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『激闘! 世界浴場! 〜実況中継! 』
依神 隼瀬(gb2747)

 ――――――ここはテラネッツ八世界の一、『学園創世記マギラギ』の世界。

 ユグドラシル学園の学士たちが汗を流す世界浴場。
 そこは世界樹から滾々と途切れる事無く湧き出しているお湯が張られている、巨大な巨大な浴場です。
 しかし、なんだ大きいだけでただの浴場か、と侮る事なかれ。
 ユグドラシル学園に於ける浴場。そこは既に冒険の舞台でもあります。

 ………………主に女風呂周辺に於いては警備の為と称して、様々な平行世界から集められた超強力な防衛機構が設置されているのです!
 ナイトフォーゲル、相棒の龍、エレメント、ゴーレムなどは勿論、シ○イド、大アヤ○シ、ル○ファーなどと言った「ちょっ、それなんてラスボスwwwww」クラスと言うモノまで、混沌としていると言う噂も…。

 そこに『貴方』が降り立った時には、既に小競り合いが開始されていた世界浴場。
 勇者(?)たちと共に未知の世界を覗く戦いに参加するか、邪な欲望を打ち砕く防衛線に参加するか、はたまた別の思惑に従うか…。



 と、訪れるなりそんなわやくちゃ、唐突に極限カオスな状況下に置かれてしまった『貴方』――依神隼瀬なる本来『Catch the Sky〜地球SOS〜』の世界住人な『能力者』は――…、
 …――混乱し、大慌てしていた。
 目の前には非常に見覚えのある愛機に敵機、そうでなくとも取り敢えず破壊用の兵器・怪物・クリーチャー的な存在と分類してまず文句は出ないだろうと思える人外魔境に強面な方々が、恐らくは女風呂と思しき一画をがっちり固めて護っている状態。
 そしてそれに対峙する、物々しい出で立ちに身を包み、ついでに相当な興奮状態にある――そして様々な輩が居る事は居るがこれだけはどうやら共通、性別は男性オンリーな勇者(?)の方々。
 そんな両勢力が、そこここで衝突を繰り返している。
 隼瀬は取るも取り敢えず、辺りをきょろきょろと見回していた。…殆ど本能的な反射で、両勢力の衝突の余波が及ぶ範囲からは何とか逃れつつ。
「えーと…何だここ?」
 ぽつりと呟きつつ、広大な池が――いや派手に湯気が上がっている時点で水で無くお湯か? そして時々半裸の野郎共やら…やっぱり似たような無防備な恰好の、触覚やら翼が生えてたり肌の色が人間とは極端に違ったりといかにも幻想世界の住人的な方々なんかがギャーギャー騒いでいたりもしくはいつもの事と平然と流していたりあわよくば戦いの漁夫の利(?)をと狙っていたり、と各人各様十人十色にそれぞれの様子を見せているようで。
 …辺りにもうもうと立ち込める煙だか湯気だか水飛沫だか良くわからない中、それでも何とか客観的に場の状況を俯瞰してみると――隼瀬の頭にも漸く一つの答えが浮かんでくる。
「…風呂?」
 その単語が浮かんだところで。
 いきなり目の前に完全装備の鎧を纏った野郎が吹っ飛ばされて来て湯面に派手に激突していた。相当の勢いだったのでいかにも痛そうな音がし、派手な水飛沫も高々と上がる。…そしてその野郎を吹っ飛ばしたと思しき姿は――悠然と旋回飛行している、ドラゴンと思しき――その実、某平行世界に於ける強力なエレメントの――連隊。
 …状況を改めて確認する。
 えーとつまりは。

 状況が異様に大袈裟だが、要は単なる女風呂覗き敢行隊と、それを阻止せんとする防衛隊による攻防戦…らしい。

 漸く目の前で繰り広げられている事態に、頭が追い付いてきた。
 そうなると。
「…って何この防衛ラインナップー!?」
 思わずツッコミを入れてしまう。
 …改めて見直すとしみじみ有り得ない防衛ラインナップである。
 とは言え、まぁ確かに、規模はどうあれその防衛陣がやっている事は納得できる。…そう、物凄く単純に、覗きはいかんだろう。これは自然の摂理。人間の守るべき道だ。
 こうなれば当然、隼瀬も不届きな勇者(?)たちの撃退に協力する――いや、しようと思ったが。
 視界内に広がる光景からして、思った直後に、実際に実行に移す前に思い直してしまった。
 ………………いや、こんだけ豪華な防衛陣なら加勢は要らないだろうな、と言う訳で。
 思っている間にまた、勇者(?)たちの屍が累々と。

 ………………いや、何だかこの攻防戦を見ている方が面白そうだな〜、と。



 で、暫し後。
 鉄壁の防衛線が布かれている女風呂周辺では相変わらずの一方的な状況が繰り返されていた。勇者(?)たちも奮闘はするが劣勢。…さすがにあの――強けりゃ何でも良いとばかりに無節操に集められた平行世界ごちゃまぜ闇鍋的防衛ラインナップは伊達では無い。

