが喜んでくれるといいのですが‥‥」
 可愛い箱とリボンでラッピングしたガトーショコラを見てレインは少しだけ心配そうに呟いた。
 そしてレインは携帯電話を取り出して舞へと電話をかける。数回のコールで舞は電話に出て「もしもし?」と電話の向こうで首でも傾げていそうな口調だった。
「あ、僕ですけど‥‥これからクイーンズ編集室に向かっても大丈夫ですか? お渡ししたいものがありまして‥‥」
『あ、ボクもレインさんに渡したいものがあったんです、今帰っている途中なので多分レインさんが来る頃には帰ってると思うので大丈夫です』
「分かりました、それじゃこれから向かいますね」
 レインは電話を切って、ラッピングしたガトーショコラをギンガムチェックの紙袋に入れてクイーンズ編集室へと向かっていったのだった。

 電話をしてから30分と少しが経過した頃、レインはクイーンズ編集室に到着していた。玄関の外では舞が外に出て待っており「こんばんわ!」と軽く手を振ってレインを出迎えた。
「外で待っていなくても良かったのに‥‥」
「いえ、ボクが待っていたかったんです」
 にっこりと笑ってレインへと言葉を返し「それと、これを‥‥」と舞が小さな紙袋をレインへと差し出した。
「え?」
「もうすぐバレンタインでしょう、本当は当日にお渡し出来るのが一番良いんでしょうけど‥‥お互いに当日に会えるか分からないですから」
 舞の少し照れた表情に「実は僕も‥‥」と持っていた紙袋を少しあげて見せた。
「え? レインさんも? ‥‥ふふ、ボクたちって以心伝心、でしょうか」
 とりあえずあがってください、舞は家の中へとレインを招き入れて自分の部屋へと通した。
「紅茶持ってきますね、寒かったからうんと熱い紅茶淹れてきます」
「あ、舞さん――これ、見てもいいですか?」
 レインは先ほど貰った紙袋を指差すと「もちろんです」と舞は言葉を返して部屋から出て行った。

 いつもお疲れ様です。
 あんまり頻繁には会えないですけど、仲良くやっていきましょうね。

 そんなメッセージが書かれたカードと共に入っていたのはトリュフの入った箱、そして小さなハートが幾つも連なった携帯ストラップだった。
「舞さん‥‥」
 貰ったストラップを携帯電話につけていると美味しそうな香りを漂わせるカップを2つトレイに乗せて持って来た舞が部屋へと入ってくる。
「ありがとうございます、舞さん」
「えへへ、実はストラップはボクとお揃いなんです、レインさんが青いのでボクがピンク」
 紅茶を渡した後、舞は自分の携帯電話を見せる。するとレインのストラップのピンク色バージョンのストラップがさげられていた。
「そういえば、レインさんのは何ですか?」
「あ、ガトーショコラを作ってきたんです」
 箱を開けて中身を舞に見せると1人で食べるには少し大きすぎるガトーショコラが入っていた。
「1人分にしては、ちょっと大きすぎましたかね?」
「ふふ、だったら一緒に食べましょ。美味しさもきっと二倍になっちゃいます」
 舞の言葉に「そうですね」とレインは言葉を返してガトーショコラを2人分に切り分ける。
「はいどうぞ」
 フォークにガトーショコラを1口分を刺して舞へと差し出す。
「え? じ、自分で食べれますよぅ」
「いいじゃないですか、舞さん、はい、あ〜ん」
 断れる雰囲気ではなくなった為に舞はぱくりと食べる。そしてお返しと言わんばかりに「レインさんもどうぞ、あ〜ん」と少しからかうように差し出す。
「‥‥自分でやってなんですけど‥‥恥ずかしいですね、コレ」
 顔を少し赤くしながらレインが呟くと「でしょ」と舞も悪戯っぽく笑う。
「あ、舞さん‥‥ほっぺたにクリームがついてます」
 レインはごく自然に舞のほっぺたについているクリームを指ですくいとって舐める。
「れれれれれれれ、レインさん!?」
 顔をゆでだこのように真っ赤にした舞がレインを呼ぶが「え?」とレインはそ知らぬ顔をしており「な、なんでもありません」と言葉を返したのだった。
 それから日付が変わる少し前まで一緒にいて、少しだけ早いバレンタインデーを堪能したレインと舞であった。

END


―― 登場人物 ――

ga9279/レイン・シュトラウド/15歳/男性/スナイパー

―― 特別登場人物 ――

gz0140/室生 舞/15歳/女性/オペレーター訓練生

――――――――――
レイン・シュトラウド様>

こんにちは、いつもご発注をありがとうございます。
バレンタインシナリオという事でいつもより少し糖分増量してみた‥‥つもりですがいかだったでしょうかっ。
少しでも気に入って頂ける内容に仕上がっていれば幸いです。

それでは、書かせて頂きありがとうございました!

2010/2/11
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2010年02月12日

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