 …と、そんな間に。

 依神隼瀬はずるずるずると何か高価そうかつ重そうな――嵩張る精密そうな機材を風呂の縁まで引き摺って来ていた。よくよく見れば、それは何処から見付けて来たのか――本職さん御用達のTVカメラ一式らしき物体。
 取り敢えず適当に設置の後、隼瀬はあちこち弄りつつ、操作法の把握を試みる。
「うーんと、ここかな? で、レンズを覗いてみる、と……おー、映ってる映ってる。んじゃこれで良いんだな。よし!」
 と、頷いたところで、隼瀬は実際にカメラを動かしてみる――ちょうどたった今、ナイトフォーゲルのロビンと思しき一隊と勇者(?)たちの戦闘が始まったところだったのでそちらを撮影。
 隼瀬にしてみればこのロビンは普段自分が乗っている愛機と同じものでもある訳で、当然、応援にも熱が入る。
「お、やって来ました我らがロビン! さぁ、勇者(?)たちの邪な野望を今度こそ挫く事が出来るのかー!! ………………おおっ! 凄まじい集中砲火が勇者(?)たちを襲いますっ! さすがの威力! 勇者(?)たちは吹っ飛ばされて次々と風呂に落下! かと思ったら絶叫と共に飛び上がって水面から姿を見せます――おや? どうやらあの辺りのお湯は他の場所のお湯と色が違いますね?? 毒々しい紫と言うか青と言うか…何かあるのでしょうかっ!?」
 そう実況中継っぽく叫んだところで、通りすがりの風呂上がりらしい人?が親切にも隼瀬に耳打ち。
 言われるなり、嬉々として隼瀬はまた実況。
「――…はい、たった今情報が入りましたっ! どうやらあの辺りのお湯は専門の学士さん?と言う方が調合した薬湯らしく、浸かると全身焼けるように痛むのだとか! 沈んでられなくて飛び上がる訳です! いったい何でそんな薬湯を調合するなんて真似をしたのでしょうか! 単なる嫌がらせだとしか思えません! 勇者(?)たちの敵は防衛線に集められた者たちだけではないようだっ!! さぁとっとと諦めろっ!!」
 実況?を続けながらも、隼瀬は中々に滑らかなカメラワークであちこちで起きる衝突を華麗にレンズに収めていく。
「おおっと、こちらではシェイ○や…そしてよくわかんないけど怨念バリバリ実体不確かなお化けっぽい巨大な骸骨に獅子に龍、ちょっと古風な巨大ロボっぽい一隊が勇者(?)たちの愚行をがっちりと止めています! どうやらこれは異世界共闘! 誰も彼も素晴らしい強さ! いや、いつもは手こずる強敵も――そして多分この感じからして俺の知らない異世界でも敵属性なんだろう方々も――味方に付ければこんなにも心強い! さすがに全く危なげがありませんっ!」
 と、実況を続けたところで――今度は隼瀬が居るこちらに勇者(?)たちの屍が降ってきた。そして意図せずその一部始終をレンズに捉えてしまう――と言うか、覗いているレンズの中で見る見る内に上がっていくズーム――つまりはカメラ直撃方向にその勇者(?)は飛んできた。
 うぇっ!? と妙な声を上げてしまった隼瀬は、咄嗟にカメラを構えていた位置から跳び退る。跳び退ったそこで、がしゃんと派手な音を立てカメラに勇者(?)の屍が一つ激突。…したかと思ったら、更に次々と勇者(?)たちの屍が降って来た。
 さすがに避け切れず、隼瀬も自分の上に降って来た屍を一つとりゃっとばかりに殴ってふっ飛ばし、振り払う――振り払ったところで、偶然こちらを見ていたらしい、未だ健在な勇者(?)たちの内一人と偶然目が合った。
 お互い、思わず停止。
 次の瞬間。
 目が合ったその勇者(?)が、持っていた武器――大砲らしきものをこちらに向けていきなりぶっ放していた。どうやらこちらも――隼瀬の事も敵と見たらしい。…確かにその通り。観戦していた――と言うか実況していただけとは言え実際、隼瀬は勇者(?)では無く防衛線寄りのコメントばかり吐いていた訳で。気持ちは元々そっち側。
 が、だからと言っていきなりそれか!?
 自分に向かって打ち出された弾頭。やばっ、と思ったその時点で、隼瀬はエミタ活性――『覚醒』状態に移行。通常のままの身体能力では対処には到底間に合わなかっただろうその大砲の攻撃を、所持していた日本刀の抜き打ちで真っ二つに切り裂く――取り敢えずそんな事が可能な程度の威力な大砲であった。
 一拍遅れ、二つに割られた弾頭がばかんと破裂し、爆発する。
 その爆発自体を囮にして隼瀬はすかさず駆けている。先程自分に向けて大砲をぶっ放した不届きな勇者(?)の一人に肉迫、何が起きたか理解させない内に、刀を一閃。…きっちり反撃。
 次の瞬間には、その勇者(?)の一人はその場に崩れ落ちている。
 それを認めて、隼瀬は、ふぅ、と一息。
 …吐いたところで、ちょいちょい、と後ろから肩を叩かれた。

 ?

 いったいなんだよと思いつつ、隼瀬は素直に振り返る。
 と。
 巨大な樹木が元と思しき異形の化物が『そろそろ時間切れです』と書かれた看板を枝の先で――ちょうど隼瀬が振り返った時に目の前になる位置に掲げるようにして持っていた。ちなみに隼瀬の肩を叩いたのもその触手の如く自在に使えるらしい枝の先。
 隼瀬は思わずその場で飛び上がる。
 なんだこいつっ!
 驚きのあまり、声にまででない。
 が、隼瀬がそう思ったところで、また別の看板に別の文字が書かれているのに気付いた。

 ――――――『守護者(がーでぃあん)』。

 でん、と新たに目の前に出されたその二つ目の看板を見たと思った次の瞬間。
 いったい何をされたのか、隼瀬はその場から唐突に消えていた。

 …守護者、それは平行世界それぞれに存在する、それぞれの世界の秩序を守るもの。
『学園創世記マギラギ』の世界名物な問答無用のルールブック、言わばdeus ex machinaである。

 つまり。
 …そろそろ1PCにしては文字数超過気味ですよと言う事で、依神隼瀬は元の世界へと強制送還された、と言う事なのだろう。

【了】
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CATCH THE SKY 地球SOS
2010年02月15日

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